歯車と眠れ   作:MSX

19 / 32
段ボールを被ったスネークを書きたい(願望)


第18話 海鳴狂騒曲

「エルズス、あれを使うぞ!」

 

そう言ってスネークの指差した先には囚人護送用の車があった。

 

内心ほくそ笑んだ。

 

しめた。渡りに船とはこの事だ。運がいい。

 

「イグニッションキーは!?」

 

「持っていない!!」

 

運がない。

 

と言いかけたエルズスの視界に単車が映る。

 

二台、数もちょうどいい。

 

「スネーク、キーがついたままだ!!」

 

指を指すと、スネークも瞬時ぬ理解を示し、乗り込んだ。

 

何故、キーが付いたままなのかはハンドルにくっついていた紙の内容を読めば分かった。

 

「『サービス残業、感謝を求む』か」

 

誰かが運んで来たのだろう。ご苦労なことだ。

 

最も、盗まれるので徒労になるのだが。

 

«!?、レーダーに反応!敵性メタルギア、急に現れました!なおもこちらに来ています!»

 

クロノが無線で状況を知らせ、スネークがそれに答える。

 

「ステルス迷彩か!!」

 

流石スネーク、超速理解だな。

 

とはいえ、ふざけている場合ではない。

 

キーを回し、エンジンに火を灯す。なかなかいいバイクだ。

 

「取りあえずここから離れるッスよスネーク!!」

 

唸りを上げて

 

「あれを破壊しなければ終わりだ!飛ばせっ」

 

二台のオートバイが夜の街に咆哮して消えた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

双頭の巨人がエルズス達のいた施設に向かって巨体を動かす。その肩(のような部分)には科学者、横には時代錯誤な剣士が乗っていた。

 

「ふはははは!、人がゴミだ!爽快だぁぁぁぁぁ!!」

 

(どうしよう、斬り殺したほうがいいのかな)

 

うんざりとした顔でスカリエッティを見る。気持ち20歳は老けた気がする。

 

大体、スカリエッティが乗っていくと言った時に半殺しにしてでも止めておくべきだった。

 

父、ソリダスも「いいのでは?」なんて興味0の適当な言葉でこの馬鹿を扇動するのはやめて欲しい。とばっちりを受けるのは私なんだから勘弁してくれ。

 

「見ろ、震電!あそこにいる無様なサンタクロースを!夢も希望もないな!!」

 

「え、ええ。そうですね」

 

何故にサンタ?この海鳴市には変人が多いのだろうか。

 

それにしても、スカリエッティは変わった。勿論、悪い意味でだ。

 

初めてあった時はマッドな部分を除けば、The科学者といった感じだった。今はTheムスカだ。

 

どこから道を踏み外したんだっけ・・・・・あっ、メタルギアの情報を与えた時から様子がおかしくなったのか。

 

彼からしてみれば異世界の二足歩行兵器の情報は猫にマタタビを与えるのと同じだ。

 

「ははははははははは、逃げ回れ、逃げ回れ!この『メタルギアアクレストデルフレイク以下略』から逃げ回れ!」

 

帰ろう。あとラノベのタイトル並みにメタルギアの名前が長い。無性に腹がたつ。

 

「ところでスカリエッティ、そろそろ私は父さ、ソリダスのところに帰らなければなりません。申し訳ありませんが、ここから先は貴方一人でやってもらいます」

 

危うく父さんというところだった。危ない危ない。常に緊張感を持たねば。

 

「そうか、父さんに宜しくな!!」

 

「はぅッ!?」

 

ううう・・・・恥ずかしい。

 

羞恥で顔が赤く染まる。それをみたスカリエッティがニヤリと笑みを見せた。

 

「いや、恥じることはない震電。学校で先生のことを『母さん』と呼ぶのと大差ない」

 

斬り殺してやろうかスカリエッティ。

 

殺意を堪えるのがこんなにも苦痛だとは。

 

(いけないいけない、私が大人な対応をしなければ)

 

逆説的に言えば、スカリエッティは餓鬼。はっきり分かるな。

 

「ゴホン。いいですかスカリエッティ、貴方の任務はあくまでも陽動です。余計な行動は慎んで下さい」

 

恥ずかしさを堪えながらスカリエッティに指示をだす。脳内BGMは『初めてのお使い』だ。

 

「善処するさ!」

 

ほほう。

 

「従わなかった場合、このメタルギアは爆発四散します。いいですね」

 

「善処します」

 

いい返事だ。

 

いつもこれぐらい即答ならありがたいのだが。

 

「とにかく、先ほどもいった通り、あなたは彼らを陽動して下さい。見つかれば、彼らのほうから追いかけて来るのでそのまま採掘施設まで陽動、そこで戦闘をおこなって下さい。こちらとしても人口密集地の戦闘は好ましくありません」

 

「陽動方法は任せてくれないか」

 

「何かいい方法が?」

 

眼下の逃げ惑う市民を見てスカリエッティが厭らしく笑う。

 

「選り取りみどりではないか」

 

(これはろくでもない事考えているな。絶対)

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

今は無人となった街道を二つの影が高速で移動している。

 

夜の灯りを浴びながら、幹線道路を通り抜けていった。

 

「クロノッ、あれはどこに向かってる!!」

 

アスファルトを滑り、走る動きで大気を切る。

 

«スネーク達がいた施設に・・・・・・いや、変更!動きが変わりました!»

 

「だからどこに!?」

 

«これは・・・・・遠ざかっている?»

 

「なんだって!?」

 

«だから、遠ざかっているんです!!»

 

クソッ、動きが読まれたか。予想以上に速い。

 

「方向転進、先行してメタルギアを追跡する」

 

あれを放っておけば、街に甚大な被害が出る。そんなことは絶対にさせない。

 

«衛星写真、送ります!今から5分前の映像です!»

 

ARに投影。これは・・・・・・・・

 

「人質って訳かよスカリエッティ・・・・・・!」

 

だが、距離は近い。急げばなんとか間に合う。

 

アクセルを勢いよく回す。今夜は長くなりそうだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

今は無人となった街道をメタルギアが走り抜けていく。

 

スカリエッティが駆り、AIが動かしていた。

 

速い。

 

動かなくなった車を蹴散らしていき、突き抜けるように通り過ぎ、彼は採掘施設に急ぐ。

 

メタルギアの腰部他目的クローアームが繊細かつ慎重に人質の女性を掴んでいた。

 

目を伏せ、動かなくなった彼女をスカリエッティが見つめた。彼の頬に引っ掻き傷が出来ていた。

 

「こう見えて私は紳士だ。故に丁重に扱ったつもりなのだが、随分抵抗されたものだ」

 

迷ったが、やはりクローアームよりも自分自身の手で乗せるべきだったか。

 

「う~ん、だがなぁ・・・・・・・」

 

あの時、回りには邪魔者が多かった。特にあの特別警察というのは無駄だと解っているだろうによくもまぁ、あんな抵抗をするものだ。時間稼ぎの積もりか?理解が出来ない。

 

最も、全員メタルギアで排除したが。

 

と、急にメタルギアの砲身の一つが稼働。カノン砲光が夜の街に突き抜けた。光芒は空を照らし、遥か後方に向かっていく。

 

同時にアラーム。緊急事態か。

 

着弾と同時に背後から爆発音と強風が一つとなって襲ってきた。ただの強風ではない。息苦しさを感じさせるような圧力を持った風だ。

 

その風を背に受け、メタルギアは加速する。振動が大きくなってきた。

 

「どうしたアクセルト!?」

 

«敵接近»

 

聞こえた電子音声にスカリエッティは意識を強く保つ。

 

振り向いた視界で確認したのは背後の動き。

 

砲撃が直撃し、アスファルトや車が吹き飛んだ幹線道路はもはや残骸と炎、倒壊寸前のビルマンションがあるだけだ。

 

何もない。その筈だった。

 

だが、爆煙と破片群を通り抜け、尾を引いてメタルギアに来るものがある。

 

二台のオートバイだ。

 

AIがもう一撃放つ。それをオートバイが体勢を崩し、カーブをすることでギリギリ避けた。

 

二度目の着弾と同じタイミングで二台のオートバイが前方の車へと跳び移り、爆風で加速と跳躍をした。

 

爆風を背に更に接近する二台。その反応速度は神がかっている。

 

(さらに接近したか!)

 

下手な攻撃は相手にアドバンテージを与える。スカリエッティはAIに攻撃停止を命じた。

 

震電の情報通りだ。

 

「-蛇と例のプレイヤーか!」

 

相手に対する危険度を跳ね上げた。

 

AIの解析が終了。結果が出る。

 

«敵は機動性、高速性有り。両者とも対人レベルの質量兵器を所持。骨格、X線スキャン、後部映像の解析結果、戦闘経験、戦闘知識、敵対意志有りと判断»

 

「脅威度は!?」

 

«脅威度A、即時、戦闘行動が必要です»

 

このメタルギアはAIを特に強化している。天才科学者特別製のAI、敵に対する対策は厳然たる判断と正確無比の計算の下に下される。そして操っているのはスカリエッティだ。

 

情報を元に戦略を組む。

 

(機動力と高速性は使用できないところに誘い込めばいい。相手が追いかけて来ているならば、それを利用しない手はない)

 

彼らの持っている質量兵器などたかが知れている。なによりもメタルギアの火力をもってすれば、ものの数分で戦闘は終わる。敵対意志など、人質を使えばどうとでも簡単に逸らせる。

 

(となると、やはり戦闘経験と知識の面でこちらが不利、か)

 

前方、道路の右側に巨大な建物群がある。『海鳴工業高校』と書かれた正面入り口を持つ巨大施設だ。

 

スカリエッティは笑う。

 

ここだ。ここしかない。

 

「-ここで決着をつけよう!!」

 

メタルギアは施設の正面に飛び込んだ。

 

スカリエッティは笑みを強くし、高速で迫ってくる二台のオートバイに視線を交わす。

 

風を受け、急なコーナリングに後輪を滑らせながら追走する二台。スカリエッティは勝利のために叫ぶ。

 

「まずはイレギュラーでもあるプレイヤーから脱落してもらおうか!」

 

次の瞬間、バトルフィールドは幹線道路から高校へと変わった。

 

変化は一瞬で、スカリエッティの望む方へと。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

戦場は絶えず変化する。

 

無人の高校の敷地内に入れば、最初に直線距離にして約50メートルの道路。それは校庭に突き当たって左への直角のコーナーとなる。

 

そこを行くのは双頭の巨人、そしてスカリエッティだ。

 

彼らから数十メートル遅れ、正門にエルズスとスネークのオートバイが来ていた。

 

表通りから強引なコーナリングで来るスネーク達に対して、前を行くスカリエッティが口を開く。

 

「ならば使わせて貰おう、ゲームだからできる遊技を!」

 

エルズスは驚愕の念でスカリエッティを見つめる。

 

こいつ、今、何つった?

 

「注意してくれ、何か来る!!」

 

そして、スカリエッティが叫ぶ。

 

「理解し染まれプレイヤー!」

 

次の瞬間、応じるように世界が変わった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

スネークは確かな違和感を感じていた。

 

一瞬で意識を働かせるが五感に異常を感じない。

 

明確な疑問、違和感。

 

だが、上手く表現できないでいた。

 

これは・・・・・・・

 

「エルズス、何かが変だ」

 

「同感ッス。スカリエッティが何かしたらしいッスね」

 

その顔は警戒心に満ちていた。

 

やはりエルズスは隠している。重要な何かを。

 

独房で話していた『ノイズ』との関係も気になった。聞こうにも聞けなかったが、もしや、今のスカリエッティの言ったことはそれに関係するのかもしれない。

 

と、一つの異変に気づいた。

 

目に見える風景がどこか先ほどまでと微妙に違う。確かに変化している。

 

ついさっきまで俺達はメタルギアを追って、正門前にまで近づいていた。しかし、これは

 

「距離が伸びているのか!」

 

スネークの問をエルズスの答えが掻き消した。

 

「違うッ、俺達が小さくなっているッス!!」

 

「!?」

 

そして疑問は氷解した。確かに正門が大きく、メタルギア並みに大きくなっていた。

 

そして、

 

「俺達だけではなく、メタルギアまで・・・・・・!」

 

小さくなっていた。少なくとも施設内部に入れるぐらいに。

 

「ってスネーク、前、前!」

 

左への90度コーナー、正面は校庭。

 

右にいたエルズスが左へ被る動きでオートバイを傾けた。

 

「スネークも早くコーナー切ってくれ!こっちが曲がれないッス!」

 

まずい、このままだとエルズスの進路を塞ぐだけではない、校庭に飛び込んでしまう。

 

道路と校庭には縁石という明確な境界線がある。食らって吹っ飛べば、どうなるかは想像に難くない。

 

スネークは落ち着いて対処した。手足を固定すると同時に一気に左へと身を傾けた。

 

抵抗するまでもなく、横投げされるように身を左へ。

 

走る速度の中、大気の流れが変わった。

 

オートバイが傾き、左コーナーへの突入姿勢を取る。

 

一連のスネークの動きはモーターライダー顔負けだ。

 

が、足りない。このままでは右からアウトコースを回ってくるエルズスに右側面から激突する。

 

しかし忘れてもらっては困る。スネークの判断力の高さと瞬間的対応力の高さを。

 

息を吸い、全身を下に縮めて後ろに押し出した。

 

後ろに重心移動、それは後輪側への荷重となり、摩擦限界を上回った荷重は後輪を空転させる。

 

結果、スネークは横滑りしてコーナリング角度は鋭角となった。

 

対し、右から来ていたエルズスがアクセルを捻った。

 

そのまま強引なコーナリングで前へ出る。

 

横倒し姿勢でドリフトするスネークと校庭の縁石の間、わずか1メートルほどのあるかないかの隙間にエルズスは飛び込んできた。

 

「先行するッス!」

 

抜けた。

 

そしてスネークの駆るオートバイにもグリップが戻ってきている。

 

オートバイの鼻先はコーナーの脱出方向を向いている。だから、

 

「行けぇッ!!」

 

アクセルを捻れば、排気音がオートバイの震えたを止め、己を前に吹き飛ばす。

 

校庭と縁石の境界となる上を一気に走り出した。

 

あらんかぎり疾走。

 

抉るような弧を描いて車体は戻った。

 

前方を行くバイク、エルズスとの距離は数メートル空いたが姿勢は直った。

 

「ギリギリすぎじゃないッスかァ?スネーク!」

 

エルズスの挑発にスネークは苦笑する。

 

心配してくれているのだろう。

 

「ああ、だが完璧だろう?」

 

スネークの皮肉を余裕と思ったかエルズスが笑う。

 

「腹立たしいけどその通りッスよ!」

 

前方、約20メートルの位置にスカリエッティがいる。このまま行けば校舎を抜けて、砂利道通る学生寮の群の中だ。

 

「エルズス、ここから先は俺達のターンだ!奴に好き勝手させるな!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

エルズスは前を見た。アクセルを捻る手に力がこもる。

 

スネークのことは何も言うまい。

 

言うなれば、無言の肯定とかいうやつだ。

 

・・・・・・・いや、違う。こういう時はこう言うものだ。

 

「任せとけ、相棒!!」

 

スネークの表情はここからでは見えない。だがそれでいい。

 

 

 

 

 

 

二人と歯車と海鳴を巻き込む狂騒曲は終わらない。

 

正確には、逃亡者だが。

 

 

 

 

 

 




今回の話、もう分かっていると思いますが、MGS3とMGS4のバイクチェイスに刺激されて書きました。

バイクについては無知で書いている時、「あれ、バイクで出来んのこれ」という描写を書いてしまいましたが、そこは小説ということで暖かい目で見てやって下さい。

次回もスカリエッティVSエルズス達、バイクチェイス戦になりますが、いろいろと考えているので、お待ちいただければと。

次回に続きます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。