この辺りはもともと地盤が硬いところではなく1つの衝撃、地下廃坑道の落盤が新たな落盤を呼び、ドミノ式に連鎖していった。まるでジェンガだ。
スネークは勿論、スカリエッティのメタルギアの足場が崩れ始め、体勢を維持するにも厳しくなってきた。
そんな状況でも姿勢は崩さない。崩せないと言ったほうがいいのかもしれない。
「すぅ」
息を吸い、溜まった熱を吐き出す。それだけのことでも慎重になる。
さて、とりあえず分かったことを纏めようか。
スカリエッティの魔法、現象縮小。文字通りあらゆる現象を『小さくする』魔法だ。
ここまではいい。スカリエッティの反応を見て、後は仮説通りでいいだろう。
とすれば、あの空間移動とやらにも説明がつく。正確に言えば、空間移動ではなく、距離を小さくして縮めたのだろうが。
メタルギアは大型兵器、良く言えば力強く、悪く言えば大雑把な動きしかできない。短時間で水道管を精密に檻の形にするのは困難。そこでスカリエッティの魔法で規模や質力を小さくしていたという訳だ。
「どうして私の魔法が現象縮小だと解ったんだ?」
「最初、メタルギアが小さくなった時に違和感を感じたんだ」
「違和感?」
「『どうしてメタルギアを小さくして戦うのだろうか』。その図体のまま戦えばいい話だ。それをどうして小さくしたのか」
「寮の内部で戦うほうが得策だと考えたからだが」
「メタルギアの使い方は俺もよく知っている。合理的ではない」
メタルギアを知ることで安全に対処できる。スネークはメタルギアの基本戦術を知り抜いていた。
スカリエッティの答えにスネークは一蹴した。
「どうして小さくしたのか?簡単だ。そうしなければ、あんたの魔法は発動しないんだろ?現象縮小の魔法はその対象となる現象が無ければ発動しようにもできない。だからわざわざ小さくした。違うか?」
「・・・・貴様」
何故知っている。ソリダスにも教えていないことだというのに。
「それにもう一つ理由がある」
スネークは始めこそは質量変化と信じて疑わなかったものの、寮での戦闘である異変を感じた。
「仮に質量変化なら、メタルギアの自重も軽くなっているはずだ。それにも関わらず、地面は常に陥没していた。小さくなったにも関わらずな」
「それで質量変化ではないと気づいたか。しかし、どうして現象縮小と正確に言える?」
スネークは半眼で見据えた。
「理由は知らんがあんた昔、管理局に捕まった事があるだろう」
「・・・・・・なんのことやら」
汗だらけのスカリエッティ。焦りすぎだ。
「んで、その時に証拠として、ある本が提出された。違うか?」
「・・・・・・・・」
滝汗だらけのスカリエッティ。ここはサウナかよ。
暫くして、やっとスカリエッティが打ち明け始める。
「・・・・あの時は軽い気持ちで・・・・」
犯罪、ダメ、絶対。
「興味本位で聞くが、一体何をしたんだ?」
「・・・・・・管理局へのハッキング」
お前はオタコンか。あと手をもじもじするな。
「それは兎も角として」
「興味本位で聞いておきながら、もう終わり!?」
いやめんどくさそうだし。
「俺がお前の魔法の正体を当てた理由、エルズスは詳しく見ていなかったが俺は中身を見ていたんでね」
中身というのは、管理局に捕まり、武器や持ち物を取り返すために物色した際に見つけた部屋に置いてあった本の中身、という意味だ。
中身の理論は正直意味不明だった。が、軽くアナグラムされており、気になって解いてみれば、魔法の基礎理論だった。
スネークが動く。
それは独自の魔法コンセプト『現象縮小』が書いてあり、確かその本の名前は・・・・・
「黒の書、だったか」
「っ」
「図星か?」
反応を隠したつもりだろうが、スネークには通じない。僅かな反応もお見通しだ。
「あの本、誰の物かずっと気になっていたんだが・・・・・やはり、あんたか」
「やはり?どういう意味だ?」
不快感もあらわにスカリエッティが訊ね、スネークが答えた。
「俺は一度あんたに会ったことがある。と言ったら」
スカリエッティが動揺を表に出した。
「何だって?私にあったことがあるだと?どういうことだ」
「GB事件、と言ったら分かるか?」
「!?」
「やっぱりあそこにいたんだな・・・・教えてくれ、誰からの差し金で動いてるんだ」
「・・・・・・」
黙秘。探りだそうとするスネークにスカリエッティは黙秘する。
「このメタルギアは自分1人で作った、とかありえないだろう?データ配給元はどこだ?いや誰だ」
地面の一部、メタルギアの足場の岩盤が音を立てて崩れる。落盤させたのは位置を固定させるためか。
「答えてどうなる?」
スカリエッティは微動だにしない。押し問答が続くばかり。
「・・・・・簡単には言ってくれないか」
その間、4秒。ここに来てスカリエッティは気付く、スネークの問の間を。
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(おかしい、テンポが単調過ぎる。先程とは違う)
そこで違和感。スネークは当たり障りのないことばかりを口にしており、その間も不自然。
もしやと思い、UAVの赤外線透写装置を起動させた同タイミングで後ろから銃口を突きつけられる感触におぞ毛を抑える。
「動くな」
ステルス迷彩が解け、現れるは伝説の男。
喋っていたスネークといつの間にか後ろにいたスネークが同時に同じことを言った。
やられた、遠隔操作式立体記憶映像だ。
「・・・・・いつの間に」
スネークが脚を指差し、今更ながら気付く。
ワイヤー、それも死角となる斜め後ろ、UAVの索適範囲外でもある。
「岩盤が崩れた時ワイヤーを撃ったか」
スカリエッティは内心、この男の無駄のなく、合理的かつ洗練された動きに惚れ惚れしていた。そして速い。
なるほど、伝説を冠するにはふさわしい。
「だが、勝ったつもりか?」
武装型UAVのステルス迷彩が解かれ、スネークを中心に囲んでいく。スネークだけではない、スカリエッティも勿論この状況を読んでいた。
「さぁ、その銃口を退けて貰おう。まさか、今の状態が分からないわけじゃ」
「UAVが俺を殺すのと俺の弾丸があんたを殺すのはどちらが早いかな」
土壇場での心理戦。お互いに命を賭けている分、息をつく暇も思考する合間もあったものではない。
だが、ここに至ってはスカリエッティが一枚上手だった。
「撃ちたまえ。それで言いと納得するのなら」
虎穴に入らずんば虎児を得ず。危険を制してこその勝利だ。
「・・・・・・・・・」スネーク、返答に休す。
どちらかの汗が滴る。
と、僅かな隙を突き、ひそかに稼働していたアームユニットが、カメレオンが獲物を捕らえる舌の動きの如くスネークを素早く掴む。
「しまった!!」
スネークが慌てて銃を撃つも、弾丸は虚空に消え、硝煙の香りが残るのみ。
スネーク、万事休す。
勝利を確信したか、スカリエッティ、余裕にスネークに語る。
「次は君の番だ。なに、痛みを感じることなく彼のところに送ってあげよう」
メタルギアの背部リングユニットを起動。淡い粒子が辺りに立ち込める。
「・・・・・・・・・・」
苦悶の表情で必死の抵抗をするスネーク。無駄な掻きだ。
「戦士の言葉だ。最後に何か言い残す事は?」
しかし、スネークは答えなかった。代わりに
「・・・・・・・・・・ふ」
「!?」
彼は笑った。
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「何がおかしい!!」
「気に触ったか?しかしスカリエッティ、獲物を目の前にして舌なめずりとは二流のすることだぞ」
「なに・・・・・!」
スネークの目からハイライトが消え、『伝説の男』が顔を覗かせた。
「殺したければ、さっさと殺せ。それともなんだ、勝利を確信して余裕か?はっ、まさか人を殺すことに抵抗があるのか?」
(この余裕はいったい何だ、何処から来るんだ)
いや、ハッタリ。先程と同じハッタリに決まっている。その証拠にもうスネークは抵抗していない。諦めたのだろう。
(ならこの男の目は何だ!?有利であるはずの私が何故恐怖している!)
狩人の目、殺意と凶器がない交ぜになった錯覚を覚える感覚にスカリエッティはスネークという男に恐怖を覚える。
「だったら、言ってやろう。ーそれがお前の限界だ」
スカリエッティの眼を見据えてスネークは断じる。
二人の中心点の空に1つの光が見えた。
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震え、無言で見つめ返すスカリエッティ。その唇は震えていた。
スネークを見続け、上には目も向けない。
«警告、頭上接近、敵影あり»
ようやくメタルギアのシステムが、頭上の異変を知らせるが遅い。
「敵影?まさか」
「そのまさかだ」
破れた雲の隙間からそれは見えた。
スカリエッティは目を見開き、狼狽の余り叫び出しそうになった。
生きている。
―そんな馬鹿な、有り得ない・・・・!!
エルズス・スネーク、その人が。
驚愕のスカリエッティ。死んだと思ったエルズスが生きていた。
「そんな・・・・・・・・馬鹿なことが・・・どうして生きているッッ!!」
エルズスはスカリエッティの疑問に返答せず、代わりに言った。
「生きたいからさ、スカリエッティ」
スローモーションで高周波ブレードが頂点を差しーー
「ゲームセットだ、紳士野郎」
エルズスの一閃がスカリエッティを斬り裂いた。
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指揮者を失い、活動を停止したメタルギアの頭の上で勝敗は決していた。
「ど、どうして・・・・・」
「スカリエッティ、処理落ちって知ってるか?」
「処理落ちだと?」
「あんたのメタルギアの攻撃、処理重すぎるんだよ。そこでわざと空気砲の圧縮空気発射移動を連続してやって意図的に処理落ちを起こさせてもらった。それで直撃するまでの時間を稼ぎ、攻撃自体も50フレームほど、飛ばしたのさ。まぁ、判定がデカすぎてこの様だけどな」
エルズスは溶けて消えかけた左腕をスカリエッティに見せる。直撃すれば、身体の原形も無かっただろう。
スカリエッティは驚愕した。金属の腕、こいつはサイボーグなのか。
「初めて見たよ。戦闘にゲームの理論を持ち込んで勝った男を」
エルズスが苦笑した。
だが、ここはゲーム、言うなればテレビゲームの中なんだ。俺達は登場人物であり、それに気づいたゲームキャラクターに過ぎない。
ゲームの世界なら、ゲームの理論を持ち込んでもいいだろう。
「狂ってるよ、貴様ら」
そろくらいの狂気がなければ土台勝てる相手ではない。
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「ところでどうして私を斬らなかった?」
スカリエッティは無傷だ。
「必要がない。というか俺達はあんたに勝ったんだ。続ける理由がない」
スネークが続きを言う。
「スカリエッティ、クロノの情報によれば、5分後に管理局特務部隊がここに来る」
「管理局特務部隊・・・・?」
聞いたことのない部隊だ。
「俺達は脱走した身。捕まればどうなるか分かったもんじゃない。だから、クロノに協力して貰って別の世界に逃げる」
既にエルズスが転送装置らしきものの設置準備を完了させていた。
「一緒に来ないかスカリエッティ?ここで歯車と眠るも良し、歯車となって地獄を歩くも良し。ただ、言わせて貰えば」
その言葉がスカリエッティの道を決定づけた。
「退屈はしないと思うぜ」
苦笑したスカリエッティはその手を取る。
「最初から選択肢がなうようなものだとはいえ私も物好きなものだな」
エルズスが笑い、手を取った。
「ようこそ、フィランソロピーへ」
という訳でなのは編はここで一応の終わりです。
え、はやてちゃんはどうしたのかって?今それを書くと(内容のネタバレ的に)いろいろとまずいので、あえて書きませんでした。はやて、非力な私を許してくれ(ブックス!)
とはいえ、なのは編はもう一度やる予定なので、はやてちゃんはその時にいろいろ書こうと思います。
次回からはまた別のゲームの世界の話になります。これからも頑張っていきますので宜しくお願いいたします。