ホロライブ・オルタナティブver.IF外伝 ~GM戦隊グレートメンバー~ 作:天野空
その1人天音かなたの元に向かう事になったフジは、懐かしい場所へと足を運んだ。
広大な世界に無数の浮島がある【ふぉーす】でフジは天音かなたを見つける事ができるのか?
そこは天空の世界。
(ここに来るのも久しぶりだな)
大きな体の男が浮島の端に立って空を見ていた。
第六世代組がこの浮島の世界【ふぉーす】に来ている事が分かり、GMであるフジがさくやに言われて調査に来ていた。
「さて、どこから探すかだが?」
フジは空から浮島の方に目を向ける。
この【ふぉーす】はかなりの数の浮島でできている。
この数の中から目的の相手を見つけるとなるといくらGMと言えども無理に近かった。
(ま、普通はな)
そう言ってフジはまず、近くの町、【ふぉーす】の始まりの町に向かった。
(ここも変わってないな)
フジは第1の町である始まりの町を歩く。
レンガ作りの家が多く、西洋風の町並みだ。
周りには天使や悪魔、翼を持つキャラクターが多く歩いていた。
(さてと)
フジはそんな町の中をある場所に向かって歩いた。
そして、少し裏路地に入ったフジが行き着いたのは1軒の酒場。
「まだ、潰れずにやってたみたいだな」
少し笑みがこぼれたフジは酒場のドアを開ける。
「すまんな、まだ開店前だ」
酒場のカウンターから男の声がした。
「知ってるさ、昔と変わらないのなら」
その声にフジはそう答えた。
「ん?」
カウンターから顔を出す男性。
そして、フジの顔を見るなり驚いた。
「おまえ、フジか?」
「おう、久しぶりだな、ガルボ」
「おお、フジ。
久しぶりじゃないか」
フジの答えにガルボと呼ばれた男はカウンターから出てきてフジの腰を叩く。
彼の種族はドワーフ。
フジの腰より少し上ぐらいしか身長はなかった。
「相変わらず小さいなガルボ」
「うるさい、俺はこの姿が気に入って選んでんだよ」
ガルボはそう笑いながら言った。
この店はこのゲームでは珍しくプレイヤーが運営している酒場だった。
別に店事態はすぐにやれるのだが、店を持つにはいろいろと条件があった。
その1つに1週間に5日は店を開けると言うものがある。
もし、この条件をクリア出来なければ土地が没収されて店がなくなってしまうのだ。
なので、このゲームで店を持つプレイヤーはなかなかいない。
「よく潰れずに続いてたな」
カウンターに座りフジが言った。
「まぁな。
俺はこの店をするためにこのゲームに入ってるからな」
「そうか」
出された飲み物を飲みフジは優しそうに笑う。
「それより、どうした?
妹さんに誘われて入ったGM辞めたのか?」
「バカ言え、辞めたら無職になるだろうが」
そう言ってフジは偽装を解き、GMの制服を見せる。
「はは、確かにな。
妹に養ってもらう訳にもいかないしな」
フジの制服を見て笑うガルボ。
「しかし、ブラック企業で働いていたお前の暇潰しが、まさか本職なるとはなぁ」
しみじみ言いながらガルボも酒を飲む。
「おい、その話は止してくれ」
「あ、ああ、すまんな」
フジの言葉にガルボは言葉を止めた。
「それで、久しぶりに来たお前がこの店にただ寄っただけって事はないんだよな?」
コップを置き、ガルボは真剣な顔でフジを見た。
「ああ、察しがいいな。
ある人を探している。
それで『天の人渡り』に繋ぎを頼みたい」
「ほぅ、あいつ等にか」
「ああ」
「急ぎのようだな、分かった。
繋ぎはつけておく。
町の中心部の噴水で待っていてくれ」
「ありがとう」
フジはいくらかのお金をカウンターに置く。
そして、席を立ちドアに向かった。
「たまには顔を出せよ」
背後から声をかけられる。
「ああ」
フジは笑って答える。
「そう言えば、今日はキャラ作りしてないんだな」
ガルボは笑う。
「今日は1人だからな」
フジも笑った。
いつものしゃべり方はフジのキャラ作りの一環らしい。
「じゃぁな」
そして、フジは店を出る。
「同じ職場の妹さんによろしくな」
そんな背中にガルボの声がかけられた。
フジは約束の噴水へと向かい縁に座った。
ここはいつものどかだ。
ガルボに言われた通り、フジはこのゲームを気分転換で始めた。
過度な勤務時間、休みを削ってのサービス出勤。
そんな心身共に疲れたフジが唯一の楽しみでやっていたのがこのゲームだった。
そんなフジを見て、GMをしていた妹が兄であるフジにGMの仕事を誘ったのが、GMになるきっかけだ。
フジは始めて選んだ町を懐かしそうに見る。
「久しぶりですね、デストロイヤー」
そんなフジにいつの間にか近くに座っていた天使が声をかけてきた。
「止めてくれ、昔のあざなは」
フジは天使を見ずに答える。
「これは失礼。
久しぶりだったのでついね」
「相変わらず質が悪いな『天の』」
「これが性分ですから」
フジの言葉に『天の』と呼ばれた天使が笑う。
「それで誰をお探しですか?」
天使が聞いてくる。
「天音かなたを探して欲しい」
「これはまた、ホロメンじゃないですか」
「ああ、ちょっと仕事でな。
礼はするさ」
フジがメッセージを天使に送る。
「これはまた。
さすがはGMってところですか?」
「で、探せるのか?」
「任せてくださいって。
我らの情報網はあのあくあ情報網に匹敵するくらいですからね」
そういってどこかに連絡をする天使。
『天の人渡り』
プレイヤー達で構成されている情報屋だ。
その情報の多さは先程出たあくあクルーによる、あくあ情報網に匹敵する。
あくあ情報網はあくまであくあの為の情報収集組織だが、この『天の人渡り』は報酬さえ出せば誰でも情報を買う事ができる。
ただし、信用第一の為、この『天の人渡り』に会うのはそれなりの条件が必要だった。
「いました。
レベル90ダンジョンの近くの何もない無人浮島に向かうかなたちゃんを見たそうです。
ただ、何かに追われていたようにも見えたそうですよ」
フジはそれを聞いてGM専用の地図を開く。
「ここか」
フジは言われた場所を確認した。
「ありがとう」
そして、フジは報酬を支払う。
「ありがとうございます。
また、ご贔屓に」
そう言って立ち上がった天使はいつの間にかいなくなっていた。
「相変わらず神出鬼没か」
フジはそう呟きながらGMバイクに向かった。
GMバイクに乗り込んだフジは情報にあった浮島の近くに着いた。
「ここか?」
浮島に降りたフジ。
少し遠くから誰かが戦っているような音が聞こえて来た。
「よし」
フジは音の方へと向かう。
「ま、行かせないんですけど」
そんなフジの前に1匹のぬいぐるみのような鳥が立ちはだかる。
フジは止まり鳥を見た。
(確かこの鳥は?)
フジにはその鳥に見覚えがあった。
(そうだ、こいつは第六世代組と一緒にいた!)
そう理解したフジはすぐさまロケットランチャーを装備した。
「いいですね。
その素早い対応。
私を覚えていたって事ですか?
1度しか会ってないはずですけど?」
「データはあったからな。
第X世代、鳳凰寺ベル」
フジにそう言われて鳥はニヤリと嘴を曲げた。
「では、この姿でお相手するのも何なので、封印解除」
鳥は光に包まれそして、その光が収まる頃、1人の女性がその場に立っていた。
赤、黄、オレンジの多種の髪の色でショートカット。
その色の胸元からへそまで切り込みの入ったチャイナドレスを着ていた。
そして、その背には色鮮やかな羽が生えていた。
「時間稼ぎか」
フジはロケットランチャーを構えたままベルに言う。
「ええ、気だるいですが。
でも、さすがはGMの上位。
頭が回る人は嫌いじゃないですよ」
そう言ってベルはニヤリと笑った。
(なら、この先でかなたちゃんと第六世代組が戦っているという事か)
「行かせてもらう」
フジはその言葉が終わらないうちにロケットランチャーを発射する。
計8発のミサイルがベルに向かっていった。
しかし、そのミサイルの数でもベルは腕を組んだまま動かない。
フジは撃ち終えたミサイルランチャーを捨て、ミサイルを追いかけるように走り出す。
そして、右腕を胸元に「GMチェンジ」
ミサイルがベルに当たり爆発する中、イエローコングに変身したフジがあの爆発の中、平然と立っているベルに拳を撃ち込んだ。
「む」
フジの渾身の拳は色鮮やかな羽に阻まれベルに届いていなかった。
背中の羽がベルを覆うように前に出てきたのだ。
後ろに下がるフジ。
羽が開き笑顔のベル。
「さすがだな」
「危ないですね。
そんな物、どこで手に入れてくるんですかGMは?」
ベルはフジの拳から出ている弾丸に目を付け言った。
「でも、今の私にはそれ程効きませんけどね」
フジが指の間に挟んだ弾丸は対コメント集のモノだ。
コメント集の力を使っている相手に対してはかなりのダメージを与えられるが、今のベルはその力を第六世代組によって取り除かれている為に、ダメージはそれほど与えられない。
「なるほど、前回の資料と違って禁忌の力は使っていないというわけか」
「ええ、その代わりに第六世代組の人の使い魔になる事でホロメンの力を供給してもらっています。
ですので、こんな風に【変身】できるんですよ」
胸元から出したカードを掲げるベル。
真っ赤なオーラがカードから出てベルを包み込んだ。
そして、オーラがベルに吸収された時、新たな姿のベルが現れた。
黒のミニドレスを着て、背中には赤と黒の巨大な羽が生えていた。
「くそ!」
咄嗟に防御するフジ。
「未来見えてるんですか?」
いつの間にか目の前にいるベルの掌底が防御の上からフジを吹き飛ばす。
「かは」
吹き飛ばされたフジは何とか両足から着地した。
しかし、GMスーツを着ているのにダメージが思ったより大きい。
「どうしました?
さすがにこの姿ではGM上位と言えども相手は無理ですか?」
「どうだろうな」
フジはどうにか立ち上がる。
自分の体をスキャンしたがまだいける。
しかし、このまま戦えば相手の思う壺で時間稼ぎをされてしまう。
(どうする?)
フジはシールドとハンドアックスを装備し構える。「よかったです。
まだ私と戦ってくれるみたいで」
(このままだと)
笑顔のベルを前にフジは内心焦っていた。
「あなたの相手はこっちがしてあげるわ」
突然、2人の横から声がかけられる。
「?」
ベルはその声の主を見る。
フジもそちらを見た。
そこには腰に手を当てて立つ1人の悪魔がいた。
『トワ様』
ベルとフジの声がハモる。
「なんか散歩してたら見た事ある姿が見えたんで来たわ。
と、いうことでこっからはあんたの相手はこのトワがしてあげる。
GMの人。
この先にいるあいつをお願いね」
トワがフジの横に行き、フジに言った。
「ありがとうございます」
フジはお礼を言った後、戦いの音が聞こえた方に向かって走る。
「はは、さすがにトワ様が相手してくれるとなると動けませんね」
フジが横を通りすぎる時、ベルがそう呟いたのが聞こえた。
そして、フジはベルをトワに任せ先を急いだ。
「見えた!」
フジは先に見える2つの人物を捉えた。
1人は天使の羽と輪を持つ者。
もう1人はショートカットに黒いコートを羽織っている。
かなたとルイだ。
2人はお互いに打ち合った後、距離をとった。
そこにフジはルイに向かってバズーカを撃ち込んだ。
「おっと」
ルイはそう言って撃ち込まれた弾を避ける。
「助太刀する」
フジはそう言ってかなたの横に来た。
「ありがとう、えっと?」
「GMチームα所属、フジ」
「助かるよ、フジさん」
かなたはフジにそう言った後、ルイの方を向いた。
「まさか、ベルを突破してくるとは」
感心したように言うルイ。
「手助けが来てくれたからな」
フジはハンドアックスを構える。
フジの言葉に少し動きが止まるルイ。
「なるほどトワ様ですか。
それはさすがにベルもあなたを通してしまいますね」
そう答えた。
「じゃ、どうする?
まだ、僕達と戦う?」
構えたままかなたはルイに聞く。
「そうですね」
かなたとフジを見るルイ。
そして、ルイは武器を下ろした。
「ま、用事は済みましたし。
もうこの辺で去る事にしましょうか。
かなた先輩相手なので」
「?」
変な言い方をするルイにかなたは不思議そうな顔をする。
「えっと、猿と去るをかけてみました」
説明してくるルイ。
「あ!
僕は猿じゃない!」
「あ、ゴリラ?」
ルイはそう言って笑いながらワープホールに入る。
「でもない!」
そんなルイにかなたは大きな声で言った。
そしてルイはその場から姿を消した。
「ふぅ、正直助かった。
かなり力を使ったから」
ルイがいなくなった後、肩で息をするかなた。
「大丈夫ですか?」
「うんありがとう。
こんな事なら赤竜帝の小手、また借りとけばよかった」
フジの言葉にお礼を言いながらかなたはぼやく。
「かなた~大丈夫~?」
そこにトワもやって来た。
「トワ!」
その姿を見てかなたが呼ぶ。
「どうしてここに?」
そばに来たトワにかなたが聞いた。
「え?
なんかかなたが追われてるって掲示板に書かれてたから探しに来た訳ではないわよ」
(普通に説明してるよトワ様)
それを聞いてフジは心で突っ込みを入れる。
「そっかありがとね」
かなたは笑いながら頷いた。
「そうだ、かなたちゃん。
すいませんが絆数を確認してもらってもいいですか?」
フジはかなたに聞く。
「え?
いいけど」
ステータス画面を開くかなた。
「あれ?
1人増えてる。
何でだろう?」
その言葉を聞いてフジは自分が間に合わなかった事を理解した。
「ん?」
そんな中、トワが何かに気づいたように浮島の外を見る。
「どうしたの?」
そんなトワにかなたが聞く。
「ごめん、なんか行かないといけないみたい」
そう言って浮島の外へと走り出すトワ。
「ちょ、ちょっと」
かなたの制止を聞かずにトワは浮島の外へとダイブし、そのまま落ちていった。
「トワー!」
浮島の端まで行って下を覗くかなたとフジは、下に落ちていくトワを見る。
その先には巨大な城が見えていた。
今回は【ふぉーす】にいるかなたちゃん編です。
ま、きちんとした戦闘はこちらではありませんでしたが、いろいろと匂わせありで書きました。
では、次回またよろしくお願いします
今度はもう少し早めに更新しよう