ホロライブ・オルタナティブver.IF外伝 ~GM戦隊グレートメンバー~ 作:天野空
その報告の後に見せられたのは、思いもよらない画像だった。
彼女達が知らない裏で何かが確実に動き出している。
さくやが【ホロライフルストーン】の洞窟をゲームから切り離してから数日がたった。
チームGMはさくやの呼び掛けで、全員集まる事となる。
「おはようございます」
ヒーロが部屋にログインしてきた。
「あ、おはようございます」
リィスが先に来ていたさくやとフジにお茶を運んでいた。
「やべ、遅刻でしたか?」
「いや、時間どおりだ」
ヒーロの言葉にさくやはふっと笑って答えた。
リィスはヒーロのお茶を追加で入れた後、全員のお茶を配ってから席についた。
「それでは、みんなを呼んだ訳を話そうか」
リィスはそう言って背後にある映像を出した。
それは白剣を構える白騎士の画像だった。
「まず1つ目は白騎士についてだ」
「正体が分かったんですか?」
ヒーロの言葉にゆっくりと首を振るさくや。
「いや、現在も調査中だ。
ただ、その能力や特殊性から、運営はプレイヤーではないと判断している。
そして、超AIではないかと言われている」
「超AI…」
「そうだ。
前回この世界を終わらせようとした【偽会】も、その超AIだと言われている」
リィスの呟きにさくやが答えた。
「敵なんですか?」
「いや、はっきりとは言えないが、ホロメンや運営に対して敵対行動はとっていないところをみると、敵ではないのではないかと運営は考えている」
ヒーロの言葉にさくやが答える。
(確かにいろいろと助けてもらったところもある)
ヒーロはさくやの言葉にそう思った。
「なので、これからも白騎士が現れた場合は、深く詮索せず放置でいいという事だ。
ただし、何かしらおかしな事をしたら、戦わないといけなくなるかもしれない」
「あ、あの相手とですか?」
さくやの言葉にヒーロは驚く。
「勝率は限りなく0に近いが、それもわし達の仕事だからな」
フジは腕組みしながら言った。
「ま、敵と決まったわけではないし、その確率も低い。
今は気にするな。
では、次だ」
さくやの背後の画像が変わる。
その画像はこの前にのどかに見せてもらった画像だった。
「これって」
「前回、【大霊園】でマリン船長が誰かに見られてると言ったのを、運営が調べてくれたらしい。
その時に付近の岩場に彼がいた」
その画像には岩影から何かを見下ろすロックの姿があった。
「確か、要警戒人物でしたよね?」
リィスの言葉に頷くさくや。
「第六世代組とよく一緒に見かけるので、何か関係性があるのではないかと言われていたが、最近は見られなくなったので、完全にフリーの状態だった」
「その人物が何故ここに?」
「いや、問題はそこではない。
プレイヤーがたまたま【大霊園】の近くにいたという可能性もあるが、問題は彼の目線だ」
画像を広げるさくや。
そこにはGMやホロメンを確かに見下ろすロックがいた。
「今回、ホロメンが参戦してGMが動いたが、これはイベントではない。
そのイベントではない状況でこのロックと呼ばれる亜人の少年はホロメンやGMを見る事が出来ている」
『あ』
ヒーロとリィスの声が重なる。
「確かに世界の答えと呼ばれたプレイヤーは、ホロメンをイベントでもなく見る事が出来るが、それは激レアアイテムないしスキルを所持していたからと、運営も答えを出している。
ではなぜ、少年はイベント外で私達を見れたのか?
運営が怪しいと判断し、徹底的に調べた結果。
どうやら、第六世代組が関与していると分かった」
「第六世代組ですか?」
「そうだ。
彼のログイン履歴を調べた結果、ログインしている時に必ず、第六世代組の誰かがこのゲームから消えている事が分かった」
「…まさか」
さくやの言葉にリィスははっとした顔をする。
「そのまさかだ。
たぶん何かしらの方法でゲーム内キャラである第六世代組が、新しいキャラを作りプレイヤーとして操作しているみたいなんだ」
「な、そんな事出来るんですか?」
「普通は無理だろう」
ヒーロの言葉にさくやは答える。
「しかし、第六世代組には、こちらでは考えられないような能力を持ったキャラクター達がいる。
その普通を覆す事は十分に考えられる」
「まさか、第六世代組の人達が…」
さくやの言葉にリィスが悲しそうな声を出した。
「だが、今回の案件はこれで終わりではない」
「え?」
さくやの言葉に顔をあげるリィス。
「本当に不思議なのは、このロックが撮影された時間。
第六世代組が誰1人ゲームから消えてないという事だ」
「は?
第六世代組が動かしてるってさっき」
「そうだ。
その通りなのだが、この時だけは第六世代組が動かしていない」
さくやの言葉にヒーロとリィスは寒気がした。
「なら、このキャラの中にいるのは誰なんだ」
ヒーロの言葉に4人は画像に写るロックを見た。
すると突然机の上にディスプレイが開く。
「うわぁ~」
椅子から落ちるヒーロ。
『あ、すいません』
ディスプレイには慌てた様子ののどかが写っていた。
「どうかしたんですか?」
さくやはのどかに聞く。
『あ、はい。
緊急事態です。
【ゲーマーズ】にある戌神神社で、大きなコメント集の反応がありました。
チームGMは急いで【ゲーマーズ】に向かってください』
「く、立て続けに」
さくやはそう言ってから3人に向かって頷く。
3人は頷き返すと、のどかに向かって敬礼をした。
4台のGMバイクが空を駆ける。
【ゲーマーズ】上空についた4人は目的の場所に向かった。
「あれが戌神神社です」
リィスの言葉に4人はGMバイクを地上に降ろした。
しかし、そこには誰もいなかった。
「どういう事だ?」
フジはミサイルランチャーを担ぎ辺りを見回す。
さくやも不振な顔をしている。
「何もない?」
ヒーロの言う通り、そこは辺り一面すすき野原。
そして、朽ちかけた鳥居に小さな本殿があるだけだった。
「リィス。
本部に連絡。
他のみんなは警戒を怠るな」
さくやはそう3人に伝える。
リィスはすぐに本部に連絡し、3人は辺りを警戒した。
「はい、そうなんです。
え?
はい、確かなんですか?
分かりました、伝えます」
リィスがそう本部と通信した後、さくやを見た。
「本部に連絡をとり調べてもらいましたが、確かにコメント集の反応があるそうです。
それもコメント核の強い反応が。
あの鳥居の向こうに」
リィスは朽ちかけた鳥居を指差す。
しかし、その先はすすき野原が広がっているだけ。
「どうすれば」
リィスの言葉にさくやが考える。
そして、どこかに連絡をした。
それからしばらくして、突如さくや達の目の前の空間が何かに切り裂かれる。
そして、そこから可愛い顔がひょこっと現れた。
「もぐもぐ~おかゆ~」
そう言って空間の切れ目から現れるおかゆ。
「え?
おかゆちゃん?」
驚くリィス。
「私が連絡した。
職権乱用だ」
そうさくやは言った。
「今回は仕方ないよ。
緊急事態だしさ」
そうおかゆはさくやに言う。
「なんで連絡できるんですか?」
そっとフジに聞くヒーロ。
「ん?
昔に助けてもらったらしくてな」
そうフジが言った。
「それで?
ころさんは?」
おかゆがさくや達に聞く。
「それがいないんです。
本部から反応は鳥居の向こうに確かにあると」
そう答えるリィス。
「鳥居の向こう」
おかゆはそちらを見る。
「そっか、隠し本殿に」
「隠し本殿?」
「そう、運営もシステム系の一部の人しか知らない場所でね。
たぶん、連絡で対応した部署の人は知らなかったんじゃないかな」
リィスの疑問に答えたおかゆが鳥居を超えていく。
「じゃ、これから先はぼくに任せて。
必ずころさんを助けるから」
そう言っておかゆは右手を振り上げた。
その手が紫色の気に覆われる。
猫神の力だ。
そして、勢いよく鳥居の奥を切り裂いた。
空間が切れ、その先に何かがいる。
一瞬目をこらしたおかゆはGM達の方を振り向き、手をあげ一瞬にして切れ目に入った。
空間の切れ目は徐々になくなっていった。
「すごいな、あんな能力があるんですね」
おかゆが消えた空間を見ながら、ヒーロが呟く。
「おかゆちゃんは多忙だからな。
特別にあのスキルを持っている。
だから、たまにいきなり現れたりするだろ?」
さくやの言葉にリィスは【学園】でのドッジボールの事を思い出した。
「確かに…
それより、どうしておかゆちゃんに連絡できるんですか?」
リィスが直接さくやに聞く。
「あ」
ヒーロが罰悪そうな顔をする。
ヒーロは直接聞けなくてフジに聞いたのに、リィスは奥目もなく直接聞いている。
その姿を見てフジは微笑む。
「昔、まだ変身スーツをもらってすぐの時にな、スリースターズの暴走に立ち会ったんだよ」
「あの時はわしとレイムも別の任務でな。
さくやは違う隊員と一緒だった」
さくやの言葉にフジが続けて言った。
「他の隊員はやられてしまい。
後は私だけってところで、おかゆちゃんが現れたんだよ。
その時に何かあったら連絡するように言われた」
「え?それだけでてすか?」
「なんか、顔が気に入ったらしい」
リィスの言葉に下をうつむきながら答えるさくや。
照れているのだろう。
「だから、絶対に連絡しないと決めてたんだが」
照れながらそう言うさくやに、フジは頭をポンポンと叩いて笑った。
「どういう心境なんだ?」
「頼ってるって思われたくなかったんですよ。
一人立ちしている姿がみせたかったんじゃないですかね」
ヒーロの言葉にそうリィスは何度も頷きながら言った。
「よし、私達は戻るぞ。
ころねちゃんはおかゆちゃんに任せられれば大丈夫だ」
『了解です』
そうして、【ゲーマーズ】の事件は幕を閉じGMは基地へと帰っていった。
その後、おかゆからころね救出並びに、コメント集討伐の報告がGM本部へと届いた。
31話更新です。
後1話で、ラストへの道が完成します。
果たしてすべての事件は解決するのか?
次回をお楽しみに