貞操概念が逆転したIS~更識家の執事さんから愛を込めて~ 作:ジョインジョイントキィ
更に翌日、巳槍から突如として平日休みを貰ったガルムは(物理的に)羽を伸ばすため人の全く居ない危険な山に来ていた。
服装は部屋着であるジャージとだて眼鏡で、なるべく人に声を掛けられない行動を意識している(八敗)
「さ~~~~~~ってと!!!」
大きく延びをし、両手を横に伸ばしてストレッチらしき物をすると背中からコウモリの様な羽と、尾てい骨辺りから黒い先の尖った尻尾が現れた。
「んん~~此処に来て早半年、たまにはこうやって羽を伸ばさなきゃ肩が凝っちまう」
ストレッチらしき物をしながら羽や尻尾を自由に動かし、そして大きく息を吸い込む。
これは『魔呼気』と呼ばれる技術で、大きく息を吸い込み酸素を大量に体内に循環させて怪我や筋肉の凝り固まり等を解消する物だ。
そして……
「ふっふっふっ……勇者アライの言っていたイケブクロを攻め落とすぞ!!!」
かつて対峙した勇者アライ
戦闘自体は秒で終わってしまったが、彼が命乞いの際に差し出した漫画を読み非常に気に入ってしまったのだ。
読んだのは累計二百を越える巻数の警察官の漫画であり、それにドップリとハマったガルムは勇者アライを己の配下に迎え漫画の事を沢山聞いたのだ。
その中で興味を牽いたのは海賊が主人公の漫画と炎を操る忍者が主人公の漫画、そしてカードで世界を救う漫画だ。
一部アニメの話もしており非常に興味を持ったガルムは同僚にその事を伝えて皆で異世界を巡ろうと決まったのだ。
閑話休題
まばたき一回終えると池袋の有る場所へとたどり着いている。
そう、ここは池袋のボウビル西側の通り。
我々の世界では乙女ロードと呼ばれている聖地、ちなみにこの世界では紳士ロードと言うらしい。
「来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た!!!
イケブクロシンシロード!!!」
本来なら目立つであろう歓声もここ紳士ロードでは日常茶飯事。
見渡す限りの男達、彼等も一度はこれを経験したからこそ目線だけでこう語るのだ。
『ようこそ沼へ』
この日の為に売れる物(魔王時代のガラクタ達)を売り資金を用意したのだ。
今なら屋敷一件買うのだって訳無いが流石バカ、屋敷とか城とかよりも一冊の薄い本を選んだ。
「突撃ぃぃぃ!!!!!」
喜びのあまりテンションがおかしくなるが紳士ロードでは当たり前の光景、なので誰一人として迷惑な顔はしていないのだ。
流石紳士の名に恥じぬ世界
あれから三時間、ガルムの手は薄い本と普通の本が大量に詰められた袋に支配されていた。
家に帰ればこの大量の紙に囲まれるが過去とは違う、まさに嬉しい悲鳴だ。
「おんやぁ?」
「ねぇねぇ、一緒にお茶しようよ」
「楽しいからさ♪」
「だよだよ」
「いや、俺忙しいんで」
黒髪の少年が三人の女子高生に囲まれナンパされている姿を見つけてしまった。
世間的には放置しようとするのが普通なのだが、同じ黒髪のよしみだ。
助けるために少年の手をとった。
「すまない待たせた、早く帰らないと店長に怒られる」
「え?え?」
「この間のお兄さんだ」
「一緒に……」
「申し訳ありません、彼とこれから店に戻らなければならないのでまた後日お願いします」
そう言い切り、瞬時にその場を去っていくガルム。
その姿になんか変な妄想を抱いてしまうのだった……
「災難だったね」
「あ、ありがとうございます」
少年は頭を下げて感謝を伝えるがガルムにはそれが理解出来なかった。
何故か、それはこれが彼自身の力だからだ。
一つ質問しよう、例えば数学の難しい問題が自力で解けたとして自分自身に頭を下げて感謝するだろうか?
普通にしないだろう、この少年がたまたまあの時間帯にたまたまあの場所でたまたま黒髪だったから助かった。
つまるところ少年の運が良かったから助かったのであって自分が感謝される意味が解らないのだ。
「どうやらこの時間帯は面倒らしいね、次からは気をつけてね」
「ありがとうございます!」
「感謝は別にしなくて良いよ」
「え、でも」
「なら、その感謝は『運の良い君』を産んでくれた親にしな」
親、その単語を聞いた瞬間少年の表情が暗くなった。
地雷を踏んだかと自身に飽きれ、話を急激に変えていくのだった。
「俺はガルム、ガルム・ヴェルファイア
とあるところで執事をしているんだ」
「え?」
「急かな?君は所作の節々から家事が得意な気配が見えてねスカウトしようと思ったんだ」
いきなりのスカウト宣言、ハッキリ言って不審者その者だ。
だがそれこそガルムの狙い、少年が身の危険を感じこの場を去るように誘導したのだ。
「っ!?」
「給金なら大丈夫、それに相応の施設だからある程度の誤魔化しは可能だよ」
少年は見た目的に中学生辺り、それがいきなり見るからに非合法そうな仕事の誘いとなれば間違いなく逃げる、そう思っていたのだが……
「お、お願いします!!!」
「?」
「俺に仕事をください!!!」
「???」
日本ってかなり平和な国だよね
日常から殺し合いなんて全く無縁の国
しかも安全な水から安心して食べられる肉、それに安心して過ごせる家が立ち並ぶ国じゃん
つまりだ、中学生くらいの彼が何故働きたいのか全く理解出来ない。
と言うか、普通に考えて犯罪臭のするこの誘いに乗ろうとしている辺りに彼の世間知らずさが目立つ。
「うん、君はまだ中学生くらいだよね?」
「はい、中学一年生です!
名前は織斑一夏、出席番号は三番です!」
「そこまでは聞いてないかな、それで織斑君はどうしてこんなに怪しい仕事をさせてくれと言うのかな?
こう言うのもアレだけど、こんな怪しい誘い方に怪しい人物の話を受け入れるのかな?」
一夏少年は少し考えると力強くガルムを見つめた。
不愉快だ、まるで自分を透かして見てくるかのような嫌な目をしている。
「ガルムさんは見ず知らずの俺を助けてくれました」
「それだけで?」
「それに俺に敢えて不信感を植え付けて此処に下手に立ち寄らないようにしようとしてくれました」
「…………」
「あと……気配って言うのか空気って言うのか……姉と似ててガルムさんの言葉なら信じられるって思ったからです」
ため息を吐くと両手を挙げて降参のポーズ、そして呆れながらに口を開いた。
「オーケーオーケー、解った俺の敗けだ、それで織斑君に一つ質問しよう
何故働きたい?」
「家族の為です」
立派な回答だ、だがつまらない。
ガルムの感想はそれだ。
「立派な理由だね」
「俺、姉と二人暮らしなんです
姉は俺を育てるために長い間家に戻ってこれない仕事をしてます
少しでも一緒に過ごしたいから……が本音です」
「成る程、納得したよ
少し待っててくれ」
なんて面白そうな理由だ。
最初はつまらなさそうな理由だったのに蓋を開ければこんなにも楽しそうな理由が出てきた。
ガルムはすぐに巳槍に電話をして一人雇って貰えないと訪ねるが、まさかの二つ返事で許可。
一夏をガルムが面倒を見る事になり、今後の打ち合わせをして互いに帰るのだった。
ガルム・ヴェルファイア
ヴェルファイアはたまたま見かけた車の名前を名字にしただけ。
本名はガルム・アスモデウス
七大魔王と呼ばれた存在なのだが仕事ばかりであまりにも忙殺されており、その影響で仕事らしい仕事は無くこの世界には無い娯楽を求めて異世界へと来た変人
元々は超武闘派だったらしいが勇者アライにより娯楽に目覚めた
勇者アライ
よくある異世界転位したチート系勇者……なんだけど現役のガルムはそんなの物ともしない化け物だったので秒殺されてしまった
元々はオタク学生だったので命乞いに漫画を差し出しそれにより生き延び、魔王三銃士なんて席を貰い逃げ出せずにいたらしい
ちなみに召喚した国では魔王アスモデウスを討伐した英雄として称えられている