あ、マーベラスじゃん......おかえり......
『どうしたのネイチャ~?』って?見ればわかるでしょ、横になってんの......
なんでかって?......聞きたい?
ま~いいよ......今日のお昼の事なんだけどね......ゴホン。
* * *
この日のカフェテリアはそんなに混んでいるといった様子ではなく、アタシはゆっくりとご飯ぶ余裕があった。
お盆を持って席をチラチラ。するとこっちに手を振るトウカイテイオーの姿が。
断る理由もなく、テイオーの前に座り、他愛のない話が始まった。
「最近どんなトレーニングやってるの」とか「あの映画見た?」とかそんな所から始まって、なんやかんやで身の回りのウマ娘の話になったわけである。
そこでアタシが「うちのマーベラスは目覚まし時計になるんだよね~」とルームメイトを話題にした。
思えば、これが失敗だったな......
「え~なにそれ!」「朝になると『マーベラス!』って言って起きるの」「なるほど、そりゃ目覚ましだ」
するとテイオーは少し考えてからこんな事を言い出した。
「目覚まし時計じゃないけどさ、マヤノを抱き枕にするとよく寝れるんだよね」
え゛っ、今何て?
「へっ、へぇ抱き枕ね」
抱いて寝る!?一緒のベッドで!?
いや落ち着けアタシ......そういうのじゃないでしょうがまったく......
「うん、顔が向かい合ってるとやりづらいから、マヤノが位置を下げてボクの胸のあたりに頭が来る感じでね。そのままぎゅーってするんだ」
説明が始まったので話題をまったく変えてしまうのはできない。
なんだか聞いちゃいけない話を聞いているようで、変な緊張感が生まれる。
「いつもマヤノの方から来るからボクが壁側になる事が多いかな」
いやいや、ここは1つ茶化してみて様子を伺おう......
「へ、へぇ~、お熱いですなぁ2人とも......」
「もう!そういうんじゃないよ!」
「あはは、だよね~」
よかった......マヤノが知らない間に大人の階段上ってたらどうしようかと思った......
まだ中等部なんだし健全なアレに決まってるじゃん、と幾分の安心を得たところでマヤノ枕の説明は続いた。
「なんといってもマヤノはあったかいんだよ~、湯たんぽみたいに低温やけどの心配もないし」
「ほうほう、なかなかのスグレモノですなぁ」
「もう身も心もポカポカになれるんだ!」
腕を組んで頷きながらそう語るテイオーはなんだか通販番組を連想させて面白かった。
この瞬間にも『マヤノ枕であなたもグッスリ!』ってナレーションが入りそうだ。
「髪とか同じシャンプー使ってるのにね、自分のとはちょっと違う匂いがして不思議なんだ」
「あ~、他人の匂いは消せないってワケね」
「手触りも良くてね、撫でるのクセになっちゃうよ。その日あった嫌な事だってすぐ忘れちゃうし」
ひゃ~、こりゃまあずいぶん可愛がられちゃって......
......ここで『ん?』と思うわけじゃないですか。
「耳もぴょこぴょこ動くからこの前ふーって息吹きかけちゃってさ。ビクッ!ってなって面白いんだ......何度もやったらさすがに怒られちゃったけど」
待って、『そういうのじゃない』と言っておきながらイチャついてませんこのウマ娘ら?
アタシこれ彼女自慢されてる?
強烈な惚気の気配を察したアタシは話の方向性をズラす作戦に出た。
「あ、あのさ、そうやって抱きしめてると......ほら、腕痺れちゃったりとか、しない?」
さあどうなる......?
「う~ん、確かに痺れそうだよね......でも気になった事ないや」
回避できた......!?
「起きるとバラバラになってるから、寝相悪いんだろうねボクたち、あはは......」
よかった......そこんとこはちゃんとお子様だ......
「でもね、頭にちゅってするとぎゅーって抱き返してくるんだ。そうなった日は起きても抱き合ったままなんだ......えへへ」
えっ。
「起きても1人じゃないって実感とか......先に起きた時に見れる寝顔とか......本当にボクって幸せだなって思えるんだ......って、ネイチャ!?」
いやはや、最近の若い子は進んでるわ~......
「ごめんテイオー、ちょっと横になるわ......」
「ちょっとネイチャ!?何!?どうしたのさ!?」
* * *
まあ、そんなわけでアタシは自室のベッドまで運ばれてこうして横になってるってワケ。
なに?『アタシを抱き枕にする?』って?
......じゃ、お願い......むぎゅっ。