強くてニューゲームを続ければ、いずれ英雄になれるだろうか?   作:ライadgj1248

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 この作品は主人公がいきなり無双する感じではなく、一歩一歩前に進む感じです。俺強ぇええ!!が読みたい方にはあまりオススメ出来ないかもです。


3話

 喜び勇んで演習場に駆け込んだものの、時間が遅めだからか人の気配はほとんど無い。夕日もほとんど沈みかけているので辺りは薄暗く、いくつか置いてある篝火が頼りの状態だ。

 

「見かけない顔だな?新入りか?」

 

 演習場でキョロキョロと様子を伺っていると、強面のおっさんから声をかけられた。なんだかどこかで見た事があるような気もするが、ちょっと思い出せない。かなりガタイが良いし、腰に剣を装備しているから戦士系の人だろう。

 

「は、はい!!今日冒険者ギルドに登録したばかりでカズキです。職業は火属性の魔術士です。」

 

「そうかそうか、俺はリゲルだ。元冒険者で今はこの演習場で教官をやってる。それで試し撃ちがしたいのか?魔法を使うのは初めてか?」

 

「はい、初めてです。」

 

「なるほどな。魔術と言っても様々な形態があるが、魔法が初めてって事は基礎魔術しかスキルが無いんだろ?だったら詠唱魔術だな。」

 

「詠唱魔術ですか。」

 

 魔法を唱えて発動するタイプか。よく見かける設定の魔法だな。

 

「おう、その名の通り呪文を詠唱して発動するタイプの魔術だな。今からあの訓練用の的に向かって撃ってやるから見てな。」

 

「え!?リゲルさんは魔法が使えるんですか!?てっきり前衛職の方だと思ってました。」

 

「俺くらいのベテランなら前衛職でも基礎魔術くらいなら使える奴は多いぞ?使える手段は多く用意しておく方が良いからな。まあ見てろ。」

 

 そう言うとリゲルさんは無造作な動きで、的になっている鎧を着せた案山子に向かって手の平を向ける。杖とかは必要ないんだ。

 

「炎よ 我が敵を撃ち抜け ファイヤーアロー!!」

 

 短い詠唱の直後に炎の矢が的に飛んでいく。それなりの速度で飛んでいった炎の矢は、鎧の表面を焼いて霧散する。流石に金属の鎧を貫通する程の威力は無いみたいだが、初めての魔法にちょっと驚いた。

 

「これが火属性の基礎魔術の一つファイヤーアローだ。魔力の制御も簡単で発生が早く狙いもつけやすい。初心者向けの魔法だな。やってみるか?」

 

「はい!!」

 

 的に向かって手の平を向けて一つ深呼吸をする。

 

「炎よ 我が敵を撃ち抜け ファイヤーアロー!!」

 

 詠唱をした瞬間体の中を何かが走り抜けて、手の平に集まるような感覚を感じて驚く。これが魔力を使用する感覚なのか!?次の瞬間自分の手の平の前に炎の矢が形成されて、的に向かって勢い良く飛んでいく!!残念ながら的の右側に逸れてしまったが、それでも初めての魔法の発動に成功した!!

 

「ほう、悪くはないな。」

 

「もう一回!!炎よ 我が敵を撃ち抜け ファイヤーアロー!!」

 

 今度は最初から体の中を何かが走り抜ける感覚に驚く事なく、落ち着いて発動出来たのだが・・・今度は的の左側に逸れてしまった。

 

「ふーむ、少し別のやり方を試してみるか。」

 

「別のやり方ですか?」

 

「例えばこうだ。」

 

 リゲルさんは今度は手の平を的に向けるのではなく、的を指差して狙いをつける。そして短い詠唱と共に炎の矢が飛んで的に命中する。

 

「こんな感じで魔法の撃ち方にも色々ある。人それぞれやりやすい方法があるからな。素手でやるなら手の平を向けるか指差すのが多いな。後は両手で三角形を作ってその中心に相手を捉えるとかもあるな。この辺は色々と試してみると良い。杖があるなら杖を向けるのが一番だがな。だがちゃんとした杖はそれなりに高価なものだからな。」

 

「なるほど、試してみます。」

 

 今度は指差しでファイヤーアローを試してみると、ようやく的に当たった。逆に両手で三角形を作るやり方はしっくりこなかったので、今後は指差しの形で使うとしよう。それにしても魔法を連続で使ったからか、それなりに疲労感を感じる。

 

「ん?もうへばってるのか?」

 

「あ、いえ・・・まだやれます。」

 

「まだやれるは冒険では危険な状態だな。冒険は常に命がけだが、命あっての物種だから無理をしないのが長生きするコツだ。・・・だがまあ、演習場ならぶっ倒れても死にやしない。自分の限界を知っておきたいなら止めはしねぇよ。新人魔術士なら命削って魔力を得る手法なんて知らねぇだろうから安心だ。」

 

 自分の命を削って魔力を得るか・・・そんな危険な手法もあるのか・・・だがそんな知らない手法は置いといて、自分の限界は知っておきたい。

 

「ご迷惑をおかけしますが、自分の限界は知っておきたいです。」

 

「ならあと2つの基礎魔術を教えといてやる。その練習してぶっ倒れろ。まずはファイヤーボールだ。」

 

 そう言ってリゲルさんは再び的に向かって手の平を向ける。

 

「炎よ 我が敵を焼き払え ファイヤーボール!!」

 

 今度はスイカくらいの大きさの火の球が飛んで、的にぶつかると小規模の爆発が起こる。

 

「こんな感じだ。ファイヤーアローよりは込める魔力が多いぶん威力は上で、爆発するから直撃しなくても敵の近くに当たれば多少のダメージは与えられる。だが見て分かるとおりファイヤーアローよりは発生と速度で劣るし、命中精度も若干劣る。状況次第で上手く使い分けると良い。」

 

「分かりました。やってみます。炎よ 我が敵を焼き払え ファイヤーボール!!」

 

 ファイヤーアローの時よりも魔力が走り抜ける感覚を強く感じる。疲労感もあってか多少ふらついてしまったせいか、自分が放ったファイヤーボールは的が置いてあるとこよりも手前の地面に当たってしまった。これはまだまだ練習が必要だな。

 

「はぁはぁはぁ・・・けっこうキツイですね・・・」

 

「そろそろ限界も近いみたいだな。最後は少し性質が変わった付与魔法だ。ちょっと見てろ。」

 

 リゲルさんは腰から剣を引き抜くと、その剣に向かって手を翳す。

 

「炎よ その力を宿せ エンチャントファイヤー!!」

 

 リゲルさんが詠唱を終えると剣が炎を纏う。炎の剣とか厨ニ心をくすぐる一品だな。その場でリゲルさんが軽く3回程炎の剣を振るうと、火の粉を散らして消えてしまった。意外と効果時間は短いな。

 

「こんな感じで武器とかに炎を纏わせる魔法だ。こいつはかなり応用が効く。付与する範囲と継続時間を魔力量でコントロール出来るからな。あとは武器の先だけに炎を纏わせて、緊急時の松明代わりに使ったり出来る。その代わり範囲の指定をミスったら自分も火傷するから気を付けて使えよ。」

 

「なるほど、今までよりも少し難しいですね。」

 

「そこは練習だな。いきなり手に持ったものに付与させるのは危ねえから、お前はあの的に付与してみろ。」

 

 なるほど。それなら安全に練習出来るな。だがそろそろ魔力も空になるのか、かなり疲労感が強い。少しふらつきながらも的に近づいて手を翳す。

 

「炎よ その力を宿せ エンチャントファイヤー!!」

 

 体内の魔力を振り絞るつもりで呪文を詠唱したが、的に着せている鎧が一瞬炎に包まれただけで消え失せる。そして限界を超えたからか、ふと意識が遠のいた。




 基礎魔術数回で気を失う貧弱魔力ですまんな。

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