おるがいつかは勇者である   作:amorphous

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拙稿ですがよろしくお願いします。……今更ながら自分の計画性の無さには呆れるよ。本編では1話で終わった合宿に3話もかかってしまった。ま、いっか。スローペースでも笑 
 ん? 夏凛と樹に建てられたフラグ? これからそれどころではなくなるからちょっと待ってて。


『私は事故の影響で足が不自由になり、記憶も少し飛んでいるらしい。らしいというのは、実感が湧かないからだ。記憶喪失とはこういうものなのだろうか。……なんて楽観的なのだろう。忘れちゃいけない●●●●●●●●●●なのに』

 大赦書史部・巫女様 検閲済


第十四話 回り始める歯車

 明け方、友奈は目が覚めて体を起こす。

 

「……おお、仲良しさんだ」

 

 見れば、夏凛の布団の中に風と樹が入っていた。川の字になっている。

 風は夏凛に抱きつき、樹は風に抱きついている。……若干挟まれている風が苦しそうか。

 

「あれ? 東郷さん」

 

 東郷は布団の近くにある椅子に座り海を眺めていた。

 

「友奈ちゃん。おはよう。早起きさんだね」

「東郷さんこそ。おはよう」

 

 そして東郷はまた海を見つめる。いや、正確には今の向こうにそびえ立つ壁を。

 

「東郷さん?」

「……え? どうしたの? 友奈ちゃん」

 

 東郷は、少し悲しげな表情を浮かべていた。

 友奈はふと東郷が手にしているリボンに目が止まった。それはいつも東郷が髪につけているものだ。

 

「それ、とても大切にしてるよね」

「ええ、私が事故に遭ったとき、握りしめていたものだって両親は言ってた。……誰のものかもわからないんだけど、このリボンは自分にとってとても大切なものだと思うの」

「そっか……」

 

 東郷はリボンを大事そうに抱えたまま、また遠くを見る。

 

「……東郷さん、ちょっと散歩しない?」

 

 友奈は東郷が車椅子に乗るのを手伝い外へ出た。

 

「……」

 

 二人が出ていく様子を窓から三日月は見ていた。

 

 

 ーー友奈は東郷と共に海岸沿いを歩いていた。

 

「東郷さん、何か考えてるでしょ?」

「……!」

 

 東郷は友奈に言い当てられ、ドキッとした。

 

「そっか。わかっちゃうんだね」

「昨日の食事の時にちょっと。違和感を感じる程度だけどね」

 

 東郷は少し笑ったあと、また遠くを見つめる。四国を守っている壁を。

 

「ねぇ、本当に戦いは終わったのかしら?」

「え?」

「昨日風先輩が言ってたでしょ? バーテックスに星座の名前が与えられたって」

「ああ。夏の大三角座とかだね」

「そんな星座はないよ……」

「えっへへ〜」

 

 東郷の表情は少し暗くなる。

 

「大赦がバーテックスに名前をつけたのは、風先輩の言葉からするとあの総攻撃の前後。戦いが始まってから1、2ヶ月後になるわ」

「……うん」

「そのタイミングでいまさら名前をつけるのは少しおかしい気がするの。由来の星座だってそう、ウイルスから生まれた存在のはずなのに……。名前の慣例性が思いつかない」

「た、単に十二体いるから、じゃない? それに大赦の方々も連絡するのが遅れていただけかもだし」

 

 友奈の説明に東郷の真顔のまま答える。

 

「……そう、かもしれないわね。夏凛ちゃん、いつもレスが遅いってボヤいてたもんね」

「そうそう、きっとそうだよ! 気にしたって仕方ないよ」

「そうだね」

「それに、大赦の人たちも問題ないって言ってたから私たちが心配することは何もないよ。なにより人類をその死のウイルスから守ってくださった神樹様がついてるんだし」

「ありがと、友奈ちゃん」

 

 東郷は安心したように微笑んだ。

 

「……でもバーテックスって何で瀬戸内海側から来るのかな? 香川に私たちがいるから太平洋側から来たら危なかったよね」

「それは、神樹様があえて結界に弱いところを作って敵を通しているからだよ」

「そうなんだぁ」

「神樹様は四国という狭い領域で、私たちが生活に困らないよう恵みを与えてくれてるの。だから、結界の防御に力を使い過ぎると恵みが無くなり内側から瓦解してしまう恐れがあるの」

「あっ。それアプリの説明に書いてあったね!」

 

 友奈と東郷は神樹の壁を見つめる。

 

「でもよかった〜。それって神樹様に確かな意思があるってことだよね。私たちのこの状況だって何とかしてくださるよ」

「……そうよね」

 

 そのまま二人は旅館に戻った。

 

 

 

 ーー朝日は完全に昇り勇者部メンバーは駐車場で海を眺めている。

 

「今日は海が騒がしいわね」

「どうしたんだ? 部長」

「なに、そのポーズ、左目痛いの?」

『暑さにやられた?』

「……樹、辛辣なこと言うのね」

「アンタがまた変なことやってるからでしょ」

 

 ふと、友奈は疑問に思う。

 

「あれ、なんかデジャヴ?」

「昨日もあったよね。こういうの」

「だあああ‼︎ ハイハイ、話を戻すわよ」

 

 戻すも何も、話なんて始まっていなかった気がするが……。

 

「一応、勇者部の夏合宿って体でここにいるわけよね? だから勇者部のことについて少しくらい話し合わなくちゃね」

「勇者部のこと?」

「そうよ。夏が終われば秋には文化祭があるのよ。去年は私たち三人しかいなくて何もできなかったけど、今年は七人。男手もある!」

 

 オルガと三日月に視線を送る。

 

「なるほど文化祭か。おもしろそうじゃあねぇか」

「でしょでしょ」

「で、なにやるか決めてるの?」

「それが未定なのよ」

 

 三日月の質問に風が悩んでいると友奈が意見を出した。

 

「じゃあ演劇やりませんか?」

「演劇?」

 

 夏凛が首を傾げる。

 

「そうそう。昨日の夜、風先輩がゲームしてたじゃないですか。魔王に立ち向かう三人の勇者の物語。それを設定とか変えて劇をするんです!」

「ゲーム?」

「ああ、ミカたちは知らないわよね。これこれ」

 

 風は三日月とオルガにゲームソフトを見せる。

 

「『ガチで勇者に恋しなさいッ』……変わった名前だね」

「……いいじゃねぇか。演劇、俺もやりてぇよ」

「ホントに! やったー!」

「そうね。劇なら前に似たようなのを子供達にしたことがあるから、その経験も活かして」

「へぇ。ならこのゲームはとても役に立ちそうね。持ってきてよかったじゃない、風」

「まあ、これが理由じゃなかったけど、まあいいか!」

「あ、でも……俺、難しいセリフとか覚えられないや」

「それは練習でみっちり鍛えてあげるわ」

「うん」

 

 三日月と風はやる気に満ちている。

 

「では、脚本や配役を車の中で話し合いましょう」

「オーケー。三日月たちは電話で参加ね」

「わかった」「了解!」

 

 三日月とオルガは同時に答える。

 

「よーし、文化祭、この七人で絶対に成功させるぞぉー!」

「おおーッ‼︎」

 

 勇者部は拳を上げ高らかに答えた。

 その後、アトラと藍那が合流して勇者部は車で海を後にしたのだった……。

 

 

 

 

 

 ーー翌日の学校で。

 

「……みんな、これ見て」

 

 風の持っているアタッシュケースを見る。

 その中には……。

 

「私たちが使ってたスマホが、戻ってきてる……」

「勇者システムがなくなって返却されたのね」

 

 と、夏凛は言うが、風は首を横に振った。

 

「違うわ。さっき大赦からね、連絡があったのよ」

 

 風はケースの中のスマホを手に取った。

 

「バーテックスに生き残りがいたらしいの」

「……えっ⁉︎」

 

 勇者部メンバーは驚く。

 

「そ、そんなっ……」

「戦いがまだ、続く……」

 

 オルガと三日月は無言でケースを見つめていた。

 

「みんな、いつも急なことでごめん」

「風先輩は何も悪くないですよ!」

「そうね。大赦の連絡が急じゃない時なんてないしね」

 

 夏凛は鼻で笑い皮肉を言う。

 

「……」

「大丈夫だよ。東郷さん、あの総攻撃を凌いだ私たちなんだから。今回も勝てるよ」

「うん。そう、よね」

 

 東郷は歯切れが悪くそう口にしたが、友奈に心配させまいと笑顔を作った。東郷が心配しているものは''そのこと''ではないのだが。

 

「じゃあ、早く終わらせて劇の内容を詰めていかなきゃ」

「でもいつ来るかわかんないから、先に準備しておきましょ」

「そうだね夏凛ちゃん!」

「……じゃあ俺たちも準備すっかァ!」

「うん!」

 

 風は空気が暗くならないことに安堵した。本当に友奈には不思議な力があると思う。場を明るくする、そんな力が。

 そして、全員は劇の準備のため各々必要なものを揃えるべく、今日は解散した。

 

 風は家に戻り返却されたスマホをいじっていると、

 

「……‼︎ うわああああ。な、なんだぁ⁉︎」

 

 突然、スマホから突風が起こり、二体の精霊が現れた。

 

「……! 犬神ッ!」

 

 うち、一体は犬神だった。

 

「あと、あんたは……、私の新しい精霊?」

 

 こくこくっと頷くその精霊は、動物のイタチに似ており、尾の部分は鎌になってる。

 すると、自室にいた樹が駆けてきた。

 

「樹? ってその精霊」

 

 樹の後ろには木霊ともう一体、頭部に円形の鏡がついているわたあめのような精霊がフワフワ漂っていた。

 

「アンタも……」

『お姉ちゃんも』

 

 スケッチブックを見て風は頷く。

 

「私たちもミカと同じ二体目の精霊が与えられたってことね……」

 

 精霊が増えたのは別に三日月が特別だった訳ではなかった。

 おそらく、今後の戦いに向けて大赦が用意したのだろう。

 もしかしたら、友奈、東郷、夏凛にも同じことが起こっているかもしれない。

 もちろん、最初から精霊がいないオルガは当てはまらないかもしれないが……。

 

「……フッ」

 

 風は左目を押さえて薄ら笑う。

 

「なんか……、本当にこの左目が疼いているみたい……」

 

 

 

 

 ーー止まって、もう動き出すことがないと思われた歯車が回り出した。……回り出してしまった。

 

 

 少女たちが抱いた期待を嘲笑うかのように……。

 

 




次回予告

『新たな戦力ってヤツか……』
『何で私には、無いのよ』
『邪魔する奴は全部敵だ』
『やめなさい夏凛! 部長命令よ‼︎』
『別に倒してしまっても構わないんですよね?』
『何この数ーッ‼︎』
『会いたかった〜。わっしー』
『久しぶりだね。オルガ団長』

ーー第十五話 望まれない邂逅ーー
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