おるがいつかは勇者である   作:amorphous

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拙稿ですがよろしくお願いします。初陣より二戦目、二戦目より今回、と盛り上がるように描きましたが、どうですかね? あと、バルバトスの戦闘シーンはハシュマル戦を参考にした、つもり…。
 ーー君と大気圏降下するガンダムーー

オルガ「満ッ開ッ! …天鎖斬月…」
ミカ「違うよオルガ。それは違う」


『あの日戦った敵は本当に強かった。特に合体したやつ。でも、満開状態の私たちなら充分対処できた。満開を使えば私たちの敵じゃない。……いや、違うか。●●●●●●●●、●●●●●●●●……』

 大赦書史部・巫女様 検閲済


第十話 大輪を咲かせる

 三日月を乗せたバルバトスは地を蹴り、合体バーテックスへ向かっていく。

 

 

 ーー風は未だ水泡の中に囚われている。息が苦しく暴れる力もどんどん無くなっていった……。

 

(こんな、こんなところで……)

 

 風の隣には犬神が心配そうに漂っていた。精霊バリアは原則、勇者に致命傷を与える攻撃を防ぐためにある。今のような徐々に死へ向かっていく状況の際にはバリアできないのかもしれない。

 バーテックスはそこまで計算に入れていたのだろうか……。

 

(みんなを戦いに巻き込んでおいて、私一人がくたばるなんてぇできるわけないじゃないッッ!)

 

 風が再度、もがこうと力を込めた瞬間、風の体が光り輝く……。

 

「ーーッ‼︎」

「風先輩⁉︎」

 

 突如、水泡が弾け、背中に天輪の羽衣が付いた新しい勇者装束を纏う風の姿が現れる。

 その頭上には、黄色のオキザリスの大輪が投影され咲き誇った。

 

「風先輩! それってまさか‼︎」

「……戦いで蓄えた力を一気に解放させる、勇者の切り札ッ」

 

 風は合体バーテックスに大剣の刀身をぶつける。その巨体は後ろへ下がった。

 

「き、効いてる……? あ、アレが、満開……」

 

 夏凛が呟いたあとに遥か後方で青紫色のアサガオの大輪が咲き誇る。

 

「東郷さんも‼︎」

 

 友奈の視線の先には空中に浮かんだ戦艦に搭乗している東郷が見える。

 

「我、敵軍ニ一斉攻撃ヲ実施ス」

 

 東郷は日の丸印のハチマキを額に巻き地を見下ろす。

 クラゲに似たバーテックスが東郷に攻撃するため、地上に出てきた瞬間、東郷は戦艦に付いている無数の砲台からブラスト、レーザー、ミサイルを一気に放ち、バーテックスの体を粉々に粉砕していく。

 

「これだけの高威力なら、封印の儀も必要ないわ……。御霊ごと破壊するッ!」

 

 体は跡形もなく消し飛び、最後に残った御霊もレーザー攻撃とミサイル攻撃を食らい塵になって消滅した。

 

「目標を破砕。次はあの合体したやつを……」

 

 合体バーテックスに向かおうとした東郷だが、卵型の精霊が携帯の画面を見せてくる。

 そこには、高速で神樹へ向かうマーカーが映っていた。

 

「なっ……⁉︎ アイツ、一体いつの間に⁉︎」

 

 実物を見た東郷は驚く。そのバーテックスは何と他の個体と違い、3mほどの身長しかない人型のバーテックスだった。

 走っている敵の下半身は人に近く、上半身は十字の磔に手が二本生えた不気味なフォルムである。

 

「ちょこまかと……」

 

 東郷は砲台を人型バーテックスへ向けるが、敵は入り組んだ樹海の中をわざと進んでおり、東郷の射線を切っている。

 

「っ、どいつのもこいつも……邪魔ばかり……」

 

 すると、今度は樹が満開し白色の鳴子ユリの大輪を咲き誇らせる。

 

「そっちに行くなぁーー‼︎」

 

 樹は両腕や背中の天輪の羽衣からも大量のワイヤーを出す。その射程は通常時よりずっと広く、遠くを走るバーテックスに絡みついた。

 そのまま人型バーテックスは樹の所まで物凄い速度で引きずられていく。樹の元まできた時は既に体はボロボロだった。

 

「大型の相手をしている最中にこそこそと。そんな卑怯なアナタに……、お仕置きっ!」

 

 樹はぐっと右手を握りしめるとたちまちバーテックスは切り身にされていき、最後には手のひらサイズの御霊も切り刻まれて消滅した。

 

「……やるねっ」

 

 三日月は樹を一瞥すると合体バーテックスの元へ辿り着いた。

 コックピット内で手足を使い、バルバトスを操縦する。

 バルバトスは敵に右フックをかまし、続けて左足で蹴りを浴びせる。そして最後にメイスをぶん回し滅多打ちにする。

 バーテックスはその勢いに押し負け地に落下する。

 

「まだだ。こんくらいでへばってちゃダメだろ?」

 

 バルバトスは追い打ちと言わんばかりに倒れた相手に乗っかり、メイスで何度も何度も殴っていく。

 するとバーテックスは周りから無数の火の粉を出現させ、バルバトス目掛けて攻撃してきた。

 

「ーッ! やっと、攻撃してきたっ!」

 

 三日月はすぐに反応し、バルバトスを操作して回避する。敵はようやく''倒すべき相手''と判断したらしい。

 火の粉の一部はバーテックス自身に命中したが、その他はバルバトスへ追尾する。

 

「ぐっ、うっ!」

 

 火の粉が命中する。機体の装甲に少し火傷の跡ができコックピット内に軽い衝撃が走るが三日月自身に怪我はない。

 

「やってくれたな……!」

 

 三日月は舌をペロッと舐めずり、またメイスで殴りつける。

 バーテックスもまた無数の火の粉を生成し、バルバトスへ飛ばす。

 

「パターンが分かれば対策くらいするよ」

 

 バルバトスは大きく後退し敵との距離を空ける。火の粉は一直線上に向かってきた。

 バルバトスはメイスを盾のように構え攻撃を防ぐ。

 

「やっぱり追尾能力重視で威力は大したことないね」

 

 全ての攻撃を防ぎ切ると再度バーテックスに突撃していく。

 

「ーーッ‼︎」

 

 しかし、今度はバーテックスからウォータージェットような水流が放たれた。

 水流はバルバトスの右肩に命中し、装甲が一部剥がれる。

 

「うッ‼︎ このまま叩くッ!」

 

 バルバトスは体を捻り回り込むように水流を避けていく。

 キュルキュルとドリフトするような音が響いた。

 

「……もらったァ!」

 

 回転の遠心力を利用し、渾身の一撃をバーテックスの中心目掛けて食らわせる。

 バーテックスの体の一部分がガラガラッと音をたて崩れていく。

 

「あとは御霊を破壊すればーー」

「ミカくん‼︎ まだ動いてるッ‼︎」

 

 気を抜いた三日月だが友奈の声により我にかえる。

 

「アレ? 何でだ……?」

 

 三日月は不思議に思った。彼は敵の中心目掛けてメイスを食らわせたはずだが、よく見ると中心ではなく敵が持つ大きな分銅部分に命中していた。

 

「攻撃が誘導された……?」

 

 三日月は気を取り直し、今度は確実に敵の中心に向けて攻撃しようとするが、

 

「ん? 反応がない? ……! 右腕がッ!」

 

 バルバトスの右腕は先程の一撃で肩から先が外れて取れてしまっていた。

 三日月はバルバトスの左手でメイスを持とうとするが、先に敵の劫火球が飛んできたので拾わずに回避する。

 

「ミカー! またきた! 今度は水のやつも一緒に!」

 

 敵は劫火球と水泡を生成し、二つ同時にバルバトスへ飛ばす。

 

「っ食らうかッ! ……⁉︎」

 

 避けようとしたがその二つは目の前でぶつかり霧散する。

 

「うっ、しまったッ‼︎ 前が見えない‼︎」

 

 二つがぶつかることで凄まじい気流と蒸気が辺り一面に広がり、全員の視界を塞いでしまう。

 その隙を狙って、バーテックスはバルバトスがいる方向へ水流を放つ。

 

「うぐあああああーーッ‼︎」

 

 バルバトスは水流をモロに食らい、地を転がっていく。

 

「ミカさんッ⁉︎ 三日月さんッ‼︎」

「……ミカ⁉︎ おい、返事をしろォ‼︎」

 

 東郷とオルガは倒れたまま動かないバルバトスに呼びかけるが反応がない。

 

「こ、のォォォーーッ‼︎」

 

 風は大剣のサイズをバーテックス並みに巨大化させて薙ぎ払う。

 合体バーテックスは劫火球を生成させて対抗。二つがぶつかり爆風が起こる。

 

「くっそ……って、あのねぇ、見境なしっていうの……?」

 

 風は体勢を立て直しバーテックスを見るが今度は劫火球を三つ生成させていた。

 バーテックスは劫火球を、風、樹、東郷に向けて放つ。

 

「え⁉︎ こっちにきたぁ‼︎」

「イツカさん‼︎ 私の後ろへ‼︎」

 

 風は大剣で防ぎ樹は間一髪で避ける。東郷は砲撃で相殺させる。

 

「にゃろぉ。満開した三人だけ……」

「私もいんのよぉぉーーッ‼︎」

 

 夏凛は剣でバーテックスに斬りかかった……が、斬れず剣が折れてしまう。

 

「私じゃ痛くも痒くもないってことかよ……。なら‼︎」

 

 夏凛は新たに出現させた剣を地に刺す。

 

「友奈! イツカ! 三人で封印の儀を‼︎ 東郷たちは奴の足止めを‼︎」

「うん! わかった!」

「どのみち俺たちじゃあそれしかできねぇ!」

 

 オルガたち三人はそれぞれバーテックスを囲う位置に移動する。

 しかし、バーテックスは火の粉を周囲に発射させる。

 

「今度は私たちにも……⁉︎、うわああ‼︎」

「キャアアッ‼︎」

「うがあァ‼︎」

 

 夏凛と友奈は攻撃を受け地に横たわる。

 オルガは辛うじて立っていた。

 

「か、あ……、はあ、はあ……」

 

 体が焼けるようだ。しかし、オルガはバーテックスに殴りかかる。

 

「ぐっ‼︎ オラァ、オラァ‼︎オリャア‼︎」

 

 何度も何度も殴り続ける。

 

(奴も相当ダメージ負ってるんだ。たとえこの程度だろうが続けていけばいつかはッ……)

 

 敵は三日月が乗るバルバトスや風たちの攻撃で所々壊れている。修復はせず彼女たちへの攻撃を優先しているのだ。

 

(沈めッ、沈めよ! いいかげん‼︎)

 

 バーテックスはオルガの近くで竜巻を発生させた。

 オルガは風圧で体中切り刻まれるが殴るのをやめない。

 

「俺はなァ、テメェら以上にタフなんだよ‼︎」

 

 だが、オルガは遂には風圧に耐えきれなくなり吹き飛ばされ、背中から落下した。

 

「がッ……。はあ、はあ、ま、まだいけるぞぉ……」

 

 オルガはなおも立ち上がる。しかしもう歩くことすらままならない。

 

「う、……へっ。理解できねぇか、バケモノォ……。俺が何度もテメェに立ち向かうのがぁ……」

 

 オルガはニヤリと笑みを浮かべる。

 

「俺の攻撃がテメェに効かねぇからって……。俺がテメェに歯が立たねぇからって……、俺が……諦めるとでも思ってんのかッ⁉︎」

 

 樹はバーテックスの周りを跳び回る。東郷も風も攻撃しようとするが敵の火の粉の攻撃に阻まれている。

 

「覚えとけェ、勇者にとって一番強力な武器は、満開でも精霊バリアでもねぇ。……諦めねぇど根性だァ‼︎」

「うっ……。オル、ガ……?」

 

 三日月は目を開ける。飛ばされた衝撃だろうか、頭をぶつけて切ってしまい血が垂れている。

 

「俺、落ちて、たのか……?」

 

 三日月はゆっくり手と足を動かし、操縦しようとする。

 

「おい、動けよ。バルバトス……。お前の力はこんなもんかよ……」

 

 三日月は力を込める。

 

「お前の力を……。もっと……、もっとよこせぇ、バルバトスッ‼︎」

 

 途端、バルバトスの目がギラッと禍々しく光り、動き出す。

 

「……⁉︎ ミカァ!」

「この戦いは、これでッ終わらせてやるッ‼︎」

 

 三日月はメイスを拾いにいく。

 バーテックスはバルバトスに攻撃しようと水流を噴射させた。

 ……がバーテックスのバランスが崩れ、水流は的外れの方向へ飛ぶ。

 

「三日月くんッ‼︎ 今ですッ!」

 

 周囲を飛び回っていた樹はワイヤーでバーテックスをくくりつけていたのだ。

 

「東郷‼︎ 私と一緒にミカの援護をーッ‼︎」

「了解です! 風先輩‼︎」

 

 東郷は砲台から無数の弾を発射させ、風は巨大化させた大剣を突き刺す。

 バーテックスは身動きが取れないうえ、それらの攻撃をまともに食らいボロボロになっていく。

 

「殺しきれるッ‼︎」

 

 メイスを左手に持ち、バルバトスは今度こそバーテックスの中心部分へ突き刺した。

 バーテックスの体はみるみる崩壊していく。……が最後に巨大な劫火球を神樹がある方向へ撃った。

 

「これ以上、神樹様を狙われてたまるかァー!」

 

 劫火球の進行方向に風が入り、受け止める。

 

「お姉ちゃん‼︎」

「私が防いでいる間にッ! これだけ破壊した今なら封印できるはず‼︎」

「……私にもいい所残しておきなさいよねッ!」

 

 夏凛は起き上がり、再度剣を突き刺す。友奈も立ち上がり、オルガも詠唱を始める。

 

「勇者部五箇条! ひとぉぉつ! なるべく諦めない!!」

「ひとぉつ! 悩んだらぁ相談ー!」

「ひとォォつ! 為せば大抵なんとかなるんだァ‼︎」

 

 三人は勇者部の活動理念である信条を唱えていく。この切羽詰まった状況においては一番効果的な祝詞だと直感で判断したのだ。

 そして、合体バーテックスの足元から花びらが舞い始める。

 

「よし、これで御霊がーー」

 

 途端、風が受け止めていた劫火球が爆ぜた。

 

「ーーッ‼︎ お姉ちゃあああん‼︎」

 

 風は爆風で地に叩きつけられる。

 

「そいつを倒せぇぇーーッ‼︎」

 

 風は仰向けで倒れながら叫ぶ。

 風から無数の花びらが散り、満開が解除された。

 

「部長の思いを無駄にするなッ! 御霊を壊すぞ!」

 

 友奈はバーテックスから出てきた御霊を見て驚愕する。

 

「何……あの大きさ」

「アレ……。出てる場所が宇宙⁉︎」

 

 御霊は合体バーテックスのどこから出てきたのか、宇宙空間まで突き出るほどの大きさだった。

 

「なにから何まで、規格外すぎる……」

「あんなのどうやってーー」

「大丈夫ッ! どれだけ大きかろうと、御霊である以上やることは変わらないッ‼︎」

 

 友奈はガンガンッと胸の前で拳をかち合わさる。

 

「行こう! 友奈ちゃん! 今の私ならあそこまで運べる!」

「……頼んだぜぇ、東郷さん、友奈ァ……」

 

 東郷は友奈を浮遊戦艦に乗せて宇宙へ猛スピードで向かう。

 

 

 ーー宇宙空間まで辿り着いた東郷は友奈を送り出す。

 

「はぁ、はぁ、友奈ちゃん、あとは……」

「ありがと東郷さん、あとは任せて!」

 

 友奈は御霊へ飛び移る。そして眩い光を放ち、薄紅色のサクラの大輪を咲き誇らせる。

 

「満開ッ‼︎」

 

 満開した友奈の両手には背丈以上はある手甲が備わる。それを友奈は御霊に向けて放つ。

 

「そこだぁぁぁーー‼︎ 勇者、パーーーーンチッ‼︎」

 

 御霊にひびが入った。

 

「一撃でダメなら、百発、いや千発だァ‼︎」

 

 友奈は両手の巨大な手甲を高速で何度も何度も殴りつけた。

 

「勇者……ドラァァーーイブッ‼︎」

 

 そして、御霊は徐々に崩壊していった。

 

「これでぇホントの、終わりだァァァ‼︎」

 

 最後に渾身の一撃をぶつける。……すると御霊は完全に消滅した。

 

「やった……。やっ、たよ」

 

 友奈は力尽きて地球へ落ちていく。

 落ちていく友奈を東郷が抱き抱える。

 

「友奈ちゃん、お疲れ様……、でも私も限界、かな」

 

 東郷と友奈から無数の花びらが散っていき満開が解けた。

 ……このまま二人は大気圏に突入していく。

 

「友奈ちゃん、私たち、これから……」

「大丈夫だよ。きっと、神樹様が守ってくれる……」

 

 すると下からバルバトスが飛んできた。

 三日月は落下してくる二人をコックピット内に入れる。

 

「さすがだねっ二人とも」

「ありがと……、ミカくん」

「心配ないよ。下で樹ちゃんが受け止める準備をしてくれてる。だから二人とも安心して休んで……」

「うん」「はい」

 

 二人は頷き目を閉じた。

 三日月はバルバトスに語りかける。

 

「……地球の重力ってすごいなぁ。ねぇバルバトス、俺はみんなで守り抜いたこの世界でその先をっ、これから先の未来をみんなと共に見たい! お前はどうだ? バルバトス!」

 

 バルバトスの目が光り大気圏を降下していくーー。

 

 落下してくるバルバトスを樹は大量のワイヤーをネット状にして受け止めた。

 

「やったわ! 樹! 見てっアンタが守ったのよ‼︎」

「はい……、夏凛さん、いって、あげてください」

 

 樹から無数の花びらが散って満開は解ける。そして、その場に倒れ込んだ。

 

「私、やりとげ、たよ。お姉ちゃん、三日月、くん……」

 

 樹のワイヤーネットで地上に着陸したバルバトスは輝きを放ち花びらを散らせ姿を消した。

 

「友奈! 東郷! 三日月! ……三人とも、目を、開けてくれよぉ」

 

 夏凛の目から涙が溢れる。……と、そのとき三日月が弱々しく目を開けた。

 

「大、丈夫、だよ夏凛。俺も、二人も」

「うっ、かはっ、ゴホッゴホッ」

「うう、ん? 夏凛、ちゃんだぁ」

 

 夏凛は無事を確認し安堵する。

 

「なんだよぉ。早く返事しろよぉ」

 

 ーーそして、神樹世界はもとの世界に戻った。

 夏凛以外は全員屋上で倒れている。

 神樹を祀るほこらが鈍く光った気がした。

 

「……‼︎ 大赦から連絡が」

 

 夏凛は携帯を取り出す。

 

「こちら夏凛、……はいそうです。バーテックスとの戦闘は終了。私以外の勇者はみんな負傷、速やかに医療班の手配をお願いします。……また、今回の戦いでバーテックスは十二体、全て討伐しました‼︎」

 

 夏凛は最後、弾んだ声でそう告げた。

 

「よお、ミカァ……、生きてるか?」

「わかんない……。オルガは?」

「俺は無事だ……。みんなもだ、生きてる……」

「そっか。俺たちがこの世界のみんなを、未来を、守ったんだね……」

「ああそうだ。やり遂げたんだ。……だからよぉ、止まるんじゃねぇぞ……」

 

 オルガは左手人差し指を三日月に向けて笑った……。

 




次回予告

『本当に大丈夫かァ?』
『ご苦労であるッ! 東郷准尉‼︎』
『私は、これからどうしたら』
『夏凛が来ないと、俺は寂しいよ』
『満開の後遺症、とか』
『お誕生日おめでとう。夏凛ちゃん』

ーー第十一話 勝ち取った先でーー
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