お話も後半戦に突入しました。
あと2話で完結予定です。
ビアンカは毎日決まった時間にアフタヌーンティーを楽しむ。
最高級の茶葉に豪華なティーセット、そして隠し部屋の壁一面に飾られたユズの写真。
それを眺めながら飲む紅茶は格別だ。
養成学校時代の初々しさ残るユズ、ニューチューバー活動時の切り抜き、明らかな隠し撮りなど写真の種類は様々だ。
ビアンカは最近発売されたユズのチェキセットを眺める、当然ながら3セット買った。
「ふぅ…やはりティーブレイクはこれに限るわ、どんな高級スイーツもこれには勝てない」
『ビアンカー…』
「見れば見るほど凄いわ、まるで本人の声が聞こえるみたい」
『ビアンカー!!』
「ん?」
幻聴にしてはやたらはっきりと聞こえるユズの声に耳を澄ませる。
「ビアンカ、どこー!?」
今度ははっきりと聞こえた、ユズが今、屋敷にいる。
「えっ!!な…何故ユズがここに!?門番は何しているの?と…とりあえず落ち着きなさい私、スゥゥゥ…ハァァァー」
考えるのは後回しにして落ち着くビアンカ、隠し部屋からそっと出てユズの声がする玄関ホールへと向かう。
「アポも無しに何の用かしら?」
「ビアンカ‼︎」
冷静に出迎えようとしたビアンカだが無理だった、ユズはビアンカを見つけると走って抱きついてきたからだ。
「ユ…ユズ!?どうしたのよ⁉︎」
(何でユズが私に抱きついて?ああ良い香りがする…というかもう色々と柔らかい!)
そんな至福とも言える心地だったが、ビアンカの耳にユズの啜り泣く声が聞こえたのだ。
「ユズ、何かあったの?」
「騎士がいなくなった?」
「うん…」
ユズの話を纏めるとこうだ。
朝、起きたら隣にいたはずの女騎士がいなかった事に気づく、靴は無いが、荷物も甲冑もそのままだったので散歩でもしているのだと考え待っていたが帰ってこなかった。
心配になり今まで探し回っていたが見つからず、ビアンカのところに来ていないかこうして尋ねてきた。
「残念だけど、私のところにも騎士は来ていないわ」
「そう…なの…」
シュンとするユズ。
(ああああ!落ち込んでいるユズとかレア過ぎる!ここにカメラが無い事が非常に悔やまれるわ!)
「ビアンカ?」
「た…確かに心配ね、見つけられるかどうかは分からないけど探す当てはあるわ」
ビアンカの言葉にユズは顔を上げる。
「ホント?」
「可能性としてだけど闇雲に探すよりはマシなはずよ」
「ビアンカ…ありがとう!」
再びビアンカに抱きつくユズ。
「ちょっ!ちょっとユズ!」
「あっ、ごめんね」
「いえむしろもっと…とにかく準備をするからユズ、貴方はその間に」
「うん」
「家に戻って着替えてきなさい」
「あっ!」
余程焦っていたのか、ユズは寝巻き姿のままだったのだ。
-1時間後-
「待たせたわね、ユズ」
ビアンカが研究服を着たメガネのサキュバスと共にユズの家にやってきた。
「ビアンカ、そちらの方は?」
「初めまして、ペギーと申します、お話は伺ってますので早速ですがこちらをどうぞ」
ペギーがケースからオレンジ色の液体が入ったポーションを取り出す。
「これは?」
「こちらは以前、サキュバス村にいらしたとある男性にスライムの調査を依頼した際に作った物です。そのお方は自身の感覚を鋭くする事で人や魔物の気配を追えるらしく、この話を聞いた時に私はこれをロードワークに役立てないかと考えまして世界中から身体を強化する特別な素材を特殊な分量で配合して…」
「ええと…」
熱弁するペギーに困惑するユズ。
「ペギー、悪いけれど効果だけ教えてもらえるからしら」
ビアンカがペギーのトークを止めに入る。
「これは失礼を、つまりこの薬を飲む事で一時的に感覚が鋭くなり本来は視認できない足跡や気配が見えるようになるのです!」
「て事はこれを飲めば…」
「騎士様を見つける事も出来るやもしれません。それに私も騎士様にはお世話になりまして、協力は惜しむつもりはありません、使用にあたり騎士様が身につけていたものとかありません?」
「相棒が身に付けてる物…これとかどうかな」
ユズは女騎士の兜を部屋から持ってくる。
「それで構わないでしょう、ではこちらを」
ユズはペギーからポーションを受けとった。
「気になってたけど、2人はどういった関係なの?」
「ええ、私はスライム以外にもサキュバスの事を色々と調べてまして、ビアンカさんはそのスポンサーです」
「そうなんだ」
「研究のついでにビアンカさんから気配を相手に察知されにくくなるポーションを作って欲しいと言われてまして…」
「コホン!騎士が心配だし、話はそのくらいにしましょう」
ビアンカがわざとらしく大きな咳払いをし、ユズはポーションを飲む。
「どうでしょうか」
ユズの視界にはさっきまで見えていなかった女騎士の足跡がはっきりと見えていた。
「こっち!」
そのまま外に飛び出し走り出すユズ、着いたのは家から少し進んだ先の路地裏だ。
「ここで相棒の足跡が無くなってる…」
ユズは更に目を凝らす、今度は微かではモヤのようなものが見えてきた、それは路地裏の更に奥に続いていた。
「ここって…」
モヤを追って辿り着いたのは廃ビルだった、入り口には[私有地につき立入厳禁]と書かれた看板がある。
「ちょっとユズ!どこまで行くのよ!」
後ろからはビアンカとペギーが追いついてきた
「むむ…いかにもな場所ですね、ユズさんここに騎士様が?」
ユズは頷く。
「誰か出てくるわ!」
3人は物陰に隠れる。
出てきたのは2人組のサキュバスだ。
「ねえ、例の連れてきた奴いたじゃない?」
「あのヘラヘラした顔の女の事?」
「そうそう、リーダーはやたら気に入ってるみたいだけど本当に役立つの?」
「それは…私達には分からないわ、何か準備は進めているようだけど」
「リーダーからの連絡待ちね、とりあえず巡回に行きましょう」
そのまま2人はユズ達に気づかずどこかへと歩き出した。
「今の話…」
「やっぱり相棒はここにいるんだ!」
「相手の規模が分からないのが不安ですね、ここは一度戻って調査をするのが手かと…」
ペギーが2人に提案をする。
「こうしている間にも相棒が危ない目にあってるかもしれない…私は行く!」
「ちょっとユズ‼︎」
「ユズさん!」
ユズは