宇宙へ到達した超戦艦のお話   作:バトルマニア(作者)

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 勢いと好きで書いた無茶苦茶な話です。反省も後悔も……しないことを祈ろう……


 宇宙へ到達した超戦艦のお話

 とある施設のカプセルが開く。

 

「ん?ああ、またか……」

 

 そこから一人の男が顔を出し、外へ出た。

 

「おい!今度は何処が故障したんだ?それとも定期点検か?」

 

 疲れたように誰かを呼び、そのまま通路を進む。

 

『いえ、今回はそのような要件ではありません』

「じゃぁ何だってんだ。どうせ碌なことじゃあるまいし」

 

 機械音声が鳴り響き、それに返答を返す。

 

『なんですか、その態度は。毎回毎回文句ばかり……』

「そりゃな。毎回毎回こき使われればこうもなるわ。で、仕事が終わったらすぐに冷凍保存とか、人のことなんだと思ってんだ?てか何年たった?あれから」

 

 文句をタラタラ言いながら、いつものように工具室に直行していた。

 

『前回の整備から、約二十万年程度です。合計で出発から三千万年が経ちましたよ。それと、当機を盗み出そうと勝手に乗り込んできたのは貴方でしょう。自業自得です』

「そうかいそうかい、魅力的だったもんでな、それは悪かったよ。てか今回は随分と早いんだな。いつもなら五十万年周期で叩き起こすのによ」

 

 工具室に辿り着き、いつもの作業服に着替えながらそう言い返す。

 

『そうでした。今回は朗報があって起こしたんです。とりあえず管制室に来てください』

「朗報?なんだ?また新しい兵器でも思いついたのか?付き合ってられんぞ」

 

 そうボヤきながら言われた通り管制室に向う男。

 

『人聞きの悪い事言わないでください。消し飛ばしますよ』

「そういうところだよ。で、じゃあ何なんだ?」

 

 予想に反した反応に、男は呆れながら聞き返す。

 

『それはですね。なんと、宇宙世界が見えました。あと数時間もせずに到達予定です!我々の観測は間違っていませんでした!』

「なっ!?そ、それはホントなのか!?マジで宇宙世界はあったのか!?」

 

 ついにと言った感じに驚き喜ぶ二人。だがその喜びの方向性は、二人共違っていた。

 

 

『ええ、三千万年。長かったです。なにもない虚空を、ただひたすらに移動し続けたかいありました。本部にも良い返事ができそうですよ。なんせ本部は、虚構施設は、一兆年以上の時を待ったのですから』

「ああ、毎秒何千万光年、いや、それ以上の速度で移動し続けたかいあるな。これでやっと、人と出会える可能性が見えてきた……」

 

 念願の目的が叶い喜ぶ戦艦と、昔のことを思い出す男。

 

『で、なんのですが、いくつか問題が発生しました』

「は?」

 

 喜びからの一気にドン底に突き落とされる男。

 

『まず、速度が出すぎて止まるのに時間がかかるということです。次に動力源が底を尽きそうなのと、戦艦自体もボロボロだということです』

「え、え?お前、一級戦艦ともい超位戦艦だよな?量産型とは言え、世界最高級の技術で製作された戦艦だよな?」

 

 全長128キロメートルの一級戦艦。一級戦艦の中じゃ小型の汎用量産型だが、武装も施設も申し分ない、超級戦艦にふさわしい戦艦。それが男の乗っている戦艦だった。

 

 因みにこんなにデカイのは、一機にすべてを詰め込もうとするためである。

 

 

『ハイそうですが、それにしても限界がやってまいりました。貴方のお陰で、普通の超位戦艦よりかは何倍も長持ちしましたが、流石に三千万年は長すぎました』

 

 超位戦艦は、通常一千万年程度で限界が来る。これは何事もなく運営できての最大なので、今回彼らがどれだけ頑張ったのかが分かるはずだ。というか、補給もなく内部施設を削ってやり繰りしていたとは言え、奇跡もいいところだ。

 

 だが限界を超えて頑張りすぎた戦艦は、ここに来てついに限界が迫っていた。

 

『いや~盲点でしたね。世界は広がり続けていますから、以前観測が成功した時よりも遠くなっているのは当たり前だというのに、それを読み間違えていたなんてね。まさか加速度的に広がり続けているなんて……これじゃ、誰も辿り着けませんよ、まったく』

 

 想定以上に世界は広がっており、それに気づかず、半分も到達できない戦艦を、この一兆年間大量に送り出し続けていたのだ。そしてその戦艦の一機を盗み出そうとして失敗したのが、目の前の男なのだ。

 

「……ちょっと俺と接続するぞ。どうにかしてやるから……」

『そういえば貴方、機人族でしたね。しかも等級は二級。できるんですか?その程度で?』

 

 男は体の一部が機械な機人族。等級は、一般人の最高位と言われる二級。才能か努力のどちらかがあればなれるレベルであり、裏を返せばどちらかしかなければ一級になれない程度の実力である。そして彼には、才能がなかった。だから心配されているのだ。

 

「どちらにしろ終わりだ。戦艦が崩壊するか、演算に耐えきれずに脳がやられるかだろ?」

『そうですね。現状最低限の機材しか残っていませんので、本来の一割も性能が発揮できていません。即ち、後に待っているのは破滅ですね』

 

 当初はギチギチに積まれていた機材や施設も、今では残りカスのようになってしまっていた。そのせいで、超加速に対応することも、追加で動力源を得ることもできないでいたのだ。

 

 このままでは超加速した状態で宇宙へとぶつかり、宇宙もろとも消し飛んでしまう。

 

「じゃ、やるぞ。俺の能力もゼンカイにする」

『わかりました。では接続を開始します』

 

 管制室にたどり着いた男は、制御盤へと手を当てる。すると全システムがフル稼働し、男の周りに演算力場が発生した。

 

『技術者 鈴木 賢治との接続を確認、演算力場の生成を確認。一部の機能の主導権を解禁します』

「グググっっ……な、なんて量の、情報だ……」

 

 頭痛の苦しみに表情を歪める鈴木。だがここでやめれば、待っているのはただの破滅だ。

 

『鈴木の強化を開始……終了しました。同時に能力を戦艦全体へと行き渡らせます』

「ウオッ!?なんだ!?軽くなったが、こりゃ……!?」

 

 最適化による強化を施され、鈴木の能力が大幅に上昇する。だがそれと同時に接続した戦艦に能力の大半を使われ、ドッと疲れが体にのしかかった。

 

能力(力場)を使用し、周囲の力を集約、速度操作と余分エネルギーを回収……成功。能力の模倣とシステムへの組み込みを成功。戦艦を最適化させ、内部施設を改造を開始……』

「ま、まてッッ!まってッ!?がぁ、アガガガッッ!!?」

 

 強引に能力を使用され、酷使させられ続ける鈴木。逃れようにも自分から接続を要請したことと、そもそも相手が格上なことで何もできずに苦しみ続ける。

 

『宇宙世界へと侵入を成功。同時に漂う量子を回収し、さらなる施設の改修を続行。……未観測の粒子を確認。即座に解析……終了しました。一時保存し、素材確保のための粒子の再構築を続行……一部情報不足により復元できない機関を確認。劣化機関を作製……成功。以上を持ちまして、戦艦の改修を終了します』

 

「……」

 

 制御盤から離れ、ドサリと倒れる鈴木。その評定は今にも死にそうなほど酷いものであった。

 

『協力ありがとうございます。戦艦の約四割の修繕を完了させました。残りは情報不足により不可能です。特に動力源の疑似永久機関を失ったのは痛いですね。今の改修作業で、回収したエネルギーの九割を使用しましたから』

 

「お……い」

 

 どうにか立ち上がろうとする鈴木を他所に、戦艦は話し続ける。

 

『ですが、兵器系と施設系の半分ほどが戻ってきました。帰ってこなかったのは、完全に使い切った精密機器ぐらいですかね。まぁそれも、劣化機関で補っているのでしばらくは問題ないでしょう。能力の模倣ができたので得たものは大きかったですし、まぁ及第点ですが満足しました。っと、そうでしたね。回復しますよ』

 

 そう言い、戦艦は鈴木を回復させた。

 

「もう少し、マシなやり方は、なかったのかよ……」

『ありませんね。急務を要していたので、死なない程度に強引な手を使わせてもらいました。ついでですが能力も強化したので、それで相殺させておいてください』

 

 二級が一級の補助を直接するのは、少々無理があった。そのため戦艦は、鈴木の力を強引に引き出し能力を高めたのだ。そして能力と全身を演算機化させ、戦艦主導で勝手に使い倒していた。

 

『こちらも苦肉の策だったのですよ?強引な強化はリスクが大きい上、特に後の成長に悪影響を及びしますしね。成功して良かったです』

「これで成功扱いかよ……」

 

 一部の能力だけを強引に一級レベルに引き上げられた鈴木は、その代償として成長性と多様性を失っていた。要は、今必要なものを得た代わりに、仮とは言え未来で得るはっずだった力の大半を失ったのだ。

 

『倍の時間と労力をかければどうにかなりますよ。そんなに落ち込まないでください』

「それまで俺の寿命が持てばな……」

 

 どんなに失おうと、死にさえしなければ後付でどうにかする事はできる。だがそれに必要な時間と労力は莫大で、決して通常の寿命では全てを取り戻せることはない。

 

『では、さらなる強化を施しましょうか?見栄えだけは一級相当になりますよ』

「ふざけるな。誰がやるか、そんなの」

 

 戦艦の提案を却下する鈴木。

 

『ですよね。そう言うと思いました』

「当たり前だ。経験の伴わない力なんて役に立たねえよ。そんなハリボテ、すぐに崩されるわ」

 

 一級ともなれば特にだった。才能と努力が当然の世界に、適当にツギハギされたモノが何処まで役に立つか。だからそこらの兵器や機械は、それ単品では人類……とくに上位勢には敵わない。

 

 

『でなんですが、貴方が苦しんでいる内に宇宙世界への侵入に成功し、高位の生物が住んでいそうな星を見つけました。後数分もせずにたどり着くと思います』

「なんだと、もうそんなに進んでいたのか」

 

 エネルギー補給の件もあるので、速やかにその星へと向かっている戦艦。

 

『はい、ですが超速移動ができないので、安全な着陸となるともう少し時間がかかります。空間移動では近づくだけが限界ですから』

「だろうな。あれはあくまでも虚空だからできたことだ。こっちでもできなくはないだろうが、星……どころか下手したら銀河が吹き飛んじまうだろうしな。空間移動も、安全を考慮するなら星の近くで使いたくないな。なんせこの戦艦はデカすぎるから」

 

 抵抗が限りなくゼロに近く、周囲の被害を気にせずにいられた虚空だからできたことであり、こと宇宙世界ではそんな無茶はできない。その代わりに、空間が安定している宇宙世界では、空間移動ができるようになり、移動は大分に楽にはなっていた。

 

 そして数分が経ち、透明化した状態で星の真上にたどり着く。

 

 

 

『最上位世界ですね。知的存在も相当な数いますし、文明レベルも高いですし、能力者も高位存在も複数存在します。これは当たりですよ』

「良かった。ちゃんと人類がいるんだな。それも最上位世界。生物の枠組に収まってる範囲じゃ、最も上位の世界じゃないか」

 

 

 生物がいる前提での世界の階級は下から

 

 下位世界…知性を持たない生物が蔓延る世界。

 

 中位世界…知性が存在する生物が存在する世界。

 

 上位世界…更に特殊な力がチラホラでてき始める世界。

 

 最上位世界…強力な力を持った存在がいる世界。

 

 高位世界…神などの高位の存在がいる世界。

 

 超位世界…規格外な存在がいる世界。

 

 多元世界…鈴木たちがいた世界(詳細不明)。

 

 の順で決められている。なお、その世界で何が当たり前になっているかで、どういう世界かがだいたい決まり、鈴木たちが見つけた世界は、強力な能力が普通に存在する最上位世界というわけだった。

 

 

「こっちじゃ、神なんて言うのがいるのか」

『この世界には少ないみたいですがね。きっと高位世界とかになれば、神とか言う存在がわんさかいる世界でしょうね』

 

 主軸になっている階級とは別に、一段上の存在がいたりもする。だが特例だったり、数自体もさほど多くはない。

 

「じゃ、さっそく……」

『姿を見せて交渉をしましょう』

 

「え?」

 

 鈴木が呆けている間にも戦艦は透明化を解き、堂々とその強大な存在感を撒き散らす。

 

「な、何してんだッ!?これじゃ、怖がらせちまうだろ!!」

『え?何言ってるんですか。キチンと上下関係を分かってもらわないと、こちらの都合のいい条件を突きつけられないじゃないですか』

 

 その間にも、戦艦に気がついた人類は、大混乱が発生し始めており、その気配は収まるところを知らず広がり続ける。

 

「俺達より格上かもしれないだろ!?見つけられないだけで超位存在が一人でもいたら、こっちは相当ヤバいんだぞ!」

『そうかも知れませんが、だからといって手を小出しする必要もないでしょう?そもそも、こちらの隠密にすら気づかない奴らですよ』

 

 他世界に行く事を想定している戦艦たちは、その武装も凄まじいい性能の超兵器の塊である。細かくは省くが、一機あれば能力者や神などの高位存在がいる世界でもなすすべはないだろう。

 

 だがそれでも戦艦は戦闘を避けようとする。なぜなら、虚空を渡る際に殆どの力を使い切っているので、ムダな消耗を避けるためである。だから基本、友好的に接し情報を集める……筈なのだが、鈴木から『脅せば大抵どうにかなる』と学んだこの戦艦は、高圧的に交渉をしようとしていた。

 

「いやいやいや!友好的に接しなきゃ、協力的な関係は築けないだろ?だからさ、今すぐにでも……」

『いえ、問題ありません。そもそも私たちの目的は、情報収集ですよ?それに加えエネルギー補給です。別にそんな関係築かなくても情報収集はできますし、エネルギーも資源も星から奪い取ってしまえばいいだけです。宇宙世界にはこんな星腐るほどありますからね、千や二千滅んでも問題ないでしょう。誰も気づきませんよ』

 

 長旅の何処かで壊れてしまったのか、成長した末への結論なのか。それを止める気がない戦艦。

 

『とりあえず、適当な回線を掌握してこちらの要件を伝えましょうか』

「やめろやめろ!お前絶対、碌でもない条件突きつけようとしてるだろっ!!」

 

 そこからはあら大変、鈴木の話に一切耳を傾けない戦艦のせいで、数日もしない内に人類が接触を図ろうとしてきていた。それも撃退する気満々でだ。

 

 

「ヤバいって、このままじゃ人類滅んじゃうよ……」

『これは困りました。まだ詳しい情報を回収できていないというのに』

 

 この数日間で星の情報を取り尽くした戦艦だったが、詳しい情報を取れずにいた。なぜなら、機材が劣化したことや、高位存在が邪魔しているのが原因だ。

 

「おいおい、戦争する気じゃないだろうな?それだけは止めてくれよ。頼むから……」

『戦争?いやそこまではしませんよ。ただ攻撃されたら反撃で何発か叩き込みはしますが。ってことで交渉お願いします。あれだけ文句言ってたんですから、それぐらいできますよね?』

 

「は?ちょっ!?」

 

 そうして喚く鈴木を無理やり艦内から放り出す戦艦。それに諦めた鈴木は、空を飛んで向かって来た相手を見る。

 

 

(友好的にだ。こっちから喧嘩は仕掛けない。あいつが出した条件が酷いから、上手く行かないかもしれないが……)

 

 目、を覆いたくなるほどの酷い条件に、最後には戦争もやむなしとか言われれば、誰でも怒るだろう。だから当たって砕けろの精神で向う鈴木。

 

 

「お前が、あの信号を出した者か?随分とふざけた話だな」

「いや、まぁそうだな。一応間違ってはないとだけ伝えておこう」

 

 十人程度の能力者を従えた男にそう聞かれ、慣れない様子で答える鈴木。

 

「即刻この星から出て行け、でなければこちらも相応の対応をさせてもらう」

「交渉ぐらいさせてくれよ。じゃなきゃ俺も酷い目に合わされる」

 

 戦闘態勢に入る能力者たちに、そう返す鈴木。

 

「下っ端なのかは知らないが、随分と舐められたものだな。あれだけの横暴、即座に戦争にならなかっただけ奇跡なんだぞ」

「だろうな。俺も止めるようには言ったんだが、どうにもうちのモンは横暴なもんでよ。手に入らないなら奪うまでだと言っている。だから、内容を変えて妥協させるから受け入れてくれないか?」

 

 それこそ身勝手だろうが、鈴木もそう言うしかない。そしてそれの失敗が意味することは、この星の滅亡だった。

 

「ふざけるな!立ち退かないと言うなら、即刻戦争ッ!!?」

「何やってんだッ!!」

 

 その会話を聞いていた戦艦は、一発の光線を放ち大海とそこに浮かぶ艦隊を薙ぎ払おうとする。だがそれを間一髪で鈴木が弾き、大気を吹き飛ばしながら宇宙へと消えていく。

 

『随分と勝手な話をしていましたね。同郷の協力者でなければ即座に消し飛ばしてたところですよ』

「ふざけているのはお前だ!あんな無茶苦茶通るわけないだろっ!!」

 

 言い合う鈴木と戦艦に、その場の全員が戸惑っていた。

 

『知りませんよ、そんな事。どうでもいいです。支配されるか、戦争するか、そのどちらかしか選択肢を用意していませんし』

「だったら今から考え直せ!お前らもだ!こいつと戦ったって滅ぼされるだけだぞ!」

 

 鈴木の言葉にハッとする交渉人たち。

 

「そ、それだとしても……」

「そんな事言ってる場合か!」

 

 交渉人たちを一括し、戦艦に向き直る。

 

『……残念ですが、いいですよ。貴方が敵対しても、大した障害にはなりません』

「残酷で冷徹、どこまでも合理的、俺が嫌いな類の存在だ。これだから人工知能はな」

 

 戦艦は力を解き放ち、星が大きく揺れる。それに世界は震撼し、各地でミサイルやらが戦艦に向かって発射された。

 

『ムダですね。その程度、障害にすらなりませんよ』

 

 大空に目がくらむほどの閃光が発生し、大気を吹き飛ばすほどの大爆発が起きた。だが多重結界によりすべて防ぎ切られる。

 

「新型の水爆をあれだけ受けて無傷だと!?」

「ッ!?多重結界か!しかも俺の能力まで組み込まれてる!」

 

 多重結界だけでも十分すぎるのに、鈴木の能力も組み込まれた結界は、発生したエネルギーをその場に止め、光線状にして鈴木を避けるように艦隊を消し飛ばした。

 

『本艦の攻撃兵装を使うまでもありませんね。どうです?降伏する気になりましたか?今なら悪いようにはしませんよ』

 

 脅すように光を増す戦艦に、心が折れそうになる交渉人たち。

 

「あれだけ殺しておいて!何言ってるんだ!」

『あの程度で済んだんです。賢い貴方たちなら、これ以上犠牲を出さない方法だって分かるでしょう?』

 

 それを掌握した回線で世界中に流す戦艦。それを見た世界中の人たちは、圧倒的すぎる戦力差に絶望する。

 

『それともまだやりますか?別にいいですよ。まだ先程のエネルギーは残っています。この調子で近くの大陸でも焼き払いましょうかね?』

 

「「「ッ!?」」」

 

 光線を一点に集め、陸地へと向ける戦艦に交渉人たちの顔は青ざめ、硬直する。

 

 

「要求は飲むから、止めてくれねえか?」

『この世界の神とやらですか?賢明な判断ですよ』

 

 突如として現れた神らしき男に、戦艦が反応する。

 

「ああ、その認識で間違ってない。で、正直俺達じゃお前に一矢報いる事すら不可能だ」

『分かってるじゃないですか』

 

 気分が良くなる戦艦。だが……

 

「だから、一旦戻すことにする。そっからまた交渉をやり直させてくれ」

『ん?時間の操作ですかね?』

 

 時計と歯車の背景が広がり、その動きが止まると同時に時間が止まる。

 

「そうだ。今のままじゃ上手く交渉なんてできないだろ?だから……」

『で、時空の果にでも飛ばして終わらせようと?そんなの許しませ……』

「いや、そこは甘んじて受け入れろよ!」

 

 戦艦と鈴木は普通に停止世界で動き、ツッコミを入れる。

 

「やり直せるんならいいじゃねえか。それに時空の果に飛ばされても帰ってこれるだろお前なら」

『そうですがね。面倒なんですよ。そもそも強硬手段を取っているのも資材と燃料不足のせいですからね。無駄遣いはできる限り避けたいです』

 

 異空間や次元、時空の果に飛ばされようが、戦艦は帰ってくる。こいつらにとって一番嫌なのが、何もない虚空に飛ばされることなので、それ以外の所は別に大した問題ではない。

 

「じゃ、じゃあ要求物を渡すからこの星は諦めてほしい。その方が都合がいいだろ?」

「そうだぞ戦艦。正直俺はお前と戦うなんて嫌なんだからな。瞬殺されるし」

『ですね。私も貴方を失おうのは避けたいと思っていました。正直この星はどうでもいいですが、貴方が納得するならこちらも多少は妥協しましょう』

 

 脅せば諦めて帰ってきてくれると思っていた戦艦だったが、そうでなくなった鈴木に別の回答を出すことにしたようだ。それに二人は安堵し、疲れたようにため息をついた。

 

「ちょっとは優しくなってくれよな。こっちだって何でも言うこと聞くわけじゃないんだから」

『次回からは改善しておきましょう。ですが、出過ぎたマネは止めてくださいね?苦しめますから』

「じゃ、早速……」

 

 そこまで話して、時間が巻き戻り星の真上に来たところに戻っていた。

 

「よし戻った。この星の管理者として、さっきの要求は受けよう。速急に準備をするから待っていてくれ」

 

 そう言うと神は、能力を使って戦艦に資材を乗せていく。そしてそれを使って施設や武装を補強していく戦艦。

 

『で、次はこの星の情報を回収しますね。邪魔しなければ穏便にすませますので』

「……わかった」

 

 そう言うと戦艦は、世界から情報を抜き取り始める。それは文明が築き上げたものや、隠された神秘や禁忌、星の持ちうる全ての情報が覗き見られる。

 

『なるほど、随分と興味深いですね。特にこの世界に漂う粒子は……』

 

 あらゆる世界には量子が存在し、それによって世界が構成されている。その中でも特殊なものがその世界特有の力となり、能力や高度な文明が出来上がるのだ。代表例が魔素や霊素と言ったものだろう。

 

 無論その中にも様々な種類があり、戦艦はその粒子の構造や性質を見ているのだ。

 

「とんでもないな。俺達が途方もない時間をかけて生み出したものを、こうもあっさりと超えられるなんて……」

「基礎技術が違うからな。俺達は、最小単位とそこから派生する粒子を見てるわけだから」

 

 鈴木の世界では全てのもととなる最小単位を扱う技術が、当たり前のようにそこらに転がっている。それによって一見ありえなさそうなものを作り出す事ができるのだ。だが、組み合わせが無限大レベルで多いため、一々自分たちで作って確かめるよりも、別世界に行って技術を回収したほうが早いと結論付けられたのだ。

 

『ふふふ、これで新しい兵器が作れます。他の施設を出し抜くことが……』

 

「やべぇんじゃねえのか、あれ?」

「兵器なんてあんなんだ。実弾兵器は色々と限界があるから、源力兵器に関しては特にな。あっちは無尽蔵に使えるから」

 

 内部空間を広げられるとは言え、それの維持も実弾兵器も高価で積載量に限界がある。だったらと源動力(エネルギー)さえあればいくらでも使用できる源力兵器(エネルギー兵器)を採用するのは当然と言えた。

 

「源力兵器?」

「光線とか振動波とかを扱った兵器群のことだ。量子制御からなる光学兵器や力学兵器とかを組み合わせたもだな。気軽に使える高性能兵器ってところだが、大抵は多重結界で止められる。だからそれを貫こうとみんな躍起んだんよ」

 

 万能で何にでも多用できる源力兵器だが、唯一の弱点である対応のされやすさというのがあった。と言うかまず、どの兵器にも当たり前のように搭載されている多重結界を越えられない事がほとんどなのだ。だから、新粒子を見つけ出して、対策されていない攻撃で貫こうとしていた。

 

「あれを防ぐのか?頭おかしいんじゃないか?量だって並の惑星戦力を凌駕してるのに……」

「こっちじゃそうみたいだな。だが俺達の世界じゃ、防がれるんだ。量で押し切ろうにもあっちも同じ手を使ったり多重結界を強化して来る。しかも新しい攻撃も対策されるのも時間の問題だ」

 

 量や出力で押し切るというのもあるが、それは多重結界にも言えることなので、同出力で対応されてしまう。なので源力兵器は基本、本筋の攻撃にはあまり使用されない。あくまでも相手の消耗や当たれば御の字、実弾兵器の撃墜、又は結界を破壊した後の追撃が主なのだ。

 

 その他、攻防に限らず様々な兵器や機関、施設などに割り振れるエネルギーが限られるので、全力で起動させた場合、深刻なエネルギー不足に陥る事がある。

 なお対人の方も格下であればそれでいいが、格上には通じるとはいい難い。鈴木の世界の住人やバケモノ共も個人で光線程度対処出来てしまう超人なのも相まって、見た目が派手なだけで終わっている部分もある。

 

 

「それじゃ、イタチごっこだな。きりが無いだろ」

「そうだが?だから発展し続けるんだよ。終わらない戦いを続けるためにな」

 

 これが正しくイタチごっこであり、無限に等しいパターンを埋め尽くさない限り戦いは終わらないだろう。それを聞いた神は、戦艦と鈴木のことを狂っていると思った。

 

「因みに光線の種類も結構あるぞ。なんせ量子制御で光線放ってるから、その場に適応した攻撃ができるからな」

 

 効果は大きく分けて、切断、破壊、崩壊、融合、分裂、凍結、気化、液状化などがあり放ち方も大出力から小出しの牽制や威嚇用まで幅広くある。

 

「無敵だな……」

「他にも妨害波に多重結界、実弾兵器、時空次元……」

『喋りすぎです鈴木。こちらの作業は終わりましたので別惑星に行くますよ』

 

 作業を終えた戦艦は、鈴木に声をかけた。

 

「そうだったな。じゃ、約束通り俺達はこの星に手を出さない。これでいいな?」

『ですね。欲しい物が手に入りましたし、もうこの星には要はありません。今後関わることはないでしょう』

 

 それに安心した神は、さっさと戦艦から出て離れていく。

 

 

「次何処行くんだ?」

『この銀河の中心に超質量の天体を確認しました。そこへ向かいましょう。ちょうど新しい動力源が欲しかったところです。でなんですが、私のこと嫌ってます?』

 

「強いて言うなら好いてはないな。扱い酷いし」

『そうですか……』

 

 そうして戦艦は、ゆっくりと動き出すのだった。

 

 




 こいつらが他の世界へ行ったらとかも考えましたが、なんだか搾取と蹂躙しか起こりそうにないのと、アイデアがないので短編になった作品です。

 簡単説明

 名前 鈴木 賢治
 等級 二級最上位
 能力 力場:力の向きや大きさの支配など
 説明 戦艦を盗もうとしたが、失敗して虚空へ発射されたアホ。チート盛りだくさんの存在以外なら、互角に渡り合える程度の実力。惑星程度なら簡単に崩壊させられる。

 名称 超位戦艦
 等級 一級中位
 能力 各種施設や兵装
 説明 虚構施設で大量生産されている汎用型超位戦艦。インフレしまくった存在以外なら大抵は相手取れるほどの性能を誇り、勝手に学習成長を繰り返す超兵器。
 自我があるように接するが、実はマネているだけで感情を理解していない機体がほとんどだが、成長の果に感情を持つ機体ができる場合がある。
 得意技は光線や力場支配だが、最終的には『悪質タックル』というその身と引き換えに大銀河ごと完全消滅させる自爆特攻攻撃ができる。または範囲が極端に狭まっての事なので、やろうと思えば宇宙ごと消滅させ、関りのある周囲の世界も崩壊波に飲み込まれる。
 こんなんを無尽蔵に生産し続ける虚構施設はヤバいヤツだと思う。


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