前回のあらすじ(笑)
・オルガ、情けなく女子中学生に縋りつき足蹴にされるww ←真面目にあらすじやれよッ!
〜この作品が暗い話になってきたのでここだけでも明るくいこう〜
風「あれ〜? 私の大剣、どこ行ったぁ?」
友奈「ごめんなさい風先輩。蹴り飛ばしすぎちゃいました」
・・・・・・
マクギリス「どうやら大赦本部にデッカい剣が飛んできたらしくてね」
園子「あらま」
マクギリス「クジャン公に刺さったみたいだ」
園子「マジウケる〜ww」
『私は●●の勇者でもあった。●●の●●と一緒に戦っていた。とても、とても大切な思い出だった。……だから神樹様は●●として●●●●●●のだろうか』
大赦書史部・巫女様 検閲済
ーー神世紀299年春、一人の少女は車椅子に座り、目の前の家を眺めていた。
その家はこれから少女が住むことになる引越し先の家である。
「随分と立派な家、私の家ってこんなにお金持ちだったかしら……?」
少女が敷地内に入ろうとすると、声をかけられた。
「あれ? あなたがお隣さん? 今日引越して来るって聞いてた」
「え、ええ……」
赤色の髪で桜の花びらのヘアピンが目立つその少女はスタスタと歩み寄ってきた。
「お母さんから私と同い年だって聞いたんだぁ。なら、この春から中学生だよね?」
「そ、そう……です……」
車椅子の少女は気後れしているが、構わず笑顔で話し続ける。
「そうだ! ここらへんまだわからないでしょ? なんなら案内したあげる!」
少女があまりにも真っ直ぐな瞳で笑いかけてくるので、彼女もまた釣られて笑った。
そして、少女は眩しいくらいの笑顔のまま彼女に手を差し出す。
「私は結城友奈。あなたのお名前は?」
車椅子に座っている少女は自分の名を口にする。
なぜかはわからないが、懐かしさを感じながら。
「東郷、美森……」
ーー讃州中学校の一年生となった友奈と東郷は入る部活を探しながら廊下を歩いていた。
「ん〜、なかなかコレだッて部活はないなぁ」
「友奈ちゃん、ソフトボール部に誘われたけど断っちゃったもんね」
「押し花部とかあれば良いんだけど、この学校にはないみたい」
「押し花部がある中学校の方が珍しいかも」
友奈と東郷は上の階に行くため階段の手すりにある台に、東郷が座っている車椅子を乗せる。
「でも、この学校って素敵だよね。足が不自由な人が階段を昇り降りできるように機械がついてる!」
「階段昇降機と呼ばれるものね。私にはとても助かるものだわ」
「ユニバーサルデザインっていうんだっけ? こういうの。あれ? バリアフリーかな?」
「バリアフリーじゃないかしら?」
「そう、それそれ!」
東郷を乗せた台はゆっくりと上昇していく。
「もしかしたら前に、この学校に私と同じで足の不自由な人がいたのかも」
「ん〜。ひょっとすると東郷さんが入学してきたから、かも」
「それはないんじゃないかしら。私が引越して来たのはこの春から。それから付けたんじゃ間に合わないもの」
「それもそっかぁ」
友奈は傷や汚れのついていない、まるで新品のような階段昇降機を見ながらそう言った。
二人が廊下を歩いていると、金髪の女子に話しかけられた。
「ちょっとそこのお二人さん」
「……? あなたは?」
「ふふふ、私は犬吠埼風。二年生よ。あなたたち二人にピッタリの部活があるのよ」
「どちらの勧誘なんですか?」
「それは、勇者部よ‼︎」
「……聞いたことない部活ですね」
「何ですかそれ……。超カッコいい響きじゃないですかっ!」
「えっ」
東郷とは逆に友奈は興味津々であった。
「あっわかっちゃう? フィーリング合うねぇ」
風は勇者部の宣伝チラシを友奈と東郷に渡す。
「勇者部の仕事っていうのは他の部のスケットとかボランティア活動とか、世のため人のためになることを勇んでやる部活なのよ」
「世のため人のため」
東郷もその言葉にひかれる。
「神樹様の素敵な教えよね〜。でも私たちくらいの年頃は、なんか恥ずかしいとか思っちゃうじゃない? そこを自らすすんで行う。……これぞ勇者部」
友奈はチラシを見ながら目を輝かせる。
「私、ずっと憧れていたんです! 勇者とかそういうカッコいい存在に」
「なるほど、''勇者''という独特な名前をつけることでインパクトを与え、存在感を確立させているわけですね……!」
東郷は何やら勇者部の存在意義を考察している。
「まぁそこまで深い意味はないけどね……」
それが、友奈と東郷が勇者部と出会った瞬間だった。
ーー入部してからというもの、東郷が作った勇者部のホームページがコアな人たちに響き、噂になっていった。
風と友奈は運動神経が良いので、運動部から引っ張りだこであり、東郷も中学生とは思えないほどIT面に強く、情報処理能力も長けている。家庭料理やお菓子作りも得意なので文化部から絶大な支持を得ていた。
一年も経たないうちに、三人のことを知らない人はほとんどいないほどの有名人になったのだ。
「四つ目は……、悩んだら相談、と」
「こういうの好きだなぁ。五つの誓いっていうの……!」
風は紙に勇者部五箇条と呼ばれる、この部活における五つの信条を書き記していく。
「五つ目は何にしようか?」
「最後ですから、ビシィとこれまでのをまとめてくれる一言が欲しいですね!」
「じゃあ、こんなのはどう。''為せばなる、為さねばならぬ、何事も''」
友奈の頭にハテナが浮かんだ。
「旧世紀の偉人、ヨーザン・ウエスギの御言葉!」
「え、えーと。為せばなる、為さねばならぬ、ほととぎす?」
「友奈ちゃん、違う偉人の言葉が入ってるわ」
「もうちょっとわかりやすいのを……」
「確かに長すぎて紙からはみ出しちゃうか」
風と友奈が悩んでいると、東郷がパッと思いついた。
「あっ。なせば大抵なんとかなる。ってのはどうですか?」
「いいねぇ。それいただきッ!」
こうして勇者部五箇条は完成し、三人のスローガンとして掲げられた。
ーー神世紀300年春。
「い、犬吠埼樹です。よ、よよよ、よいよい、よいひくお願いひますッ!」
新入生として風の妹、樹が四人目として入部してきた。
彼女はガチガチに緊張している。
「私の妹としては女子力低めだけど。凄くいい子よ? 仲良くしてあげてね」
「よろしくね! 樹ちゃん!」
「よろしくお願いしますね、樹ちゃん」
「は……はい」
樹は最初こそ緊張でまともに喋れなかったが、友奈や東郷が彼女と積極的にコミュニケーションをとり、その緊張を和らげていった。
それから数日後。四人は幼稚園に来ていた。
彼女たち勇者部は今や学校外まで知られ、その力を借りたい者たちが後を絶たない。
今日もまた園児たちに人形劇を披露するためやってきたのだ。
「樹ちゃんにとっては初仕事だねっ」
「はっはい! 頑張りまひゅ……あっ!」
樹は噛んでしまい顔が真っ赤になる。
「別に気負わなくてもいいわよ。樹はその紙に書かれたセリフを言ったタイミングで指示されたBGMを流せばいいだけ」
「う、うん……!」
「東郷も樹のフォローとナレーション。よろしくね」
「はい! 任せてください」
「さぁてと……。クックック。今日は子供たちを盛大に楽しませてくれるわァ……!」
「お姉ちゃんがもう役に入ってる……!」
風から怪しげなオーラが漂う……。
「さっすが風先輩‼︎」
「友奈ァ……。お主も頼むぞよ」
「了解であります魔王‼︎」
「……勇者が魔王に敬礼しちゃダメだよ?」
敬礼する友奈に東郷は冷静につっこんだ。
……そして、人形劇が始まった。
前半は滞りなく進んでいく。
村人たちの願いを聞き入れた勇者が魔王と対峙し決戦の時を迎える。
「……だからもうこんなことはやめよう! 今から村人と話し合えばきっと分かり合える!」
「その村人共が我をこんな場所へ追いやったのだ!」
友奈と風は用意した舞台セットの裏から人形を付けた右手だけ伸ばしている。指先を動かすことで自由に人形を操作できる。
「いまさら話し合いなどできるものかっ! 我は皆を滅ぼす」
「そんなの間違ってーー」
ドンッ! と役にのめり込んだ友奈が勢いに飲まれ左手をセットにぶつけてしまった。
「「あっ‼︎」」
ガシャーン、とセットが倒れて風と友奈は丸見えになってしまった。
「あ、や、やっちゃった〜〜!」
「……子供たちに当たらなくて良かったぁ」
しかし、このアクシデントで周囲に沈黙が流れた……。
「……う〜〜。勇者ぱぁぁぁぁんち!」
「ーーッ痛ったぁぁ‼︎」
友奈は突如、勇者人形で風の持つ魔王人形に攻撃した。
「ちょ、ちょっと! 今、話し合いがどうとか言ってなかったぁ⁉︎」
「え、あ、え〜と。や、やっぱり拳で語り合うのが一番ッ!!」
「さっきと言ってること違うじゃないッ‼︎」
完全に風と友奈は役を忘れてしまってるような気がする……。
「……!」
樹は風から視線を送られていることに気付いた。
(よ、よし、ここで決戦のBGMを……)
樹がパソコンを操作して音楽を流した……が。
「「!!?」」
かけてしまったのは魔王BGMであった。
(あ、あぁ〜〜!)
「ここでまさかの魔王テーマ⁉︎」
友奈も樹もパニクっている。
「クックック。やられたらやり返す……。倍返しだァァ‼︎」
風は今にも友奈ごと襲い掛かろうとする勢いである。
(……! まずいわ。友奈ちゃんが)
東郷はひらめき、園児たちに呼びかける。
「みんな! 勇者がピンチよ! みんなで応援して助けるのっ!」
東郷は右手をぐーにして頭上へ掲げる。
園児たちも真似をして勇者を応援した。
「がんばえ〜ゆうしゃ〜」「まけないで〜」「やっちまええ」
風はその声に苦しむ。
「ぐううッ! みんなの声援が我の力を奪ってゆくぅぅぅ……」
(いまだッ‼︎)
「勇者ぁぁぁ、ぱあああんちぃ‼︎」
友奈は再び勇者を操り、魔王を殴った。
「ぐはァァーッ‼︎」
魔王はガクッとバランスを崩した。倒れそうだった体を勇者が支える。
「これで、わかってくれたよねっ! これからはずっと友達だよっ!」
友奈はニッコリと笑う。
(このやろぉ〜〜。どの口がいいやがるぅぅ〜)
風は心の中で友奈を恨む。……人形越しに痛みがじんじん伝わってきた。
「と、いうわけで勇者の奮闘で魔王と仲直りし、祖国は守られましたとさ。めでたし、めでたし」
東郷がシメの言葉を言い、人形劇は終わった。
園児たちは喜び、称賛の拍手を彼女たちに送る。
ーー帰り道。四人は今日の劇を振り返っていた。
「いや〜なんとかなりましたね〜」
「なんとかって……、大分危なかったわよ!」
「でも、子供たち、喜んでました」
「セットが倒れたときにはどうなるかと思ったけど……。東郷の起点で助かったわ」
「ホントですよね〜。フォローありがとっ」
友奈は車椅子に乗った東郷の頭に顎を乗せた。
「ほんっと……、東郷には助けられてばっかりね」
「なんだか、頼れるお姉ちゃんができた感じです」
「なッ⁉︎ ここに素晴らしい姉がいるでしょぉぉぉ⁉︎」
風は樹のこめかみをグリグリする。
「痛い痛いっお姉ちゃん痛いっ」
東郷と友奈はその様子を見て笑いあった。
「トラブルもあったけど楽しかったし、結果オーライってやつだねっ」
東郷は夕陽に照らされる中で、ふと涙が流れ拭った。
「……うん」
東郷も友奈も風も、頭をグリグリされ続けている樹も、四人は土手の上から夕陽が沈むのを眺めていた……。
ーーそしてその数日後、勇者部の少女たちは、本当に勇者になった……。
「……っ!」
東郷は目を開けた。
自分が乗っているタクシーが目的地に着き、停止するのと同時に。
先程までのは東郷の過去をなぞった夢……。
「ありがとうございました。ここからは大丈夫です」
東郷はタクシー運転手の助力で車椅子に乗った。
そして、病院に入りそこで仮面を付けた一人の神官と会った。
「やあ。待っていたよ。ファリド殿から話は聞いている」
その口ぶりからマクギリスの協力者だろう。背中に届くほどの長い銀髪の男性だった。
「彼女はこの場所にいるよ」
そう言って神官は病院内の見取り図を渡した。
東郷の目的地は地下一階のとある部屋。
(彼女に会って、確かめたいことがある)
エレベーターを使い地図に示された部屋の前にたどり着いた。
その部屋は『第2霊安室』と書かれたプレートが貼られてあった。
東郷はその部屋をノックする。
「どうぞ〜」
中から聞き覚えのある声がした。東郷の会いたい人の声が。
東郷が部屋に入ると、ベッドの上で寝かされた少女ーー乃木園子は少し驚いていた……が、何かを察したかのように微笑む。
「嬉しいな〜。きっと来てくれるって思ってたんだ〜」
東郷はその部屋の異様さに目を奪われた。
部屋中に御札や紙人形が散りばめられていた。……少しだけ悍ましさを感じる光景だ。
「どうやって知ったの〜?」
「あなたたちと別れた数日後、私の家に手紙が送られてきたの。大赦からね」
「ああ〜、そういうことか。あの人、貴女のお家まで届けに行ったんだね〜」
「じゃあやっぱり……」
「ふふふっ。マッキー先生だね」
乃木園子はうっすらと笑う。
「あっ。そういえばマッキー先生からね。プレゼントがあるらしいんだ〜」
乃木園子は視線を東郷とは反対の位置にある机に向けた。
その机の上にはチョコレートの詰め合わせが置いてあった。
「わっしーが来たら渡してって。私は和菓子の方が好きだよって言ったんだけどね〜」
「……ありがたく受け取っておくわ」
「……あっ」
乃木園子はハッと何かに気付いた。
「ごめんね〜。''東郷さん''だったよね〜。気を抜いたらすぐに出ちゃって〜」
「わっしーでも構わないわ」
東郷の静かに言い放った一言に乃木園子は驚いた。
「だって私は二年ほどの間、''わしおすみ''という名で過ごしていたのだから……と言ってもその頃の記憶はないのだけれど」
「……すごいっ。よくわかったね」
「家に届いてたって手紙。宛先にはね''東郷様方 鷲尾須美''って書かれてたのよ」
それを聞いた乃木園子は呆気に取られ、プッと吹き出した。
「よく親に見つからなかったね〜。あの人、やることが大胆というか……」
「……私は鷲尾須美として、先代の勇者としてあなたたちと共に戦っていた」
東郷は気にせず話を続ける。
「そうだね〜。鷲尾家は大赦でもトップクラスの名家。御役目の性質上、わっしーはその鷲尾家の養子になったんだよ」
「私の親はよく了承したわね」
「迷信だけど東郷家は元々鷲尾家の分家らしくてね。御役目の重要性や名家からの頼みとかで断れなかったんだよ〜」
「……そして、戦いの中で満開し、記憶の一部と足の機能を持っていかれた……」
「うん。わっしーは''自立''と'思い出''を持っていかれたんだよね〜」
「……?」
東郷は明らかに含みのある乃木園子の言い方に疑問を持った。
「これはマッキー先生の仮説なんだけどね。神樹様は私たちにとって大切にしているものを代償として持っていく傾向にあるんだよ〜」
乃木園子は東郷の足を見つめていた。
「わっしーはね。養子になることに対して何を思っていたのかは教えてくれなかったんだけど、大抵のことは一人でできるくらいしっかりしてたんだ〜」
「それが自立?」
「多分あの頃のわっしーは親の手を借りなくても立派に生きていけるくらいたくましかったよ〜。現に生みの親から離れても泣き言ひとつ聞いたことなかったしさ〜」
でも……。と乃木園子は声のトーンを落とした。
「散華の結果、誰かの助けなしでは生活できないようになっちゃった」
「……!」
「記憶だってそう。わっしーは私たちの事を本当に大切に思ってくれてた……。なのにね」
「な、んで……そんな残酷な事を」
「勇者が人間であることを忘れないように正しい絶望を与える。それが散華」
乃木園子から言葉の抑揚が無くなっていく。
「どうして……。神樹様は人類の味方じゃなかったの……?」
「……神様だからね〜。そういう面もあるんだよ〜。人類の味方だけど決して私たち個人の味方では無いんだよ〜」
東郷の悲しげな表情が目に入り、いつもの話し方に戻った。
「そもそもーー」
そこで言葉を区切った。その言葉の続きを告げていいか迷ったから。
……しかし、ここまできた以上、教えないわけにはいかない。その先に彼女がどのような決断を下そうとも。
「落ち着いて聞いてね……」
そして、乃木園子は語り出す。人類がおよそ300年間隠し続けてきた残酷な真実を……。
次回予告
『まるで地獄じゃないッ!』
『アラームが鳴り止まないよ⁉︎』
『これが、真実の世界、だとッ』
『そっちは任せたわよ。三日月』
『死んじゃダメだよ? 夏凛』
ーー第二十話 愛ゆえにーー