おるがいつかは勇者である   作:amorphous

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拙稿ですがよろしくお願いします。
友奈「そういえば夏凛ちゃん、この作品はまだ四月〜五月あたりを描いているから夏凛ちゃんの誕生日は祝えないよ」
夏凛「な、何ですって‼︎」
オルガ「お前にゃ悪いが、今回の誕生日回は中止だ」


『精霊は勇者のサポートが役割。危険な攻撃を守ってくれたり、詠唱を手伝ってくれたり、とても助かっている。けれど、彼らの本当の役割は、勇者を●●●に●●●●●ことだった……』


 大赦書史部・巫女様 検閲済


第六話 結束

 今日からゴールデンウィークが始まる。しかし、夏凛はいつもと変わらず浜辺で木刀を二本使って素振りをしていた。ここ最近は毎日のように勇者部に顔を出して友奈たちに戦いでの立ち回り方、封印の儀の簡略化などを教えていた。

 

「はあ、はあ、今日はもうこれくらいでいいわね」

 

 これくらい、と言うが夏凛は今日一日中浜辺で鍛錬をしている。お昼には休憩も兼ねてコンビニで弁当を買って食べているが、それ以外の時間はずっと鍛錬に励んでいる。

 

「……」

 

 夏凛は昨日の学校のことを思い出していたーー。

 

 

 夏凛は友奈と東郷のクラスに転校していた。今は体育で陸上競技を行っている。

 夏凛は100メートル走を走っていた。

 

「うわっ、三好さん速いっ。これ大会出られるレベルよ」

「ありがと。鍛えてるから」

 

 同じクラスの陸上部の子が夏凛を褒める。

 

「アタシより速い……。ねえ三好さん。陸上部に入らない?」

「興味ないわ……」

 

 夏凛はそう告げて立ち去っていく。

 その後に走っていた友奈は夏凛へ声をかけた。

 

「さっきの走り、すごかったね。さすが完成型勇者!」

「友奈……」

 

 夏凛はまっすぐで強い視線を友奈を向ける。

 

「いい? 勇者はね、凄くなきゃいけないの。凄くなきゃ世界を救えないの。下手を打てば死んでしまうかもしれないから。でも、今のところ私たち以外に御役目を果たす人はいないから、私たちがやり遂げなければいけないの」

 

 友奈は夏凛の視線に、言葉に圧倒される。周りの人には何の話か理解できないが、ベンチで見学している東郷はその様子をじっと見つめていた。

 

「……私はアンタたちを指導すると言った。その言葉を違えるつもりはない。でも、馴れ合いもしない。……死にたくなければ、御役目を降りるか、必死についてきなさい……」

 

 そう言い残し、夏凛は友奈の元を去り、次の種目に向かう。

 友奈は先程の夏凛の言葉に矛盾を感じた。

 

「……」

 

 友奈は悲しそうに夏凛が高跳びをしているのを見ていた……。

 

 

 放課後、部室では夏凛が勇者たちへ指導を行っている。

 

「樹、アンタの武器はワイヤーね。なら樹海にくくりつけて罠に嵌める戦法が適してるわ。それに神樹様の力が備わっている武器で捕まえとけばそのまま封印の儀にも使える」

「え? そうだったんですか?」

「そうよ。じゃあ何で私があの時一人で封印の儀を行えたのよ」

「……な、なるほど、です」

 

 夏凛が言うには別に勇者で囲わなくとも、神樹の力が備わっている武器で敵を囲むことでも封印の儀は行えるようだ。ただ、やはり一部分に過ぎないので封印できる時間は短い。

 

「そして東郷、アンタの利点は何よりも敵の射程外から味方の援護ができることね。バーテックスが多数で攻めてきても、的確に対処できればかなり楽になれる」

「そうですね。前々回はそれを敵がやってきました」

「これからも遠距離攻撃ができる敵が現るかもしれない。なら、アンタがいのいちばんにソイツを倒す。逆に敵に狙われたら機動力がないから要注意よ。必ず数発攻撃するたびに移動しなさい。敵に見つからなければそれがベスト!」

「了解であります!」

 

 東郷はビシッと敬礼のポーズをとる。

 

「そして、勇者全員は戦いで経験値を積んでいくと満開、と呼ばれる切り札を使用可能になる。万物を屠れる力よ。戦いを経て満開して……、そうやって勇者のレベルは上がっていくの」

「そうなんだ!」

「アプリに説明がのってるよ?」

 

 友奈は夏凛の博識に感心するが、東郷につっこまれる。

 

「そうだったんだ‼︎」

 

 ……こんな感じで夏凛のレクチャーは下校時刻まで続いていた。

 

「ふう……、今日はこんなところね、じゃあ帰るわ」

「待って夏凛ちゃん。明日からしばらく学校休みだけどどこか旅行行くの?」

 

 友奈の唐突な質問に首を傾げる。

 

「? 別にどこも行かないわよ」

「そっか! わかったよ」

 

 夏凛はじゃあ、と言って部室を後にした。

 

「? どうしたんだ友奈?」

 

 夏凛が出て行ってすぐ、友奈は悲しそうな顔をしたのでオルガは不思議に思う。

 

「実はですね……」

 

 友奈の代わりに東郷が体育の授業での出来事を話した。

 

「そうか、夏凛のやつが……」

 

 オルガは何かを察したような表情をしている。

 

「イツカさん……、何か思い当たる節が……?」

「いや、そんなんじゃねぇけどな」

 

 オルガは窓の方を向く。

 

「やつは口では俺らのことを邪険にしながらも実際には微塵もそんなこと思っちゃいねぇんだ。東郷さんが聞いたっていうその言葉もなんかおかしいしな」

「おかしいって……?」

 

 風の問いにオルガは向き直る。

 

「馴れ合う気はねぇ、死にたくねぇなら御役目を降りろ、俺たち以外に御役目を果たせる奴はいねぇ、必死についてこい……。言ってることが矛盾してんだよ」

 

 友奈はそれを黙って聞いていた。

 

「突き放すようなこと言っておきながら、アイツは俺たちを目の届くところに置きてぇんだ。ほっとけねぇんだろうよ」

 

 友奈はそこで、夏凛に対して感じていた矛盾に気づく。オルガの言っていたことは友奈も感じていたことなのだ。

 

「口では厳しいことを言うが結局、それに徹しきれてねぇ。……アイツは、三好夏凛は、矛盾の塊のようなやつだ……」

 

 オルガはそこまで言うと、みんなへ帰るように促す。下校時刻はとうに過ぎている。

 ……しかし、帰りながらオルガは話を続ける。

「だが、だからこそ強い。そして脆いんだ」

 

 友奈は意を決したようにみんなに提案する。

 

「あのねみんな。明日のことなんだけど……」

 

 

 

 ーー鍛錬が終わり夏凛は自転車で帰ってきた。あたりは夕陽に染まり、もうすぐで日は完全に沈むだろう。帰りの途中でコンビニから買ってきた弁当を温めようとすると、

 

 ピンポーン、と呼び鈴が鳴った。

 夏凛は不思議に思う。今まで自分に用のある人物が訪れたことはない。大赦にしても連絡は携帯でだ。……もしかして訪問販売の類だろうか。

 

 ピンポーン、ピポピポピポピンポーン。

 

「な! えっ、何⁉︎」

 

 呼び鈴が連打され、夏凛は木刀を持って扉を開けた。

 

「誰よ‼︎」

「うわあああああ‼︎」

 

 そこには勇者部のメンバーが勢揃いしていた。扉の一番近くにいたオルガは驚きのあまりアパートの二階から落下する。

 

「オルガ⁉︎」

「だからよぉ……、止まるんじゃねぇぞ……」

 

 オルガは左手人差し指を夏凛の部屋の方に向けて動かなくなった。

 

「ちょっと! びっくりさせないでよ」

「な、なによ。アンタたちこそ」

 

 風は怒っている。

 

「あんたね、休みはどこも行かないって言ってたのに思いっきり外出してるじゃない! 携帯呼び出しても繋がらないし」

 

 夏凛は携帯を見る。風と友奈から着信が合計13件きていた。鍛錬に夢中で気づかなかった。……旅行には行かない、と言ったのだが。

 

「ま、詳しいことは中で話すわ。じゃあ上がるわよ〜」

「お邪魔します」

「邪魔するぜぇ」

 

 風を先頭にみんな夏凛の部屋へ入る。いつのまにか復活しているオルガも部屋に上がる。

 

「勝手に入ってこないでよ‼︎」

 

 勇者部のメンバーは夏凛の部屋を物色する。友奈は冷蔵庫を開け、樹はランニングマシンに驚き、三日月と東郷は居間に座る。

 

「何なのよ……。何なのよ‼︎」

「ハイどうぞ。夏凛ちゃん!」

 

 友奈は箱を夏凛に渡す。開けてみるとケーキが入っていた。

 

「なに、これ……」

 

 夏凛は困惑している。

 

「えっとね、夏凛ちゃんは勇者部に入ったでしょ、だから歓迎会をやろうって。サプライズのつもりで黙ってたんだ」

「でも肝心の夏凛がいなくて焦ったわよ」

「ケーキ買ってすぐ向かいましたしね」

 

 みんなが詳細を説明する。夏凛の知らない内に何度も訪ねに来ていたのだ。

 夏凛は俯いて拳を握る。

 

「……ばか、あほ、まぬけ、たこ……」

「な、何よ! その言い方!」

 

 急に夏凛が罵倒するので風がつっかかる。夏凛は照れながら言う。

 

「い、今までこんな扱いされたことない、から……、どう反応したらいいかわからないのよ……」

 

 風は最初ポカーンとしていたが、すぐに

 

「……ぷっ、アッハハッハッハッ〜〜‼︎」

 

 盛大に吹き出した。夏凛は一層真っ赤になっている。オルガたちも笑いを堪えている。

 

「……こんなに大きなケーキなんて一人じゃ食べきれない。アンタたちも食べていきなさいよ……」

 

 夏凛は包丁を取り、切り分けていった。

 

 ……それからしばし雑談が続いていく。

 

「アンタたち、ホントにバーテックスと戦える勇者だったのね」

「そうだよ。でもなんか俺たちだけ話が通ってないみたいでさ」

「二人のことはまだ、大赦からは何の連絡も来てないのよ」

 

 オルガと三日月のことを前に風は大赦に連絡したはずだが、依然返答はない。

 

「ま、大赦のレスが遅いのはいつものことよ」

「忙しいんだろうな」

 

 夏凛に続いてオルガも皮肉混じり言う。

 

「俺もいまだに変身できずに生身で戦ってんだぜ」

「アンタ……、よく今まで生きてたわね」

 

 夏凛が笑いながら言うと

 

「あの、実は……」

 

 樹が口を開いた。

 

「? どうしたんだ?」

「私はイツカさん自身が勇者なのではないかと考えているんです」

「どういうことだ?」

 

 樹は自分の仮説をオルガに、みんなに説明していく。

 

「イツカさんは詠唱のときもダメージを受ける時も精霊を必要としていません。もしかしての話ですけど、イツカさんの中っていうんでしょうか? 勇者システムはその中にあるのだと思います」

「俺の内側に勇者システムが?」

「つまり樹、イツカ自体が勇者システムの端末だとでもいうの?」

 

 風の問いに樹はハイ、と自信なさげに答える。

 

「それって、イツカさんは大赦に体をいじくられたってことですか?」

「と、東郷さん、いくらなんでも飛躍しすぎじゃないかなぁ」

「友奈の言う通りよ、大赦がそんなことやる? 人体実験みたいな」

「私もありえないと思うわ」

「根拠のない予想ですみません。大赦関係のお二人が違うと言うのなら違うのかもしれませんね」

 

 風と夏凛はそんな話は聞いていないという。

 

「では、樹ちゃんの言うことが本当ならイツカさんは偶然、勇者システムと同じ現象が生身の体に起こっているってことですか」

「私も、憶測の範疇なので……」

 

 東郷と樹は首を傾げる。突拍子のない予想なのだが、

 

「本当だったらイツカさんはすごく神樹様に愛されているってことだね!」

 

 友奈は明るく笑顔で話す。

 

「……そうか、そうだったら良いよなぁ。サンキューな、友奈」

 

 オルガは心から安堵し、笑った……。

 

 

 ーーすっかり夜になってしまったのでみんなは夏凛宅を後にする。

 夏凛は食べるはずの弁当を冷蔵庫にしまう。

 

「ホントっ、騒がしい連中なんだから……」

 

 そう悪態をつきながらも夏凛は笑っていた。すると、部屋がコンコン、とノックされ、三日月が入ってきた。

 

「? なに? 忘れ物?」

 

 夏凛が聞くと、三日月は小さな声で答えた。

 

「ごめんな……?」

「えっ?」

「俺さ。初対面の時、失礼なことしたよね。胸ぐら掴んで」

 

 三日月は初めてあった時、夏凛との喧嘩のことを謝罪してきたのだ。

 

「……別にいいわよ……」

「俺はさ。その前の日にオルガに教わったんだ。勇者部のみんなは仲間だって。俺もそう思ってる。……だからなんか貶されたみたいで頭にきた。ごめん」

「だから、いいって。私も、アンタたちのこと軽く見てた。……ごめん」

 

 二人の間に流れる気まずい空気を、夏凛は壊そうとする。

 

「あ、ああ〜‼︎ やめやめ、用は済んだの⁉︎ なら帰りなさい! 休み明けもビシビシいくから‼︎」

「うん……、ありがとう夏凛先輩」

 

 三日月のその呼び方に夏凛はうっ、と声が漏れた。

 

「先輩……⁉︎ あーそういえば一個下だったわね。忘れてたわ」

 

 夏凛は三日月が樹と同い年なのを忘れていた。タメ口だし……。

 

「夏凛。呼び捨てでいいわよ。私もアンタを三日月、って呼ぶから。……私も……仲間、でいいんでしょ?」

 

 夏凛は顔を朱にして恥ずかしそうに呟く。

 

「……! うん、夏凛も仲間だよ。よろしく。」

 

 三日月は笑って夏凛と握手をし、帰っていった。

 

 ……夏凛はベッドの上で今日を振り返っていた。今日といっても友奈たちとすごした時間を。

 

「……世界を救う勇者なのに……。何やってんだか……」

 

 夏凛は目を閉じる。

 

「ホント、バカね……」

 

 その言葉は誰に向かって言ったのかはわからない。もしかしたら自分に向けたものかもしれない……。

 

「……」

 

 安らかな寝息をたて、夏凛はそのまま眠りに落ちていった……。

 




次回予告

『それ食べて元気出しなさい』
『いえ、武器を持ったら、自然と……』
『いや〜、昨日は何が何だか〜』
『ふふふ、友奈に万一があったら責任取って死のうかと思ったわ……』
『友奈さんが無事で何よりでしたよ』
『きっと、羨ましかったんだ』
『俺は嫉妬してたんだ』


ーー第七話 心の片隅にーー
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