あと、何と鉄血のオルフェンズと結城友奈のクロスオーバー作品が先に誕生していることをやっと見つけました。この作品とは無関係ですがそちらもご一緒にどうぞ。 と、先輩を敬い宣伝しときます笑
【オルガイツカは勇者である】 by村田殿(ハーメルン版)
『私たち勇者はみんな、人の●●●●●。バーテックスはみんな、●の●●●●●』
大赦書史部・巫女様 検閲済
翌日、勇者部メンバーはまた部室に集まった。
「え⁉︎ じゃあ風先輩たちにも新しい精霊が?」
友奈は風と樹の周りにいる精霊を見る。
「そうよ。私と樹も昨日気付いてね。どうやら大赦がスマホをアップデートする際に新しく追加してくれたらしいの』
「新たな戦力ってヤツか……」
友奈と東郷もスマホを触り精霊を出していく。
「私にも増えたし、東郷さんはこれで四体目だね」
「ええ、そうね」
友奈には牛鬼ともう一体、それは猫に似た精霊で尾の部分に火を纏った車輪が付いている。
東郷の四体目の精霊は青白い光をピカピカ放っている電球に目が付いたものである。
「全員、気をつけッ!」
東郷の一言に四体はビシィと整列する。
「わあ、相変わらず躾が行き届いてるね」
「アンタたちも、東郷の精霊みたいにちゃんと躾とかなさいよね」
夏凛は全員の精霊を見渡す。そして、牛鬼が菊幢丸に食いつかないようにじっと睨みつける。
(それにしても、オルガはともかく……)
夏凛には菊幢丸以外に与えられた精霊はいなかった。
「何で私には、無いのよ」
夏凛はうっかりそう声を漏らした。
「まあまあ、夏凛は一体だけで充分ってことでしょ」
「そうそう。夏凛ちゃんは強いんだから」
「……! え、ええそうね。なんてったって最強の勇者だからね」
「その設定、まだ生きてたのね」
「せ、設定ゆーな!」
勇者部メンバーは笑いに包まれた。
「……でも、これだけ見るとちょっとした百鬼夜行ね」
「言えてるな」
「いっそこの精霊たちも劇に出させましょうよ! そしたら盛り上がること間違い無し!」
「ダメよ友奈ちゃん。精霊は一般の人には見えないんだから」
「あっはっは〜。そうだったねぇ」
友奈の提案はあえなく東郷に棄却された。
「できるとしても裏方とか? スポットライトの操作とか?」
「精霊をそんなことに使わないでよ?」
「わかってるわよ。言ってみただけ」
そして、その日は解散となった。
ーーそれから数日経ち、バーテックスが攻めてきたのは讃州中学の夏休み前日、終業式の日であった。
「……ちょっとごめんなさい。犬吠埼樹さんのお姉さん、ですよね?」
明日から夏休みが始まる。劇のことで脚本の内容を考えていた風は教師に呼び止められた。
「はい、そうですけど。樹の担任の先生ですよね」
「そうです。……あのお時間いただけますか?」
風は樹のクラスの教師と共に空き教室に入る。
教師の話の内容は樹の授業の様子についてだった。
「……え? あの子が何か問題でも起こしたんですか?」
「いえ、そうではないんです。ただ、樹さんは声の調子が戻らないんですよね。今日もクラスで一学期の思い出を振り返って発表することがあったんですが……」
その話によると樹の場合は彼女が書いた内容を教師が代わりに発表することで終結した……のだが、クラスでは少しぎこちない雰囲気に包まれていたという。
「クラスの皆さんは樹さんのことを大切に思っています。実際、声が出ない彼女の手助けをしてくれたり、彼女が伝えたいことをノートやスケッチブックに書いている間待ってくれたり、と。……ですが今後も続いていくようだと樹さん自身が変に気負ってしまうかもしれません。二学期になればまた音楽で歌の授業が始まるので……」
風は教師の説明をただ聞いているしかなかった。おそらくは半分ほど聞き流しているかもしれないが。
「……なのでこの夏休みの間、こちらの病院にかかってみてはどうですか? 私の知り合いが勤めています。香川の中では大きな病院ですので」
教師はそう言ってその病院の名前と連絡先、知り合いの名前を書いて風に渡した。
風はそれを受け取り、見つめていた。
(ああ……。これ、あの時の病院だ……)
医師の名前は知らないが、書かれていた病院の名前は総攻撃のあと、風たちが一時的に入院していたところだった。
「……わかりました。ありがとうございます……」
風はそう言って教師と別れた。
(この病院の医師が、樹の声はすぐに治るって言ってたんだけどなぁ)
風は重い足取りで部室へ向かう。あれから、何度か大赦にメールで満開の後遺症の続報を聞いてはいるが、めぼしい情報はない。
「樹は、私たちは、なんでこんなーー」
その時、景色に違和感を感じた。そして、スマホからあの奇怪なアラームが鳴り響く。
「……」
風は走り出し、無言のままみんなの元へと急ぐ。
……そして景色はまた神樹世界へと変貌する。
友奈たちはすでに勇者装束に変身しており高台から走ってくる敵を見下ろしていた。
「……あれ? あの変質者って樹ちゃんが倒さなかったっけ?」
視線の先には、下半身はヒト、上半身は十字の磔に人間のような腕が生えたバーテックスがいる。
確かに、総攻撃の際に樹が切り刻んだバーテックスと瓜二つである。
「もともと、二体で一組のバーテックスかもしれないわ」
「二体一対……。だから双子座ってことね」
風はスマホの画面を見る。そこには薄桃色のマーカーに『双子座』と表示されていた。
「スマホのアップデートに伴ってこれもバージョンアップしてるみたいね」
東郷も自分のスマホを見る。
(たった一体の生き残りのためにいまさら……?)
風は全員に指示を伝える。
「よし、敵さんはまっすぐこっちに走ってきてる。でも多分狙いは私たちじゃなくて神樹様ね。だから敵の通り道に罠を張りましょ」
「罠。ですか?」
「ええ。樹は敵の進路あたりにワイヤーを展開させて、東郷はそこに敵が向かってくるよう狙撃で誘導して」
樹はこくっと頷く。東郷は双子座を見つめたままでいた。
「そして敵が樹のワイヤーにかかったら、他の全員で封印の儀と御霊の破壊」
「なるほど。名案じゃねぇか」
「さすがです!」
オルガと友奈は風を褒めた。
「……ですが風先輩。誘導はしますが、別に倒してしまっても構わないんですよね?」
東郷はライフルを敵に向ける。
「え、ええ。倒せるなら……」
「……いえ、冗談です。樹ちゃん、お願いしますね」
東郷は笑顔で樹を見る。
樹は少し戸惑ったが、こくりと頷きワイヤーを張りに行く。
(……? 東郷さん?)
友奈は東郷の様子を疑問に思った。
「んじゃあ、コイツを倒して今度こそゲームセットと行こうぜ!」
「う、うん! 劇の準備の続き、続き〜」
「ああ、俺たちの日常を邪魔する奴は全部敵だ」
オルガ、友奈、三日月は臨戦態勢に入る。
東郷もスコープを覗く。
「アイツを倒せばこの延長戦も終わりに」
引き金を引き、東郷はバーテックスの両サイドを交互に撃っていく。
敵は構わず全力でまっすぐ、ただひたすらに走り続ける。
「……! 今よ樹!」
風の掛け声で樹はぐいっと腕を振る。すると、周りに仕掛けられていたワイヤーが収縮し敵を絡め取った。
「もらったぁ! 封印開始ッ!」
「これでゲームイズ、オーバーだァ!」
「おとなしくしろォーッ‼︎」
夏凛、オルガ、風でバーテックスを囲い、御霊を出現させる。
三日月と友奈は出てきた御霊を壊そうとする……が。
「何この数ーッ‼︎」
手のひらサイズの御霊が大量に増殖されていく。前にも数が増える能力を持つ御霊はあったが、あれの比ではない。
「クソ、一個一個じゃ埒があかねぇ!」
オルガはひとつひとつプチプチと足で踏み潰していく。
三日月もパンパンパン、と拳銃で壊していく。
「はあああああ‼︎」
風は大剣で薙ぎ払うと、そこから突風が発生し御霊を風の刃で切り刻んでいった。
「……! これが私の新しい力!」
風は隣を見ると二体目の精霊である尾が鎌のイタチが頷いていた。
すると、銃口がついた小型ドローンのようなものが次々と御霊を破壊していくのが見えた。
それは、東郷の新しい武器である。東郷の横には新たに加わった電球のような精霊がいた。
(なるほど。私のように元々の武器に能力が付与されるケースと東郷みたいに新しい武器として与えられるケースがあるってわけね)
しかし、御霊は依然増殖し続ける。壊す量よりも増える量が勝っているのだ。
「ふふっ。イタチごっこ……ってわけね。……なんて寒いギャグ」
風は自身の精霊を見て苦笑する。
すると、周りから巨大なネットが現れ増殖する御霊を包んでいった。
「おお‼︎ 樹ちゃんナイス!」
樹は小さくガッツポーズをとる。前に似たような御霊の能力を見ていたので樹は同じやり方で対処できた。
「よし、これで一気にカタを付けられる。私が全部切り捨てるわ‼︎」
夏凛が斬りかかろうとするが、風が叫ぶ。
「やめなさい夏凛! 部長命令よ‼︎」
「な、なんでよ」
「最後は私がやるわ!」
「手柄の横取り⁉︎」
「違う! これは部長である私の仕事なのッ!」
風は満開のことを考えていた。もう既にみんな戦ってしまっているが、もしこの数の御霊を全て壊して満開可能になったら……。なってしまったら……。
「そこだぁーーッ‼︎ 燃えろッ‼︎」
考えている風だったが先に友奈が御霊に一撃をおみまいする。
御霊は燃え、それがどんどん他の御霊に燃え移っていき、一気に燃え広がる。
樹の頑丈なワイヤーネットの中で御霊は遂に灰と化して消滅した。
「友奈、アナタ……」
「えっへっへ。新しい精霊の力を試したくて〜」
友奈は精霊を撫でながら笑っている。
友奈の手甲に記された花弁にはまだ、光は灯っていない。
「……」
その様子に風たちは何も言えず、樹海が元に戻っていくのを待っていることしかできなかった。
……夏凛たちはいつも通り、学校の屋上に立っていた。
神樹を祀っているほこらが光り輝いた気がした。
「……? ねぇ、今なんか光らなかった?」
「……いや、気が付かなかったけど?」
風はあたりを見渡す。……がどこにも変化はない。
「……っていうか友奈は? いなくない?」
『他の人もいません』
「そうね、東郷たちもいない」
どこを探しても屋上には風、樹、夏凛の三人しかいなかった……。
ーー友奈たち四人は風たちとは離れた場所にいた。
「あれ? ここは?」
「どこなんだ一体」
「部長たちは?」
「……見て、あれ瀬戸大橋じゃないかしら」
四人の目の前には決壊した瀬戸大橋が見えていた。
「ホントだ。じゃあ結構離れた場所に来ちゃったんだね」
「……ていうか何で今回だけ?」
三日月は讃州中学校があると思われる方角を見つめていた。
「確かにな、それにーー」
「会いたかった〜。わっしー」
「!!?」
どこからか聞こえたその声がオルガの言葉を遮った。
「だ、誰だ⁉︎」
「た、確かこっちから……」
友奈は東郷の車椅子を押しながら、オルガと三日月は走って声がしたと思われる場所へ向かう。
その声の主はほこらの裏側にいた。
否、ベッドの上に寝かされていた。
「ようやく呼び出しに成功したよ〜」
「なんだ……コイツ」
「な、何でベッドがこんな所にどーん、と……」
ベッドに寝かされている少女、だと思われる人物は全身を包帯で巻かれ、患者服を着た痛々しい姿だった。
包帯で巻かれていないのは口と左目だけ。
その左目で友奈たちを見つめていた。……友奈たちというより東郷を。
「貴女が戦っているのを感じて、ずっと呼んでたんだよ。わっしー」
「わっし……。ワシ?」
友奈は瀬戸大橋に止まっている鳥を見た。しかし、あれはワシではなくカラスである。
「彼らを呼べたようだね……。さすがだよ」
「……ええ⁉︎」
今度は長身で金髪の謎の男がスタスタと歩いてきた。
その男は目にかかっている前髪をイジりながらベッドで寝かされた少女の隣に立つ。
「……久しぶりだね。オルガ団長」
ーー途切れ途切れになっていた線が少しずつ、繋がっていく……。
次回予告
『乃木……って』
『そのリボン、似合ってるね……』
『このシステムを変える方法はないんですかっ⁉︎』
『あれは……、天使だよ』
『俺の祖先……?』
『勇者は大赦のオモチャじゃねぇんだッ‼︎』
ーー第十六話 神々の贈り物ーー