人質がいないと解れば躊躇はいらない。
しかしスカリエッティはそれを見越してか、退きながら急ぎはせずに断続的に攻撃を加えてきた。
ひどく単調で簡単なもの。スカリエッティの狙いはなんだ。
いや、解っている。彼はクロノの言う通り、何処かに誘導しているのだ。
(採掘施設か・・・・・)
何故そのような場所に誘導するか、理由は解らない。
「エルズス!」
考えが纏まらず、曖昧なままに前方に意識を向け、慌てて行動に移る。
前方、エルズスの通るであろうコンクリートが消えて落とし穴が生まれていた。
スカリエッティの魔法で地面の一部を縮小したのだろう。
このままでは落とし穴に嵌まって終わりだ。
「甘い!ツンデレ並みにな!」
そう言うとエルズスはアクセルを調節し、重心を上に傾け-
「ヨイショー!」
オートバイごと跳んだ。が、
「トラップ発動!奈落の落とし穴!」
どこかのカードゲームで聞いたことがあるような言葉を嬉々としながらスカリエッティは言う。
同時にオートバイの着地地点の地面がスライドした。
無論そう見えるだけで種明かしはスカリエッティの魔法。所詮、錯覚に過ぎない。
「姑息な手を・・・」
高周波ブレードで鉄骨を斬りながら。
「くっ、そうはさせるか」
「そうはさせん!」
スネークは手に持った(?)空気砲(エルズス命名)を撃ちまくる。
オートバイを操縦しながら撃ったため、さすがに命中はしないがそれで充分だ。
スネークが撃った空気弾の1つが看板を弾き、穴を塞ぐ。
そこに斬り落とした鉄骨が突き刺さり固定。流れるようにエルズスのオートバイが着地するが、突き刺した鉄骨のため、重さに耐えきれず落ちることもない。
最初からこれが狙いだ。
しかし、スカリエッティも予想していたのか、驚くことなく一瞥しただけに終わった。
埒が開かない。
スカリエッティは冷静にメタルギアを動かし、クレーンゲームに使われるようなアームユニットを生かし、得意の魔法を使用される。
「学園ともなるといろいろな物が埋まっているな」
アームが掴むのは水道管。中庭の砂利道をめくり上げ、鎌首をもたげるかの如く直径20センチほどある鉄管を持ち上げた。
「私からの餞別だ。ー遠慮せず食らいたまえ」
・・・・・・冗談だろ?
鉄管がさらに露出し、アームに握り潰されながらも晒していく。
その長さ、ゆうに30メートルは超えているだろう。
己が身を鞭のようにしならせる。それも横向きに。
「鉄管を撃ち抜けッ、スネーク!」
言われるまでもなく行動に移っていた。
空気砲を構えたと思ったら、既に撃った後だった。
息もつかせない圧縮空気の弾丸は2つのターゲットに吸い込まれるように螺旋を刻む。
1つは鉄管、もう1つはスカリエッティだ。
(上手い、さすがスネーク)
今、メタルギアのアームは鉄管を掴んでおり、防御には使えない。鉄管を捨てれば防御が出来るが、そうなれば攻撃は出来ない。かと言って攻撃に転じればスカリエッティに直撃するだけだ。
だが、忘れてはならない。スカリエッティには質量変化の魔法がある。空気の弾など縮小すればいい。
そこでスネークは始めにスカリエッティを撃った。間髪容れずに鉄管に撃つ。
それによってどちらかが確実に直撃するようにしたというわけだ。
自分を庇えば空気弾がメタルギアの駆動系に直撃し、鉄管も手放してしまう。かといってそのままにすれば空気弾が鉄管を弾き、吹き飛ばす。
どちらを選んでもスカリエッティは後手に回らざる終えなくなった。その隙を逃す気はない。そこで仕留める。
少なくとも、スカリエッティは攻撃出来ない。
そう、思っていた。
故に次のメタルギアの動きは二人にとって完全に誤算だった。
スカリエッティは鉄管をなんら迷いなく捨てた。
そうすることでスカリエッティは自分の身を守った。空気弾が直撃するもアームに阻まれ無傷。
ここまでは予想通り。だが、
「え?」
異音とともにいつの間にか、鉄管が目の前に来ていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・・・・・いったいなにがどうなっている!
スカリエッティは確かに鉄管を捨てた。そうしなければ自分を守れないから。
しかし、今、二人の眼前には鉄管が横に回転しながら回転してきている。このままでは頭が吹き飛ぶだろう。
飛んでき来た鉄管の先端は高速に、風を切る音が響く。
「スネーク!もう一回撃ってくれ!」
間に合わない。無理だ。
「避けろエルズス!」
高速で吹っ飛んでくる鉄管の横薙ぎ、それを回避する方向はたった1つだ。
下。
「・・・・・・・ッ!」
オートバイに倒れて回避した二人の後頭部を高速の横薙ぎが通りすぎた。
後方、廊下の壁に直撃し、轟音と粉塵を巻き上げたところでスネークがあることを閃いた。
「そういうことか、スカリエッティ!!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
どう言うことなのスネークさん!説明を、説明をプリーズ!
「簡単だ。あいつはお得意の魔法で鉄管を小さくしてアームで防御すると同時に動かした反動で小さくした鉄管を投げたんだ。そうして身を守ったあと、投げた鉄管の質量を元に戻したってことだ」
「纏まった説明ありがとう!あと心を当たり前のように読むなッス!」
今更ながら俺のプライバシーってあるのだろうか。いやない(反語)。
今度はスカリエッティに語りかける。こ、これはあれだよ、決して現実逃避じゃないよ、HAHAHA。
「今更だけど魔法とか反則だろスカリエッティ!そんなんで勝って嬉しいのか?」
「うん!」
畜生、コイツ勝利のためなら手段を選ばないタイプだ。
「そしてこれでフィナーレだ」
スカリエッティの笑みとともに左右の鉄管がその姿を現した。
土がめくれ、砂利が跳ね、コンクリートが割れて水道管が表出する。今度は数十メートルという範囲ではなく、
「え、ちょっ、おまっ!」
エルズスは見た。自分達の周囲、大地はおろか、学校や学生寮や隣接する体育館などが表面全てから血管のような影が勢いよく噴いたのを。
建造物と大地が張り裂ける音が響き、広大な範囲で鉄の血管が空に立ち上がった。
周囲の建造物と地表から、水道管の連鎖が跳ね上がる。
その鉄管の束がすることはただ1つ。空に鎌首をもたげながら、それぞれの基部となるものを天に揚げることだ。そして水道管の基部にあるものは、
「給水タンク・・・・・・?」
「その通り、物によっては数十トンの水の貯蔵庫だ」
頭上100メートルほどの高さに影が出来た。
浮かぶ影は編み目に張られた鉄管と、それらが揚げた水を包んだ鉄の塊の群だ。それぞれの大きさは違うが、問題はその数えきれない数にある。
同じ動きで空を見上げたスネークは、攻撃の前奏とでもいうべき動きを見る。
空を編んだ水道管の一部が、大きな螺旋を組んで自分達の周囲に落ちたのだ。
落下する。
「「!?」」
金属音が螺旋の重なった数だけ鳴り響く。
その後には、もはや自分達の周り半径20メートルを、水道管の編んだ鉄壁が包んでいる。
自分達を中心に中庭を囲むようような水道管の檻。壁の高さは約3メートル、水道管同士の隙間はあるものの、身体が通り抜けれるほどではない。
(やべぇぞこいつは・・・!)
「檻!?」
「私特製の破砕場だ。檻の中で鉄塊と100トンを超える水に押し潰されて死ぬがいい」
言葉が飛んだ。
「落ちて消えろイレギュラー!」
その時、エルズスの胸に去来した思いはただ1つ。
(ああ、死んだわこれ)
「これを使えエルズス!」
「!」
直後、貯水タンクが地面に激突した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
発生した事実は簡単なものだ。
スカリエッティの魔法でサイズを小さくした水道管と逆に大きくした水道管でお粗末だが、簡易的な檻を作り、その中に貯水タンクを連続して落としたという、ただそれだけのことだ。
もっとも、それを可能にするにはスカリエッティの魔法だけでは足りない。そこで特製のメタルギアの能力の出番だ。
(あの男・・・・ソリダスには感謝せねばな)
メタルギアの設計図を貰えなければ、そもそもこのような芸当は出来なかっただろう。
「・・・・・流石に死んだか」
檻を作る水道管の隙間から水が勢いよく噴き出した。
飛沫が周りの建物を濡らし、霧を生んだ。
プレイヤーは死に、ゲームオーバー。これで終わりだ。現実にリセットはない。
「いや、確かこれもゲームだったか」
なんと他愛ないことか。これでは、正史の方がまだ良かったのかもしれない。
「悪魔の取引・・・・・ゲーム、いや、この世界の『バグ』による終わり・・・・か」
今にしてみればどうでもよくなってきた。
ただ
ただ、欲をいうならば
「週刊誌の主人公のようになりたかったな」
悪魔に願い、ソリダス達に出会い。こうして戦い、勝った。
これでいいのだろう。夢は叶った。正史とは違い、卑怯な事をしていない。正々堂々、2対1で勝ったのだ。
誇るべきだろう。強敵に勝ったことを。
「ならばこの虚無感はなんなんだろうな」
自分でもよくわからない。分からないが、
「私も終わりか」
もうすぐ管理局の連中が来る。そうなれば勝ち目はない。
所詮は一夜の夢。これで終幕だ。
彼は自らにかけた魔法を解こうとして、手を掲げた。
同時、スカリエッティは音を聞いた。
水が鉄檻から高速で飛沫き、足下を水が流れる中、異質な音が一つ響く。
足音だった。
大きな一歩を踏み、高い足場に着地した足音だ。
「ー」
いる。誰かが砕かれた貯水タンクの上に。
霧の向こう。鉄の頂上に人影がある。
「まさか・・・・・!」
人影が持つ刀に空気砲が連結しており、それはまるで加速装置のようだった。
(即席スラスターであの檻の中から脱出したとでもいうのか!?)
硝煙が如く空気が流れ、息を吸う音が響く。
「まさかな・・・・・・・!」
困ったものだ。状況を考えれば逆境だというのに
(笑いが止まらん!!)
次に起きた変化は解りやすいものだった。
「!?」
異音が轟き、
「なっ!?」
鉄檻が消し飛んだ。
衝撃で霧が晴れ、
「ーゲームオーバーにはまだ早いぜジェントルマン」
「ー週刊誌の主人公なら、ここでやめる腑抜けではないだろう?」
エルズスとスネークが現れた。
その姿を前にしてスカリエッティは感想を洩らした。
「驚いたよ、一体ー」
エルズスが指を指す。鉄檻があった場所に。
そこには
「バイクの残骸?・・・・・!」
よく見れば、バイクと地面の間、空洞が出来ていた。
丁度、大人1人が入れるような穴が。
恐らく、エルズスと呼ばれる青年はあの空気砲を鉄塊に潰される直前に受け取ったのだろう。
それで檻から逃げれた。ならば、スネークはどうやって100トンの水を含んだ鉄塊を?
「そういえばこれの機能を見せるのは初めてだったな」
「それは・・・!」
スネークの手に握られていたのは対ディシーズ戦で使われた武器。
「マルチボルトリボルビングガン、だと・・・・・!?」
「・・・そんなに名前長かったか?」
「しかし、それは鉄を内側から膨張させるだけの武器・・・・・はっ」
スネークがニヤリと笑う。
「それは弾丸の放った弾丸の特性だ。この銃は用途が異なる各種カートリッジユニットを装填し、様々な試作弾を撃てる。そうだな、例えば、お前の言った特性を持つ瞬光式徹甲榴弾、『MGaAP弾』や、様々な液体を瞬間的に凍らせる『冷凍気化弾』とかな」
「後はバイクを吹っ飛ばして居場所を確保すればいいということか」
恐らくだが、エルズスは空気砲を地面に向けて撃ったのだろう。そうすれば、穴を穿ち、かつ反動で脱出できる。
「そうだ」
なんて奴らだ。下手をすれば死ぬかもしれないのに、そんな素振りすらない。
「君たちは常識外れだな。命が惜しくないのか?」
「いや、やらなかったら死んでたわ!それに」
「?」
「セオリー通りなんてつまんないだろ?」
「呆れた男だ」
「あんたはどうだ、どうせ一回限りの戦い・・・まさかこれで終わりだなんて言わないでくれよ」
その一言にスカリエッティはうつむいた。が、
「・・・・・ふふ」
顔を上げた時、その顔には喜色満面の表情を浮かべていた。
「・・・私好みの回答だ!」
「だったら来いよ、スカリエッティ」
「俺達二人がお相手しよう」
スネークの言葉と同時に三人は動いた。
少年ジャンプ系スカリエッティ・・・・・原作のイメージだけに書いてる本人もちょっと想像できません。しかし、彼がこんな主人公みたいな奴だったらなぁと思い、書きました。
だって、アニメだとめちゃくちゃ可哀想な人でしたから・・・・・。
個人的にああいう人こそハッピーにはっちゃけさせたいです。
え、管理局?なのは?・・・・・・・知らない子ですね。
次回に続きます。