おるがいつかは勇者である   作:amorphous

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あそびにきたよん amorphousです
拙稿ですがよろしくお願いします。異世界オルガだけどオルガたちは最初からここにいた設定です。


『私たちは讃州中学校勇者部! 困ったことはなんでも相談あれ! 成せば大抵、なんとかなる! だよ。最近は知名度も上がってさらに忙しくなるけど、でも●●の部員が増えたよ! よーし、 ●人で頑張っていこう!』

 大赦書史部・巫女様  検閲済


第一話 開花の予兆

 神世紀300年春、四国にある香川県の学校、讃州中学校には変わった部活がある。その部活とは学校にある花壇の手伝いやペットの里親探し、幼稚園児への人形劇も催す、特殊なボランティア活動を行う部活である。その名は『勇者部』

 勇者部に所属している2年生、結城友奈はクラスで帰りの挨拶の号令をかける。

 

「起立、礼。神樹様に、拝」

 

 号令に合わせてクラスのみんなは正面にお辞儀。そして窓へ向かって手を合わせてお辞儀をする。

 

「はい、皆さんさようなら」

「さよーならー」

 

 教師の挨拶にみんなが答え、一部の人は帰宅し、また一部の人は部活に向かう。

 

「ねえ結城さん。来週、ソフトボールの校外試合の助っ人をお願いしたいんだけど」

 

 クラスメイトの一人が友奈に話しかけてきた。

 

「オッケーだよ。前と同じでサードだよね?」

「うん。彼女、まだ怪我治らなくてさー。あ、詳しいことは明日話すね」

「別に今でもいいよ?」

「いや、勇者部って忙しいじゃん? だから明日でいいよー」

「そっか。ありがと〜。……じゃあ東郷さん、行こうか」

 

 友奈は入口近くの席に座っている長い黒髪に水色のリボンをした少女に話しかける。席といっても彼女が座っているのは車椅子である。

 その少女の名は東郷美森。足が不自由で生活はほとんど車椅子に座って行動する。

 

「うん。お願いね、友奈ちゃん」

 

 友奈は車椅子の取手を持ちゆっくり押しながら教室から出ていく。目指す場所は勇者部の部室。

 

 

 

 勇者部の部員は他にもいる。3年生である犬吠埼風は勇者部の部長である。黄色の髪を後頭部の生え際で二つに分け、それをゆらゆらさせながら携帯の画面を見ていた。

 

「……!」

 

 と、その時一通のメールが届く。その文面を読んでいるうちにピタリと動きを止め、風は険しい表情をしていった。いつもノリが良く、明るい性格の彼女には似合わない表情である。

 

「……私の班が、最有力候補……」

 

 彼女は席を立ち扉へ向かう。目指す場所は勇者部の部室。

 

 

 

 犬吠埼風の妹である、犬吠埼樹は1年生である。ショートヘアで姉と同じ黄色の髪をもみあげの位置でゴムで留めている。ハイテンションな姉と違い、彼女は内気でおとなしい性格である。

 

「はぁ〜〜。今日の歌の授業、失敗しちゃったなぁ〜〜」

 

 人前に立つことを苦手とする樹は音楽の授業でまともに歌うことができなかった。次こそは、と意気込むが果たして次はうまくいくのか……。

 軽く自己嫌悪に陥りながら教室を出る。目指す場所は勇者部の部室。

 すると……

 

 

 

 ピロリロリロリーン、ピロリロリロリーン、と奇怪なアラーム音が4人の少女の携帯から鳴り響く。

 

「えっ、何コレ……?」

 

 友奈は戸惑いながら画面を見る。そこには『樹海化警報』と表示されていた。

 

「友奈ちゃん……。私のも……」

 

 東郷の携帯も同じアラーム音と同じ画面が表示されている。だが、周りの人たちはそれを気にしない。東郷は辺りを見回した。

 少ししてアラームが鳴り止む。

 

「あ、止まったよ。東郷さん。なんだったのかな?」

「ええ、止まってるわ」

 

 そう言われて友奈は辺りを見回す。確かに学校が終わったばかりの放課後にしては静かすぎる。

 

「みんな、止まって……る?」

 

 人だけではない。春風により散る桜の花びらも、空を飛ぶカラスも、まるでこの世界全ての時が止まっているようだった。……いや、『まるで』や『よう』ではない。本当に時が止まっているのである。

 

 

 

 1年生の樹とは違うクラスに1人の少年が携帯を手に立っていた。

 

「……何コレ?」

 

 少年は黒い髪のてっぺんにアンテナのような寝癖がついている。男子だが背丈は小さい。小学生と間違えられるほどである。

 少年がクラスから出ようとすると

 

「うぐっ‼︎」

 

 何かを踏んづけた。足元を見ると、いつのまにか何者かが横たわっていたのである。

 

「あ、ゴメンな。……あー、誰?」

 

 見知らぬ男に謝罪しつつ尋ねる。男はよろよろと立ち上がり自らの名を名乗る。

 

「俺は……、オルガ・イツカだぞぉ……」

「あーそ。俺は三日月・オーガス。アンタ、大丈夫?」

「こんくれぇ、なんてこたぁ、ねぇ……」

 

 オルガ・イツカという男は明らかに大丈夫ではなさそうな声で答える。

 

「いいから、行くぞぉ。……待ってんだ……」

「……誰が?」

「わからねぇ。が、とにかく急ぐぞ」

 

 さっきまでの元気のなさはどこへ行ったのか、オルガは止まらない速度で教室の扉へと向かう。三日月も、まぁいいか、と呟き後に続く。目指す場所はーー。

 

 

 

 友奈と東郷は困惑していた。さっきまで自分達は廊下にいたはずだ。それが今、二人は樹木の幹の上にいた。教室もない、どころか学校すら存在しない。あたり一面がおとぎの国と呼べるような異質な空間だった。元から緑が多い土地柄ではあるが今、完全に樹木の国と化していた。

 

「ここ、どこ? 私たち学校にいたのに。全部木だ。ねえ東郷さん、学校は?」

「わからないわ。何がどうなったのか……」

 

 しばらく動けずにいると、ガサガサっと草木をかき分ける音が聞こえた。友奈と東郷はびくっとなり、警戒した。

 

「ああ、よかった。ここにいた。二人ともスマホ所持してたからすぐ見つかったわ」

「風先輩⁉︎ 無事だったんですね。それに樹ちゃんも」

 

 風の後ろに隠れるようにしがみついている樹に目をやる。樹はこくこくとうなづく。怯えているようだ。

 

「風先輩。おかしいんです。最初、みんなが止まって。そしたらいつのまにかあたりが……」

「うん。落ち着いて聞いて、東郷。それに友奈も」

「風先輩は何かご存知なのですか?」

 

 東郷の問いに、風はゆっくり頷いて答える。

 

「あのね。私たちがアタリだった……」

「アタリ……?」

「大赦は各地の学校に勇者適正値が高い人たち数人を"勇者“候補として集めているの」

「勇者?」

「勇者とは大赦が命名した神樹様に選ばれた者たち。すなわち、今の私たちのことよ」

 

 大赦とは神世紀において絶大な権力を四国に展開させている神樹様を奉る組織の名称である。その大赦に風は属しているのだという。

 

「勇者……。それが風先輩が、いえ、私たちのお役目なのですか?」

「察しがいいわね、東郷。とにかく私たちはこれからーー」

 

 言い切る前に風は樹にぐいっと引っ張られる。

 

「? どうしたの樹」

「お姉ちゃん、誰か来るよ…」

「え? だってここには私たち4人しか映ってないけど……」

 

 風は画面を見る。友奈が覗き込むと、画面には4つのマーカーが記されており、それぞれ4人の少女たちの名前が映し出されている。

 

「あ! 風先輩、これで私たちの居場所がわかったんですね」

「ええそうよ。……でもおかしわね。ここには……」

 

 風は警戒しながら樹の指差すほうを見ると

 

「ん? オルガ、ここに誰かいるよ」

「はぁ、はぁ、そっかー」

 

 小柄な黒髪の少年と背丈のある白髪の一部分以外をオールバックのようにした男性が息を切らしながらやってきた。

 

「……えっと、あなたたちは?」

 

 風が尋ねると、彼らは名乗った。

 

「三日月、オーガス……ぁです。」

「俺は…、オルガ・イツカだぞぉ……」

 

 

 

 この日、彼女たちの日常は一旦終わりを迎えた。

 

 

 

 これから始まるのは神に見初められた少女たちと少年が織りなす、勇者の物語であるーー。

 

 

 

 

 

 

 




次回予告

『うわあああ〜〜。ジェットコースター〜〜‼︎』
『いやあああ! 友奈ちゃああーーん‼︎』
『おとなしくしろーーッ!』
『帰ろう……。俺たちみんなで』
『私は結城友奈。私は……勇者になる!』
『こんなところじゃあ……終われねェェーー‼︎』

ーー第二話 無垢なる真心ーー
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