グレーで心地のいい微睡みの中にボクはいた。水面まで限りなく近いけど、まだ水に全身を抱かれてる。目覚めの波打ち際。
こういうとき、起きなきゃってわかってても毛布に潜り込んじゃうよね。人(とウマ娘)の性ってやつに違いない。ほら、今にも目覚ましが鳴るぞ〜……
「テイオーちゃーん」
んぁ?なんだこりゃ。
「テイオーちゃんってばー」
あれ?
「あーさーだーよー!!」
「うわぁ!?」
ガシガシ揺さぶられた反動と、目覚まし時計がマヤノと融合したようなイメージが見えたビックリで飛び起きた。
「おはよっ♪」
目をこすって焦点が定まると、両手を後ろに回して、やたら背筋よく直立するマヤノ。よかった、目覚まし時計のおばけじゃない……
「なんでマヤノが早起きなのさ……」
大抵、お寝坊さんなのはキミの方なんだけどな。
「今日がなんの日かわかる?」
「話が見えてこないんだけど……」
今日……今日、今この朝に至るまでの記憶を後ろ向きに再生してゆく。
寝る前に充電したスマホ、少なくなった歯磨き粉、寮の談話室であったパーティー……羨ましかった……楽しみなパーティー……
「あぁっ!」
急に頭の霧が晴れた。マヤノの目に写るボクは漫画みたいな大げさな笑顔で。
「そう」
マヤノもおんなじ笑顔だ。
「ハッピーバースデー、テイオーちゃん!」
「わぁ……ありがとう!」
*
「えへへ、でも朝一番じゃなくてもよかったんじゃない?」
鳴る前の目覚ましを止めながら、どうしても気になる疑問を口にした。
「うーん、でもお部屋を出る前にちゃんとお祝いしなかったら、いつやればいいかな?」
「そりゃ……」
そりゃいつでも、なんて言葉は途中で飲み込んだ。去年の事を思い出したからね。
カイチョーに、クラスと同期のみんな。あと後輩たちの巨大グループも。みんなにたっぷりと祝ってもらったものだから、マヤノが待つ部屋に戻る頃にはもう明日になりそうだったなぁ……嬉しいけど、大変だった思い出が蘇る。
「だから、今年はマヤが一番にお祝いしちゃおうって思って」
さっきからずっと背中に隠してたらしい、青いリボンが奇麗な小箱。
「はい、誕プレ!」
両手で丁寧に、滑空するようにそれが差し出される。
「テイオーちゃんに絶対似合うと思うんだ〜」
そう言われて我慢できる子ってたぶんいないよ。かくいうボクだって、もう開けようとしていた所だった。
すっとマヤノの指が現れてリボンを留めなければ、今この場で開いていたくらいには。
「え、なんで……?」
気分は一気にクリスマスの朝から吃驚仰天の晩……なんて言うのは、ちょっとオーバーかな。
「遅刻しちゃうでしょ?」
なるほど、そりゃたしかに。注意深く引き出しに小箱をしまって、特別な時間は朝のルーティーンに巻き取られていった。
中身を覗くのもダメなのかな?もし見たら、はしゃいで本当に遅刻しちゃうのかな?着替えながらも、心ここにあらず。だからといって、一限目は待ってくれるわけじゃない。
いそいそと寮の食堂まで足を運べば、すれ違う子みんなに誕生日を祝われる。やっぱり今日の主役って気分がいいや!
*
ウマ娘はどうも誕生日が春に集中してるみたいで、学園への道を歩いてると、友達グループでそれぞれの今日の主役を祝っているのが見える。
マヤノと並んで歩くボクにも、通り過ぎ際に祝福の言葉をかける子は少なくない。気分がいい、うん。
……でも同時に、気になって仕方がない。あの小箱。あの青いリボンを解いた先が。似合うってことはアクセサリー?それとも……
隣のマヤノに目を向ける。本人に中身を聞くなんて無粋なこと、できるわけないし。どんなに目線を投げかけたって、答えは当然帰ってこない。
「?」
なあに、と言いたげな顔のマヤノ。帰ってからのお楽しみってことかぁ……帰ってから。
もしかして、最初からそれが狙いだった?そうやってあのリボンが一日中気になって離れないように?
……考えすぎ、だよね。
その日一番最初に祝えるのは同室の特権!
ホーム画面の誕生日会話にテイマヤがなかったので自分で書くことにしました。
感想等ありましたらとても喜びます、マシュマロもありますのでもしよければ…! https://marshmallow-qa.com/geezeeliam