狙われた相棒   作:日之谷

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第3話は女騎士視点とユズ視点の両方で進みます。
まずは女騎士編です。


STAGE2 side女騎士

「…い!おい!アンタ大丈夫か!?」

 

誰かの声が頭に響き、意識が少しずつと戻っていく女騎士、重い瞼を開くとデザートエルフの男がこちらを心配そうに見ていた。

 

「ようやく目を開けたか、立てるか?」

 

段々と意識がはっきりしてきたのでゆっくりと立ち上がる。

 

「大丈夫そうか、良かったな…と言いたいが俺たちの状況は何一つ良くないんだ、アンタもサキュバス達に連れてこられた口だろ?」

 

そうだ…倒れていたサキュバスを助けようとしたら捕まって急に意識を失ったのだった。

全てを思い出し、デザートエルフ問いかけに頷く。 

 

「ここの連中もみんなそうさ、抜け出そうにも一面真っ白い壁だけで窓ひとつありゃしない、唯一ある扉は押しても引いてもびくともしない」

 

女騎士が周囲を見るとイヌイット族に雪人族がいた。

 

「うう…可愛いサキュバスに誘われて着いてったら何でこんな事に」 

 

「出せー!俺はただサキュバスカフェに行きたかったから道を聞いただけだぞ!」

 

イヌイット族は落ち込み、雪人族は扉に向かって体当たりを繰り返していた。

 

「あいつはここに放り込まれてからずっとああやってんだ」

 

呆れるように雪人族を見るデザートエルフ、だがどんなに望みは薄いとはいえ自分もここから脱出しないければ。

 

「出せー!出しやがれー!ブヘッ!」

 

どうしようかと考えていると、突然扉が勢いよく開かられ突進していた雪人族は吹っ飛ばされる。

 

「あら?いま何かぶつかったかしら」

 

現れたのは数人のサキュバス、1番最後に入ってきたのは路地裏で倒れたふりをしていた赤目のサキュバスだ。

 

「おいお前ら!さっさと俺達を解放しろ!」

 

ドアにぶつかった衝撃でおでこを赤くした雪人族が赤目のサキュバスに詰め寄る。

 

「騒がしいわね、静かにしてくれないかしら」

 

赤目のサキュバスが目配せをすると他のサキュバス達が雪人族を囲み、縄で縛り上げる。

 

「貴方達も抵抗しなければ手荒なことをするつもりはないわ、理解したかしら?」

 

「「…」」

 

女騎士を含む3人はただ黙ってこの光景を見ていた。

 

「それじゃあ早速だけど始めるわ、全員横に並びなさい」

 

沈黙を肯定と受け取ったのかこちらに指示をする赤目のサキュバス。

言われるがまま並び始める3人。

 

「サ…リーダー、この雪人族はどうします?」

 

やはり赤目のサキュバスはリーダーのようだ、リーダーと呼ばれるサキュバスは先程縛り上げた雪人族を見る、口を塞がれてはいるがもごもごと何かを言っていた

 

「騒がしいのは嫌いだし、こいつは1番最後にしましょう」

 

サキュバス達のリーダーと何やら端末を持ったサキュバスの2人はデザートエルフの前に立つ。

 

「お…俺たちに一体何をする気だ…」 

 

震えながらもデザートエルフは質問をする。

 

「大した事はしないわ、ただ精気を少し私に渡せば良いだけ」

 

「それだけか?」

 

「ええ、それだけよ」

 

そう言うとリーダーはデザートエルフの手を取り、精気を吸う。

 

「…変化無し」

 

端末を持ったサキュバスは呟く。

 

そのままイヌイット族が精気を吸われるが同じような結果なのかリーダーは落胆した表情を浮かべる。

そして女騎士の順番が来た。

 

「さあ手を出しなさい」

 

女騎士が両手を上げるとリーダーが握ってくる。

淡い光が放たれた後に少しだけくる倦怠感、精気を吸われたのが分かる。

 

「…‼︎まさか!?」

 

何故かは分からないがリーダーは慌てた様子を見せる。

 

「解析班、魔力量はどうなっている!?」 

 

「はっはい!これは…リーダー、こちらを…」

 

端末を持ったサキュバスがリーダーに画面を見せる。

 

「そう…精気の流れ込む感覚で分かったけど…遂にやったのね、ふふふ…あははは!」

 

大声で笑い出すリーダー、冷淡なイメージを持っていたので全員が固まる。

 

「ならもう他の奴は必要ないわ、連れて行きなさい」

 

「はっ!!」

 

サキュバス達は女騎士以外の3人に目隠しをして何処かへ連れて行こうとした。

女騎士は見過ごせず、丸腰にも関わらず止めに入る。

 

「安心なさい、ただ家に帰すだけよ。こんな時にも他人の心配だなんてさすがはガーディアンといったところかしら、でも貴方は自分の心配をした方が良いわよ?」 

 

そう言いながらリーダーと呼ばれるサキュバスはまるで宝物を見つけたかのようなキラキラした瞳で女騎士を見ながら顔を両手でそっと包み込んだのだった。

 

 


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