甘々回です。
「さぁ入って入って!」
お邪魔しますの一言のあと、ユズの家に上がる女騎士。
2階建ての一軒家で一階はリビング、2階はおそらく私室だろう。
「いつもはお姉ちゃんが住んでるんだけど、今は旅行に行ってるからいないんだ」
よいしょとリュックを背負い直すユズ。
「とりあえず、荷物置きに私の部屋に行こう!」
案内されユズの部屋に入る。
部屋は女の子らしくクマやネコの人形などがあり、可愛らしい部屋をしているが、同時に目のやり場に困るような物が幾つかあり、それらはあえて視界に入れないよう女騎士は心がけた。
ユズと女騎士は荷物をまとめ、それらを部屋に置く。
ようやくひと段落ついたのか互いのお腹からぐぅと音がなる。
「あはは…そろそろご飯にしようか、私が作ってくるから相棒は待ってて」
自分も手伝おうとするがユズに休んでていいよと止められ、部屋で待つ事になった。
とはいえする事も無いのでユズの部屋に置いてあった雑誌を幾つか持ち出し、読書で時間を潰すことにした。
[大人気サキュバスのグラビア特集!(袋とじ付き)]
[最新キワどいコーデで異性同性を誘惑!]
[元気になるドリンクの作り方]
読んでいるうちに何だか落ち着かなくなってきたのかソワソワし始める。
これはいけないと深呼吸をして気持ちを落ち着かせる、その時ベッドの下に何か布みたいなのがあるのに気づく。
何だろうと思い、引っ張り上げると出てきたのはスケスケで服としての機能を果たしてないネグリジェだった。
こういったのは疎い女騎士は『おお…』と無意識に声が出てしまった。
(コンコン)
突然のノックに慌ててながらもネグリジェを元の場所に戻し本を読む体勢に戻る女騎士、わずか1秒と早技である。
「相棒、入るよ?」
エプロン姿で現れたユズ、妙に息の荒い女騎士を不思議に思う。
「どうしたの相棒?何か顔が赤いけど…」
何でもないと答える女騎士。
「あっ!そうだ、ご飯が出来たから呼びにきたんだった!」
思い出したのかポンと手を叩くユズ、その話を聞いて女騎士は雑誌を本棚に戻した後、一階へ向かった。
「じゃじゃーん!」
リビングに来てみるとテーブルの上にはこれでもかと豪勢に沢山の料理が並べられていた。
「お姉ちゃんが食材を残しといてくれたから助かったよ」
肉料理にサラダ、ほかほかのスープ、後は分からないがとにかく美味しそうな料理の数々が並んでいた。
美味しいそうだけど真っ先に思ったのは…これ、2人で食べ切れるかな?
「あはは…相棒が家に来るから少し張り切っちゃった」
頬をかきながら照れるユズ。
料理の香りに釣られてか、再び女騎士のお腹が鳴る。
「冷める前に食べようか、ほら座って!」
ユズが椅子をひいてくれたのでそこに座る、ユズは向かい側に座った。
「それじゃあいただきます!」
ユズも女騎士は手を合わせる。
早速、スープを一口いただく。
「ど…どうかな?」
美味しい!スープはあっさりながらも確かなコクがあり何杯でも飲めてしまう。
ユズに美味しいよと伝える。
「良かった、相棒の口に合うか不安だったんだ」
安堵の表情を浮かべるユズ、
サラダはダンジョン王国で生えている野菜だろうか?独特の見た目だが食感は良く風味も良い。
肉料理はこれでもかと盛られたお肉、付け合わせソースがこってり感を打ち消し抜群の相性だ。今まで味わったことがないソースなので恐らくはユズの自家製だろう。
「相棒、美味しそうに食べるねー」
美味しそうではなく実際に美味しい、何だか体がぽかぽかしてきた。
…ぽかぽか?
「もしかして隠し味に気が付いた?実はどの料理にもサキュバス村特製のスパイスが入ってるんだ」
ユズが見せてきたのは『サキュバス村秘伝 気炎万丈!気分高揚スパイス』と書かれた瓶だった。
「相棒が元気になるように沢山入れといたから!」
ニコニコと笑顔なユズ、本人はこちらに喜んでほしいの一心で他意がないのは分かる。
…今日、夜眠れるかな。完食した女騎士は天井を見上げそう思った。
食器を洗い、お風呂など諸々を済ませた2人。
全部済ませた頃にはそろそろ寝ようかと思う時間、ここで問題が発生する。
「相棒が私のベッド使ってよ!」
ユズの部屋にはベッドが1つしかない、ユズはベッドを女騎士に譲ろうとするが、女騎士は自分はソファでいいからユズがベッドを使うべきだと主張する。
堂々巡りの譲り合い、行き着いた結論は…
「それじゃあ相棒、おやすみ〜」
仲良く半分ずつのスペースで寝るであった。
おやすみとユズに告げ、女騎士もユズも静かに目を閉じた。
いや寝れるわけがない、女騎士はバッチリと目が冴えていた。
夕食に出たスパイスの効果だろうか妙に体が熱っている。
というか全身が敏感になっており、シーツの擦れる感覚、すぐ隣から聞こえるユズの寝息と甘い香りに耳も鼻も反応してしまう。
同じ料理を食べていたはずなのに何故ユズは眠れるのか不思議に思う。
外の空気でも吸おうと考え、ユズを起こさないように静かに立ち上がり、寝巻き姿のまま家を出る。
深夜であろうとサキュバス村は明るく、賑わっていた。
ユズの家から大通りを真っ直ぐ行って戻ってくるだけなら迷う事もないので散歩を始める。
夕方頃に感じた視線はあれから感じず、気のせいだったのだろうか…そんな事を歩きながら考える女騎士。
「あの…」
何か声が聞こえた気がするので足を止めて周囲を見渡す。
「すいません…そこの人」
声がするのは路地裏の方からだ、深夜という事もあり恐る恐る進む、進んだ先ではサキュバスが1人倒れていた。
何事かと急いで駆け寄り、サキュバスを抱き起こす。
「すいません…もう何日も精気を手に入れられてなくて、少しでいいんです…いただけませんか?」
衰弱した様子の彼女を放っておくわけにはいかない、精気を譲ろうと手を差し伸べる。
「ありがとうございます、騎士様」
その言葉にゾクリと違和感を覚える、今の自分は寝巻き姿だ、何故彼女は自分の事を騎士と呼んだのだ?
そう思った時にはすでに遅く、背後から現れた数人のサキュバスが女騎士を押さえつける。
声を上げようとするが瞬く間のうちに口に猿ぐつわをされ、助けは呼べなくなった。
「事前の調査でお人好しだとは聞いていたけれどここまでとはね、こんな路地裏にサキュバスが1人いるなんておかしいと思わなかったの?」
先程倒れていたサキュバスが起き上がり、女騎士を見下ろす。
そして近づくと指先を女騎士の頭に触れさせる。
すると女騎士は途端に意識を失い動かなくなった。
「さあ今日はここまでにしましょう、アジトに帰るわよ」
「はい、サキュラ様」
女騎士はサキュバス達とともに闇夜に消えていった。