【番外編】お労しい兄上になったんだが…ここどこ? 作:gnovel
ウマ娘の世界に転生した兄上
トレセン学園の理事長室にてある二人の青年が表彰されていた。
「……」「……」
どちらも似たような容姿をしているが、顔についた痣と纏っている雰囲気で違いが見分けられる。
痣が二つある方は名を『継国 巌勝』もう片方の名は『継国 縁壱』
同じ苗字をしているが、血縁関係がないという珍しい組み合わせになのだ。そのため第三者からしてみれば彼らが兄弟であると勘違いするのは必然だった。
更にそれに拍車をかけているのが縁壱が巌勝を「兄上」と呼ぶことも要因の一つだった
「では改めて……天晴!ようこそ!トレセン中央学園へ!君たちの活躍を楽しみにしてるぞ!!」
「承知しました」「…………期待に応えます」
理事長の激励に縁壱が答えるが、巌勝の目は死んでおり答えるのに時間を要した。
(なぜ……なぜこうなったのだ……)
時は遡る
かつて『黒死牟』として鬼殺隊の柱たちに葬られ、醜き人生を終えてあの世にいる妻子や縁壱に謝りに行こうとした巌勝だが、ふと気づくと自分が赤子として生まれ変わっていたことに気づいた。
『だぁ(言葉が出ない……赤子だからか)』
今の自分は如何やら赤子として転生し、新たな人生を迎えていることを認識した。
『だぁ(とはいえ赤子か、これでは何も出来んな)』
巌勝が己の現状を再認識したところでふと意識とは勝手に口から大声がでた。どうやら腹を空かしたようだ。
赤子の鳴き声を聞きつけて母親が駆けつけてきた。だが
「巌勝~お腹すいたのね?」
(え?)
巌勝は己の目を疑った。
なぜならその母親の頭部にはまるで馬のような耳がついていたのだ。更に言えばなぜか使える『透き通る世界』でみてもそれが偽物でないことにも気づいた。
(え?)
……巌勝は宇宙を背負った猫のように虚無になった。自分の理解を超えた存在がまさかの母親だという事実を突きつけられて思考が停止したのだ
これが巌勝の最初の記憶だった
ある程度成長した巌勝が知った事実は、この世界は前の世界と違って『馬』がいないこと代わりかどうかわからないが『ウマ娘』がいるということだった。
そして巌勝はある時図書館に行き歴史書を見ていたら
『……ウマ娘は戦にて重宝され、時には将軍を乗せて戦場に駆り出していた。』
自分の知っている歴史とまるで違うことに巌勝はまたしても宇宙を背負った
またこの世界に『馬』という漢字が無いことを小学生の時に知った時も
『巌勝くん?その漢字は一体何て読むの?』
『……?うま……だが……?』
『えっ?その漢字は無いよ?巌勝くん』
『え?』
『え?』
巌勝はもう考えることを放棄した。自分の常識が悉く崩れ去られたからだ。
更に幼少期からウマ娘と触れ合う機会があったのだが、彼女たちの身体能力がそれこそ巌勝の想像をはるかに超えた物であると認識した時は遂に
『……考えるだけ無駄か』
巌勝は齢10歳にして自分の常識が何一つ当てはまらないことを悟り、ウマ娘について考えるのを諦めることにした
……因みに巌勝の身体能力もこの世界にしてみれば、ウマ娘でないのにウマ娘の速度とスタミナに普通についていける巌勝は幼少期から密かに注目されていたのだ
それから時は流れ巌勝が大学を卒業し、ウマ娘のトレーナーとなるべく試験を受けに行ったのだ。
今の巌勝は『透き通る世界』を生まれながらにして使えるため。よくウマ娘の走る姿を見てはその脚質とバ場適正を見極めることができるのである。
巌勝がトレーナーを目指すキッカケとなったのはあるレースのことだった。
ある日巌勝は家族に連れられ近場のレース場に訪れていたのだった。巌勝は会場の熱気に気後れしながらもレースを見ていたが……ふと気づいたのである
『……?(あの少女の脚……かなり損傷があるな……このまま走らせては不味いのではないか……!)』
『透き通る世界』を持っている巌勝だから気づけたこと。何とかして家族に伝えようとするが、既にレースが始まってしまった……
『あっと!、■■■■■が転倒!最終コーナー前で崩れ落ちました!足を押さえております!』
『あの子……大丈夫かなぁ……』
『心配だわ……』
『……』
巌勝には見えていた。そのウマ娘の脚の筋肉が断裂し、骨までダメージが入ってしまっていることに……
そう、あのウマ娘の選手生命は絶たれてしまったのだ……
それを知ってか知らずか会場にはあのウマ娘の慟哭が響く
『……(なぜだ……なぜ彼女が足を壊さなければならない……なぜ彼女が泣かなければならない……)』
巌勝は自分があの脚を見ることができていたのにも関わらず何も出来なかった自分に腹が立った
そうして巌勝は決意した
『……俺はあのような悲劇を、あのような結末を迎える少女たちを減らすために、俺はトレーナーになる……!』
こうしてその日から巌勝はウマ娘のトレーナーになるための勉強を必死で取り組んだ……
巌勝はあの日の無念を、何も出来なかった自分に対する憤怒と、慟哭する少女の悲しみを胸に死に物狂いで知識を納めた
そうして巌勝はトレーナーとして合格したのだ。
ある時巌勝の元にトレセン中央学園理事長からの通達があった。どうやら試験で主席を取った自分に激励をしたいとのことだった
また自分の他にもう一人くると記されてあったが、巌勝はあまり気にしなかったが……
巌勝はトレセン学園までの道のりを確認するために付近を探索していた所……
「あ」「あ」
……目の前にかつて自分の目標と定め、自分が勝てなかった存在である「継国 縁壱」がそこにいた
巌勝はすぐさま逃走を試みた
「……ッ!」
「お待ちを!兄上!!」
……数秒もしない内に捕まったのは言うまでもない
「兄上お久しぶりです」
「なぜ……お前がここに……?」
縁壱に捕まり力が籠りすぎている抱擁を受けながら巌勝は疑問を投げかけた。
「私もこの世界に転生したのですよ兄上」
「違う……そうではない。お前がなぜここに……?」
それから縁壱はこれまでの事を巌勝に話した。
自分が死んだあとこの世界に転生したが、巌勝がおらず困惑したこと。そしてウマ娘という存在に興味を抱いたこと。……自分の目の前でウマ娘の脚が壊れる瞬間を見たことを……
一頻り話した後巌勝の体の骨が悲鳴を上げ、巌勝が苦しみだしたところで縁壱が離れ、巌勝も己の過去を話した。
「……やはり同じか」
「そうですね、兄上」
「俺もお前も、悲劇を目の当たりにして今この場にいる」
「……見えることが、気づけてしまうことがこれ程辛いことだとは思いもしませんでした」
「俺はあの時、自分の無力さを感じた」
「私も同じです……兄上」
「だからこそ俺はあのような悲劇を起こさない為にも俺はトレーナーになることにしたのだ。……俺は浅ましいか?縁壱」
「いいえ、そのようなことはありません兄上」
それから二人は時間になった為理事長室に向かった。
「歓迎ッ!ようこそ、我がトレセン学園へ!」
そこにはこの学園の理事長である秋川やよいと理事長秘書である駿川たづながいた。
「さて!まずはこの度の試験における優秀成績者として君たちに激励を飛ばしにきた!」
「ありがとうございます」「……ありがとうございます」
「まずはおめでとう!そして早速だが君たちに最初の指令がある!」
「承知」「承知」
「君達二人でチームを組んでもらいたい!」
「……?」「…………え?」
巌勝は己の耳を疑った。
(え?今……え?なんて?)
「うむ!実はな」
理事長の口から現在は一人のトレーナーと一人或いは複数のウマ娘という構成だが、『2人のトレーナーと複数のウマ娘』という構成でどれほど変わってくるのかという考えがあるとのこと。そしてその為のデータを取るためのトレーナーをどうしようかと考えていた所試験で首席を取った人物がまさかの2人だったため、そのまま巌勝たちにこの任務を任せることにしたのである。
「確かにこれは前例のないこと……だが!これは新たなる風を吹かすことになるだろう!私はそう信じている!!」
「……なるほど」「…………え?」
縁壱は頷く。巌勝はまだ帰ってこない。
そうして冒頭に戻る
「では改めて……天晴!ようこそ!トレセン中央学園へ!君たちの活躍を楽しみにしてるぞ!!」
「承知しました」「…………期待に応えます」
その後たづなからトレーナーをするにあたっての説明を一通り受け、激励会は終わった
理事長室から出た縁壱はわくわくしていた。巌勝はようやく正気を取り戻した。
「では兄上、これから頑張りましょう」
「……おう」
巌勝はまたしても考えることを放棄し、帰り道に着いた
「……まさか縁壱と組むことになるとは」
「……なるようになるか」
別に縁壱のことは嫌いではないのだが、如何せん前世での己の所業と縁壱の最期があるせいで縁壱に顔向けがしづらい状態でのチーム結成であった。
「……まぁ、前世とは違う。俺も切り替えねば」
巌勝は心機一転、心を決めこれからのことを考えながらトレーナー寮への引っ越し作業を進めることにした。
……この後待ち受ける一癖も二癖もあるウマ娘たちに翻弄される未来が待ち受けているとは知らずに
みこちゃんをどうしたいか
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病ませる
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兄上諸共他の世界に転移させる
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上二つ全部