一話にまとめたため、すごく話が長くなっています。
戦闘描写の説明を長くしたのが原因なんですけどね!
エルズスとスネークが地下鉄の電車で戦っていた。
同時刻、彼らから離れた場所で違う物語が動こうとしていた。
夜の都市を多く染み込ませることが出来る場所とは何だろうか?
海だろうか、ビル同士の谷間の間だろうか。
しかし、それよりも闇を多く含む場所がある。
森だ。人工的に作られた都市の森だ。
それはスネーク達から遥かに遠い場所にある。
月の下、夜空の下、広がるは闇を含んだ木々の姿だ。
黒く、深い闇の中、空の月光を受ける場所が一つだけあった。
その場所で闇に同化するように歩くものが二人いた。
一人は初老の男性。年を感じさせないしっかりとした姿勢と滑らかな動き。
そして、眼光は鋭く、刃物のような切れ味を魅せていた。
もう一人は女性。彼の左に付き添うように歩いていた。
長身で瞳も口元も彼と同様に鋭く、睨むように前を見ていた。
黒いコートの下には隣の男と同様の衣装を纏っており、左腰に棒のようなものが入った布袋を下げている。
「さて」
虚空から声が響いた。と、同時に声の周りに電流が迸った。
「それで話しとは何なんだ?こんなところに私を呼んで無事に帰れるとは思っていないだろうな」
姿が表れ、声の位置がはっきりとし始める。
「五年ぶりの再会というのにそう言われるのは驚きだな、デーネス」
「何が五年ぶりだ、裏切り者め」
全身、おびただしい機械が取り付けられ、顔にも深い線が彫られている。
ステルス迷彩を解き、眼前に現れる。
サイボーグだ。
「それでその隣の女は何だ?」
「私の娘だ、デーネス・ケイルトス」
「ふざけるな、貴様に子を遺すことはできん」
「確かにな。だが、『弟子』として遺すことはできる。そうだろう?」
「貴様・・・・・・」
デーネスと呼ばれたサイボーグが全身に怒気を含ませる。
「紹介しよう、私の娘、震電だ」
紹介された震電がデーネスに対し、会釈を送る。
「これでも一騎当千の魔神の子。そして不肖な私の娘だ」
「・・・・・・・・・・」
無をもって返答とした。
「まぁ、今はそれよりも大切なことがある」
「『我々の傘下に入れ』か?」
「話が速い」
「ならば返答はこうだ。―素性も正体も解らぬ者と共に戦う意志はない」
「同意するなら素性を教えるが」
「しかし、目的は言わないのだろう?」
「いや、仲間には全てを打ち明けよう」
「その笑みが本物ならば考えてやったのだか・・・残念だ」
デーネスの言葉に男は口元に手を覆った。
既に目には、笑みが無く、口を覆う手から声が漏れた。
「そうか・・・・・・・・ならば、お別れだ、友よ」
言葉が言い終わらぬうちにデーネスは腕に装備していた機銃で射撃した。
狙いは震電と呼ばれた少女だ。
相手に対して隙を与えず、先生攻撃を仕掛けた。
「―っ、かはっ!!」
長身の少女が車にひかれるが如く背後に吹き飛んだ。
自分の背よりも高く浮き、その数倍も背後に吹き飛んだ。
デーネスが使用した武器は彼の身体に内蔵された長さ1メートルを越える対人機銃。
内部に装填されていた直径2センチの弾丸が三発発射される。
全ての弾丸は人の反応速度を上回り、その威力は震電の衣服を胸側のみならず、弾丸が抜けた背部側を貫通した。
多くのものが飛び散って、身体が地面に落ちた。
そしてそのまま激突。
嫌な音とともに首が正しい方向へと曲がる。助からない場合に、曲がるべき方向へと。
そのまま身体は三回転。生きてはいまい。
「死んだか」
彼は見る。一撃を受けて吹き飛んだ震電は、俯せに倒れても右手を左腰の方へ寄せていた。
動きはなし。デーネスは男に視覚を固定。
「魔神といった少女は死んだぞ。そんな子供を出してきて一体なにが目的だ?聞いたところー」
一拍。
「-聞いたところ、幾つかの特殊部隊や傭兵、テロリストを雇って混成軍を作っているらしいが何が目的だ?」
「・・・・一度にそう何度も質問されるとはな。意外と詮索が好きだな。デーネス」
「それだけのものを貴様は持っていると言うことだ」
一歩、前に踏み出そうとした。
「!」
瞬間、デーネスの視覚に一つの光が飛んできた。
デーネスはそれまでの重い動きを捨てて、左へと跳躍した。
猫のような瞬発力に優れた飛びかただ。
そのまま後ろ足から着地し、地を円弧にえぐった。
そしてデーネスは先ほどまで自分が立っていた場所に異変を確認した。
自分がいた辺りの地面が深さ5メートルほどの円球状に破砕されていた。
・・・・・動くか、人間!!
今の一撃は前に立つ男の放ったものだろう。
デーネスは最終確認をとった。
「質問しよう。―『らりるれろ』は貴様らの敵か」
相手が笑って答えた。
「返答しよう。ー『愛国者』だけが我々の敵だ」
「そうか、ならば、我らの敵だ」
「いい返事だ。是非とも仲間に加えたいところだ」
「願い下げだ」
見たところ、先ほどと変化はない。
男までの距離は約6メートル。充分射程距離内だ。
最初は震電。次はこいつだ。
トリガーに手を掛ける。相手を撃ち殺すために。
だが、ふと、妙な事実にデーネスは気付いた。
構えた己の左腕より下、左の脇腹から何かが突き出していた。
周囲の光をも反射する一枚の細く薄い金属板だ。
人はそれを刃と言う。
「・・・・・・!?」
デーネスは見た。左、構えた自分の腕を死角とし、一人の少女がこちらの腹を刀で突きこんでいるのを。
それも両手、突きの構えで、だ。
一瞬、誰なのか理解出来なかった。震電と呼ばれていた少女だ、と頭脳が勝手に決定しようとして、
「二人いたのか!?」
違う。先ほど吹き飛ばした辺りには、既に少女はいない。
そして、彼女は一言。
「折角、羲父さんに買ってもらった服が撃たれてむちゃくちゃだ」
彼女は素手で握った刀を捻り込む。そうすることでこちらの人工筋肉を歪めて緩め、刃を引き抜いた。
二発目が来る。デーネスも動いた。
戦闘準備の段階から痛覚神経類は全てカットオフしてある。
しかし、その程度は向こうも承知ずみだろう。
だからデーネスは人工筋肉のリミッターを解除。
相手が予測していても反応出来ない速度として速度を上げた。
サイボーグだから出来る芸当に相手も動く。
「!」
デーネスは高速で振り返った。
対人機銃の銃身を震電にバックハンドで叩きつける。
デーネスは震電を見る。
胸のやや下側、こちらから見て右に心臓がある。
震電がこちらの機銃の速度に眉を立てた。両足で背後に跳躍しようとする。
逃げられればいいという動きだ。
速い。
だが捉えた。
避けようとする震電に対して、こちらは強引に動きを変化させて撃った。
撃った弾丸は炸裂鉄鋼弾と呼ばれる特殊な弾丸だ。
命中した相手の内部で弾丸が炸裂し、内側から壊して殺すというものだ。
先ほどは偶然助かったようだが、次は流石に生きてはいまい。
だが、
「一体どういう仕掛けだ!?」
撃たれたはずの震電が既に身体を起こしたつつあった。
彼女は人間のはずだ。サイボーグである自分とは違う。
炸裂鉄鋼弾を撃たれて生きている。しかも、身体が起き上がってくる動きは段々と加速すらしている。
「!」
デーネスは対人機銃で撃った。容赦も一切の迷いもなく。
対する震電は身体を起こした。
前方、自分よりも頭二つ近い機械の巨体が、向かって右手を振り抜いてくる。
食らう、震電はそう判断した。
食らえばまた時間を食うことになる。その間に、
・・・・・羲父さんが危険になる。
それだけはなんとしても避けなければならない。
自分は羲父さんの護衛であり、弟子だ。
もし羲父がデーネスに余裕で勝てるとしても、
・・・・・私は護らなくてはならない。
間違っていく世界を正常にするために。
思い、震電は顔を上げた。足に上手く力が入らない。心臓がまだ完全ではないからだ。
血が四肢に乱れて送られており、完全なものではない。
望む力は不完全に震えたものとしてその身に入る。
つまり、上手く動けない。
・・・・・どうする。
既にデーネスの右手、こちらから見て左側の腕が、自分の方に向かって来ている。
避けられない。そう感じたとき、しかし震電は眉根を詰め、こう思考した。
・・・駄目かもしれない。だが-
思う。
・・・未熟であっても可能性にあがくために!
「・・・・・・・!」
息を吸った瞬間、覚悟が全身を貫いた。
だから、
・・・・・未熟者であっても前に進ませてもらう!!
思いとともに震電は己の身体を思う。まず、左手はまだ力が入らず駄目だ。
続く右手は少しものを掴めるといったところだ。
そして左脚はやはり駄目だが、対する右脚は少しならいける。
ならばと思い、右足を起点としようとして、
「ー」
しかし、震電は相手の動きを見た。デーネスは既に次弾を発射しよううとしていた。が、
それは右腕の内側を主とした動きだ。つまり、外側は安全地帯のはずだ。
だから震電は動いた。右足ではなく、使えない左足を起点としてだ。
相手の右腕の下へ飛び込む。
踏み込んだ左足は当然のように力が入らず崩れた。
だがそれでいい。己でも予測不可能な左へ転ぶような揺れるような動きは、
・・・・・・相手を抜ける。
倒れかけたその身は、ギリギリでデーネスの向かって左手の下へと飛び込んだ。
次に踏み込むは力のある右足。
右の踵を前に身体の中央よりも左へと踏み、左へ倒れる動きをかろうじて受け止める。
そして受け止めて、起き上がるように前へと身体を送り、
・・・・・・右手を。
刀の刃を逆手に握り直して、デーネスの脇へと放物線軌道で叩き込んだ。
速度は込め、力は入れない。
そんなことをしなくとも速度があれば、相手を斬れるからだ。
音がした。何かを断つような音が。
見れば、デーネスの右手首が対人機銃ごと宙を舞っていた。
丁度、その時、風が流れ、大気が揺らめいた。
その風を頼りに震電は走った。時計回りにデーネスの背後をだ。
その場に留まっていたとしても先ほどと同じ手はもう使えないからだ。
その為、彼の姿は確認出来ない。無論、動きもだ。
しかし、彼の動きを知る方法はあった。
吹く風の中で空気の流れが教えてくれる。
大柄なデーネスの身体は無事な左手をバックハンドで振ってくる。
サイボーグの腕力を生かした裏拳は、それだけでも充分な脅威に成りうる。
しかし、その動きによって風の動きが正面から向かってくるのが解った。
そして彼の腕が来た。
震電は次に踏み込む左足でその身を沈めた。
豪腕が己の頭上を横に抜けたのを確認して、右足をつく。
踵を地面に刺すようにして踏み込み、右手の刀を宙に投じた。
無事な右肘を背後に振り、加速をもって身を回した。
回転の勢いをつけて彼女は振り向く。
デーネスがいた。
今やお互いの位置は正反対。震電は身を回した。
デーネスはバックハンドを空振りした体勢で無防備だ。
視界の中央、彼と彼女の間に先ほど投げた刀があった。
震電は回転の勢いを崩さぬまま、力無く伸ばした左手で宙の刀を拾った。
デーネスが刀の先にある震電の顔を見て表情を変えた。
驚愕と驚嘆という二つが混じった表情に。
「・・・・・・・・・・魔神の名に偽りなし!!」
彼の言葉に震電は思う。
・・・・・・私は今、相手を倒そうとしているのだな。
彼という強敵を倒して羲父のように、戦友のように強さとなっていくのだろうか。
解らない。だが、それでも、そうだとしても、強くなるために、
「-あがいてやるさ」
自分自身の可能性とこの世界のためにも。
震電は左手の刀を力を入れずに振り抜いた。デーネスの首に向かって。
いい音が周りに響いた。
「電流を帯びた高分子刀か・・・」
力なくデーネスが言う。
「然り、これは刀の金属結合を極限まで高めるため、高電流を帯びた刀だ」
横たわる彼に男が話しかけた。
高分子刀。その原理は厳密には高周波ブレードとは違う。
高周波ブレードは刀自体を超振動させることによってあらゆる物体を物理的に切断する。
高分子刀は刀自体の金属結合を電流を通すことによって極限まで刀身を物理的に破壊不可能になるまで高める。
その上、余剰電流を刃に流すことによって物体切断面を斬りやすくする。
性能的には高周波ブレードよりも上だ。扱いづらさも。
デーネスは問う。
「『らりるれろ』を倒すことなど不可能だ。貴様らの計画は戦う前から失敗している!」
「そうでもない。方法、手段ならある」
「何・・・・・・!?」
「いいことを教えてやろう。我々の最終目的は-」
「『らりるれろ』からの情報統制の解放か?」
「-我々の最終目的は『天国の外側』だ」
「何・・・だと・・・・・・・!?」
解らない。なぜ、その忌まわしい名が・・・・・・・・・。
「何もなにも無い。言った通り、我々は真の自由を勝ち取る。それだけだ、デーネス」
「・・・・何故だ!?それはこの世界の秩序の崩壊を意味しているのだぞ!!」
「そうする理由も、そうする意味も、そうする価値も、我々は持っている。持っているんだ」
そして一言。
「この世界を本当に本当のものとするために」
「本当のもの・・・・?」
そして、男と震電は動き出す。前に、己の悲願のために。
「お別れだ、デーネス。次に会うときはお互いの立場は変わっているだろう」
「待て、答えろ!本当のものとは何だ!?」
響いた問いに対し、男は笑みを返し、闇へと消えた。
「羲父さん、とどめを刺さなくて良かったのですか?」
震電は疑問の問いを出した。
「構わん、どうせ長くはもたない」
冷淡な返しに震電は気にせず言った。
「震電、予定通り、デットセルに会いに行くぞ」
「ダミーを置いて来たとはいえ、もう『愛国者』の手先がくるとは・・・・・・」
「ああ、予想外だが予定に変更はない」
「はい。羲父さん」
男が苦笑。
「これからはコードネームでいく。羲父はやめろ」
「っ、解りました、羲父さん」
「・・・・・・・・・・・」
「それでコードネームは?」
「これまで通り、あれでいく」
「行くぞ震電、世界を正しい姿に戻すために」
もう一人の蛇、ソリダス・スネークはそう言って未来に歩んでいった。
というわけでソリダス、震電編は一旦終了です。
また、続きを書こうと思います。
ちなみに震電という名前は雷電と同様に第二次世界大戦中に日本軍が開発した戦闘機からとっています。
こいつが今後、どうするか、生暖かい目で見守ってあげて下さい。
次回はエルズス編を書こうと思います。
しばしばお待ちを。