おるがいつかは勇者である   作:amorphous

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拙稿ですがよろしくお願いします。
 ここまで来たら後は振り返らず走り切るまでよ…。だからよぉ……止まるんじゃねぇぞ……。

〜前回のあらすじ(オルガ、女子中学生を殴る)〜

友奈「東郷さん。目、覚めた?」
東郷「…二人して殴りましたね…。両親にもぶたれたことないのにぃ‼︎」
オルガ「甘ったれんなァ! 殴られもせずに一人前になった奴がどこにいんだよッ‼︎」

艦長「その通りッッッ!!!」

東郷・オルガ・友奈「……だれ?」



『前にオルガが言ってた……。勇者とか、そんな偉そうな名前なんてどうでもいい。ただ……、みんなで笑い合いたいんだって。辿り着いた先で馬鹿笑いしたいって。……俺もその場所をみんなと見てみたいな』

 ※大赦書史部解体の為,検閲未実施


第二十四話 今を全力で生きるために

 風は友奈に抱きしめられている東郷の頭を軽く撫でた。

 

「……おかえり東郷」

「……風、先輩……」

「随分遅かったんじゃない? 待ちくたびれたわよ」

「遅刻だぜェ。東郷」

「珍しいんじゃない? 東郷さんが遅刻なんて」

「一生分の遅刻使ったなっ」

 

 三人は冗談混じりに笑い合う。

 

「ミカさん……。ごめんなさい……。風先輩、ごめんなさい……。樹ちゃん……。ごめん、なさい……」

「もういいわよ。東郷は……、東郷''も''誰かを想って起こした行動だったんでしょ? なら、もう謝らないで。……これからは私たちと歩いていくって決めてくれたんでしょ?」

「……はい」

 

 小さくそう口にして、東郷は俯いてゆっくり目を閉じた……。

 

「ーーッ‼︎」

 

 その時、三日月が乗るルプスレクスが壁の方へ向いた。

 

「どうした、ーーッ⁉︎」

 

 ルプスレクスの視線の先をオルガも見ると、そこには巨大なバーテックスが結界内に侵入してきた。

 

「なっ⁉︎ アイツは‼︎」

「''獅子座''の、バーテックス……」

 

 風と樹も侵入してきた敵の方へ向く。

 

「……」

 

 友奈は胸の中で眠っている東郷を横たわらせ、静かに立ち上がった。

 

「あと少しだけ待ってて、東郷さん。……これで本当に終わらせるから」

 

 侵攻する獅子座は前に見た、巨大な劫火球を生成させていた。

 ……否、前回よりも大きい。

 

「……しょーこりもねぇやつ」

「あのデカ玉、私たちを狙ってるわけじゃない……」

 

 風が呟いた瞬間、劫火球は放たれる。

 それは勇者部メンバーではなく、神樹の元へ放たれていた。

 

「樹! 友奈! ミカ! イツカ! 根性見せるわよっ‼︎」

「……!」「はいっ」「うんっ」「オウ‼︎」

 

 樹は力強く頷き、他三人も強く応える。

 そして、劫火球の進行方向に立ちはだかり、受け止める。

 

「うううッ‼︎」

「おお……。こん、くれぇ」

 

 四人は両手で劫火球を押し返そうとする。

 

「このっ……ふんばれ、バルバトスッ!」

 

 ルプスレクスの両手がひび割れていく。先の東郷の攻撃でダメージが蓄積しているようだ。その上、前回より劫火球の威力が上がっているように思える。

 

「ううっ。まだまだぁ! 勇者部、ファイトォォーーッ!」

「「おおおおお‼︎」」「「……‼︎」」

 

 風の必死の掛け声にオルガと友奈も叫ぶ。

 劫火球は押し返されていき、獅子座の元まで戻って行く。

 

「あと、ひとおしだァァァ‼︎」

「ーーッ‼︎」

 

 三日月が目を見開き、ルプスレクスの渾身の力を引き出す。

 

「「「うおおおおおおおおーー‼︎」」」

 

 そして、押し返された劫火球は獅子座に命中する。

 

「ぐあっ‼︎」「うああああっ‼︎」「キャアッ「ぐっ」「……‼︎」

 

 獅子座に衝突した劫火球は爆ぜて五人はその爆風を食らい、散り散りに飛んだ。

 自身の攻撃を食らった獅子座は体の一部が崩れ、微かに御霊が姿を見せた。

 五人は地に叩きつけられ、その場に倒れ込む。

 ……とその時。風、友奈、三日月、樹から無数の花びらが散った。

 

「……う、そ。こんなときに……」

「満開、が……」

「うっ……」

「……」

 

 その時、友奈は衝撃的なものを目にした。

 

「えっ。風先輩の髪が……っ」

 

 風の髪の色が生え際から白色に変色しているのだ。

 

「う、そ……。っ! 樹⁉︎」

 

 樹を見ると、彼女は右足を辛そうに抑えていた。

 

「樹ちゃん……。えっ?」

 

 友奈も自分の足を見た。力が入らないのだ。

 

「足が……。動かない……」

 

 そんな中、一人だけ立ち上がる男がいた。

 

「お前らは少し休んでろ」

 

 オルガは満身創痍ながらも獅子座へと歩いていく。

 

「……」

 

 三日月は何も言わずに、視えている目でオルガを見つめていた。

 否、声を出せなかったのだ……。

 

「イツカ、あんた。一人でどうする気?」

「アレを、誰かが止めなくちゃいけねぇだろ?」

 

 五人の視線の先には、先程の劫火球を凌駕する程の巨大な火の球が出来上がっていた。

 その、大きさは獅子座と同じくらい……。いや違う。

 

「アレ……。中にいるの?」

「そうだ。バーテックスの野郎。テメェごと炎で包み込んでやがる」

「そんなっ。あれで、神樹様に向かったら!」

「ああ。奴は全身を炎に纏って神樹に体当たりをかます気だな」

 

 全身を炎で纏う獅子座の姿は、まさに太陽のようであった。

 

「ここいらが正念場だなァ。俺の……、オルガ・イツカの意地ィ、見せてやるぜェェ‼︎」

 

 その瞬間、太陽のようになった獅子座が突っ込んできた。

 オルガはそれを一人で受け止める。

 

「ううっ! このや……」

 

 獅子座は止まることなくオルガを押し続ける。

 

「……こ、のままじゃ……」

 

 オルガは全身が焼けるような痛みを必死で堪える。

 

「こんな、ところじゃ……」

 

 必死で踏ん張ろうとするがジリジリと後退させられる。

 

(やっぱり俺だけの力じゃ……。いやッ、やんなきゃいけねぇ。俺が諦めたら世界が終わる。あいつらが歩いていくって決めた世界が。それだけは……っ)

 

 すでに両腕は真っ黒になっているが、それでも受け止め続ける。

 

「いつか言ったろ? 俺はァ……、テメェらよりタフなんだ……ぜ。……それともうひとつ言ったよなァ? 俺がテメェに歯が立たねぇからって……俺が諦めるとでも思ってんのかッ! ってよぉ‼︎」

 

 その時、誰かが後ろに立っているのがわかった。

 

「イツカ‼︎」

「部長かッ⁉︎」

「やっぱりあんた一人じゃ無理よっ」

「無理でもッ! やんなきゃいけねぇんだ‼︎」

「そう、無理よ! ……ひとりじゃねッ‼︎」

 

 風はオルガの横に立ち、両手で劫火球となっている獅子座を受け止めた。

 

「部長ォ‼︎ お前ッ……」

「あんたが少しだけ、ほんの少しだけ稼いでくれたこの時間。……その時間は私たちが再び立ち上がるには充分だったわっ! ……そうよね樹‼︎」

 

 その言葉でオルガは視線を風の隣に移す。そこには、ワイヤーを周囲に括り付け、身体を支えている樹がいた。

 

「……っ。お前ら」

 

 オルガは嬉しさと悔しさが入り混じった思いだった。

 

(なんだよ……。結局、俺一人じゃ何もできなかったってわけか……)

 

 しかし、オルガは首を横に振る。

 

(いや、違うな……。はじめから一人で全部できる奴なんざ誰一人としていねぇんだ。……だから仲間がいる。無条件で信頼し合える仲間が……。頼って、頼られての連続で……、そうやって困難を乗り越えていくんだよなァ……)

 

 獅子座の速度は先程より遅くなっていた。……しかし、止まるまでには至らない。

 

「まだまだぁぁぁ! 犬吠埼姉妹の女子力はぁ! こんなもんじゃないでしょおおおおおおお!」

「ーーッ‼︎」

 

 その時、二人から散ったはずの花びらが集まっていき、黄色のオキザリスと白色の鳴子ユリが咲き誇る。

 

「うおおおおおおーーーーーッ‼︎」

 

 満開により二人のパワーは増大し、さらに獅子座の速度が遅くなった。

 ……すると、オルガと風に樹の背中から出たワイヤーが絡みついた。

 

「……! サンキューな樹ィ!」

「ありがとっ!」

 

 ワイヤーは二人と樹木とを結び付け固定することで、更に踏ん張る力が増した。

 

「これならっいける。……このままッ押し返すッ!」

 

 風は気合を入れ声を張る。……と、そこへ、

 

「そぉぉぉぉぉこぉぉぉぉかぁぁぁぁぁぁーーーーー‼︎」

 

 赤色の弾丸が樹の右隣に突っ込んできた。

 

「「か……夏凛ッ‼︎」」

 

 夏凛は左手だけで獅子座を受け止める。

 右腕は、勇者装束を破いた切れ端を巻き付けて止血していた。

 

「あんた……。生きてたのねっ……!」

「その声、風ね⁉︎ 勝手に殺さないでよっ。……まぁ、三途の川の手前まで行ってたけどっ」

「何よっそれっ」

「……でも、六文銭持ってなかったから舞い戻ってきたわよっ」

「それはっ、残念だったわねっ」

「そうよ! だから風! 後で金貸しなさいよッ‼︎」

 

 風は歯を食いしばり、再度踏ん張る。……だが、微かに笑っているようだった。

 

「そんなもん、いくらでも貸したあげるわよっ! この戦いを生き残ったらねぇぇぇッ‼︎」

 

 樹が夏凛の体にワイヤーを纏わせて固定させた。

 

「さらにぃ、ひと押しぃぃぃぃ‼︎」

「ーー俺もいるよ!」「私も押し返しますっ‼︎」

 

 夏凛から紅の牡丹が咲き誇るのと同時に、後方から白のシクラメン、青紫のアサガオが咲き誇り、三日月が乗るバルバトス・ルプスレクスと東郷が搭乗している浮遊戦艦も獅子座に立ちはだかり、受け止める。

 

「ミカァ! 東郷ォ!」

「みなさんっ、遅くなりましたっ!」

「……へっ。まだ寝てなくて大丈夫かァ?」

「……こんな騒がしいのに、寝てなんかいられないですよっ‼︎」

 

 六人により、獅子座はその場にとどまる……どころか、徐々に壁側へ後退させられていく。

 と、ここで獅子座を纏う炎が膨れ上がった。

 

「なっ! まだ大きくなるの……?」

 

 しかし、六人の力の前では、意味をなさず壁の方へ押し寄せられる。

 

「「「「負けて、たまるかァァァァーッ‼︎」」」」

 

 風、東郷、夏凛、オルガはシャウトする。

 

 

「……みんな。……東郷さん」

 

 その様子を、足を抑えながら見ていた友奈は呟く。

 

「……ごけ。動け……。動けぇぇ……」

 

 しかし、友奈は立ち上がれない。拳を地に叩きつけ歯を食いしばる。

 

(お願い……。動いてぇ……。私の足)

「け……。ごけ……。うごけっ。動け! ……うううごおおおおけええええーーーッッ‼︎」

 

 その時、友奈に花びらが集まり、薄紅のサクラが咲き誇る。

 

「うぅうおおおおおおおおーーーッ‼︎」

 

 

 ーー六人は後方にいる友奈の満開と怒号を感じ取っていた。

 と、同時に樹はワイヤーを伸ばし、満開で現れた友奈の巨大な手甲に巻き付かせて引っ張り込んだ。

 

「私はぁぁ、讃州中学二年っ! 勇者! 結城友奈ぁぁぁ‼︎」

 

 友奈は拳を強く握り獅子座に挑んでいく。

 

「お願いっ! 友奈ちゃああん‼︎」

 

 東郷は叫ぶ。それに続いて夏凛と風も、三日月も友奈に想いを託す。樹も声こそ出ないが、友奈に向かって訴える。

 

「「友奈‼︎」」

「頼んだよ。友奈ッ」

「……‼︎」

 

 最後にオルガの声が響き渡る。

 

「やっっちまえぇぇ! 友奈ァァァァ‼︎」

 

 友奈は鋭い槍のように獅子座の炎を突き抜けながら御霊へと手を伸ばす。

 

「届けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ‼︎」

 

 

 ーー友奈がその御霊に触れた瞬間、パキッと御霊にひびが入り……周囲に眩い光が輝いた。

 

 

 

 

 

 

 ……その輝きのあと、獅子座は跡形も無く消滅しオルガ以外の六人は地に仰向けで倒れていた。

 

「……おわっ、たの?」

「……」

 

 風の声に返答は無かった。空から光の粒子が彼女たちに舞い落ちている。

 そして風はゆっくり目を閉じた……。

 

 

「やりきったんだな……」

 

 オルガは三日月の隣に立って周りを見渡した。

 

 ……彼女たちのそばには、それぞれの精霊が漂っている。

 

「……お前らもこれで解放される。今までご苦労だったな……」

 

 その言葉を呟いたとき、精霊はうっすらと消えて彼女たちに花びらを落としていった。

 

「……俺も、そろそろお別れみてぇだな」

 

 オルガは三日月を見下ろして話し出した。

 

「ミカ……。俺さ、気付いたんだ。……勇者とかよ、そんな偉そうな名前なんざどうだってよかったんだ。ただな、お前らと笑い合いたかった……。お前らと辿り着いた先で、馬鹿笑いしたかったんだ……。それだけだったんだ」

 

 オルガの足元が透けていく。

 

「……そうか、俺は……。俺はやっと、自分の守りたいものを守ることができたんだな……。勇者なんかにこだわらなくてもよ、ちゃんと守るべきものを守り抜くことができたんだな」

 

 そう言いながら、三日月の頬に触れようとしたがその手は顔をすり抜けた。

 

「……へっ。どうやらここでお別れだ……。あばよ相棒。……ありがとな」

 

 そして、オルガは消えていき三日月の右半身に花びらが降り注いだ……。

 

 

 

 

「……うっ。……ゆう、な、ちゃん……」

 

 どのくらい眠っていただろうか……。長いような、しかし樹海は解けていないのですぐな気もする。

 東郷はすぐ隣で眠っている友奈に呼びかける。

 

「……? 友奈ちゃん?」

 

 付近で眠っていた風、樹、夏凛、三日月も目を覚ました。

 

「ねぇ……。友奈ちゃん?」

 

 呼びかけ続けるが友奈は目を覚まさない。

 四人はゆっくりと体を起こす。すると、体に降りかかっていた花びらがヒラヒラと落ちた。

 

「……友奈ちゃん! 友奈ちゃんッ‼︎」

 

 何度も呼ぶ

 友奈は目を覚まさない。

 ……彼女だけ、体の上に花びらは無かった……。

 

「……」

 

 東郷以外のメンバーは何かを察したかのように沈黙を守り、樹海が解けてからも呼びかけ続ける彼女を眺めることしかできなかった……。

 




次回予告

『……それは邪魔かな』
『それにリハビリも兼ねて少しでも歩きたいので』
『お……ねぇ……ちゃ……』
『ホントに治るんだっ』
『ねぇ、どうして友奈は戻らないの?』

ーー第二十五話 笑顔を見せてーー
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