TSアクセラレータちゃんとはオレのこと   作:悪ィがこっから先は性転換だァ!!!!

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第2話 ヒーローの(頭脳の)異常性

 小萌からの大変有難い話を1時間程度に渡ってたっぷりと頂戴した後にオレが向かったのは自分の家ではなく、とある高校の男子寮。勿論、オレの性別は女であるし、男子寮になど住んではいない。そもそもオレは今までに参加してきた実験の報酬的な感じで金だけはたっぷりとあり、女子寮には住まずに自分で買ったマンションの部屋で住んでいる。

 

 じゃあ、何故にわざわざむさ苦しい男子寮などに来たのかというと、1人の阿呆の為である。

 

 目的地である部屋など何度も行った事がある為、迷うことなく足を進めていく。目的の部屋に辿り着いたらスクールバッグから合鍵を取り出して解錠し、ノックなど一切せずに扉を開けた。

 

 ……どうやら部屋の主はまだ帰っていないらしい。アイツはオレよりも先に帰ったはずであるし、そもそもオレを呼び出したのはアイツである。呼び出した本人が未だに自分の部屋にいないというのは中々にアレな状況であろう。

 

 どうせいつものように何かしらの不幸に見舞われているのだろうが。アイツはその右手で幸運すらも消してしまっているから仕方のない事だ。オレの方から出向いてやったというのに待たされるという状況は今までに幾度となくあった。普通なら怒りの感情とかを覚えるのかもしれないが、慣れてしまったオレは「あぁまたか」程度にしか思えなかった。

 

 最初に来た時は合鍵なんて持たされている訳もなく、外で1時間程待たされた時はぶち切れたが。

 

 幸いにもここの部屋には暇潰し出来る娯楽系の物は数多くある。漫画やゲーム等々。この部屋の主の成績の悪さの一因が垣間見えるのだが、こういう暇な時には本当に役に立つ。棚からテキトーな漫画を1冊取り出して、ベッドで寝転がりながら漫画を読む事にする。

 

 さて、右手に不幸という言葉を聞いてお分かりいただけたであろうが、この部屋の主はこの世界の主人公である上条当麻こと、デルタフォースのロリコン担当である。名前と称号が逆な気がするが、気のせいであろう。

 

 何故にオレが当麻の部屋に来ているのかというと、アイツの成績の悪さが原因である。不幸に愛され過ぎているが故に厄介事に巻き込まれ、遅刻欠席は当たり前。つまり、全く授業に追い付けないし、課題をする時間もないく、課題を解ける程の頭脳にも達していない。しかも、この部屋のゲーム機などが散らかっている惨状を見て分かる通りであるが、本人は勉強する気など皆無。

 

 結果は分かり切っているが、赤点のオンパレードと補習祭りが待っている訳である。補習も不幸が見事に働いて全く行けていない。

 

 このままでは進級すら危ぶまれるという事もあり、大量の追加課題が出されるのは当然と言える。だが、当麻1人でやったとしても、全く進まず、進んだとしても本人の頭がアレなので正解という現象は宇宙が突然消滅するぐらいには有り得ないものである。

 

 そこで素行不良成績優秀なオレに小萌からのSOSが舞い込んできたという事である。「上条ちゃんに勉強を教えてさえしてくれれば、素行不良には目を瞑りましょう」という脅迫付きで。

 

 オレもオレで忌々しい計画がある為に当麻に付きっきりで勉強を教えるのは難しいのでオレと当麻の予定があった時にこうして勉強会が開かれる訳だ。

 

 当麻は大体遅れてくるのだが。

 

 漫画が読み終わる頃になって、ようやく帰って来たらしい。自分で「今日の放課後、お願いします!」とか言ってきたくせに遅れてしまった事に相当焦っているのか慌ただしく扉が開かれた。靴を脱ぎ、狭く短い部屋の廊下をダッシュで走る音が聞こえる。

 

 廊下とリビングを繋ぐ扉が開かれ、そして……

 

「遅れてしまい、大変申し訳ありませんでしたぁぁああああ!」

 

 走り込んできた当麻は流れるように土下座を繰り出した。その見事な土下座には100点満点をくれてやりたい所だが、遅れてきたので200点差し引いて、マイナス100点満点という事にしておこう。

 

 額を床に擦り付け、一向に起き上がる気配を見せない当麻。やはり厄介事に巻き込まれたのか、服や体は大変汚れている。

 

 当麻の不幸体質は知っているし、常日頃から当麻の遅刻とは比較にならないぐらいにはドス黒い事をしている自覚はあるので怒る事は出来ない。ただまぁ、当麻の性格的に「気にしてないから顔上げろ」とか言っても、納得はしないだろう。

 

 なので、1つだけ罰を与える事にする。

 

 当麻の正面にしゃがみ込み、手刀を振り上げて、振り下ろした。俗に言うチョップである。能力を使う訳にもいかないので素の身体能力が貧弱の一言に尽きるオレのチョップなど大して痛くないだろう。

 

「これで許してやンから、さっさとその(きたね)ェ体をシャワー浴びて綺麗にしてこい。そしたら、スッカスカなオマエの脳ミソに授業内容を叩き込ンでやンよ。分かったらとっとと行けェ!」

 

「イェス・マム!」

 

 見事な土下座の後には、また見事な敬礼を披露した当麻はダッシュで風呂に飛び込んだ。

 

 当麻がシャワーを浴びている間にバッグから色々と取り出していく。取り出す物は学校の教科書、当麻の苦手分野を対策した自作プリントなどなど。

 

 当麻は持ち前の不幸で殆どの教科書を駄目にしている。飲み物が零れた先に教科書があったり、移動教室で忘れた時に教科書を盗られたり、そもそも教科書や財布などが入ったバッグを盗られたり。

 

 そういう事なのでオレの教科書を使わせてやっている。教科書の中身は一言一句、ページ数まで全て記憶済みなので無くても大して困らない。オレの教科書を当麻に預けておくと結果が目に見えているので基本的にはオレが持ち歩き、必要になったらその時だけ貸すという形を取っている。

 

 当麻の散々たる頭脳では学校の教科書を読んだとしても、理解する事が本当に難しい。なのでアイツでも何とかなるように教科書の内容を更に分かりやすく噛み砕いた説明文や、教科書に載っているものよりも難易度を下げた自作問題を印刷したものを毎回持って来ている。

 

 最初は教科書だけで何とかなるやろと思っていた。だが、オレは当麻の異常性を全く知らなかったのだと思い知らされた。

 

 伊能忠敬を知らない。黒船で来襲し、日本の開国を要求したのをフランシスコ・ザビエルと思っている。電気の英語を「electricity」ではなく、「Yamada」とか書く。 学園都市の住人が「学遠都市」なんて書く。当麻の頭脳を的確に超下方修正し、しょうがなくプリントを自作して今に至るという事になる。

 

 Yamadaをどう解釈したら電気になるのか本当に分からない。何処からどう見ても人名にしか見えない。

 

 まぁ、それでも流石は学園都市の住人というだけもあり、理系に関してはまだ希望が見えるのが救いだろうか。英語、社会、国語の文系3教科に関しては希望ではなく、絶望しか見えないのだが。

 

 当麻の頭脳にある種の恐怖を抱いていると部屋着に着替えた当麻が上がってきた。机の上に広げられた教科書やプリントを視界に入れた途端に顔に引き攣った笑みを浮かべたが、逃亡という選択肢を取らずに素直に座る辺りを見るに遅れてきた事に申し訳なさを感じているようであった。

 

 今日も実験の予定が入っているが、それは日が落ちてからとなっている。要するに時間はたっぷりとあるという事だ。

 

「そンじゃ復習からやってくから、死ぬ気でやれよ。教えた所が出来てなかったなンて事があったら愉快なオブジェにしてやるよォ」

 

「……お、お手柔らかにお願いします」

 

 当麻がそんな事を(のたま)ってきたので笑顔を浮かべて、とある言葉を返してやった。

 

「却下だ」

 

 オレの言葉を聞いた当麻が顔から血の気を引かせたのは面白かったとだけ言っておく。

 

 

 ────────────────────

 

 

「まァ、今日はこンなもンでイイだろ」

 

 開いていた教科書を閉じて、勉強会のお開きを宣言した。その途端、当麻は握っていたペンを手放し、机に突っ伏した。オレの幻覚か、当麻の口から顔が描かれた青白い塊()が飛び出ているように見えた。

 

 部屋の壁に飾られている時計を見てみると、実験まであと1時間程度という時間になっていた。実験場所はここからそう遠くない位置にあるし……

 

 そうだな、それなりに頑張った当麻に褒美の1つや2つぐらいくれてやるか。

 

 未だに机に突っ伏している当麻を無視して、キッチンに向かう。

 

 冷蔵庫の扉を開けるとけっこうな量の食材や調味料などが揃っていた。昨日はスーパーの特売日とかだったのだろうか。冷蔵庫の中身に目を向けながら、当麻に問いかける。

 

「冷蔵庫の中身、使ってもイイに決まってるよな?」

 

「別に使ってもいいけど、どうしてだ?」

 

 了承を貰ったので冷蔵庫から肉の細切れ、人参、白滝、玉ねぎ、ジャガイモと醤油などの調味料など出していきながら、当麻の疑問に答えてやった。

 

「あンなレベルの低い内容ぐらいで疲れちまった情けねェオマエの代わりにオレが料理してやるってだけだ」

 

「……は?」

 

 オレが料理してやると言ったら、呆けたような声を出しやがった。食材に向けていた目を呆けた表情をしている当麻に向け、睨みつけてやる。

 

「あン? まさか文句でもあるとか言うンじゃねェだろォなァ? アァ?」

 

 そう言ってやると、当麻は肩を跳ねさせた。

 

「文句なんて1ミリもないです、はい! 俺なんかの為に料理作ってくれてありがとうございます! 神様 仏様 鈴科様 万歳!」

 

「うるせェ、黙ってろ」

 

 阿呆な事を言い始めて喧しい当麻を睨みつけて黙らせる。だが、何をとち狂ったのか、当麻は携帯を弄る訳でもなく、漫画でも読むとかいう訳でもなく、料理を作っているオレの方をぼうっと眺めている。

 

 当麻は料理しているオレの方をずっと眺めているだけなので実害は全くない。無いのだが、眺められ続けるというのもそれはそれで恥ずかしい。

 

「……こっち見ンじゃねェよ! 気が散ンだろうが! オマエは復習でもしてその空っぽな頭に教科書の内容を詰め込ンどけ!」

 

 恥ずかしいのでこんな感じに怒鳴るのも仕方ないはずだ。その気恥ずかしさもあってか、オレの眼力がいつもの数倍は強かったのか、当麻は「はいぃぃぃい!」と情けない声を上げて、教科書を開いた。

 

 だが、それでも自分の家で自分ではない誰かがキッチンに立って料理をしているという光景が新鮮なのか、教科書を見つつもチラチラとオレの方を見ている。チラチラ見るというのとじっと見るというのには大した差異はなく、落ち着かない。

 

 当麻の方をギラリと睨みつけても、アイツは明後日の方向を向いて、聞くに堪えない下手くそな口笛を吹いている。果たして、それで誤魔化しているつもりなのだろうか。まぁ、アイツは誤魔化せているとでも思っているのだろう。バカだし。腹いせにテキトーに色々な調味料でも混ぜて不味くしてやろうかとも考えたが、それはやめた。

 

 バカな当麻に「鈴科百合音は料理が下手である」なんて思われた日には黒い翼を生やして、当麻を宇宙の燃えカスにしてしまうからだ。

 

 バレバレなチラ見をしてくる当麻にオレも何かを言う事を諦めて、料理に集中する。

 

 

 ────────────────────

 

 

 料理が出来たのでテーブルに料理を持った皿を並べていく。肉じゃが、サラダ、ご飯、味噌汁。至って平凡な料理を1人分だけ机に置いた。料理をじろじろと眺めていた当麻への罰として、当麻の分は作らずに目の前で料理を食べてやろうかとも思ったが、オレは優しいのでそんな事はしない。

 

 その前に今のオレにそんな時間など無い。この後すぐに予定が入っているからだ。なので当麻1人分だけの料理を出しているというこの状況に繋がる訳になる。

 

 そんで当麻はオレが作ってやった料理を食べ始めたのだが、肉じゃがを一口だけ食べたら顔を俯かせ、肩を震わせている。まさか料理で何かやらかしたのかと思ったら……

 

「う、う、うまあぁぁあああい!!」

 

 ……ややこしい奴。何かやらかしたと思ったら、単純に美味さに打ち震えていたらしい。まぁ、美味そうにしているのならそれはそれで良しとしよう。オレは予定が差し迫っているのでここいらでお暇するとしよう。

 

「そンじゃァ、オレは予定があるンでな。そろそろ行かせてもらうぜ」

 

 傍らに置いていたスクールバッグを持って立ち上がる。

 

「あぁ、もうこんな時間か。それじゃあ家まで送ってやるよ」

 

 家を出ようとするオレを見て、当麻は箸を置いてオレを送ろうとする。普通の女子高生が相手だったら、その判断は間違いないだろうが、こちとら学園都市第1位である。正義のヒーローである当麻が心配するべきなのはオレではなく、オレを襲おうとする者達であろう。

 

 そういう事で断ろうとしたのだが。

 

「いらねェ」

「いや送る」

 

 こんなやり取りを何度も繰り返した。確かにその頑固さと諦めの悪さは間違いなく主人公の素質であろうが、それを発揮される側になると面倒な事この上ない。良く言えば、一度決めた事は曲げず、諦めない。悪く言えば、直情的で頭が固い。

 

「はァ、しょうがねェなァ」

 

 オレのその言葉に当麻は「ようやく分かってくれたか」的な顔を見せたが、それはただの勘違いである。まぁ、確かに間違っていない。オレは折れたのだ。平和的に当麻の家を出るという事を。

 

 平和的に折れたという事は要するに暴力的に家を出るという事だ。これ以上の押し問答を広げたとしても進展がない事は明白なのだ。故に仕方なく強硬手段に出る事にした。

 

 オレの能力である一方通行(アクセラレータ)は嘘偽りなく、大体の事は何でも出来る。己に向けられた攻撃を相手に返したり、攻撃力を何倍にも引き上げたり。

 

 他にも色々と出来る事は多い。

 

 例えば、こんな風に。人差し指だけを突き出して、当麻の額に触れさせた。当麻は触れた異能の全てを打ち消す事が可能であり、触れていれば能力を発動する事も出来なくなる。だが、当麻のその能力は右手にのみしか発動できない。こんな風に当麻の右手に触れてさえいなければ、当麻に触れ、能力を発動させる事だって可能である。

 

「じゃァな、ヒーロー。また明日だ」

 

 さよならの言葉だけを告げて、能力を発動させた。操作するのは当麻の体内に流れている生体電気。それをちょっとだけ弄ってしまえば、あら不思議。気絶した男子高校生の出来上がりである。流石に床に寝かせたまま放置というのはオレの中に残った1.0×10(ヨクト)-24程度の良心が痛む。

 

 作った料理はラップをして、冷蔵庫へ放り込み、当麻はベッドに放り投げておいた。深夜帯にこんな何も無さそうな部屋に忍び込むような阿呆なコソ泥はいないと信じたいが、生憎と当麻の不運レベルは軽く限界突破している。阿呆なコソ泥が入り込む可能性は0ではない。

 

 持っていた合鍵でしっかりと戸締りをして、予定のある場所に向かう。

 

 こんな深夜に向かう行先は1つしかない。きっと今日見る悪夢は数千体の呪詛を吐く女子中学生が2体程度は増える事だろう。




感想欄にあったTSアクセラちゃんの容姿は次回まで持ち越しになりました

このアクセラちゃんが自分の容姿を気にする場面が全く思い付かなかったので仕方ないという事にしておいてください、すみませんでした。でも、絶対に次の話で書きますから許してくだせぇ……
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