武器商人と最強傭兵   作:紅乃 晴@小説アカ

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荒野とイングランドと愚か者たちと

 

 

 

民間軍事会社、エクスカリバー社。

 

大層な名前の通り、イングランドに拠点を置くPMCであり、低予算で動くが、民間人や場合によってはクライアントでさえ見境無く襲撃するような犯罪者まがいの組織と化している。

 

そんなイかれたPMCの感想について、ココと愉快な仲間たちに聞いてみよう。

 

ココ「え?アレ?山賊じゃない?」

 

バルメ「あんな連中は、いないほうが安全」

 

ワイリ「絵に描いたような外道」

 

うん、俺から見てもあの大層な名前のPMCの連中はろくでなしだわ。アールやルツ、トージョたちも同意見で頷いている。特にバルメのスタイルを卑しい顔で見ていたのがムカつく。

 

ココ分隊の車列を警備する業務を請け負っていたのだが、その途中で無関係な民間人の車を銃撃。もちろん解雇である。その場で撃ち殺されなかっただけでも幸運だというのに、解雇を逆恨みして、身代金目当てでココ分隊を襲うとは……自ら地獄の底に飛び込んでるようなものだ。

 

「ヒャッハー!皆殺しじゃん!?武器商人人質にするじゃん!?身代ごっ……」

 

違法改造したSUVの銃座にいた奴の眉間をとりあえずぶち抜く。距離としては1.5キロほどか。アンブッシュして前方車両を潰して相手を混乱させ、後ろから挟撃、退路を断つ。クズのやる常套手段だが、アンブッシュが失敗したら迎撃されて終わるやつだぞ。

 

「はっ?はっ?ハァ!?おいおいおい、冗談だろ!?まだ距離ブッ」

 

次に運転席に座るやつを狙う。サングラスをかけた男の眉間を撃ち抜き、助手席のやつも仕留める。次は後方の車両と……的確に運転席に座る相手を撃ち抜くとすぐに車列は乱れて右へ左へと蛇行……あー、あー、銃座に乗ってるやつが投げ出されてる。こりゃあこれ以上は無駄弾だな。

 

そう思って屈んでいた体を起こし、スコープを乗せたライフルを持ちあげると、隣で灰が随分と伸びたタバコを持つレームさんが立っていた。

 

「相変わらずエグい腕してるねぇ、ジョーカー。この距離でピンポイントに撃ち抜けるのかい」

 

俺が持っているのはココから支給されたブッシュマスターACRにライフルスコープを乗っけたやつである。部隊内のマガジン規格の統一、弾薬の共有をココからお願いされていて、普段使っているM4はコンボイに仕舞っている。

 

うむ、初めて使ってみたが確かに使いやすい。さすがは武器商人。目利きはピカイチである。

 

「蛇行運転してないから難しくはないっすねぇ。地面の揺れもある程度目算できますし」

 

「できねーよ」

 

「ふざけんな」

 

俺の言葉に被せるように言ったのは、上からアールとトージョである。ちなみに二人の使うブッシュマスターにはスコープなどは乗っておらず、ドットサイトのみである。戦況的に後ろから襲ってくるのは確定だったし、アンブッシュはその名のとおり奇襲することが真価なのでまんまと出てきては意味がない。なので、後方へ狙撃するためにスコープをつけるのは戦術的に正しいはずなんだけどなぁ……。

 

「ただ、撃ち漏らしはあるんである程度は生き残ってるかと。ワイリ?そっちはどう?」

 

《あったあった。予想通りの場所だ》

 

アールやトージョの信じられないような目を無視してアンブッシュ先にいるワイリに連絡を取る。予想通りIED(即席爆発装置)を仕掛けていたのだろう、汗だくのまま側溝に隠すよう仕掛けられたソレをワイリは無線機を耳と肩で挟んで手際よく解体していく。

 

「爆弾の種類は?」

 

《ポピュラーなやつだ。頭のいい大学生くらいになら作れる。俺にとってはオモチャだぜ》

 

あ、そうですか。あとはごゆっくり。それだけ伝えて、ペットボトルの水をバルメに当てていちゃついてるココに無線機を返す。戦況が膠着状態となったのでルツやウゴたちも一息ついているようだ。相手も適当な距離でSUVを止めてダンマリを決め込んでいる。

 

「爆弾はワイリがどうにかするみたいですね。どうします?下手に時間取られてもアレですから行ってきましょうか?」

 

「ココ、ジョーカーが遮蔽物もないところで肉薄するとか正気じゃないこと言ってるんだけど?」

 

「まぁジョーカーなら無理ないね」

 

すごい困惑した顔でココをみるヨナくん。いや、遮蔽物なくてもなんとかなるもんよ?距離も遠いし弾道もわかりやすいから左右に躱しながら距離潰して相手を減らせれば大体なんとかなる。それに無理にSUVから身を乗り出せば、後方から援護してくれるだろうレームさんのカモになるしね。

 

そう答えると全員がなんとも言えない顔をして頷いていた。

 

「ジョーカーだしな」

 

「ワイリもやばいけどジョーカーもやばい」

 

《ハッハッハッ!》

 

無線機越しにワイリの笑い声が聞こえたと同時に、前方車の前にあった岩山の一部が華麗に吹っ飛んだ。たぶん、いつものように相手の仕掛けたIEDをそのまま相手側に仕掛けて……敵は自らの起爆装置と爆薬で吹っ飛んだのだろう。凄まじい爆発音と爆風がココの銀色の髪を撫でる。

 

「……岩陰に待機してた奴ら、火星まで吹っ飛んだかな」

 

そう呟きながら、SUVから爆発音で顔を上げたエクスカリバー社員の頭を撃ち抜く。血を撒き散らしながら倒れた仲間を見て、SUVの裏に隠れる奴らは察するまでもなく狼狽えていた。

 

「う、動くな!少しでも頭出したら死ぬ!」

 

「くそ!なんでこんなことに!?カモ狩りじゃなかったのかよ!」

 

少しでも頭を出そうものなら即座に必殺の弾丸が飛んでくる。そんな信じられない状況で混乱するエクスカリバーの連中は、そのままSUVの裏から出てこなくなってしまった。何かゴソゴソと準備しているらしいが……まぁ、あとの展開はお察しだろう。

 

ひとまず休憩を取るためにコンボイの裏に回って水を飲もうとしたら、最後尾のコンボイを運転していた通訳……ナザルさんが話しかけてきた。それもインカムを外して。

 

「ジョーカーさん……でよかったでしょうか?」

 

「クラヴィスでいいけど、アンタは?」

 

アイコンタクトで察して俺もインカムをオフにする。するとナザルさんは〝俺〟にしかわからない所作で敬礼をして身分を明かした。

 

「過去に北部支部に居たものです」

 

彼の所作……それは、俺がこの世界に来てから中東で世話になっていた武装組織のものであった。過激派武装組織でありながらも、米軍とも協力体制を敷いていたその組織は、今じゃ勢力をかなり落としていると聞いていたが、まさかナザルさんがメンバーの一人だったとは。

 

俺も同じ所作で敬礼を返して、懐かしい顔を思い出しながら言葉を返す。

 

「部隊長は元気にしてるか?」

 

「……彼の方は聖戦のために散りました」

 

一切表情を変えずにそう答えるナザルさんに思わず顔をしかめそうになるが何とか堪えた。過激派組織はそんなもんだ。誰が死んでも彼らは聖戦のために犠牲となったのだ。残された者に死者を悼む時間はない。あるのは死んだ者たちの意思を継いで、前に進むことだけだ。

 

「そうか……で、アンタの目的は?」

 

「エクスカリバーにいる政府高官の息子の拉致と身代金要求ですね」

 

相変わらずだなぁ……ほんと。悪びれる様子もなく答えるナザルさんだが、中東の過激派なんてこんなもんだ。基本的に資金難の貧乏組織なので、金になるのならなんだってする。麻薬だって売るし、武器も横流しするし、戦場をゲームの中でしか理解していないバカな奴を捕まえて身代金を国やお偉いさんにするなんて日常茶飯事なのである。

 

マオとウゴが岩山で吹っ飛ばされた奴らから生きている者を探しに行こうとしているらしいのでそのまま付いて行って高官の息子をゲットする予定だとか。……それ、ワイリが加減ミスって全員あの世にぶっ飛ばしてたらどうするんですかね。あ、その場合は待機させている仲間を呼んでココを人質に取ると。高官の息子が生きているのを心から願っているよ!!元仲間と撃ち合うとか勘弁してほしいし!!

 

「今からでも戻られませんか?我々は英雄である貴方を歓迎しますよ」

 

去り際にナザルさんがふと、そんなことを言ってきた。

 

俺が中東を離れたのは随分と昔だ。あれから情勢は大きく変わった。

 

幅を利かせていた米国はその力を衰えさせていて、近く撤退するという噂も聞いている。そうなると中東一帯は再び内戦、聖戦の嵐が吹き荒れることになるだろう。そんな未来が予見できる者たちにとって、俺のような戦力は非常に魅力的なのかもしれない。

 

ただ、中東の情勢が変わったように、俺もまた取り巻く環境が変わっているのだ。

 

「アンタたちには恩もあるし世話にもなったけど……もう過去のことだ。今更戻れないさ」

 

そう答えるとナザルさんは少し残念そうな顔をしてから、頷く。

 

「そうですか……残念です。ですが、収穫もありました。貴方が恩を感じてくれている以上、我々に破滅は訪れませんから」

 

「ジハードって狂ってトンチキ理念掲げて侵略作戦しなければね」

 

「肝に銘じておきますよ。では、私はこれにて」

 

そう言い残し、インカムをはめてコンボイの裏から去っていくナザルさん。

 

視線を横に向けるといつでも飛び出せるように息を潜め身構えたバルメがいたが、大丈夫と手を振ると彼女は鷹のような視線を外し、ココの待つ持ち場へと戻って行った。

 

コンボイの傍から様子を見ると、IEDのコードがぐるぐる巻きにされた無垢な一般人男性が手招きするワイリとココの方に倒れるのが見える。

 

「とりあえず夕方にはカタがつきそうだなぁ……」

 

ゲスな手を使った結果、悲惨な末路を送るであろうエクスカリバーのメンバーに哀悼の意を表して、俺は念のためにコンボイの上に登って後方警戒を続けるのだった。

 

 

 

 

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