歯車と眠れ   作:MSX

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あ、あれ?いつの間にか1週間以上たってる・・・・?

お、おかしい。書き始めたのは前回書いてからすぐだったのに・・・・・・。

気のせいかな^^;


第26話 出来損ないの歯車と機械仕掛けの猿

PM00:30

 

騒然とする街の中、逃げ惑う人々を押し退けて、青年が辺りを探し回っていた。

 

「クッソ、あのお嬢さん、どこに行きやがった・・・・!?」

 

エルズスである。

 

駆け回ってはや10分。既にピポサル部隊は都市区画の半分は占拠しており、煙と銃声が絶えず飛び交う。最悪な事に自衛隊もじり貧になりつつあった。

 

「ああもう、どうしてこんな時に!」

 

急がなければならないのに、思いばかりが焦る。大通りに出て、彼女の姿を探し回るもいない。

 

取り合えず、あの女の子をみつけたら説教だ。

 

と、大通りの大型テレビの前に人だかりが出来ていた。

 

「おいおいマジかよ」

 

「冗談に決まってんだろこんなの・・・・」

 

「お、おい!映ったぞ!」

 

口々に言う市民達を見て、こんな時に何を呑気なと一瞬呆気になったエルズスだが、ニュースの内容を見て激しく動揺した。

 

ニュースの内容はこうだ。

 

「臨時ニュースです。たった今」

 

これは・・・・・・

 

「アメリカ通信衛星、『K.P.A.S』が地表から攻撃によって撃墜され、一部の破片がヨーロッパに落ちました」

 

何かの冗談か?

 

「破片が落ちた周辺は大混乱となっており、詳しい情報はまだわかりません」

 

キャスターが何か言い方けた時、臨時速報がニュースを無理やりきり替えて、こんどは別の局のキャスターがヘリコプターから上空を見渡していた。

 

ローターの轟音で言葉が聞き取れにくいものの興奮覚めやらぬと言ったふうでリポートを続けている。

 

そしてそのカメラは近くの雲に向けて動かされ、そこで止まりズームアップ。ピンボケして焦点のあわなかったが、次第にその姿は明瞭となって、エルズスの目に飛び込む。

 

最初の映像では雲を映しているのかと思ったが、それは違い、雲だと思っていたそれの姿は空飛ぶ戦艦のそれだ。

 

大きい。こんな巨大な戦艦が空を飛んでいるなんて悪い冗談にもほどがある。

 

周りのざわめきが強くなり、皆の注目は一点に注がれる。

 

映しだされる場所は巨大戦艦の外部デッキとおぼしき箇所でそこに誰かがいた。

 

『あれは・・・・・・サル?サルでしょうか!?サルらしき人影がいます。この船に乗っているのは皆サルなのでさょうか!!』

 

興奮気味のリポーターの声とともにスクリーンいっぱいにだされたサル(画像が荒く、よく見えないが、どうやらそうらしい)の画像に騒然とした。

 

それはそうだ。支配していたと思っていたはずのサルが人類に半旗を翻し、人類よりも優れた科学技術を有して、圧倒的な戦力で世界中に進撃しているのだから、各国首脳陣の驚きはいかほどのものか想像できる。

 

「なんだよ・・・どういうことだよ・・・・・」

 

しかし、エルズスの疑問は、サル達の横で腕組みをした不機嫌そうな表情を浮かべた少年にあった。

 

日本刀を腰に提げ、無骨な強化骨格を身に纏った青年。その姿はまさしく、

 

「あれは・・・・・・・俺?」

 

エルズスだ。

 

「スペクター・・・・・・」

 

誰かの囁きが嫌に耳に残った。

 

------------------------

 

同時刻、東京、某道路街

 

兵器1つで戦況は大きく変わるものだ。強大な兵器であれば尚更で、それが大型二足歩行兵器であるならば、撤退するのは、やむを得ない。

 

「何なんだよコイツ、冗談キツいぜ・・・・・」

 

しかし、目の前に現れた機械仕掛けの巨人は、戦況どころか戦場を一変させるのに十分すぎた。

 

ゴリアック。胸部増加装甲にそう書かれたロボットはメタルギアと似て非なる存在だが、その存在感はメタルギアと大差ない。

 

まず目がいくのは、ゴリアックの身長の3分の1はあるのではないかと思う巨大な腕であり、肘から拳にかけて肥大化している。

 

各部増加装甲には専用のクロエット合式複合装甲を採用しており、本来の運動性能と防御を十全に発揮し、背部バーニアのロケットとジェットの合一エンジンは、その巨体を成層圏近くまで飛翔させることができる。

 

それだけではなく、機体の各所に武装が施され、強化されており、スネーク達を殺すには充分過ぎる。

 

四肢がバランス自動調節装置によって人間に近い柔軟な稼働をし、ゴリアックはスネーク達を見下ろす。

 

ロックオンされたと思った時には既に身体が反応していた。

 

全身をバネの要領で横方向へ動かし、回転。

 

スネークのいた場所にゴリアックの肩部に内蔵されたガトリングが火を噴き、直線方向に穴を穿ち通りすぎる。

 

後方にいた自衛隊員も慌てて左右に動き、ギリギリのところで攻撃を回避する。

 

射線上に存在するもの全てが鉄の暴風に晒され、木っ端微塵になって消えていき、乗用車の強化ガラスが粉砕された。

 

隊員達も応戦に努めるが、所詮ゴリアックの敵ではない。それに加え、撤退したと見せかけて隠れて待機していたピポサル部隊がゴリアックを軸に再展開。有利だった戦況は一気に不利になった。

 

ゴリアックはその鈍重そうな見た目とは裏腹に、運動性能が非常によく、機敏な動きでこちらの攻撃に対応していく。

 

機銃の攻撃は装甲で弾き、グレネードの爆発は腕部装甲で弾く。

 

防御も中々のものだ。

 

「やはり、あれを使うしかなさそうだな」

 

スネークの視線の先にはこの世界に存在しないはずの装甲車、OR-a414と呼ばれる特殊装甲車だ。

 

既に装甲車からはある兵器が応戦するために出撃していた。

 

歩兵支援用試作二足歩行兵器であるその兵器の両肩の先には簡易型のアームガトリングが備え付けられており、寸胴な機体には、人が乗るためのコクピットがある。

 

『プロトアーヴィング』。そう呼ばれる不格好なメタルギアもどきだ。

 

既に5機中、3機がゴリアックに破壊され、残る2機も必死に戦うが悪鬼か羅刹のような戦いぶりを見せるゴリアックは完全にプロトアーヴィングを翻弄していた。

 

(ん、5機?)

 

あの大型装甲車には最低でも6機は積まれているはずだ。ということはまだ1機残っている事になる。

 

装甲車とスネークの距離は体感で約6メートル。ゴリアックはプロトアーヴィングに気をとられている。今がチャンスだ。

 

「すまないが借りるぞ!」

 

返答を聞かずに隣にいた隊員が持つRGB6と呼ばれるリボルバー式グレネードランチャーをひったくり、駆け出していた。

 

彼の視線の先には、たった今ゴリアックの攻撃を受けて道路脇に突っ込んだ大型装甲車。

 

スネークの意図に気づいた隊員の1人が静止の声をかけるが、その時にはもう全力疾走していた。

 

「危険だ、やめろ!」

 

「ここであれを止めなければ大変なことになる!!援護を頼むぞ!」

 

なんの比喩でも冗談でもない。それはメタルギアと戦ったことがある者だけが確信する直感のようなものだった。

 

「ああもう、勝手にくたばるなよ!」

 

スネークの気迫に押され、援護に入る隊員にピポサル兵は容赦しない。

 

銃声がスネークの後ろで弾けて重なった。

 

--------------------------

 

大型の対戦車兵器の前で敵が照準をつけるまでじっとしてくれるのは映画の中だけだ。

 

既存の戦車や装甲車ですら、時速数十キロメートルの機動を誇る。例えば、道路を走っていくトラックのタイヤの中心を水鉄砲で狙うのを想像してみるとその無謀さがわかるだろう。

 

そしてゴリアックの背部バーニアによる高速性能と機体本来の機動力はそのようなレベルではない。

 

サルの持つ運動機能は人間など目ではない。巨体からは想像できない身軽さと、各所にある小型バーニアを様々な方向に動かす事によって、あらゆる方向に高速で移動するゴリアックを人間の反応速度で追うことは難しい。

 

ゴリアックの視線が眼下で応戦する隊員達を捉え、両腕に内蔵されたガトリングの照準装置が彼らをロックする。

 

狂奔した隊員達がアサルトライフルのトリガーを引き続ける。だが、それだけだ。

 

ゴリアックの柔軟な特殊装甲が弾の貫通を許さず、弾き出してしまう。

 

しかし、彼らの狙いは後ろから接近したプロトアーヴィングの貫通式鉄鋼弾。いくらゴリアックと言えども背部バーニアに被弾すれば無事ではすまない。

 

次の瞬間、ゴリアックは信じられない動きをとった。

 

「!!」

 

機体をバーニア任せに強引に宙を舞い、体躯を屈伸し、機体を一回転。バーニアを吹かせ、着地の微調整も忘れない。

 

「え」

 

背後をとったプロトアーヴィングのパイロットは踏み潰される前に何を思ったのだろうか。もしかしたら、それを思う猶予すら無かったのかも知れない。

 

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背後に上がった爆発を背にし、スネークはようやく大型装甲車に到着した。

 

振り返るとプロトアーヴィングが潰されているが、あの位置で踏まれたとなるとまだ生きている可能性がある。

 

希望的観測でしかないが、そうであることを祈るばかりだ。

 

大型装甲車の運転手にハッチを開けてもらうように頼もうとするが、額から血を出してぐったりとしている。ゴリアックの攻撃に巻き込まれたのだろうか。

 

仕方なく、装甲車の後部手動ハッチを開き、プロトアーヴィングの格納庫とも言うべきコンテナに入るが、流れ弾がハッチを破壊。閉じ込められてしまった。

 

(あと少し遅かったらどうなっていたか)

 

そのまま慣れた手つきでコクピットを開き、流れるように搭乗。AIがスネークを感知し、システムを起動させる。

 

(しかし、どうしてこれがこんなところに)

 

スネークの世界ではプロトアーヴィングは試作品であり、まだ実戦にも投入していない筈だ。

 

何故なら、この兵器は他でもないスネークが破壊したからだ。その際、沢山の量産型と交戦する羽目になり、施設からの脱出の際に搭乗した。

 

つまりスネークはプロトアーヴィングに乗るのは初めてではない。コクピットのレイアウトはもちろん、備え付けられた武装一式まで目をつぶってでもどこぬあるか覚えている。

 

『管制システム:起動 試作型二足歩行支援機 『試作式月光』:起動』

 

なぜ、この機体がアーヴィングではなく月光と呼ばれているか、実はスネークにも分からない。だが、今はプロトアーヴィングのカメラに映し出された眼前のハッチをどうにかするのが先決だ。

 

いきなり侵略行為を開始したピポサル達は隊員達を攻撃し、街を恐怖に陥れてる。スネークはピポサルのことは分からないが、容赦してやる理由はどこを探してもなかった。しかし、

 

「AI総合管制システムが破損?クソ、さては突っ込んだ時に・・・・」

 

これでは肝心の大脳が破壊されたも同然である。しかし、スネークの瞳に迷いはない。

 

「やむをえん」

 

機体制御システムをオートからセミオートに切り替える。邪魔な壁など壊して行けばいい。

 

その動きに焦りはなく、その動きに興奮はない。

 

ただ自分が出来ること、やるべきだと思ったことをやっている。それだけのことでしかない。

 

安全装置を強引に解除していく。本来はパイロットの独断で起動しないはずの特殊稼働システムまでも彼の知る『裏技』で立ち上げていった。

 

システム再起動。コクピットの暗闇に光が灯り、複数のフォロモニターが投影。急ごしらえの機体だが整備は悪くない。

 

「アクチュエーター問題なし。統合情報システムをカット、緊急事態につき、機体の全コントロールをパイロットに譲渡・・・承認。火器管制セーフティ解除」

 

死んだ大脳の代わりを務めるというのは並大抵のことではない。戦闘を行いながらとなれば尚更だ。

 

「起動承認・・・・・・確認。いける」

 

それでもスネークは戦いを挑む。自分自身の価値を示すように。

 

その意志に呼応するようにプロトアーヴィングのアームが曲がり、『右腕』が動いた、

 

目の前の壁を粉砕する。そのために。

 

その姿はスネークの人生そのものを表すかのようだった。

 

--------------------------

 

PM00:45

 

戦場で指揮を取る部隊長が、爆発の衝撃できしんだ骨の痛みの中であっても戦場全体を客観的に見れるというのは、彼がどうしようもなく戦術家であることの証拠だろう。

 

ゴリアックの出現で事態は全て一変した。

 

優勢だった戦闘は一気に傾き、今では防戦一方だ。

 

爆音と銃弾が耳をつんざき、閃光が目を眩ませ、振動が絶えず三半規管を狂わせる。

 

だが、死の恐怖が彼の全身を包み込んでも、彼の心は常に逆境への最善手を模索する。

 

彼らにとって初めて体験するはずの戦場。常人ならば圧倒されるバトルフィールドの中でも彼は機械のようにどこまでも冷静だった。

 

そんな彼だから、その変化にいち早く気づいたのだろう。

 

「月光六式が起動している!?」

 

六式はAIに不良が見つかったため起動どころか、システムの立ち上げすら凍結されているはずだ。それがどうして。

 

(まさか)

 

あの男がやったのか?疑問は尽きないが、あれではまともな戦闘など期待もできない。今回は急遽、実戦テストのため投入したが、所詮は試作機。性能は語るまでもない。

 

直立した不格好な装輪付きロボットもどきという兵器はつまるところ、近年、過激になったテロリストに対抗するという現実に対応した選挙の為のパフォーマンスに必要だった兵器に過ぎない。

 

(しかし、このタイミングで飛び出てくる、というのは、相当の手練れか、ただの馬鹿かだ)

 

戦闘の技量を瞬時に測る能力は彼にとって何よりも重要なものである。

 

(賭けるしかない、あの男に!)

 

敵のゴリアックも何か感じ取ったか、一部露出するフレームを気にもかけず、腕部内臓式のガトリングのマガジンを廃棄。ドラム缶よりも巨大な弾倉が道路下の街灯を粉砕した。

 

--------------------------

 

PM00:48

 

(敵前でマガジンチェンジとは。まだ戦闘機動に入る隙があるとはいえ、度胸がある)

 

スネークもまた、ゴリアックに対して油断出来ないという感情を覚えていた。

 

サルとはいえ、流石は軍隊。感情任せに銃を撃ちまくるテロリストとは名ばかりのゴロつき、不平不満を形にして騒いでいるだけの学生運動とは違う。それらには到底ない冷静さと判断力がある。

 

プロトアーヴィングのシステムは、試作機ゆえか、無意味に複雑で無駄が多い。

 

メタルギアをそのままスケールダウンして運用するにはいささか無理があり、機体の鈍重さも相まって、操作感覚が全体的に重いのである。加えて、開発ノウハウが欠落しているせいか、一つ一つの動きがぎこちなく、それもまた鈍重さに拍車をかけているのだった。

 

スネークはその点を踏まえ、機体を操作する。

 

(メタルギアと同じことをしようとするから駄目なんだ。コイツにはコイツなりの強さがある。コイツにしかできない芸当がある)

 

ゴリアックが両腕を胸に叩きつけ、空に吼える。戦いを喜ぶかの如く。

 

プロトアーヴィングに装備された両腕のライフルを斉射。ゴリアックには当たらないが動きをある程度制限することはできる。

 

ゴリアックもガトリングを連射。道路が穴あきチーズのようにぼろぼろになる。

 

機体の負担限界を超えて片方の膝に体重を乗せて、強引にスラローム。両膝の関節に著しい負担がかかるが、リミッターを解除。脆弱な足回りが己の体重に悲鳴を上げるが無視する。

 

そうでなくてはこの動きは出来ないからだ。

 

スネークの駆るプロトアーヴィングは辛うじてゴリアックの射線を回避し、その懐に飛び込んだ。

 

お互いに飛び道具は使えない接近戦の戦い。

 

力強い腕があるゴリアックはまだしも、プロトアーヴィングに(当たり前だが)接近戦用の兵器はない。

 

このままではゴリアックの鉄拳がスネークを潰し、彼を原形を留めぬ姿するだろう。

 

だが、スネークは機体の全稼働ロックを外し、腰を回転させながら、クローアームでゴリアックにも劣らない力強いストレートパンチをかました。

 

「グッ、がっ!」

 

ゴリアックとまともに殴りあったアームユニットは弾け、パーツが宙を舞い、スネークはその衝撃とGで意識を失いかけるが、なんとか持ち直す。

 

だか、その僅かな隙が決定打となり、ゴリアックのパンチがプロトアーヴィングを捉えていた。

 

勝負あったかに思えたが、片方のアームを犠牲にすることでこれをギリギリで回避。のみならず、ゴリアックの股を潜り抜け、背部バーニアを攻撃する。

 

いくら装甲の厚いゴリアックといえども、排熱が必要なバーニアの周辺の装甲は薄い。

 

そのことに賭けていたスネークにとって、ゴリアックが機敏な動きで、反転したのは完全に計算外だった。

 

(距離が開いた!)

 

それは性能で圧倒的に劣るプロトアーヴィングには致命傷である。

 

機体の慣性を殺さず、必要最小限の動きでプロトアーヴィングが反転。正確な機体バランスの把握によってのみなしえる動きでゴリアックに急接近するが、眼前のゴリアックとの距離が一気に離れた。

 

ゴリアックが急速後退したと理解した時には、プロトアーヴィングの四肢に弾丸が食い込んだ後だ。

 

壊れた人形のように姿勢が崩れてプロトアーヴィングが暴れ、爆炎がゴリアックを照らした。

 

--------------------------

 

『警告!機体が持ちません。パイロットは直ちに脱出してください。繰り返しー』

 

(まだ終わっていない!!)

 

アラームをならし続けるコクピットの中でもスネークは諦めない。

 

(まだ手はある)

 

プロトアーヴィングが試作機であると言うことは、不慮の事態に備えてパイロットは脱出しやすくしているということである。

 

脱出を容易にするために背部に設置されたの緊急脱出装置を起動させ、機体とコクピットを連結していたパーツが弾け、ボルトが飛び、スネークは地面に転がり落ちた。

 

プロトアーヴィングをそのまま突進させ、爆発と爆煙を目眩ましにしながら着地。隊員に借りたグレネードランチャーを手に駆け出した。

 

ゴリアックはそんなスネークの姿を見ても、生身だからと遠慮するような優しさもなく無慈悲に銃口を動かす。

 

スネークとゴリアックとの距離はどう足掻いても詰められるものではなく、遠すぎる。

 

ゴリアックがこの戦いを制す。これが二足歩行兵器の圧倒的戦闘。

 

スネークは撃たれて死ぬだろう。

 

ーそんな無意識の油断が戦いの勝敗を決した。

 

スネークはリボルバー式のグレネードランチャーとは別にある武器持っていた。

 

その武器の名はワイヤーガン。ゴリアックがスネークの行動に意味を理解し、狼狽するが、その時には遅く、発射されたワイヤーガンがゴリアックの胸部装甲に打ち込まれた後だった。

 

背部バーニアを稼働させ、空中に退避しようとするが、先ほど撃たれた箇所が今更になって煙を揚げた。

 

ワイヤーが巻き取られ、その先端はゴリアックに固定されているため、当然、スネークはゴリアックのほうに引き寄せられていく。

 

ワイヤーを千切ろうとするが、スネークはもう自機の損害は間違いない角度に入っていた。

 

ゴリアックが愚かではない。ここまで計算ずくで行い、完璧に成功させるスネークが規格外なだけだ。

 

ワイヤーガンを捨て、リボルバーを回転。装填させられた弾を徹甲榴弾に切り替える。対装甲用の弾頭だ。もちろん、ゴリアックの正面装甲を貫通することは出来ない。だが、狙いはその下、重量の集中する股間部だ。

 

「ーそこだ!!」

 

スネークは狙いを外さなかった。足の付け根から股関節にある関節フレームにありったけの徹甲榴弾をぶちこむ。

 

それでもなお、ゴリアックは倒れない。だが、左足の付け根関節、そこに衝撃を加えるだけで良かった。

 

点ではなく、面での衝撃は装甲を突破するには火力不足だ。しかしゴリアックの巨体、その全体重を支える股関節の内部フレームにそれは致命的なダメージだった。

 

スネークが滑り終わり、後ろを振り返った時にはゴリアックの足に大量の火花が散っていた。

 

戦闘車両としてはあまりにも重すぎる上半身を片足で支えられるはずもなく頼みの綱のバーニアも故障。

 

ゴリアックが頭から路面に倒れ込み、粉塵と煙と倒れた際に生じた轟音が隊員達とピポサル達に結果を教える。

 

それまでゴリアックを軸として展開していたピポサル部隊が我先に撤退したのは言うまでもなかった。

 

そしてスネークの勝利、小さな戦士が圧倒的強さを誇るゴリアックに勝った。

 

事態をようやく呑み込んだ部隊長が勝利の絶叫を上げた。

 

--------------------------

 

PM00:58

 

機密情報の漏洩を防ぐためか、スネークが駆け寄った時には既にゴリアックは停止していた。

 

力強いツインアイも消え、足からは今も火花を上げていた。

 

状況終了。スネークは無線機を使い、エルズスに連絡を取る。

 

「こちらスネーク、キングコングを仕留めた。そちらは?」

 

«・・・・・・・・・»

 

返事はない。

 

苛立ったスネークが語意を荒げてエルズスに連絡する。

 

「おい、エルズス聞こえているか!」

 

«うぇっ?あ、スネーク!?ああ、すみませんちょっと考え事を・・・»

 

「大丈夫か?しっかりしてくれ・・・・・そっちはどうだ」

 

なんだか様子が変だが、合流するのが先決だ。

 

«あの女の子が急に外に飛び出して・・・・おいかけてたんスけど、見失ったッス»

 

「・・・・それはあまり良いニュースじゃないな。スカリエッティは」

 

«・・・・・・・・・店に置いてきぼりッス»

 

「あーあ・・・・」

 

帰った時に罵詈雑言を言われる覚悟をしなければ。

 

「兎も角にも、まずは合流しよう。現在位置を送っー」

 

言葉が止まる。ゴリアックの瞳に火が灯っていた。

 

「っ!」

 

«スネーク?»

 

無線機が手からこぼれ落ちたと同時にゴリアックの左手がスネークを掴み、握り潰さんと力を込める。

 

「があああぁぁぁッ!?」

 

グレネードランチャーがパンのようにひしゃげて、スネークの全身を圧迫。息どころか、血管が破裂するかのような激痛に絶叫する。

 

気づいた隊員達がゴリアックに集中攻撃を加えるが、ゴリアックを破壊するよりも先にスネークが圧殺されるだろう。

 

殺される。そうスネークが確信した時だった。

 

 

「―サンダークラック!!!」

 

「―Wレーザーフルバースト!!!」

 

 

烈迫の気合いとともに何かが飛来。人間の反射神経の伝達速度の倍以上のスピードで雷黄の閃光がゴリアックの腕を蒸発させた。

 

驚愕する隊員達を尻目にゴリアックの頭部におびただしい数のレーザーが連続ヒット。終わりなき光の奔流はゴリアックの頭部を消し飛ばすには充分過ぎるほどの火力だ。

 

凄まじい2つの攻撃を受けたゴリアックが大破するのも無理もなく、スネークを手にした腕は関節ごと崩れ落ち、スネークは力なく倒れた。

 

(・・・・・・・・・・いったいなにが?)

 

「     !?」

 

「  !     !!」

 

隊員達がスネークを囲み、口々に何かを言っているが何も聞こえない。

 

全身からおびただしい量の血を噴き出したスネークの意識はそこで途切れた。

 




はいお察しのいい皆さんは気づいていると思いますが、今回登場したプロトアーヴィングの元ネタはMGS4で登場した月光がモデルです。

月光の試作型ってどんなものだろう?というMSXなりの勝手な解釈と想像で書いたものですが、なんというか、使い捨てというか・・・・・・。

もう少し活躍させたいと思いましたが、ミリオンモンキーズのゴリアックと月光が戦ったらと考えると流石にゴリアックに軍配が上がるでしょう。(でもゲームで月光に苦しめられた身としては納得出来ないけどね!)


早く書こうと数えきれないほど思い、書こうと思えば、考えるのが楽しくて書いてなかったり。

そんな私ですが、これからも作品を愛しながら書きます。楽しみながら書きます。

だから投稿が遅くなるのにもご容赦を!何卒、寛大な恩赦を!(時代劇風)

ではまた。次回に続きます。
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