おるがいつかは勇者である   作:amorphous

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拙稿ですがよろしくお願いします。今回は夏凛と三日月の戦闘回です。
…それで一話使いました。
本編では夏凛の無双で五体のバーテックスを倒していましたが、この作品の敵は若干強めに設定しているので三日月に肩代わりしてもらいました。三日月と夏凛が命散らす覚悟で挑むくらいに強いと思う。
ちなみに、この作品では勇者部の中で一番強いのは夏凛です。流石完成型勇者。唯一倒せるとしたら遠距離から一方的にドカドカ撃ちまくる東郷さんか……。(夏凛の間合いに入れば負けるけど)
 この話においても夏凛・三日月の強さと根性が皆さんにも伝わればと思っておりますゆえ。

蟹座「よっしゃ‼︎ 久しぶりの登場キタァァァーーッ‼︎」
蠍座「まあ、前世の記憶とか人格とかは無くなっちゃってるけどね」
射手座「ん? 何か赤い服着た女がこっちきたゾ?」
蠍座「まるで赤い彗星ね…」
蟹座「よし、軽くとっちめてやっか」



『私の精霊にはもうひとつの●●があるらしい。その●を呼べば、そいつはただ''敵を倒す''という使命に忠実な''●''に変わる。●●も●●●もできない。大赦は私の●●の影響とか言ってたけど、はるか昔のことだから疑わしいわね』

 大赦書史部・巫女様 検閲済


第二十一話 紅く散る

 乙女座、山羊座、魚座に立ち向かっていく三日月は周囲を飛び交う量産型バケモノを撃ち殺しながら前進して行く。

 三体の中で、魚座がまず地中へ潜った。おそらく三日月を下から突き上げようとするだろう。次に乙女座が下腹部から爆弾を発射させる。そして、山羊座は体を回転させる。

 三日月は魚座に位置を特定されないように走り続ける。そして、銃で爆弾を攻撃。

 回転しながらドリルのように突進してくる山羊座は跳んで回避する。

 三日月が跳んだ瞬間にまた爆弾が飛んできた。

 

「くっ」

 

 三日月は再度撃ち落とす。この距離だと乙女座本体には届かない。

 もう少し接近したいところだが近付き過ぎると乙女座の羽衣が攻撃してくる。その攻撃の回避は難しいと考え、三日月は爆弾を撃ち落とし続ける作業に徹した。

 

「やっぱり、右目と右腕が使えないのはキツいな」

 

 視覚が半分無いことで頭を左右に振らなければ十分な視野が確保できない。

 右手が使えれば銃を持ちかえて右からの攻撃も対処しやすくなる。

 

「……まだか、まだなのか」

 

 三日月は乙女座と山羊座の攻撃を掻い潜りながら立ち回っていく。

 ……一見、ジリ貧な戦いに思えるが三日月が狙っているのは戦い続けることで満開可能になることだった。

 跳び回る三日月に業を煮やしたのか魚座が地中から出てきた。

 

「おっ、と」

 

 付近にいたのでその振動により若干フラついた。

 

「なんだ……? ガス?」

 

 地中から飛び出した魚座は周囲にガスを散布させた。

 

「……マズイな。距離をーー」

 

 その瞬間、乙女座が爆弾を飛ばしてきた。

 その爆弾はガスに触れると同時に爆散した。

 三日月はガスから距離を取っていたためその攻撃を受けることは無かったが衝撃波が普段より広範囲に広がり三日月にまで及ぶ。

 

「ーーぐっ」

 

 三日月は樹木に激突した。背中に痛みが走る。

 

「やばい、かも」

 

 三日月が怯んでいるのを狙い、また乙女座が爆弾を飛ばしてきた。

 

「ーーッ‼︎」

 

 三日月は、自分の背中に痛みとは違う違和感を感じたーー

 

 爆弾が命中するーー

 ……あたりから爆煙が立ち込めた。が、同時にその爆煙をかき消すように光が集まって輝いた。

 そして、頭上にはハッキリと、白色のシクラメンが咲き誇る。

 三日月はーー

 

「……」

 

 三日月は屈強な機械兵器の中にいた。

 その機械兵器はバルバトスに瓜二つのフォルム。

 二体目の精霊、バルバトス・ルプスが巨大化しているようだった。

 兜部は逞しく、胸と両肩の装甲はバルバトスよりも厚い。そのうえ胸の装甲は青色。両肩の装甲は赤色で全身が白色主体のトリコロールカラーだ。

 バルバトス自体もトリコロールカラーであったが、今回は特にそれが目立つ。

 そしてその手にはメイスによく似ているが打撃部が刃状になった大剣、ソードメイスを掴んでいる。

 

「……うん。ちゃんと動く」

 

 三日月は右手を握ったり開いたりする。

 そして、三体に視線を向けて機械兵器に語りかけた。

 

「おい、バルバトス……アレはお前の獲物なんだろ?」

 

 三日月はその機械兵器を変わらず、バルバトスと呼ぶ。

 

「腕だろうが足だろうが心臓だろうが……、好きなだけくれてやるから、見せてみろよ。お前の力」

 

 バルバトスの眼が禍々しく光ったーー

 

 

 

 ーー夏凛はバケモノを斬りつつ、蠍座、蟹座、射手座の三体に突撃していく。

 

「食らいなさいッ!」

 

 両手の双剣を投げた。前回は蟹座に刺さって容易く撃破できていたが、今回は蟹座は板を構え、双剣を弾いた。

 そして、残りの板を夏凛の方へ飛ばす。

 同時に、蠍座も尾針で夏凛を攻撃する。

 

「……?」

 

 夏凛は飛んできた板も尾針も回避した、が疑問を抱く。

 

(今、私の足を狙った?)

 

 夏凛はまた、飛んできた板をしゃがんだり、横に跳んだりしながら避け続けた。

 また、尾針が飛んでくる。

 夏凛は上に跳び回避。

 ……今回も蠍座は夏凛の足を狙ってきた。

 

(どういう事? アイツは的確に勇者を殺しにくるって聞いてたのに)

 

 夏凛は蠍座と直接戦うのは初だが、前に友奈たちや大赦から情報共有されていた。

 蠍座は常に勇者の心臓目掛けて攻撃してくる。現に、二戦目では友奈も東郷も精霊バリアが無ければ心臓を貫かれていただろう。

 

「……やばっ! ーーぐあっ‼︎」

 

 尾針に気を取られ過ぎた夏凛に蟹座の飛ばす板が命中した。

 態勢を崩した夏凛は二枚目、三枚目の板に叩かれ地に落下した。

 そこを狙い、蠍座は尾針で攻撃。

 夏凛は転がるようにして避ける。……今、避けなければ左腕に尾針は刺さっていただろう。

 

「ま、まさか……」

 

 夏凛はよろけながら立ち上がる。

 さっきから二体が攻撃してくるだけで射手座は何もしていない。

 

「コイツら、私で遊んでる……?」

 

 蟹座と蠍座はわざと夏凛が死なないように、急所ではない部分を攻撃し続けているのだ。

 板による攻撃も叩かれる程度の威力だった。

 

「違う。コイツらは''知ってるんだ''。私を殺せない事を。精霊バリアが守る事を!」

 

 バーテックスたちは先の戦いを学習しているのだ。勇者が致命傷たりえる攻撃を精霊が必ず防ぐ事を。だから、致命傷にならない程度の威力、部位を攻撃してきたのだ。

 

「な、舐めやがって……」

 

 夏凛は真上に跳躍し、そこから蟹座と蠍座に一本ずつ剣を投げつけた。

 しかし、蟹座は板で防ぎ、蠍座は尾針で弾く……。

 

「くっ、そぉぉぉぉーーッ‼︎」

 

 夏凛は新しい双剣を出現させ直に斬りかかろうとするが、また蟹座の板に阻まれる。

 すると、その間に蠍座が尾針を使わず、夏凛に突進してきたのだ。

 

「うぐああァァァ‼︎」

 

 夏凛は地に背中から落下した。菊幢丸は守らなかった。

 

「……にゃろう……」

 

 夏凛は立ち上がる。軽傷だが、ダメージを負ったという事実に悔しくて唇を噛む。

 

「……仕方ないわね」

 

 夏凛は左肩を見る。

 昨日、風を止めるために戦ってからずっと花弁に光は灯ったままだった。

 

「流石に犠牲なしって訳にはいかない、か……」

 

 夏凛は考えた。この状況を打破する策は、二つ……。

 一つは満開。散華の代償によってはこれ以上の戦闘は続行不可になるかもしれないが、これが一番の特効薬ではある。

 そして、もう一つは……。

 

「……ねぇ菊幢丸。私に力を貸してくれない?」

 

 その言葉で夏凛の精霊は現れた。

 

「アンタと満開の両方でアイツらを殲滅する」

 

 夏凛は自身の精霊に向かって叫ぶ。

 

「行くわよ……。''義輝''ッッ‼︎」

 

 

 

 ーー三日月の駆る機械兵器、バルバトス・ルプスは魚座に向かって突進していく。

 

「いくぞッ、バルバトス‼︎」

 

 魚座は地中に潜ろうとしたがその途中、尾ヒレを掴まれて引き摺り出された。

 

「満開解けるまで地中に居られちゃ困るからね」

 

 ルプスは魚座の尾ヒレを掴んだまま地に何度も叩きつける。

 乙女座と山羊座はいつのまにか接近し、羽衣攻撃とドリル攻撃を行う。

 ルプスはそれに対し魚座を盾にして、二つの攻撃をガードした。

 そして、魚座を振り回し、乙女座と山羊座にぶち当て吹っ飛ばした。

 二体を飛ばした後、魚座に馬乗りになりソードメイスを手に持って頭部に突き刺した。

 

「まず、一体目‼︎」

 

 御霊を正確にソードメイスで突き抜かれ魚座は消滅した。

 

「次はデブの方だ」

 

 ルプスは先程飛ばした乙女座の方へ向かう。

 態勢を立て直した乙女座は無数の爆弾を飛ばしまくる。

 ルプスはソードメイスを消し、新たに現れた小型のメイス二本を両手に持って爆弾を払い退けていく。

 乙女座は今度は羽衣を使って攻撃するが、左右に高速でサイドステップを踏んで回避していく。

 小型メイスを消し乙女座に右ストレートを食らわせる。そして、ソードメイスを再出現させ、振りかぶって斬ろうとする。

 しかし、その攻撃は乙女座に届かなかった。

 

「ーーッ⁉︎」

 

 周辺の大地が揺れてルプスは機体のバランスが崩れ片膝をついた。

 

「……‼︎ アイツか!」

 

 見ると山羊座が四本の突起物を地面に突き刺し、振動させて地震を発生させていたのだ。

 

「邪魔をするなッ!」

 

 その場でジャンプしたルプスは山羊座に向けてソードメイスを投げつける。

 突起物を刺したままで動けなかった山羊座はその攻撃をまともに食らい体にソードメイスが突き刺さった。

 

「これでーー」

 

 その瞬間、乙女座から放たれた爆弾攻撃が至近距離で命中した。

 

「ぐっーー。ッ‼︎」

 

 そして、今度は羽衣攻撃が頭部へ命中。

 ルプスの兜が割れ、顔の右半分が切り裂かれた。

 

「片方のカメラがーー」

 

 ルプスのツインアイのうち、右側のカメラが死んだ。

 さらに乙女座は羽衣をルプスの右足に括り付け機体を振り回す。

 

「ぐぅあああッッーーッ」

 

 引き摺り回されるルプスは衝撃で徐々に装甲が剥がされていく。

 

(このままじゃやばいなッ)

 

 コックピット内も高速に揺れ、上下左右の間隔を失っていく。三日月も揺れにより所々に体をぶつける。

 

「……はなせよ……」

 

 三日月はその中でも操作し羽衣を引き千切ろうとするが切れない……。

 

「……だったらいらないよ。千切れろォ足ィィッ‼︎」

 

 振り回される中、三日月はなんとルプス自身の右足を出現させた二本のメイスで破壊したのだ。

 羽衣から解放されたルプスは片足のまま、遠心力により吹っ飛ばされて地を抉る。

 

「右がなくてもッ!」

 

 ルプスは片足に力を込め、バネを使ってタックルした。

 そして、馬乗りになり両手を使って乙女座の頭部を掴み握り潰していく。

 

「そこに弱点がある事はわかってんだよ……ッ」

 

 メキメキメキッと頭部が軋みをあげひび割れていく。

 そして、乙女座の頭部を引き裂いて中にある御霊を引き摺り出した。

 

「これで、終わりだ」

 

 グシャア、と両手で御霊を握り潰すと、乙女座は砂になって消滅した。

 

「これであとはーー」

 

 その瞬間、山羊座の体を回転させたドリル攻撃がルプスに直撃した。

 直撃した部分には三日月のコックピットがあったーーが。

 

「あっぶねぇ、なァァァ‼︎」

 

 コックピット内は三日月から見て右側がグチャグチャされており、あともう少し左ならば三日月ごと潰れていただろう。

 

「……でも、向こうから来てくれてよかった」

 

 三日月は先程の怒号は既に鳴りを潜ませ真顔のまま、山羊座を押し倒し、また上に乗る。

 そして、山羊座へツインメイスをドカッ、ドカッと滅多打ちにしていく。

 ボコボコにされた山羊座の全身は地にめり込んで動けない……。

 そして、三日月はルプスの手にソードメイスをまた出現させ、

 

「じゃあね……」

 

 山羊座の頭から突き刺し、上から下まで真っ二つに切り裂いた。

 パカっと御霊も二つに割れそのまま山羊座も消滅した。

 

「……こっちも限界か……」

 

 ルプスから無数の花弁が散り始め、機体は消え三日月はその場に横たわった。

 

「……ああ、足が動かないやーー」

 

 

 

 

「ーー不倶戴天」

 

 夏凛の呼んだ名前に反応して菊幢丸''だった''精霊はドスの効いた声を発し、不気味なオーラが漂い始めた。

 そして、その姿は赤黒い光と共に夏凛の持つ双剣に宿る……。

 

「ーーッ‼︎」

 

 夏凛はバッと二体に向き直り跳躍した。

 

「三好夏凛の生き様ァ! とくと見よォォーッ‼︎」

 

 夏凛の手には双剣ではない武器が備わっていた。夏凛はそれを蟹座に向けて振るう。

 蟹座はまた板で守ろうとするが夏凛は容易くそれを打ち破った。

 

「勇者部五箇条、ひとおぉぉぉぉぉつ!」

 

 夏凛が持っているものは二振りの斧であった。

 通常見かける斧とは違い柄の部分がない。鉈のようにも見える。

 刃は異様に大きく、取手は峰と一体化している。

 

「挨拶はあぁぁぁ、きちんとぉぉぉ‼︎」

 

 夏凛は双斧を蟹座に振り下ろして、切り裂いた。

 敵の体は脆く崩れて地に落ち、傷を修復し始めた。

 次に、蠍座に向かってドロップキックをかます。蠍座もまた地を抉りながら吹っ飛んだ。

 夏凛は足元に一本のラインを引いて三体に叫ぶ。

 

「ここから先へは絶対に! 死んでも通さないッ!」

 

 すると、周りに飛び交っていた量産型バケモノが一斉に夏凛に向かって飛んできた。

 

「……‼︎ アンタたち雑魚に用はないのよォォ‼︎」

 

 その瞬間、夏凛から眩い光が放たれる。頭上には紅の牡丹が咲き誇った。

 夏凛は、双斧を手に持っているが、背中から巨大なアームが二本出現し、巨大な双剣を握っている。

 

「殲滅ッ‼︎」

 

 巨大な双剣は周囲のバケモノを薙ぎ払い、一掃していく。

 ものの数秒でバケモノたちは消滅していった。

 すると、今まで微動だにしていなかった射手座がゆっくりと大きな口を開け弩弓を構えた。

 

「ーーッ⁉︎ アレは‼︎」

 

 その弩弓は二戦目の際、高威力でバーテックスごと勇者を蹴散らそうとした攻撃である。

 あの時は、精霊バリアと東郷の狙撃で辛うじて被害を最小限に留めたと聞く。

 

「撃たせるかーーッ‼︎」

 

 夏凛は射手座に向かって弾丸のように飛んだ。

 

「ひとおぉぉぉぉぉつ! よく食べェ、よく寝る事ォォ‼︎」

 

 巨大な双剣で射手座の上半分を、双斧で下半分を同時に切り裂いた。

 と、同時に発射寸前だった弩弓が爆ぜ、射手座も消滅した。

 

「ぐああああァァァーーーッ‼︎」

 

 爆風を直に受け、夏凛は地に落下し転がっていく。

 

「ぐっ、がッッ」

 

 その瞬間、夏凛から無数の花びらが散った。……満開が解けたのである。

 

「ウソ……。はや、すぎ、でしょ……」

 

 満開が解ける時間は個人や状況によって違う事は聞いていた……が。

 

「それくらい……ダメージを負ったって、事?」

 

 弩弓が爆ぜた際の爆風を直に受けたのだ。通常なら死んでいただろう。

 

 ……なぜなら、今の夏凛には精霊バリアが発動しないから……。

 

 夏凛は自身の精霊のもうひとつの''名''を呼ぶ事で精霊はただ、敵を倒すという指名を遂行する純粋な力へと変わっている。

 なぜ、夏凛の精霊にこんな特殊機能が備わっているのかは不明。

 大赦は、三好夏凛の家柄に関係するのではないかと推察していたが……。

 

「今の私は、防御を捨て攻撃に特化した諸刃の剣ってやつね。……持ってるの斧だけど」

 

 そう呟いて、夏凛は二体がいる方向を振り向いた瞬間ーー

 

「ーーッッ‼︎」

 

 夏凛の右腕に激痛が走った。

 

「ぐあああァァァァァァーーッ」

 

 いつのまにか、接近してきた蠍座の尾針が右腕に突き刺さっていたのだ。

 夏凛は即座に手に持つ斧で針をぶった斬った。

 

「ああ……。ああ、ああああ……‼︎」

 

 右腕が焼けるように痛い。……刺さった痛みとは違う。

 

(まさかっ毒……ッ⁉︎)

 

 夏凛は瞬時に左の斧で、刺さっていた腕の一部分をーー

 

「ぐっ……。うううっ、うううううううゥゥーーッ」

 

 削り取ったーー

 足元に赤く濁ったものがポトッと落ちる……。

 

「ふーー、ふーー」

 

 のたうち回りたくなる程の激痛に襲われる。涙目になり呼吸も荒くなる。

 蠍座は修復させた尾針をまた夏凛に向けた。

 

「う、うう……ううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううああああああああああああ‼︎」

 

 夏凛から嗚咽の混ざったような唸り声が発せられ、彼女へ散ったはずの紅の花弁が集まっていく。

 

「悩んだらァ、相談ーッ‼︎」

 

 そして、再び頭上に大輪を咲かせた。

 

「うおおおおおおーーッ‼︎」

 

 夏凛は先程より速度をあげ、流星のように蠍座へ向かう。

 夏凛の右腕はピクリとも動かない。

 蠍座の攻撃のせいで血だらけになっているのが原因ではなく、散華により動かなくなっているのだ。

 

「右腕で良かったわァァァ」

 

 しかし、''連華''により再度満開している夏凛は背中から更に二本のアームが出現し、左腕と合わせて五本の腕で蠍座に突っ込み、切り刻んでいく。

 蠍座は最後に尾針で夏凛を狙うが、巨大な双剣に防がれた。

 

「なるべく、諦めるなァァァーー‼︎」

 

 そして、残った巨大な双剣と、左手の斧で蠍座にトドメを刺した。

 

「これで、ラストはーーぐゥッ‼︎」

 

 その時、蟹座から放たれた板が、夏凛の腹部に命中した。

 

「ウウッ……ガハァッ」

 

 夏凛は吐血した。

 しかし、意識は手放さず歯を食いしばり斧で板を叩き割った。

 夏凛は地へ落下する。

 

「が、あ。はあ、はあ……」

 

 直感でもう少しで満開が解ける気がした……。

 

「なら、最後の足掻き、ね……」

 

 未だ修復中の蟹座は残りの板を全て夏凛へ放った。

 

「効かないわよっ……そんな攻撃ッ!」

 

 夏凛は四本のアームから斬撃を放ち板を粉々に破壊した。

 そのまま蟹座へ突っ込む。

 

「神ごときが……完成型勇者を、人間を、なめるなァァァーーッ‼︎」

 

 夏凛は四本の剣、左手の斧で蟹座を突き刺した。

 そして、そのまま蟹座の体を貫通して、敵は消滅する。

 

「これ……がァ! 完成型勇者ァ、三好夏凛の力だァァァーーッ‼︎」

 

 夏凛は最後に叫び、また地へ落下していった。

 ドサッと音を立て、そのまま転がっていく。

 

「かっ。はぁ……はぁ……。ふっ、なせば大抵、なんとか、なったわ、ね……」

 

 数メートル程転がった所で止まり、夏凛から無数の花びら散り満開が解ける。

 その時、目の前が真っ暗になった。

 

「あ、ああ……。両目……、もって、いかれーーゴハッッ」

 

 夏凛は再度血を吐いた。真上を向いていたので、血はそのまま夏凛に降り注ぐ。

 

「あ、はははっ。なんか、変な気分……ね……」

 

 自分でも不思議な感覚に囚われていた。

 

(ねぇ、三日月……)

 

 夏凛の目は虚のまま、心の中で思う。

 

(私は……結局最後まで、戦うことしか能のない人間だったわね……。大赦の元で訓練して、勇者システム受け継いで……その後もずっと、鍛錬に励んで……。それも、全部大赦のため、人類を守るため……。でも)

 

 夏凛はふっと笑った。

 

(後悔なんて、ない……。私が積み上げてきたものは無駄なんかじゃない……。だって、今までの私があったから、アンタに……、''みんな''に会えた、んだから……。私は、大赦の勇者であると同時に、勇者部の一員になれたんだから……。だから、悔いなんてないよ? 戦うことで、大赦のためにも勇者部のためにもなると、信じている、から……)

 

 そして、夏凛は口を開き、この場にいない者へ告げる。

 

「友、奈……。必ず東郷を''救い''なさいよっ……。勇者部として浅い、私じゃあ、東郷の、心には届かないっ響かないっ……」

 

 あの時、結局風の心に届いたのは、夏凛の言葉ではなく、樹の想いだったのだから。

 

「できるわぁ。友奈……。アンタなら……きっ、と……」

 

 そこで、夏凛の言葉は途切れた……。

 すぐそばに落ちていた斧は剣へと戻る。

 

 

 

 ……最後に、夏凛は微笑み……ゆっくりと……瞼を閉じた……。

 




次回予告

『友達……失格だ……』
『いつの間にか……前に立ってるじゃない……』
『お前はッ、その手を絶対に離しちゃいけねぇんだッ‼︎』
『ミカさんのことが気になりますよね? ……オルガ・イツカさん』

ーー第二十二話 オルガ・イツカーー
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