転生したら(自称)宇宙人になってしまった件 作:イガリマ
グランの案内を受けて何とか部屋に辿り着く事が出来たルシア。しかし部屋で休んでいる最中に用足しがしたくなった彼は、トイレを求めて基地の中を彷徨いていた。
「この基地広すぎでしょ…よく他の皆は迷わないよね…」
そんな独り言を呟きながら、ようやく見つけたトイレに入る。用足しを済ませた彼は部屋に戻ろうとするが、またしても道に迷っていた。
(ヤバい…転生前の方向音痴気質が、この身体にも染み付いているらしい…)
ルシアの身に宿った前世の記憶では、彼は道に迷いやすい人物だった。それが今となっても抜けることはなかった。
「えっと…確かこの部屋だったかな?」
ルシアは適当な場所にあった部屋のドアを開ける。
「スマァッシャァァァー!!」
(ヒッ!?)
突然聞こえてきた大声に、ルシアはドアの外で身を隠す。そっと覗いてみると、中にいたのはファーストランクチーム”イプシロン”のキャプテンである”デザーム”だった。
(オサーム様か…何してるんだ?)
「ふむ、これでは納得がいかないな…もっと気合いを入れるべきか…」
(あっ…もしや必殺技の掛け声の練習?)
「”ドリルスマッシャー”!!!」
デザームは右腕を天井に向かって上げながら、そう叫んだ。
「…よし。これで完璧だな!」
(……良いネタ見つけちゃった♪)
ルシアはニヤリと笑い、その場からそっと姿を消した。しかし彼が離れた事でドアが閉まり、その音を聞いたデザームは一つの結論に辿り着く。
「まさか…今の掛け声の練習…誰かに見られていたのか…!?」
彼は気まずそうな顔をしながら、その場に立ち尽くしていた。
(突然流れる”Anything goes!”のイントロ)
<勝手に欲望の王のop始めないで?byルシア
◇◆◇◆◇
―エイリア学園 会議室―
薄暗い部屋の一部に灯された白と赤、青、黄緑のスポットライト。ライトが照らす先には1つずつ、計4つの席があり、そこには1人ずつ選手が座っていた。
白い席にはガイアのキャプテン、”グラン”。
赤い席にはプロミネンスのキャプテン、”バーン”。
青い席にはダイヤモンドダストのキャプテン、”ガゼル”。
そして黄緑の席にはアンドロメダのキャプテン、”ルシア”。
エイリア学園が誇る最強クラス、4つのマスターランクチームのキャプテン4人が集結していた。
この場所に集めた張本人であるグランが、他の3人に対して口を開く。
「君達を集めたのは他でもない、我々エイリア学園に対抗するチームが現れたからだ。今の内に、情報を共有したいと思ってね」
「そんで?何処のどいつなんだよ?そのチームってのは」
「我々に対抗するとは、随分と命知らずな…」
「”雷門中”でしょ?大体の見当はついてるよ」
「流石はルシア、良くわかったね。その通りだよ。バーンとガゼルも、聞いた事はあるだろ?」
「まぁ…名前くらいはな」
グランの聞き返しに、ガゼルが答える。それに続けてバーンも話す。
「その雷門って連中は強いのかよ?お前がそこまで言うなら、さぞかし強いんだろうなぁグラン?」
「今のところはそれ程でもないよ。レーゼ達”ジェミニストーム”にすら完敗している位だ」
「ふん…聞くからには大した事は無さそうか」
「んだよ、期待させやがって…」
バーンとガゼルが失望する中で、ルシアもいよいよ話を始めた。
「いや、そうでも無いかもよ?」
「何を根拠に言っている?」
「ちょっと耳寄りな情報を持ってるんだけど、知りたい?」
「質問に質問を返すな」
「もったいぶってないで教えろよ、ルシア」
「今でこそ雷門中のサッカー部は、”フットボールフロンティア”で優勝して日本一の称号を轟かせている。けど、彼等は最初から実力があった訳じゃない。元々は廃部寸前の弱小サッカー部だったんだよ」
「ルシア、君も中々に詳しいね」
「それで、結局何が言いたいんだよ?」
「弱小だった雷門が、今となっては日本一…彼等の成長速度は決して侮れないって事だよ。何れはレーゼやデザーム達に勝利して、僕達にも牙を剥く存在になるかもしれない」
「だといいけどな」
「あまり過剰な期待はしないでおこう」
「俺から話す事はもう無いよ。殆どはルシアが話してくれたからね、そろそろ解散にしようか」
「はぁ…それだけかよ。面白くもねぇ話聞かされて、損したぜ」
「そんな君に面白い話があるよ、バーン」
「何だよ?」
「僕見ちゃったんだよねぇ…デザームが必殺技の掛け声の練習してたところ。”ドリルスマッシャー!”ってさ!」
ルシアはデザームの声を真似しながら話す。元々女性的な声をしている彼が、イカつい男の声を発するデザームの真似をするのはバーンの笑いのツボにはまったらしく、大声で笑いだした。
「あっはははははっ!!そっくりだな!デザームの物真似上手すぎだろ!!あははははっ!!」
「声が大きいぞ。外に聞こえたらどうする」
「わりぃわりぃ…ルシアの声真似があんまり似すぎていたからついな…(笑)」
ガゼルの注意にバーンが笑いを堪えながら話していると、突然会議室のドアが開いた。
「あれ、デザームじゃないか。どうしたんだいそんな顔をして?」
グランの言葉で、バーンとルシアはまるで凍りついたかのように身体を固める。2人はぎこちない動きで入り口に顔を向けると、そこには俯いたデザームがいた。
「貴方だったのですかルシア様…私の秘密の特訓を見ていたのは…」
「えっ…?いやあの…ごめんね?道に迷ってた最中で偶然見ちゃったの…もしかして僕…パンドラボックス開けちゃった…?」
「”パンドラの箱”だろう。英語にするな」
「ごめんガゼル…。って言うか何処から持ってきたのそのサッカーボール?なんか腕組んでるし…もしやあの技使うつもり…?止めて!本気で勘弁して!マジで謝るから!ねぇ?許して!?」
「”グングニル”!!!」
「イヤア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ァァァァァァァァァ!!!!?」
会議室の中に、ルシアの叫び声が虚しく響き渡る。それを見た他の3人は、そっと合掌するのだった。
<お葬式みたいに手を合わせないで?