歯車と眠れ   作:MSX

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のんびりのんびりしていたら、前の更新から一週間以上たっちまった!

もっと早く書きたいのに文才と脚本を考えるので時間がどうしてもかかってしまうんですよ。

でもそれを考えている時が一番楽しかったり。

特にミリオンモンキーズは思い入れがあるのでしっかりやっていくぜ!


第25話 始まり「派手に行こうか」

輸送機の格納庫でエルズスとスネークが話していた。

 

談笑と冗談を言い合い、スネークが吐く煙草の副流煙を煙たく思いながら、満更でもなく悪くもない。

 

あれはいつのことだっただろうか。もう随分昔のことに思える。

 

「スネーク、もしも、もしもッスよ、世界が平和になって俺達が必要とされなくなったらどうするッスか」

 

「なんだ、唐突だなエルズス」

 

春の陽気を想わせる温かい昼下がり、エルズスはスネークに問いかけていた。

 

2日前の新聞が簡易デスクに置かれており、そこには『大統領、軍備縮小に伴い、核兵器削減を宣言』と書かれたページが広がっていた。

 

普通に考えれば素晴らしいことである。しかし、スネークやエルズスは戦うための存在であり、それが価値と言っていい。

 

戦いが終わり、自分たちが必要とされなくなった時、人々はそれを平和と言う。

 

だが、戦うことでしか自分を表現できない者はその平和の世界でどう生きればいい?

 

もしそうなれば、エルズス達は無価値を通り越して、存在そのものを疎まれ、意味嫌われるだろう。

 

忘れ去られるのが怖い。必要とされてほしい。それがその時のエルズスの偽らざる本音だ。

 

スネークはそんなエルズスを気にかけてか何かを言った。

 

確か・・・・ああ、思いだした。

 

「エルズス、もしも世界が平和になり、俺達の戦いが終わったのならー」

 

その時、俺は。

 

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PM11:50

 

店内にいたハルカ達は知るよしもなく、既に事は始まっていた。

 

まず、空中で待機していた大型空中戦艦を囮に無数のドローンと少数精鋭の隠密部隊を別動艦が音もなく発進させる。

 

運が悪いというか、能天気というか、気をとられていた大半が、この空中戦艦をイベントか何かと勘違いしており、近づくとしても報道局のヘリコプターぐらいのもので、事の成り行きを傍観しているに過ぎなかった。

 

別動艦には艦隊用大型ステルス迷彩を装備させており、当然だがその下で見守っている人々が気づく様子もない。

 

それを良いことにステルス艦のハッチが静かに開き、そこから降下傘部隊がエントリー。続けてドローンと呼ばれる小型無人機を発進させる。

 

発進させたドローンは電子戦型であるが、必要最低限の工作用爆弾と装甲貫徹式鉄甲弾と呼ばれる貫通兵器を装備していた。

 

広範囲に拡散し、攻撃の支援と作戦情報の伝達、および、ジャミング機能と通信用途として活用するのが本来のやり方だが、最悪の場合、この充実した機能を生かして時間稼ぎに仲間が撤退するためである。

 

降下した兵士の網膜にはコンタクトレンズ状の立体投射システムが装着され、そこからARが仮想現実として実際の景色とリンク、視覚に投影される。情報処理、立体投射システムと座標位置の演算。ならびにステルス艦からの作戦状況の伝達は、件のドローンが精密におこなっていた。

 

更にドローンを広範囲に展開。加え、それらに電子妨害のジャミングを流すように指示を入れ、ゆっくりと兵士達が降下した。

 

«電子妨害、正常に起動。異常なし»

 

これで1つのドローンの半径408メートルは陸の孤島と化す。

 

了解の意志を伝えた声は人間のそれではない。

 

「ウキッ!」

 

ピポサルと呼ばれる猿である。

 

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ピポサル。それはハカセが作り上げた『ピーク・ポイント・ヘルメット』を被った猿のことを言う。

 

このヘルメットは使用者の知能を飛躍的に高め、猿すらアインシュタインに変えた。

 

が、所詮は試作品。未知数の可能性を秘めた危険物に過ぎない。

 

そんなヘルメットを何がどうしてしまったのか、とある動物園の小さな白猿が被ってしまった。

 

その猿は自らのことをスペクターの名乗り、世界征服を目論んものの、1人の英雄によってことごとく失敗していた。

 

しかし今回、ピポサルは世界を手に入れんと過激に壮大に本気で攻めてきたのである。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

PM11:50

 

店内に小さな兵士が列を成して行軍する。

 

店内だけではなく、街じゅうにピポサル兵が行軍し、蹂躙していく。

 

「ウキッ」

 

           「ウキッ」

 

   「ウキッ」

 

 

 「ウキッ!」  

 

さながら軍隊。いや、立派なピポサル軍と言っても差し支えないだろう。

 

武装した猿に人々はなすすべなく倒れ、逃げ惑い、恐怖するしかなく、太刀打ちもできなかった。

 

自衛隊も異変に気付き、行動を起こすが、相手は未知の科学技術によってつくられた武装をしており、尚且つ、市民を避難誘導しながら戦うとなると簡単な話ではなかった。

 

しかしそれはあくまでも自衛隊の話。彼らは違う。

 

彼らはこうする。

 

店内に現れたピポサルの足元にワイヤーを張り、転倒させるが、後続はそれに気付き、攻撃を仕掛ける。

 

ヘルメットのデバイスの1つ、AR視覚情報網を使い、ピポサル同士で視界を共有。死角が消え、完璧な索敵能力を以てしても、そのあとの最初の一撃は知覚できなかった。

 

驚き、隙ができたところにリボルビングガンの弾丸が命中。そのままピポサルの装甲服を食い破り爆発とともに周りの兵士を道連れにする。

 

そこにグレネードを投げ込もうとしたピポサルに誰かが投げたテーブルが直撃。ピンが抜けたグレネードは宙を舞い、落ちたと同時にピポサル兵を巻き込んでいった。

 

轟音とともに扉の外からピポサルの乗った逆関節の二足歩行メカ『ミドルメック』が、装備されたガトリング砲を回転させ、火炎放射機を店内に向ける。瞬間的な弾幕により、随伴兵が前方に攻撃するようになる。

 

と、ここで相手の動く気配をドローンが察知し、情報を受け取ったピポサル兵が装備しているレーザーガンの引き金を絞る。

 

出てくる気配はないが牽制でも十分だと思っていたからこそ、不覚にも気配を消して近づいてきた青年に対応がおくれてしまった。

 

ピポサル兵はその青年の持っている武器を侮蔑した。なんのことはない。時代錯誤も甚だしい刀だ。これでは戦う前から勝敗は決しているようなものである。

 

そんなピポサル兵を気にもかけず青年はミドルメックだけに一点集中。

 

左腰に携えた刀の柄を右手首を逆にして掴み、左手はその右手を挟む形で柄を握っていた。

 

その独特な、はっきり言えばおかしな構えを青年が取る。その目に一切の迷いはない。

 

何かが来る。悪寒を感じ、ピポサル兵はミドルメックに更なる援護射撃を要請するが、それよりも早く青年が動いた。

 

「ーフッ」

 

抜刀。一陣の風が舞い上がり、辺りが一瞬だけ静寂に包まれる。

 

斬撃の音はヒュン、とでも形容すべきひどくつつましやかなものだった。

 

だがその直後に起こった現象を横に随伴していたピポサル兵は一生忘れないだろう。

 

ミドルメックが突如として揺らめき、姿勢を崩し、地に伏した後に片足が切断されていたことが理解できた。

 

視認したと同時に破滅的な爆音と共に上半分が吹き飛んで、道路にぶちまけられる。

 

問題なのはその距離である。青年とミドルメックの間はゆうに5メートルはあるだろう。そこから刀で何かをして、足を切り落としただけではなく、胴体も消し飛ばしたのだ。

 

一匹のピポサルはもう一度見る。日本刀に酷似した近代兵器とそれを扱う青年を。

 

刀の鞘をカタパルト代わりに刀を射出する剣術、居合い斬り。

 

本来、その間合いは刀の長さに使い手の腕の長さと踏み込みを合算したものだ。

 

だが、青年の抜刀斬撃はそれ以外の何かが存在する。

 

それを理解したピポサル兵はエルズスに対して人外の眼差しを向けた。少なくとも人間の技ではない。

 

構えを止め、青年が一歩近づいてきた。同時に前方に息づかいが聞こえ、メカボーを半ば、無意識で振った時にそれはちょうど真横にいた。

 

「へえ、なかなかやるじゃないか」

 

振ったメカボーを足のステップだけでいとも簡単に回避させられた。そして悪寒。青年は消え、代わりに後ろから聞こえた方向から更に後ろに跳躍し、拳銃を構え発砲する。

 

次の瞬間、恐怖がピポサル兵を襲った。

 

「あぶね」

 

軽く言いつつ、放った小型弾を青年は高周波ブレードで難なく切断したのである。

 

今、青年は明らかに撃たれてから反応した。これは言い換えれば、『人間の身体と反射神経が弾丸を捉えて切り落とした』となる。もはや悪魔の所業としか言いようがない。

 

正確な両断に驚愕する暇もなく一瞬で距離を詰められ、恐怖に駆られたピポサル兵は乱射するも、男は手に持っていたテーブルクロスを丸めた物を投げつけた。

 

「ウ、ウキ!?」

 

広がるテーブルクロスはお互いの目線と視界を覆い、地面に落ちた時には男は消えていた。

 

「ウキキ」(いったい何処に!?)

 

ピポサル兵の疑問は後ろからの声で解ける。

 

「我流剣術」

 

ピポサル兵が気付いた時には男に後ろを立たれていた。全く気づかなかった。気配もない。

 

そんなピポサルに男は高周波ブレードを構えて動いた。弾かれるように振り返った時にはもう全てが終わっている。

 

「袈裟上げ斬り・三連」

 

振り返りつつ構えた拳銃は手首のスナップを生かしながら全身で動いた青年の高速の袈裟斬りで両断切断され、その返しの一手はその力を上乗せした切断力とスピードで放たれ、ピポサル兵の装甲服はバターのようにスライスされる。

 

至近距離での高速の一撃、神速の二撃はあらゆる物体を斬り落とす。これが高周波ブレードがもたらすインファイトの絶対性であり、それが活躍する間合いにいる時点で飛び道具は意味を成さない。

 

「ウキィィ!!」

 

断末魔の声をあげ、店の出口へ吹っ飛ぶピポサルは最後に何を思ったのだろうか。

 

もはや肉眼では捉えきれない終わりの三撃目がピポサル兵に炸裂した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

刀を鞘に納め、店内を見渡す。

 

ピポサル兵達は既に転送装置で脱出されており、残るのは切り刻まれたミドルメックと装甲服だけだ。

 

我ながら斬りまくったものである。

 

と、ヘッドユニット式無線に通信。機械を耳に当てるとそこからスネークの声が聞こえた。

 

«こちらスネーク、市民の避難誘導及び、裏口の敵を排除完了した»

 

援護していたはずの彼の姿が途中から見当たらないと思えば・・・・・・・。

 

「スネーク、途中からいなくなったと思ってたら、裏口に行ってたんスか」

 

相変わらず状況判断が正確だ。

 

«市民の安全が先決だ。そちらは?»

 

もう一度見渡し、異常がないことを確認。

 

「大丈夫ッス。店の人達は無事ッスよ」

 

«そうか・・・・それを聞いて安心した。こちらは引き続き、市民の避難誘導と敵部隊の対処にあたる»

 

「了解。ご武運を」

 

«お互いな»

 

短い会話はそこで終わり、ハルカがカウンター席の近くから這い出してきた。

 

無事だ。擦り傷はあるが、軽症のうちにも入らない。

 

「ふう、良かっ」

 

「――どうしてピポサルが・・・・・・・」

 

しかし、ハルカの疑問の声にエルズスは言葉を止めた。

 

蒼白な顔を浮かべ、表情には驚愕と尽きぬ疑問に思考を覆われているハルカの声には先ほどまでの覇気はない。まるで何かを恐れているかのようだ。

 

「っ、まさか」

 

「まだ外は危険ッス!出たら駄目ッスよ!!」

 

そんなエルズスの制止の声が外の戦闘による爆音で消え、ハルカは外に行った。

 

危険過ぎる。ピポサル兵がわんさかいる中で少女一人が行くなど自殺行為に等しい。

 

「スカリエッティ、ちょっと頼むッス!!」

 

「な、待て、エルズス!!」

 

スカリエッティを店内に残し、エルズスもまた、銃弾飛び交う戦場に飛び出して行く。が、

 

「!?」

 

道路上は狂乱覚めやらぬ状況で、どこからか来た市民があちらこちらに逃げ惑い、ハルカを連れ戻すどころではない。

 

「クソ・・・・・・!」

 

エルズスの歯軋りもまた、喧騒に消えるのだった。

 

------------------------

 

PM11:55

 

店内の裏口から別の道路に出ていたスネークはもはや廃車同然となってしまった乗用車を盾にし、なんとかピポサル兵と戦闘していた。

 

リボルビングガンの弾残は既に無くなっており、近くにいた自衛隊の兵士から銃を拝借している状況だ。

 

対応に追われ、応戦していた自衛隊員も始めはスネークに対し、避難を呼びかけていたが、撃たれかけた隊員を救い、スネークの実力を認めてからは援護を任せていた。

 

そこから人員が足りていないと察するにそう時間はかからなかった。

 

先ほどまでは13人もいた部隊も気づけば、5人になっており、戦闘はますます苛烈さを増していく。

 

「これを使え!」

 

隊員から投げ渡されたマガジンをキャッチ。同時にリロードし、遮蔽物からはみ出ていたピポサル兵をヘッドショット。だが、どういう訳か装甲服を破壊するに留まり、ピポサル兵は吹き飛んだ。

 

疑問には思いこそすれ、あまり気には留めないようにする。戦闘に集中するべきであり、ピポサル兵のグロテスクな死に際など見たくはない。

 

そう思いながら、銃撃戦を繰り返す。

 

近くにいる隊員に渡された89式5.56mm小銃はスチロール板プレスやロストワックスを用いた軽量化により、取り回しは申し分無く、日本人の体格にあわせて作られたためか、比較的小型であり、スネークはこの銃の性能に内心ご満悦だった。

 

いける。事実、ピポサル兵達は少しずつ押し返されており、戦力差も次の隊員の叫び声で覆った。

 

「96が到着した!俺達は持ちこたえたんだ!!」

 

96と呼ばれるそれを見て、スネークは勝利を確信し、隊員達は歓声を上げた。

 

8輪駆動の装輪装甲兵員輸送車、その上部ハッチには12.7mm重機関銃M2が添えつけられており、後部ハッチから10人

の自衛隊隊員達が飛び出し、スネーク達の援護に走る。

 

96、もとい、96式装輪装甲車の到着により、ピポサル兵達も後退し始め、その分、装甲車が前進。

 

ここで彼らは疑うべきだった。

 

ピポサル兵達の撤退があまりにも早く、まるで最初からそうするかのよう

 

しかし、スネークの視線はその後ろから追走してきた形状の異なる大型装甲車に吸い込まれる。

 

「どうしてあれがこんなところに・・・・・・・」

 

あれはスネーク達の世界の兵器であり、この世界には存在しないものだ。

 

(記憶が正しければ、あれの側面ハッチに格納されているのは・・・・・)

 

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PM00:10

 

何もかもが突然のことだった。

 

スネーク達が戦闘を繰り広げている道路の上、高速の高架橋粱がドローンによって爆破されたのだ。

 

「危ない!」

 

先頭の装甲車が見る間に崩れた橋粱の上に乗ったコンクリートの土台ごと地面に吸い込まれていく。

 

軍用の爆発物の倍以上の爆発は、強靭極まる高橋粱をいとも容易く崩壊させ、大型装甲車はギリギリのところで被害を免れた。

 

助かった、そう思うのはまだ早く、相手はさらに展開する。

 

『オオオオオオォォォォッッ!!!』

 

「一体こんどは何なんだ!?」

 

そしてトドメにそれが現れた。

 

雄叫びを上げ、ステルス迷彩を解き、その巨体が姿を現した。

 

貧相な脚部とは反対に、その腕は冗談のように大きく、肥大でもある。

 

四肢の各部の白い増加装甲が光を反射し、背部スラスターから陽炎が舞い、スネーク達の前に立ちはだかる。

 

その姿、まさか-

 

(メタルギア!?いや、違う!!)

 

それの肩の装甲板には猿のエンブレムとともに文字が烙印されていた。

 

ゴリアック、と。

 




これを書いている時に悲報を聞きました。

MGS4でビックボスの声優さんだった大塚周夫さんが亡くなりました。

オセロット、サイボーグ忍者、そしてビックボス。

最高の声優さん達に一言。

お疲れ様です。そしてありがとうございました。

あなた達は私の人生を変えてくれた。

本当にありがとう。
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