ホロライブ・オルタナティブver.IF外伝 ~GM戦隊グレートメンバー~ 作:天野空
寿退職とは言え、離れてしまうレイムに2人は寂しさを感じていた。
「本当に総隊長と結婚されたんですか!」
ディスプレイの中のレイムに驚いた声で聞くヒーロ。
「そう」
笑顔で答えるレイム。
「で、でも、総隊長とはかなりの歳が離れてるような」
ヒーロの小さくなっていく声に、総隊長は「はぁ~」とため息。
「だから嫌だったんだ。
こいつらに言うのは」
そんな総隊長を見て笑うさくやとフジとレイム。
「ここからはオフレコで頼むぞ」
そう言って総隊長はこほんと咳払い。
「はぁ、本当にお前はここがどこか分かってんのか?」
明らかに喋り方が変わる総隊長。
「え?」
そんな総隊長を見てポカンと口を開けるヒーロ。
「あ、そうなんですね」
何かが分かったのかポンと手をたたくリィス。
「え?な、何が?」
少し慌てるヒーロはリィスに聞く。
「この世界はゲームなんだよ。
見た目で判断するな」
呆れたように総隊長が言う。
「あ」
「だから、見た目がこれでも俺はまだ20代だ」
「ええ、どう見ても40過ぎ」
「うるせぇ」
ヒーロの言葉に総隊長は拗ねたように言う。
「え?だったら?」
ヒーロが総隊長の隣にいるレイムを見る。
「そう、私の方が少しだけ年上かな」
「そうなんですか?」
またも驚くヒーロ。
「もういいだろう。
お前が話してると話が進まん」
「え?」
「リィスも一緒に少し席を外すぞ」
首根っこを掴まれたヒーロは、フジと共に部屋を出る。
「あ、はい」
それに続くリィス。
「あ、待って」
部屋を出る前にヒーロはフジに首根っこをもたれたまま立てる。
そして、レイムの方を向く。
「レイム先輩。
一緒に仕事させてもらって本当に楽しかったし、勉強になりました。
本当にありがとうございました」
そう言って頭を下げた。
フジはそれを見て微笑んでから、ヒーロをそのまま引きずっていった。
その後、リィスもレイムに向く。
「短い間でしたけど、レイム先輩にはたくさん教えていただきました。
ありがとうございました。
お幸せに」
そう言って頭を下げた。
「リィス」
「はい」
「あなたも頑張ってね」
そうレイムに言われて、少し顔を赤くしたリィスは部屋から出ていった。
「ごめんね、こんな形で退職して」
「かまわないよ。
リスポーンまでかなり時間がかかるから」
レイムはさくやに謝ったが、さくやは笑顔で首を振った。
「それより、レイム。
最後に送ってきたあの設計図はやはり必要なのか?」
さくやが真剣な顔でレイムに聞いた。
「ええ、必要になる。
現状ではどうやっても無理よ」
「そうか」
「もう、ウェイには連絡して設計図は送ってる」
その言葉を聞いて、さくやは手元にその設計図を出した。
そこには各隊員の新たな専用武器の設計図が映し出されていた。
「それほど、あれは強いんだな」
「ええ、データ解析した結果、私達が思ってた以上になっているわ」
【対コメント集用決戦武器】
そう設計図には書かれていた。
「さて、改めてだが、レイムが抜けた穴は大きいが各自フォローしながらやっていこうと思う」
「補充要員はいないんですか?」
さくやに聞くヒーロ。
レイムとの話が終わり、GMの部屋に4人は集まっていた。
「現在のところ、レイムが予想より早く退職したので、補充はなしだ」
「そうですか」
「それに今はどの隊も手がいっぱいでな」
「亜種ですか?」
さくやにリィスはそう聞く。
「そうだ。
ここ最近亜種が頻繁に目撃、暴れていて、各GMのチームは出動回数がかなり増えている」
「やはりコメント集が」
さくやの言葉にリィスが呟く。
「それで、総司令からの新たな任務だ。
私達チームGMは現在の第六世代組の絆阻止作戦を中止する」
「中止ですか!?」
驚くヒーロとリィス。
「そうだ。
レイムからの報告にもあったが、ホロメン達が自ら決めて絆を渡しているところがある。
その事から上層部は、一旦絆阻止を中止、現在活動が活発化しているコメント集に対しての行動を優先する事になった」
「だったら、もう第六世代組に直接接触しなくなるんでしょうか?」
なぜか残念そうなリィス。
「いや、私達はこれまで通り第六世代組が現れたら、優先的にそこに向かう。
どうやら、第六世代組が現れるところに、コメント集が現れやすくなっているようで、その関係性も一緒に調査する事になった」
「そうなんですね」
ほっとするリィス。
それを見てさくやは微笑えむ。
「では、これからの事だが、まず、私達の戦力増強を行う。
レイムが退職する前に、新たな武器を【近未来都市】に発注してくれている。
それを取りに行く」
『了解です』
3人は立ち上がり敬礼する。
そして、チームGMは【近未来都市】の中央ビルに向かった。
【近未来都市】は前回のホロサウルスの襲撃の傷跡はほぼなくなっていた。
しかし、まだ人の行き来は少なく、NPCも数が少ない。
あの襲撃でやられた為、リスポーンに時間がかかっているキャラもいるようだった。
「やぁ、待ってたよ」
【近未来都市】中央ビル地下にある研究施設。
そこでチームGMをウェイが待っていた。
「ウェイ、例の物は?」
簡単に挨拶をすませた後、さくやがウェイに聞いた。
「もちろん、出来ているさ。
久しぶりに運営の許可ありのチート武器が作れたんで、寝る間も惜しんだよ」
そう言って笑うウェイ。
「さて、早速渡したいんだけど、そうもいかなくてね。
何せ普通の武器と違って出力が今までの武器とは段違いなんだ。
だから、それぞれテストをしてもらいたいと思ってる」
「テスト?」
「そう」
ヒーロの言葉に頷くウェイ。
「ただ、さっきも言ったけど出力が段違いなんで、それぞれ特別な場所に移動してから性能を試して欲しい」
ウェイはそう言ってからキーボードをたたく。
すると、実験場の入り口が開いた。
「中にワープ装置があるからそれに、入ってくれるかい?
その先で運用テストを行うから」
ウェイの言葉にチームGMは頷き、ワープ装置に向かった。
『では、健闘を祈る』
スピーカーからそうウェイの言葉が聞こえた後、4人は別の場所へと移動した。
「ここは?」
目を開けるとそこは広大な荒れ地だった。
『そこは【ホロライブワールド】でまだ実装されてないエリアだよ』
そうウェイから通信が入った。
「おい、俺1人かよ」
そう言って回りをみるヒーロ。
『当たり前だろ。
他の人は他の場所でテストをしているさ。
それより早速テストを始めるよ。
使える武器は1つだけ。
それで今から現れる相手を倒すのが目的だよ。
じゃ、頑張ってな』
そう言ってウェイの通信が切れた。
「なんだよ、武器って」
ヒーロは武器一覧を表示。
確かに今は1つしか項目が現れなかった。
「イーグルソード?」
そう名付けられた剣が1つ表示されている。
「剣か?」
ゥォン
変な音がして、ヒーロから少し離れた場所に何かが転移される。
「俺の相手って訳か」
ヒーロは武器を出す前に相手を確認する為、じっと転移されてきた相手を見た。
「おいおい、まさかだろ…」
ヒーロはその相手を見て呆れ半分、驚き半分だ。
何せヒーロの前に立っているのは、あのロボ子だったのだから。
「ロボ子さん?」
「はろ~ぼ~」
ヒーロの呼び掛けに笑顔で手を振るロボ子?
「また、性懲りもなくロボ子さん似のアンドロイド作りやがったなウェイのやつ」
ヒーロはため息をはく。
ウェイは大のロボ子好きで、よくロボ子似のアンドロイドを作っては本人に怒られていた。
「ま、相手にとって不足なしだ」
ヒーロは胸の前に腕をもってくる。
そして「GMチェンジ!」
グリーンイーグルへと変身した。
(まずは相手がどのくらいか試してやる)
ヒーロはそう考え、ロボ子との間合いを一気に詰める。
そして、素手で攻撃した。
バシ!
「へぇ~」
その攻撃をロボ子はその場から1歩も動かず軽く受ける。
「ま、それくらいはしてもらわないとな」
そう言って掴まれた手を振り払おうとしたヒーロ。
しかし、手を振り払うことができない。
いや、拳をがっちりと掴まれて動かす事もできない。
(な、なんだ?)
焦るヒーロ。
そんなヒーロをロボ子は感情なく見ている。
そして。
「うわぁ!」
片手で持ち上げられるヒーロはそのまま、ロボ子に投げ飛ばされた。
「く」
何とか空中で体勢を立て直し着地するヒーロ。
「なんなんだ?」
(あいつが作ったアンドロイドにしては強すぎないか?
こっちは変身してるんだぞ)
変身すればホロメン並みには強くなっている自分を、こうも簡単にあしらわれ、驚くヒーロ。
(やっぱりこれを使えって事か)
武器一覧のイーグルソードを確認する。
向こうは一切こちらに攻撃してくる気配はない。
「なら、試し切りさせてもらう!
こい、イーグルソード!」
ヒーロの言葉に空から1体の鷲が飛んできた。
その緑の鷲は手を上げたヒーロに向かって飛んできて、剣に変わりながらヒーロの手に掴まれた。
「これがイーグルソード」
イーグルソードを掴んだ瞬間、ヒーロのステータスが軒並み上がった。
「なんだ、装備するとバフがかかるのか?」
ステータス画面には、【緑鷲の恩恵】とかかれたスキルが追加されている。
グリーンイーグル装備時のみ、全てのステータスが1、5倍される。
と説明がある。
「おお、変身して上がったステータスをさらに伸ばせるなんて、チートじゃないか」
ニヤリと笑うヒーロ。
そして、ロボ子を見た。
ロボ子もいつの間にか手にソードを装備していた。
「いくぞ!」
突撃するヒーロ。
先ほどとは違うスピードが出ているのが自分でも分かる。
(これなら!)
ガキン!
しかし、先ほどより早いはずの一撃もロボ子に受け止められる。
「く!」
ヒーロはそのまま勢いに任せて連続攻撃を叩き込む。
それは目で追うには早すぎるスピードだった。
しかし。
キン、キュイン、ギン!
それをロボ子は時に受け時に受け流す。
(な、なんでだ?)
ヒーロは連続で攻撃しなから驚いていた。
そして、何よりヒーロが驚いているのは、これだけの攻撃をしているのに、ロボ子は1歩もその場から動いていない事だった。
(これならどうだ)
ヒーロは一瞬でロボ子の側面に移動。
そこから一撃を放つ。
だが、それもロボ子は剣で受け止める。
それも向きを変えないままで。
「な、なんなんだ!」
ヒーロはロボ子の回りを動き回りながら斬撃を放つ。
しかし、ロボ子は向きを変えないまま、その攻撃を全ていなしていた。
(なんで背後の足元まで防がれてるんだ?)
理解不能な防御にヒーロは困惑する。
「くそう!」
ロボ子から離れるヒーロ。
構えたままヒーロはロボ子を睨む。
無表情のままロボ子もヒーロを見ていた。
(どうすればいい。
今のステータスなら、ホロメン相手だって負けないはずだ。
それがホロメンに似せたアンドロイドにさえ手も足も出ないなんて)
ヒーロはぎゅっと柄を握る。
「そんなんだから、仲間を守れなかったんだよ」
「え?」
挨拶以外で、初めて目の前のロボ子が声を発した。
「その満身が仲間を守れず、逆に守ってもらい最悪の結果になった」
ロボ子の言葉に手の中で、動かなくなったレイムの事を思い出す。
「そ、それは」
「例えリスポーンすると言っても死は死。
あなたは彼女を守れなかった」
「う、うるさい!」
ロボ子の言葉にヒーロは大きな声を上げた。
「これからの戦いでも、誰かが守ってくれると期待するの?」
「…」
「ボクが本物じゃないって、いつ誰が言ったのかな?」
その言葉にヒーロは大きく目を開きロボ子を見た。
「あの戦いではありがとう。
都市を守ってくれて。
でも、その為に多くの犠牲を出してしまった。
だから、これはその償いの1つ。
これからまた大きな戦いが始まる中で、あなたがもう辛い思いをしない為に」
ロボ子は初めて片手で剣を構える。
そして、反対の手には銃を。
「【ホロライブワールド】オリジナル世代が1人。
ボクが本気で相手をしてあげる」
ヒーロは背筋がゾクッとする感じがした。
ゲームの中なのに、それはリアルに感じる。
(目の前にいるのは間違いなくオリジナル世代のロボ子さんだ。
悔しいけどロボ子さんに言われた事は、間違ってない。
残党狩りだと言って気を抜いていた。
周囲に気を配るのを忘れていた。
そのせいでレイム先輩は。
今もそうだ、相手はロボ子さんじゃないと、勝手に思い込んでなめていた。
そんな気持ちじゃ俺はまた…)
「チームGM!
グリーンイーグル!
その胸お借りします!」
ヒーロのその言葉に無表情だったロボ子は初めて微笑んだ。
ヒーロはそんなロボ子に全力で挑みにいった。
「まさか、あなたが相手とは思いませんでしたよ」
後向けに倒れたフジに、手を差し出す人物を見上げながらフジは笑顔で言った。
「ま、頼まれたからね。
あんた達の総隊長さんに」
そう言って手を掴んだフジを、獅白ぼたんは笑顔で引っ張った。
「やるようになったね」
「いえいえ、まだまだです」
さくやは目の前で構える人物を見ながら笑う。
さくやがこのゲームをするきっかけになった人物。
初めてゲームであったのが、あの星振るステージだった。
圧巻だった。
スリースターズの大暴走。
後にそう呼ばれた事件で、初めて現場に出たさくやの前で、目の前の彼女はスリースターズの大群の前で歌っていた。
星街すいせい。
【ホロライブワールド】の最強の歌姫の一角。
目の前にいる彼女こそ、さくやが目指す最終目標だった。
「はぁはぁはぁ」
リィスは肩で荒い息をしながら、目の前にいる人物を見た。
彼女はまだ力のほんの一握り程度しか出していない。
でも、今のリィスにはそれでも手も足も出なかった。
(同じ人のはずなのに)
そうリィスは思いながら見る人物は、青と白のライトアーマーに身を包み、剣と盾を持ってリィスを微笑みながら見ていた。
リィスもゆっくりと武器を構える。
ウルフハンマー
狼の顔の装飾がついたハンマーで、装備すれば大幅なバフもかけられている。
(なのに、一撃すら与えられない)
息を整え、リィスはもう一度目の前の人物を見る。
その人は【ホロライブワールド】のホロメンで唯一AIではない人物。
リィスと同じく人がプレイヤーとして参加している人物。
【ホロライブワールド】オリジナル世代の1人。
始まりの人、ときのそらだった。
「どうだ?」
モニターで4人を見守るウェイは背後から声をかけられた。
「新装備の方は問題なく力を発揮してます。
しかし、相手が相手ですからね」
ウェイは背後から声をかけてきた人物、総隊長にから笑いをしながら答えた。
「いや、総司令に今回の件を話したら、まさかの人物が集まってくれたのでな。
それに、あの4人はこれから過酷な戦いに出てもらわないといけないかもしれん。
なので、修行相手にはぴったりだと思ってな」
「そうですか?
だいぶ過剰な相手と思いますけど」
モニターの向こうでは、4人ともまだホロメン達を戦っていた。
それぞれ新装備の出力は、はじめは安定してなかったが、今は安定しており、4人とも新装備を使いこなせていると言ってもよかった。
「ま、相手が相手ですからね」
(でも、これなら少しは安心できます)
ウェイは独り言のように呟いてモニターの4人を見る。
彼女達が無事にまたここに戻ってきてもらいたいと、ウェイは心の底から願っていた。