おるがいつかは勇者である   作:amorphous

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拙稿ですがよろしくお願いします。
これまでバルバトスがアレだということを隠したいために三日月の花の名を隠してました。が、もしかしたら二話ぐらいで気付いた人がいるのではっ…と今更思う。
 そして今回は、一話からずっと隠してきたアイツの正体に迫るお話で……えっ? 最初からわかってた? いやいや、予感はしてても確信はしてなかった……よね?


『●●●●●●●●●●●●、●●●●●●●●●●●●●。●●●●●●●●●●●●●●●●●●、●●●●●●●●●●●●●●●●●●……。●●、●●●●●●●●●●●●』

 大赦書史部・巫女様 検閲済


第二十二話 オルガ・イツカ

 オルガと友奈はまた、結界の外に出て灼熱の世界へ降り立つ。

 

「……ミカ……」

 

 何度も後方を確認する。そこから三日月たちの姿は見えないが、オルガは不吉な予感を感じ取っていた。

 

「……! 東郷さん‼︎」

 

 友奈の声に我に返る。二人の視線の先には東郷がライフルを手に佇んでいた。

 

「……また来たの? 友奈ちゃん……」

「何度だって来るよ。東郷さんがいるんだもん」

「……」

 

 東郷は悲しげな表情を浮かべていたーー

 

 

 

 

 ーー樹はワイヤーで作った鳥籠の中で戦い続けていた。

 先程よりバケモノの数がかなり減ってきている。

 しかし、バケモノは鳥籠のワイヤーを噛みちぎろうとしてきた。

 樹は腕からワイヤーを出し鳥籠を壊そうとする敵を切断していく。

 

(樹……)

 

 風は未だ座り込んだままその様子を見つめていた。

 プツン、プツンと一本一本ワイヤーが切れていく……。

 

『何かを目指してひたむきに頑張ることで、私はお姉ちゃんの隣を歩けると思うからっ』

 

(隣を一緒に歩いて行きたいって……)

 

『今度は私がお姉ちゃんを支えていきたい。すぐ隣にいるのなら、それができると信じているからっ!』

 

 脳裏に樹の部屋で聞いたあの言葉を思い出す。

 

「いつの間にか……前に立ってるじゃない……」

 

 風はゆっくりと立ち上がり、憔悴していた顔をバシバシッと両手で叩き根性を入れる。

 

「樹ッッ‼︎」

 

 その声に樹は振り返る。

 

「その鳥籠を解いて! ここからは私たちも攻勢に出るわっ! そして友奈と東郷の元へ急ぎましょう‼︎」

 

 樹はニッコリと笑い、ワイヤーを解いていく。

 バケモノは当然、二人を襲うが。

 

「おりゃぁぁぁぁあーッ‼︎」

 

 風が叫びながら斬り裂いた。

 樹も他のバケモノをワイヤーで攻撃していく。

 

「待たせちゃってゴメンネ」

 

 樹はふるふる、と首を横に振る。

 

「……さぁて、犬吠埼姉妹の女子力、大いに見せつけるわよッッ‼︎」

 

 

 

 ーーオルガは東郷の後方を見る。そこには、また新たなバーテックスが生まれようとしていた。

 

「アイツは……!」

「今すぐ倒さないとっ」

 

 友奈は形成されているバーテックスに向かおうとするが、東郷はライフルを友奈に向けた。

 

「えっ、東郷、さん?」

「何のつもりだ⁉︎」

「友奈ちゃん、退いて? 私はやらなければならないことがあるの……」

「やらなければって、このバーテックスをどうするの?」

「コイツを神樹様へ向かわせる。そして破壊してもらうの……」

「……⁉︎」

「東郷さん、アンタ正気か? そんな事言われてハイわかりましたって退くと思ってんのか?」

「……」

 

 東郷はオルガの言葉には応えずにライフルを向けたまま言う。

 

「こんな世界終わらせなければいけないの。私たちを道具の様に扱い犠牲にしようとした大赦も、神樹様も!」

「ダメだよ東郷さん! 何も知らずに暮らしている人たちもいるんだよ? 神樹様が無くなっちゃったらその人たちも……!」

「他の人たちなんて関係ないッ! 私には友奈ちゃんの方が大事なの! 友奈ちゃんが不幸になるなら、そんな世界いらないッ! その世界を良しとする人たちもいらないよ‼︎」

 

 オルガは東郷の言動に違和感を感じていた。まるで……

 

「なあ、東郷さん、だったらーーッ‼︎」

 

 オルガは言葉の途中で後ろを振り返った。

 視線の先は四国側だが、結界の外なので何も見えない。

 

「い、イツカさん? どうしたんですか?」

「……ミカ?」

 

 オルガは友奈の言葉に応えなかった。三日月が気になって仕方がなかったから。

 

「……? なんだ、この胸騒ぎは……」

「ミカさんのことが気になりますよね? ……オルガ・イツカさん」

 

 その時、東郷はやっとオルガに視線を送り、名前を呼んだ。が、なぜか他人行儀な言い方だった。

 

「……?」

 

 オルガも友奈もその違和感を感じ取っていた。

 

「貴方は、ミカさんの危機に敏感になる様になってますもんね」

「……あ?」

 

 東郷は冷徹な表情でオルガを見る。視線が冷たい。

 

「とぼけるんですか? ……それとも本当に自覚がないんですか?」

「何の話をーー」

「貴方は仲間じゃ……、勇者なんかじゃないんです」

「……⁉︎」

「なに、を……?」

 

 驚く二人をよそに、東郷は話し続ける。

 

「友奈ちゃん。おかしいと思わなかった? 彼が讃州中学にいることを」

「えっ? だってイツカさんは勇者部の一員で……」

「部活じゃなくて、学校に」

「……っ」

 

 友奈も東郷が意図することに気付いたようだ。

 

「どの学年ですか? どのクラスなんですか? そもそも生徒なんですか?」

「……」

 

 オルガも東郷の言いたい事がわかった。……わかってしまった。

 

「先生方に聞いても誰も知りません。そのような人が居たという認識すらありません。貴方は、一般の人に認知されていないんです」

「……!」

「ミカさんの命の危険に敏感で、一般の人に認知されてなくて、ミカさんをはじめとする私たち勇者としか行動を共にしていない……。それでも貴方には自覚がないんですか?」

「……」

 

 オルガは東郷を睨んでいるように見えた。

 

「教えてあげます。貴方は……。ミカさんの最初の''精霊''だったんですよ……」

 

 

 

 

 ーー風と樹は跳びながら壁を目指す。

 先程から二人の周りには、あの量産型バケモノは存在しない。

 

「……友奈たちが全部倒したのかしら?」

 

 すると、途中で三日月が倒れているのを発見した。

 

「……‼︎ ミカッ⁉︎」

「⁉︎」

 

 風と樹は三日月の元へ駆け寄る。

 

「ねぇ、無事? どっか痛めたの?」

「部長? そっか。立ち直ったんだ」

「それはいいから」

「……あー。足が、動かなくてさ」

「なっ⁉︎」

 

 風と樹は驚愕する。すぐにその原因を察したから。

 

「……それより、今は東郷さんだ。早くしなきゃ、取り返しのつかないことに……」

 

 三日月は地を這いながら進もうとしたが樹と風に抱え起こされる。

 

「部長? 樹ちゃん?」

「さっきは助けてくれてありがとね、ミカ」

 

 樹もこくっこくっと頷く。

 

「私たちが連れて行くからッ」

 

 そして、三人は壁まで跳んで行く。と、三日月は辺りを見渡して二人に聞く。

 

「……ねぇ、夏凛は? どこ?」

「えっ? 近くにいるの?」

「夏凛と俺はそれぞれバーテックスと戦ってたんだ」

 

 風は樹を見る。樹は暗い表情で首を横に振った。

 

「ごめん。私たちは見てない……」

「……そっか」

(夏凛……。ダメだよって言ったよね……)

 

 三日月は心の中で呼びかけた。

 大丈夫……。きっと……。夏凛は強いんだから……。

 

 

 

 

 

「ーーイツカ、さん。違いますよ、ね? 東郷さんはまた憶測で……」

「そうかしら? 友奈ちゃん。私にはそれ以外の考えが思いつかないのだけれど。彼が勇者だという根拠が無い。精霊も満開も固有の武器すら持っていない彼には」

「でも前に樹ちゃんが、イツカさんの中にーー」

「樹ちゃんの推測はハズレていた……。それだけよ」

「でも、私たち以外でイツカさんと会話している人はいるよ!」

 

 友奈の指す人はアトラと藍那のことだ。

 

「それは大赦と関係してるから。二人のうち片方の女性は神官見習いって聞いたわ。もう一人も大赦関連の学校に通い、将来は大赦に関わる職に就くって……。なら神事に携わる機会があってもおかしくない」

「じゃあ大赦の人たちにはみんな、精霊が見えるって言うの⁉︎」

「じゃないと、勇者システムに精霊なんて導入できないわ。少なくとも、認知していなきゃね」

「……」

 

 友奈は必死になって、オルガは精霊ではないと言い張る。……しかし、彼女は薄々気付いていた。

 オルガが勇者であることより、精霊であることの方が辻褄が合ってしまうのだ。

 

「さっきから黙ってますけど、貴方は自分が精霊ではないと言わないんですか? 勇者であると……」

 

 オルガは無言はまま視線を落とす。

 

「……思い出したんですか? 認めるんですか? ……私たちを騙していたことを」

 

 そこでオルガはやっと口を開いた。

 

「……俺は今、あの初陣の時を思い出してた。……けど俺はあの日以前の記憶を思い出せねぇ。……そしてお前が言う通り、俺が精霊だと仮定すると、色々合点がいっちまう」

「……イツカさん?」

 

 精霊は勇者が致命傷を負う攻撃を防ぐ……。

『生きてるか? ミカ』

 

 精霊は勇者を、戦いという御役目に縛り付けるためにいる……。

『いいから、行くぞぉ。……待ってんだ……』

 

 

「……」

 

 オルガは自分の言動を顧みていた。

 オルガは初陣の日に三日月の目の前に現れた。三日月が危機的ダメージを食らう時、必ずオルガが助けていた。オルガは基本的に三日月の傍にいる。神事に関わる者には認知されるが、関わらない者にはオルガを認知できない。オルガは基本、勇者部のメンバーとしか関わっていないが、あの''夏の日''、オルガを認知していなかった者が一人いた……。

 

「イツカさんは、本当に……」

 

 友奈の声が震えている。

 もう誰も、オルガの正体を否定していない。それは当の本人が否定しないから。

 

「……満開を行った勇者には全員、新しい精霊が現れました。ミカさんが今まで行ったのは二回。ならば、ミカさんには三体の精霊がいるはず……」

 

 オルガと友奈は沈黙のまま。

 

「私は……。勇者部の人たち全員、大切な友達だと思ってました。仲間だと思ってました……今でも思っています。……でも、コレってあんまりじゃないですか……」

 

 東郷の目に涙が見えた。

 

「いったい、どれほどの絶望を与えれば気が済むんですか? 足を奪われて、記憶を奪われて。そして、ずっと一緒に居た私たちの仲間は、人間じゃなくて、本来居るはずのない者で……。馬鹿みたいじゃないですかッッ‼︎」

 

 東郷は涙を流しながら叫ぶ。

 

「私たちが何をしたって言うんですかっ‼︎ 世界を守る勇者が! そのための代償として大切なものを''守っている対象''に奪われ続けて! それでどうしてッ、守り続けなければいけないんですかッ‼︎」

 

 そして、東郷はその場から跳躍し、結界の中へ向かう。

 

「だから……私がこの世界を終わらせる! ……こんな世界をッ!」

 

 オルガは俯いたまま目を閉じた。

 友奈はガクッと膝が崩れ、その場に座り込む。

 

「私……、東郷さんの何を見てきたんだろう……」

 

 友奈は口を手で覆い、涙を流しながら呟く。

 

「東郷さんは、ずっと苦しんでた……。私にはそれをわかってあげられる機会が何度かあった……。わかってたつもりになってた。自分で励ましたつもりになって。でも東郷さんはずっと不安の中にいて……。苦しみ続けて……。私は、東郷さんの何をわかってあげられたんだろう……」

 

 オルガは目を閉じたまま黙っている。

 

「私、友達……失格だ……」

 

 

 

 

 ーー壁の内側に来た東郷はそこで風と樹、そして三日月に出会う。

 

「東郷……」

「風先輩、私は今からまた壁に穴を開けます」

「「⁉︎」」

「邪魔しないでください……と言っても無理ですよね」

「アンタ、自分が何言ってんのかわかってんの?」

「もう……、わかってもらわなくて結構です。この世界は今日を持って終わりを迎えるんですから……」

「……⁉︎」

 

 風は三日月を樹に任せて、大剣を東郷に向けた。

 

「私はあんたを止めるわよ。先輩として、勇者部の部長として」

「……先輩だからといって容赦はできませんっ」

 

 東郷はライフルをハンドガンに変えた。

 そして、二人は睨み合ったまま……。

 

「東郷ーーーッ‼︎」

 

 風が東郷に向かって走っていく。

 

「先輩たちにも教えてあげます。……いかにこの世界が残酷なのかを……」

 

 

 

 

 

 ーーオルガはゆっくりと目を開けた。

 

「おし……。東郷さんの元へ行くぞ……」

「……?」

 

 友奈は涙を流したままオルガを見上げた。

 

「立て……友奈ァ」

「で、でも私……」

「でも? でもってなんだ?」

「東郷さんに会って何を言えばいいんだろう? ずっと苦しんでた東郷さんに何も出来なかった私が……」

「お前、それ本気で言ってんのか?」

「えっ?」

 

 オルガは友奈の手を引っ張り立たせようとする。

 

「何も出来なかったァ? 誰が?」

「わ、私が……」

「誰に?」

「東郷さんに……」

「なんで?」

「東郷さんはずっと前から悩んでて……。散華のことでも苦しんで……。イツカさんが……。人じゃないってわかって……」

 

 オルガは友奈の手を離す。

 友奈はまた座り込むと、オルガは友奈と同じ目線になるように腰を落とした。

 

「なあ友奈。俺は……。俺が精霊だって言われて、まだ頭ん中整理ついて無ぇんだ。本当だったら、嘘だ。そんなこと信じねぇって言ってやりてぇけど……どうやら''そんなこと''、今はどうだっていいんだ」

「えっ?」

「今重要なことは何だ? 東郷さんだろ? 俺が、実は精霊でしたっなんてどうでもいいんだよ。取るに足らねぇことだ。……だって」

 

 オルガは東郷が跳んで行った方を見る。

 

「俺が精霊だろうが何だろうが、お前たちと一緒にいた。お前たちが仲間だってことに変わりはねぇんだからよ」

「で、でもーー」

「友奈ァ。お前はこのままでいいのかよ? 東郷さんのあの時の表情を見ただろ?」

「……!」

「東郷さん、すんげぇ悲しい表情してたろ? お前に銃向けた時、泣きそうなくらい……。てかそのあと泣いてただろ?」

「……」

「お前はあれを見て何も思わなかったのか? ''今''も悩んで苦しんでいる東郷さんを見捨てんのか? 諦めんのか? 東郷さんは教えてくれたろ? 自分が悩んでいることを、苦しんでいることを。なら今度こそ、お前は理解してやれるんじゃねぇのかよ⁉︎」

 

 オルガは友奈に向かって叫ぶ。

 

「何も出来なかったァ? ふざけるのも大概にしろ! お前はァ、ちゃんと東郷さんを助けてただろ‼︎ 励ましてやってただろ⁉︎ 手を取ってッ。それで東郷さんは笑ってただろ⁉︎ 全部お前だから出来たことだろーがッ。お前にしか出来ないことがちゃんとあるだろーが‼︎」

「イツカさんっ……!」

「立てッ友奈ァ‼︎ 東郷を救ってやれ‼︎ 苦しんで、助けを求めてる奴の手を決して離すんじゃねぇ! お前はッ、その手を絶対に離しちゃいけねぇんだッ‼」

「……‼︎」

 

 そして、友奈へ手を伸ばす。

 友奈は目を見開き、オルガの手を力一杯握り立ち上がった。

 

「……痛ぇよ」

「あっ! ご、ごめんなさい」

「……けどそれが、お前の気持ち、で良いんだよな?」

「……うん」

 

 オルガはニィと笑い。友奈と手を握りながら歩き出す。

 

「じゃあ行こうかぁ‼︎ あの分からず屋の固ぇ頭をかち割りに!」

「うん‼︎ 一緒に行こう!」

「連れてってやるよ! お前を、俺が連れてってやるよォ‼︎」

 

 

 

 

 ーー風は大剣を手に東郷を睨む。

 東郷は結界の外やオルガの正体を三人にも話していた。

 

「冗談も大概にッーー」

「冗談じゃなことぐらいわかってるはずです! それに、風先輩も薄々感付いているんじゃないんですかッ?」

「それでも! 私は樹と、みんなと一緒に歩いて行くって決めたんだ!」

 

 風は大剣の刀身部分で東郷を殴ろうとする。決して刃を当てないようにして。

 

「それにイツカのことだって確たる証拠なんてないじゃない! あんたの推測でーー」

「ならッ、証拠を見せてあげますよ‼︎」

 

 東郷は跳びながら風の攻撃を回避していたが、途端に止まり銃口を三日月に向けた。

 

「えっ?」「……⁉︎」

 

 そして東郷は発砲した。

 弾は樹の隣にいて、なおかつ足が動かない三日月の元へーー

 

「ウグッッ‼︎」

 

 その時、オルガが三日月の前に跳んできて銃弾を代わりに受けた。

 

「オルガ⁉︎」「イツカ‼︎」「‼︎」

「……」

 

 三人は驚き、東郷は真顔でオルガを見た。

 

「オル、ガ?」「あん、た……」

「なんって声、出してんだよ……」

 

 オルガは倒れそうになるが、しっかりと足を踏みしめる。

 

「俺は……オルガ・イツカだぞぉ……。こんくれぇなんて事はねぇ……」

「……これで、わかったでしょう?」

 

 風は東郷に向き直る。

 

「……撃ったわね? ミカを……。イツカを……。私たちの仲間をッ‼︎」

 

 風は走り大剣を構えた。

 

「ーーッ‼︎」

 

 東郷はまた跳んで回避しようとしたが、体を支えていたリボンのような勇者装束の一部にワイヤーが絡まり、体勢を崩した。

 

(樹ちゃん……!)

 

 樹はさらに、ワイヤーを東郷の手にあるハンドガンに絡ませた。

 

「くっ、これじゃあーー」

「東郷ーーッ! 歯ァ食いしばれェェ‼︎」

 

 ガツンッと刀身をぶつけ、東郷は宙を舞って地に倒れた。ワイヤーが絡みついていた勇者装束は千切れハンドガンも地に転がる。

 

「……東郷さ、いや東郷。''呼んで''くれて助かったよ」

 

 オルガは落ちた東郷を見下ろす。

 

(二戦目のあの弩弓から遠く離れたミカをこうやって守ってたのか……)

「イツカ! あんた、大丈夫なのッ⁉︎」

「なんて事ねぇつったろ?」

「……」

 

 風が聞いた大丈夫、はその事だけではないのだが。

 

「詳しい話は後だ。まずは東郷をーー」

 

 その瞬間、オルガたちの目の前に大輪が咲き誇った。

 

「ッ⁉︎ これはッ‼︎」

 

 そして、浮遊戦艦に乗った東郷が現れる。

 

「……もうこれ以上の邪魔は、させない」

 

 東郷は砲台をオルガたちに向ける。

 

「東郷‼︎ あんた、そこまでしてッ‼︎」

「……」

 

 東郷は砲台から攻撃をーー

 

「東郷さあぁぁぁぁぁあああああんんんんん!!!!」

 

 結界外から現れた友奈に五人は顔を向けた。

 

「良いタイミングだぜ友奈ァ‼︎」

 

 ……友奈はオルガを見て頬を膨らませた。

 

「……連れてってやるッ! ってカッコよく言ってたのにな〜。置いて行くんだもん。酷い''オルガさん''」

 

 わざとらしく不貞腐れている。

 

「いや、それはっ、なんっていうか……。……俺が悪ぃのかっ⁉︎」

 

 ふふっと友奈は笑い、そして東郷に向き直った。

 

「……また、来たの? 友奈ちゃん……」

「……何度だって来るよ。……東郷さんがいるんだからっ!」

 

 どこかで聞いたような問答にまた、東郷は泣きそうになった。

 

「どうしてッ! どうして友奈ちゃーー」

「友達だから」

「ーーっ‼︎」

 

 友奈はオルガたちの方へ跳び移る。

 

「東郷さんが悲しんでる。苦しんでる。……それを助けたいって思うのは、おかしい事?」

「……」

 

 東郷から涙が流れ出す。

 

「……それに、東郷さんっ。私だけがあなたを止めるんじゃない」

 

 東郷に相対する友奈、風、樹、三日月、オルガは横一列になった。

 ここに……、一名を除いて勇者部が揃う。

 

「私たちで、あなたを止めるんだよ‼︎」

 

 

 

 

 ーー神世紀300年7月30日

 今日、ひとつの戦いが幕を閉じようとしていた。

 

 




次回予告

『それは多分効くかな……』
『今よッ友奈ーッ‼︎』
『忘れたく無いよッ‼︎』
『忘れるわけないだろーがッッ‼︎』
『私がッ! メチャクチャ強く思っているからッ‼︎』

ーー第二十三話 魂の友ーー
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