おるがいつかは勇者である   作:amorphous

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拙稿ですがよろしくお願いします。最初本編見た時に、風先輩きっと死ぬんだろうなぁ。って思ってたらそんなことはなかった……んだけど……。
 あと、オルフェンズではバルバトスは単独で大気圏突入できません…。この作品でのそのシーンはGNフィールド並みの加護が働いていると思ってください笑(合体獅子座の残骸を大気圏突入の盾にしようかとも思ったけどね)


『●●●や●●のことはまだ大赦からなんの連絡も来ていない。まるで●●の存在が●●されていないかのように』

 大赦書史部・巫女様 検閲済


第十二話 水平線上の牧歌

 七月に入り、すっかり梅雨は明け暑さが身に染みてきた。

 友奈たち勇者部一同は大赦からバーテックス討伐のご褒美に一泊二日の旅行へ行くようだ。

 

「うわああ〜。海だぁ‼︎」

「フッフッフ。この刻がついに来たわね……」

 

 風は左目の眼帯を抑えながら口にする。

 

『暑さにやられた?』

「樹……。辛辣なこと言うのね」

「アンタがまた変なことやってるからでしょ」

 

 海岸近くの駐車場で友奈たち五人は車から降りる。

 

「……でもミカさんとイツカさん。まだ来ないんですかね」

「まあ、現地集合だしそのうち来るわよ。ささっ準備、準備〜」

 

 風の声で勇者部女子メンバーは更衣室へ向かう。

 

 

 ーー三日月とオルガは別の車で海岸へ向かっていた。運転しているのは共に住んでいる、金髪ロングを後頭部あたりで束ねた女性。藍那・バーンスタインである。

 

「それにしても大赦も太っ腹ですね。御役目を成し遂げた三日月とオルガさんだけじゃなく、私とアトラちゃんの旅費も出してくれるなんて」

「私と藍那さんは温泉旅行に行くから二人を海岸近くで降ろしたら別行動だけどね」

 

 アトラと藍那は前々から温泉旅行に行くことを夢見ており今回、三日月とオルガの旅行の送迎に合わせて行くことを決めた。すると、大赦のとある人物から二人のついで、ということで旅費を出してくれたのだ。

 

「誰って言ったっけ? その太っ腹の人」

「モンタークさんね。大赦の神官で名前からして多分ハーフ。私は何度か話したことがあるんです。……まぁ、神官は大体仮面付けてるから素顔は見たことないんですけどね」

 

 モンタークは藍那を通して、三日月とオルガに旅費を出した。でなければ勇者部メンバーで彼らだけが自腹を切ることになっていた。

 大赦全体としてはまだ彼ら二人のことを知らないものもいるらしい。

 

「ホントは勇者部の奴らの車で行きたかったが、なんせ七人だからな。人数オーバーになっちまう」

「まあ、東郷さんのスペースを充分に保たなきゃ、って理由もあるしね」

「いや〜、それにしても藍那さんとの温泉。楽しみだなぁ」

「アトラちゃんにはいつも家事を任せっきりですからね」

 

 アトラは藍那と楽しげに喋っていたが、ふと三日月の右腕を見る。

 

「三日月、海ではしゃいだらダメだよ? 右手が使えないんだから泳ごうとして波に攫われたら大変だもん」

「そんなヘマはしないよ。……アトラはいっつも過保護だ」

 

 三日月は見えている左目でジト〜とアトラを見る。

 

「まあ、ミカ。アトラは心配してんだよ」

「ホントだよ。……私の後輩がね、小学六年生の頃にクラスメイトが御役目の最中に事故で亡くなっちゃった、って話をしてたの。その学校は私の母校でもあるから……」

 

 アトラは沈んだ表情で話す。

 

「だから心配だよ。三日月とオルガさんのがどんな御役目かは教えてくれないけど、危険なことなんでしょ? ……前に三日月怪我してたし」

「……ごめん、アトラ。悪かったよ」

 

 アトラの気持ちを察して三日月は謝る。

 

「……はい。じゃあこの話はこれでおしまいですね。せっかくの旅行なんです。沈んだ気持ちでは台無しですよ?」

 

 藍那の言葉にアトラと三日月は沈んだ空気を振り払う。

 

「そうだよね。こんなんじゃダメだね」

「うん。そうだね」

「あっ、でねでね。三日月」

 

 アトラは思い出したかのようにポケットから何かを取り出した。

 

「はいこれあげる。三日月がこれ以上危険な目に遭わないようにっておまじない込めたから」

 

 渡されたのはミサンガだった。三日月の左手首につける。

 

「それ、耐水性だから。海でもばっちし守ってくれるはずだよ!」

「いいね、コレ。ありがとうアトラ」

 

 二人の会話にオルガと藍那は微笑んだ。

 

 ……そして、オルガと三日月は海岸近くの駐車場で降ろされて風たちと合流した。

 

「待たせたなァ、お前ら!」

「うぃーす」

「来たわね。もうみんな着替え終わってるから、着替えてきなさい」

「おう」

「……ん? 三日月も早く着替えなさいよね」

 

 オルガは先に更衣室へ向かう。三日月はじ〜と夏凛の白のビキニを見つめていた。

 

「っ! な、なによ三日月。ジロジロと……」

 

 夏凛は頬を染め胸の辺りを両手で覆う。

 

「すごく……可愛い」

「ーーッ‼︎」

 

 夏凛の顔は一気に沸騰する。……もちろん夏の日差しのせいではない……。

 

「なっなにバカなこと言ってんのッ‼︎ ば、バッカじゃないのぉ‼︎ いいから早く着替えてきなさいッ‼︎」

 

 三日月は何食わぬ顔で更衣室へ向かった。

 

「ぷぷ〜。夏凛ってば、青春真っ盛りって感じね〜。……樹はいいの? ミカにその水着誉めてもらわなくても」

 

 風がニヤニヤしながら樹を見る。

 樹はぷいっと顔を背けて友奈たちの元へ走っていった。

 

(あらあら樹ったら、妬いてる〜? 妬いてるのかなぁ〜?)

 

 風はその様子を楽しんでいた。

 

 

 ーーオルガと三日月が着替え終わり、勇者部メンバーはそれぞれ海水浴を楽しむ。

 

「風ー‼︎ こっちの体は出来上がってるわ! 競泳しましょ‼︎」

「望む所よ。瀬戸の人魚と呼ばれた私が格の違いを教えてあげるわ」

「呼ばれてたの?」

『自称です』

 

 夏凛はやっぱりか、と言う顔で風を見た。

 

「何よその目。でも泳ぎは得意よ。幼稚園の頃は5年間水泳習ってたから」

「幼稚園に5年もいちゃダメでしょ」

 

 風と夏凛は振り返ると、樹はバタバタと足踏みをしていた。

 

「ん? どうしたの樹? 熱いの?」

 

 こくっこくっと激しく頷く。海に入るためスケッチブックが持てない樹は身振り手振りで表現し、猛スピードで海に入る。

 

「ん〜。樹は海でも可愛いわねぇ」

 

 

 ーーその様子を友奈と東郷は見ていた。

 

「お〜。樹ちゃん張り切ってる〜。よし東郷さん、私たちも行こうか!」

「ええ」

「すみませーん!」

 

 友奈はライフセーバーの女性を呼んだ。東郷はすでに海用の車椅子に乗り換えており友奈と女性に支えられながら海へ入って行く。

 

 

「……風? どうしたの?」

 

 競泳のため位置についていたが、風は自身が着ているオレンジのビキニを隠すようにしながらキョロキョロと見渡す。

 

「ん〜。あんまり女子力振りまくとナンパとかされそうなのよね」

「何言ってんのよ。5年早いわ」

「何よ! アンタだってさっき三日月にナンパされてデレデレしてたくせに」

「はああ⁉︎ してないわよ、っていうかナンパじゃなくてーー」

「スキありっ‼︎」

「ああ‼︎ ちょっとズルいわよ‼︎」

 

 風が急にスタートを切り、夏凛も慌てて後を追った。

 

「……ほほお。なるほどなァ」

「オルガ?」

 

 オルガは三日月とパラソルの下で眺めていたが立ち上がる。

 

「ナンパすっか!」

「は?」

 

 三日月は突然のことにキョトンとしている。

 

「ナンパだよナンパ。ミカは海に入れねぇだろ。だったらナンパぐれぇしか楽しめることねぇだろ?」

「いや、あるでしょ」

 

 オルガは海で遊んでいる友奈たちを見渡す。

 ピンクのフリル付きビキニを着た友奈。

 青と白のボーダービキニを着た東郷。

 バスト部分が黒く緑のワンピース水着を着た樹。

 

「どれも最高じゃあねぇか。だがな、あいつらは中学生だ。……なんかこう、ほら、わかるだろ? ミカ」

「わかんないよ」

「どっかにいねぇかなァ〜。特上がよ」

 

 オルガは他の海水浴客を見渡す。

 

「お! いるじゃねぇか。あの女。上から85、58、85! 完全無欠のボディだ」

「おーい。オルガ、警察沙汰になんないでよ」

 

 オルガは目算で謎の数列を並べ、知らない女性の元へ駆けて行った。

 

「よぉお姉さん。この暑さよりも燃え上がるような体験を俺としねぇかぁ? アンタを思う存分愉しませてやるからよぉ、止まるじゃねぇぞ……」

 

 何を言ってるのかわからないが、オルガは左手人差し指を女性に向ける。

 

「……」

 

 女性はつまらなさそうな顔でオルガには目もくれずスタスタと歩いて行った……。

 

「ミカ……、介錯を頼めるか?」

 

 女性に無視されたことにショックを受けてオルガはガクッと膝を落とす。

 三日月は頭を掻きながらオルガに銃を向けた。

 

「ありがーー」

 

 プシャーと水がオルガの顔面に命中する。

 

「わっぷっあぼぼぼぼ……ってミカお前!」

 

 オルガはびしょ濡れになる。

 三日月は笑いながら片方の水鉄砲をオルガに渡した。

 

「ほらオルガ。ナンパ以外にも海ならではの楽しめること、あるよ」

「へっ……。ならやるかァ!」

 

 オルガと三日月は水鉄砲を使って撃ち合いをして楽しんだ。

 

「なんだよ……。結構当たんじゃねぇか……。へっ」

 

 

 ーーそれからしばらく経ち、勇者部メンバーは砂浜でスイカ割りを始めた。

 樹が目隠してゆっくりスイカの元へ歩いて行く。

 

「スイカ割りなんて子供じゃないんだから……」

 

 パラソルの下で寝そべる夏凛をよそに、みんなで指示する。

 

「樹ちゃん、右ですよ」

「樹〜。もうちょい左」

「樹ちゃん上だよ」

「三日月、上って何よ……」

「違うよ樹ちゃん。そこで上上、下下、左右左右、B A! だよ‼︎」

「何のコマンドよ、友奈」

「違うぜ。L左左、L右右、△○だァ!」

「だから何のコマンドよぉ⁉︎」

 

 樹は色んな指示に翻弄されあたふたしている。

 

「ってそこよぉぉ樹‼︎ 振り下ろしなさいッ!」

「いや、夏凛が一番張り切ってんじゃない」

 

 樹はその指示に従い、頭上高く木刀を掲げる。

 

「ぷっ、あっはっはっは〜。何よ樹。その大袈裟な構えは!」

「いやアンタの真似でしょ?」

「え? 私、あんなん?」

「あんなんよ」

 

 夏凛と風が喋っている間に樹はシュッと振り下ろし、スイカを割った。

 

「すっごーい。ドンピシャだよ!」

「さすが樹ちゃん。筋がいいわ」

 

 樹は目隠しを取りながら会釈する。

 

「勇者部の未来は明るいわね。次期部長は確実よ!」

 

 東郷の言葉に樹は手を左右に振って、そんなことない、と合図する。

 

「……うん。うまいね、樹ちゃん」

 

 スイカを食べながら三日月は褒める。

 すると樹はタッタッタと小走りでスケッチブックを取りにいき、何かを書いて三日月に見せる。

 

『そういえば、来る時にかりんさんの水着ほめてたよね?』

「……ん? ああ。そうだったね」

『私のはどうかな?』

 

 樹は少し照れてもじもじとしている。

 三日月は頭にハテナが浮かんでいたが、

 

「あー。そうだね。言い忘れてたね。樹ちゃんも可愛いよ。似合ってる」

 

 三日月はふっと微笑む。

 それを聞いて樹は俯いた。頭からぷしゅ〜と蒸気が出ている。……もちろん、夏の暑さのせいではない……。

 

「〜〜〜〜ッ‼︎」

「何やってるんですか? 風先輩」

 

 風が悶えながら言葉にならない声をあげている様を、東郷と友奈はスイカを食べながら見ていた……。

 

 

 ーーそれから日が暮れ始め、勇者部メンバーは片付けをして近くの旅館へと向かう。

 

「う〜。お腹すいたよ〜」

「まず飯だな」

「俺もハラ減ったー」

 

 七人は旅館に辿り着いて中に入る。

 

 日は沈み、夜の帳が下りても、旅行という名の勇者部の合宿はまだまだ続いてく。




次回予告

『この子、東郷さんに似てるかも〜』
『門限を破る子は銃で撃ち抜きます』
『ダメだよオルガ。……それはダメだ』
『漢のロマンだろうがッ‼︎』
『背後を取られた! や、やるわね……』
『ウへッ、ウヘヘヘヘ。ヘッヘッヘッへッヘ〜〜』


ーー第十三話 夜風が運ぶ淡い期待ーー
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