ちなみにディスり合える位の方が仲が良く見えるのは多分僕だけです。
心が落ち着くような匂いと期待でわくわくする様な匂いがする春
夢を叶えたいウマ娘、それに魅せられたトレーナーがレース場に集まり、互いに相棒となる相手を見つける重要な時期だ。
他のトレーナーは現地でメモ帳片手にウマ娘達を熱心に応援、観察をしているようだ。
俺は、そこから離れた土手になっている所からレースを見ていた。
いくつかのレースが終わり、会場のトレーナーが一斉にスカウトに走り出すのを尻目に何も書いていない手帳をしまい、校内へ戻ろうとした時に後ろから声をかけられた。
「やあ、爺さん」
「どうも会長さん、とりあえず、その呼び方やめて貰えないか?俺はヤングな指導者だぞ?」
トレセン学園の生徒会長、シンボリルドルフがいた、気さくに話しかけて来たが、言っておくがこの子は後輩の担当バだ。
レース場は会長の存在には気づいてないようだ。隣に会長さんが座ってきた。
「ルドルフでいいよ、後、ヤングなんて言葉、今時マルゼンスキーからしか聞いた事ないよ」
「俺はあだ名で呼ぶ方が好きなんだよ、愛称っていうだろ?それに最近の流行語は知らん、ナウいとか、前にテレビ見た時に特集で出演者が言ってたぞ」
「別にどう呼んでくれても私は一向に構わないけどね、後その番組は多分だけど昔の流行り特集か何かだと思うよ、たまには仕事以外の事にも目を向ければいいのに」
クスッと笑みを浮かべ、手を口元に持っていく、会長の癖だ。
「そうか?まあいいや、後余計なお世話だ」
そんな会話をしている間に間に日も落ちてきて、レース場には人影はいなくなっていた。
「さて、もう暗くなってきたし俺も帰るさ。じゃあな会長さん」
そのまま立ち去ろうとするも会長のマークは外れない。
「待って欲しい、今日は爺さんに話があってきたんだ、そこまで時間は取らないよ」
「会長さんが俺に話?、珍しい事もあるもんだな」
「後日呼び出してもいいよ、その時は私のトレーナー君も一緒にいて貰うからね」
問答無用のようだ。それに『裏番長』もいるとなると後が怖い。
裏番長は後輩の事だ、一時期サブトレーナーとして面倒を見ていたが、俺の補助なんて不要な程の手腕を発揮し、あっという間に追い抜かれてしまった。
会長とは幼馴染で、昔から遊んでたり一緒にお泊まり会もしていたと聞いていた。
恐らくトレーナーになったのはその為だろう。人当たりもよく、インタビューとかも適格な答えができる、まるで会長の生き写しみたいなやつだ。
ただ、怒らせると会長がビビる位には怖い、ここで逃げようが後から強制的にお話を聞く事になるだろう。
「分かった、降参だ、そこまで言われたら聞くよ」
「良かった、これは爺さんの為だからね」
会長は凛々しい真剣な表情に戻った。
「さて、爺さん前の担当の子が契約解除になってからどれ程経ったと思う?」
俺はとぼけてはぐらかそうとした
「さあ?覚えてないな」
会長はやれやれと頭を揺らした。
「確か年末に地方トレセンに転校した子だったか、あれはあの子から希望だっただろう?」
俺の前担当は家族の為に地方に行くと解除を申し出てきたのだ。
中央トレセンに来るのは、比較的裕福な子が多いが、家庭の事情で夢を諦める子もいる
ただ、家庭環境、素質、諸々含め、実際に夢を叶えられない方が多い事はどこにでもあると痛感した。それでも俺は叶えてやりたかったが。
「よく覚えてるな、痛い所だよ」
「思う所があるの分かっているつもりだ、だがこのままだと、資格はく奪なんて事になりかねない、私のトレーナー君も心配しているんだ」
そろそろ言われると思っていたが限界が近いのだろう、指導するウマ娘がいないトレーナーはいても無意味だ、職務怠慢と言われても仕方ないだろう。
会長が心配してくれているのは本当だ、そもそも嫌味を言うような子じゃないのは分かっている。砕けた口調をしてくれるのはきっと信じてくれているのだろう。
「分かったよ、心配してくれてありがとうな。」
「理解して貰えて嬉しいよ、私も応援している心機一転した爺さんに期待しているよ」
会長も少し安心してくれたようだ。
ただ、言われっぱなしは性に合わない、ちょっとからかってみたくなった。
会長も年頃のウマ娘だ、俺はよぉく分かってる事がある。
「ところで会長、裏番長とはその後どうなんだ?あんたそろそろ卒業だろ?チャンス、なくなるぞ」
「えぇ!?いやその君は一体何を…」
「脈無しな訳ないだろ、駿大祭の噂聞いたぞ、会長のために露店の店主に相当キレたってらしいな」
会長の顔は真っ赤に変わり、お堅い雰囲気が無くなった、こうなればこっちのもんだ。
会長は一拍置いてぼそぼそと話始めた
「…実はこの前、温泉旅行に誘ったんだ」想像よりも大胆な作戦に出ていたことに驚いた
「そうしたら『俺と行ってもつまらないだろうしルドルフに気を遣わせているようで悪い』と断られてしまったよ、別に遠慮しなくてもいいのにね・・・」
若干泣きそうな声になってるが、これは会長にしては崖から飛び降りる覚悟で誘ったのだろう。
結果、一敗塗地、大敗したようだ。相変わらず、あいつは絵にかいた鈍感っぷりだ。というか、女の子から告白させるな。
「あいつが鈍感なのは知ってるだろ、こう…もっと...直接攻めてもいいんじゃないか?」
俺は手帳を見るふりをしてさらに、畳みかけた。
「それに『早く結婚しろ』、『祝福ッ!』『尊い』とか言われてるみたいだぞ」
会長はもはや手で顔を覆い、言葉を発するのをやめている。
少し盛ったが、ほぼ事実だ、3年以上ほぼ一緒にいる二人に割って入る根性あるやつはいないだろう、俺もさっさとくっつけと思ってる位だ。
「もう卒業と同時に裏番長の家に押しかけ女房と行けばいいんじゃないか?多分抵抗なく住めるぞ」そしてキメ顔でサムズアップしながらこう言えば完璧だ
「式には呼んでくれよな!」
会長はもはや顔も向けずにこう言った。
「爺さん、デリカシーがないって言われないかい?」