強くてニューゲームを続ければ、いずれ英雄になれるだろうか?   作:ライadgj1248

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 気まぐれ更新なので、更新頻度はかなり遅めです。気長にお付き合い頂けると幸いです。


4話

 念願の魔法を使えるようになった次の日、さっそく早朝から冒険者ギルドへと駆け込む。今日から俺も冒険者の一員だ!!これから英雄として駆け上がるんだ!!そう考えていたのに俺は物凄く大事な事を忘れていた。

 

「・・・・・・文字読めないんだった。」

 

 ギルドの職員が掲示板に張り出した依頼書に群がる冒険者誰が、次々と依頼書を持って受付に行く中で呆然と立ち尽くす馬鹿が一人・・・読めない依頼書を前にどうやって依頼を受けろって言うんだよ?どこかで文字を習うべきだったか・・・

 

「そんなとこにぼーっと突っ立ってどうした?装備も何も無いが新入りか?」

 

 振り返ると金髪で背の高い槍使いが声をかけて来たようで、その後ろにガタイの良い斧使いとちょっと小柄な弓使いが居た。全員男のパーティのようだ。

 

「あ、すいません!!新入りのカズキです!!昨日冒険者登録して魔術士になったばかりです!!宜しくお願いします!!」

 

「ふーん、魔術士か。うちのパーティには魔術士は居ないんだよなぁ。ちなみに覚えた魔法と魔力がいくつか教えてくれるか?」

 

「おい、ライド!?まさかこんなひよっこをパーティに入れるつもりか!?」

 

「まあまあ、とりあえず聞くだけだって。」

 

 おっ!?もしかしてこれは仲間に入れてくれるパターンか?

 

「えっと、火属性の基礎魔術で魔力は12です!!魔術は覚えたばかりだけど一生懸命頑張ります!!」

 

「あー、そうか。まあ、邪魔して悪かったな。詫びと言ってはなんだが先輩からのアドバイスをしてやる。クエストなんて受ける前にまずは装備を整えろよ。それだけでも少しはマシになるはずだぜ。じゃあな。」

 

 ライドと呼ばれた槍使いは俺の肩を軽くぽんと叩いて去って行ってしまった・・・まあ、そりゃそうだ。駆け出しでなにも装備を持っていない魔術士を誘う馬鹿がいるわけない。これで才能がある魔術士なら先行投資をする意味があるかもしれないが、俺の魔力はお世辞にも高いとは言えない。はぁ・・・とりあえず杖に関しては無くても戦えるけど、せめて服装くらいは整えたいところだ。魔術士ならローブが定番か?でもあれってただの布だから普通の服と大して変わらないか?魔術的な付加価値のついたローブなんて高くて買えないだろうし。

 

「よう、そこの新入り!!行くあてが無いなら俺と組まないか?」

 

 今度は誰が声をかけて来たかと思えば、自分と同様にほとんど装備の揃っていない奴だった。茶髪でさほど背は高くないが、見たところ体は多少鍛えているようだ。自分と変わらないようなボロい服だが、一応腰のベルトにこん棒をぶら下げているから戦士ってところか?

 

「なんだよ?お前も駆け出しか?」

 

「まあな。3日前に登録したばかりだ。でももう冒険者として活動してるから俺が先輩な。あ、俺の名前はタイシだ。この街のからさらに西にある田舎の出身だ。」

 

「カズキだ。まあ似たようなところの出身だ。ところでそんな装備で冒険してるのか?見たところまとまなのはこん棒くらいだが・・・」

 

「おうとも!!とは言ってもこの街の下水道でジャイアントラット退治だけどな。あいつらは弱いからこん棒だけでもなんとかなるもんだぜ。」

 

 ジャイアントラットか・・・たしかシアさんから名前だけ聞いたな。口ぶりからしてゴブリンと並ぶ最弱のモンスターっぽかったな。

 

「ジャイアントラットか・・・ちなみにどれくらいの大きさなんだ?」

 

「なんだよ?カズキはジャイアントラットも見たこと無いのか?まあいいや、あいつらはネズミにしてはデカいけど、立ち上がってもせいぜい膝の高さくらいか?あれでジャイアントなんて完全に名前負けしてるぜ。」

 

 つまり小型犬くらいの大きさか。確かにそれくらいならこん棒一つでもなんとかなりそうだ。タイシの言う通りでネズミにしては巨大だが、ジャイアントなんて大げさだな。元の世界で最大のネズミであるカピバラさんのほうがよっぽどジャイアントだ。

 

「とは言ったものの俺は魔術士だが杖すらないぞ?装備だって普通のボロい服だし。」

 

「そりゃそうだろ?駆け出しなんて皆そんなもんさ。むしろ最初から杖なんて持ってる奴は、それなりに裕福な奴だろ?だから装備を整える為の下積みとして、ジャイアントラットの討伐をするんだよ。」

 

「なるほど・・・だが危なくないのか?」

 

「そりゃあいつらだってモンスターの端くれだからな。普段は逃げ回ってても、追い詰められたら噛もうとしてくるさ。だが危険を冒すから冒険者だぜ?ジャイアントラットにビビるくらいなら、最初から冒険者なんてならない方が良い。」

 

「それもそうだな。」

 

「それにモンスターの討伐をしなけりゃどうやって稼ぐつもりだ?薬草や鉱石の採取なんて知識がなけりゃ出来ないし、護衛の仕事なんて信用の無い駆け出しに声がかかる事なんて無いぜ?配達なんかも一緒だな。だから討伐以外で残るのなんてドブさらいくらいだろ?」

 

 確かにせっかく冒険者になったのにドブさらいをするのは勘弁願いたい。それにタイシはジャイアントラット討伐の依頼を達成したことがあるならば、少なからず頼りになる。魔術士が一人で挑むよりはよっぽど良い。

 

「・・・そうだな。じゃあ俺もジャイアントラット討伐に行こう。宜しく頼む。」

 

「おう!!頼むぜ相棒!!」

 

 相棒か。そういうのも悪くないな。二人で握手を交わして即席のパーティーが出来上がると、タイシはさっそく受付の方へと向かった。

 

「ん?依頼書は取らないのか?」

 

「ん?ああ、俺は文字が読めないからな。受付の人に直接頼めば低ランクの依頼なら受けれるんだぜ。」

 

「そうか・・・」

 

「心配すんなって!!ジャイアントラットの討伐なんていつでも出てる依頼だし、報酬は討伐したジャイアントラットの尻尾を持ち帰って、ギルドに渡したら討伐数に応じて貰えるんだ。」

 

 そう言うとタイシは懐からナイフを取り出すと、こいつでスパッとな!!と言って笑う。ナイフは刃渡りも短く武器としては頼りないが、尻尾を斬るだけなら問題ないのだろう。 

 

「なるほどな。完全出来高制ってわけか。実力主義の冒険者らしいな。」

 

「まあな。それじゃさっそくいきますか!!」

 

―――――――――――――――――――――

 

 ギルドに併設されている道具屋で松明だけを購入してから、街の下水道の入口まで来た。街にはいくつか下水道の入口があるが、ここは冒険者ギルドから一番遠くの入口らしい。タイシ曰く「近場は獲物の取り合いになるから」との事だ。確かにわざわざ遠くの入口まで来ている奴は自分達だけみたいだ。

 

「じゃあ俺が先に行くからカズキは松明を持ってついて来てくれ。あと魔法での掩護も頼むぞ。」

 

「了解だ。」

 

 下水道の中は真っ暗なので、入口で松明をつけてから中に入る。灯りがなくなったら困るから、この松明が燃え尽きる前には帰らないとな。いざとなったらエンチャントファイヤーで明かりを確保出来るが、それは最後の手段だ。それにしてもやはり臭いな。ドブさらいで多少の耐性はついたと思っていたが、下水道はそれ以上の臭さだ。それに足元も気をつけておかないと、滑って下水道わきの通路から下水道の中に落ちてしまいそうだ。

 

「お?さっそくいやがったな。」

 

「ん?あれがジャイアントラットか・・・」

 

 確かに事前に聞いたとおりジャイアントと名がつくわりには大きくないな。なにかエサでも探しているのかこちらにはまだ気が付いていないみたいだ。暗闇で松明をつけているのに気が付かないって事は、かなり目が悪いのか?

 

「じゃあ見てろよ・・・せぇぇええい!!」

 

 じりじりとジャイアントラットに近づいたタイシがこん棒を振り上げて猛然と襲いかかる!!・・・・・・しかし振り下ろしたこん棒は通路を叩き、ジャイアントラットは奥へと脱兎の如く逃げ去ってしまった。

 

「・・・・・・ふぅ。逃したか。」

 

「逃げられたな。」

 

「あいつら逃げ足だけは速いからな。」

 

「襲う時に大声出したのがまずいんじゃないか?」

 

「いや、そうだけどさ・・・無言だとなんか気合入らなくてさ・・・」

 

「そっか・・・とりあえずつぎ探そうぜ。」

 

「おう!!次こそ任せとけ!!」

 

 タイシはそう言って笑顔を向けてくる。あまり頼りにはならないけれど、お互い駆け出しなんだからこんなものかな?一緒に少しずつ前に進めばいいか。




 美少女ハーレム目指してたはずなのに、男のパーティーも満更ではなさそう?

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