ディアボロモンは将監たちを抱えて森を駆け抜けて蓮太郎たちが居るであろうレールガンモジュールに向っていた。途中、襲ってくるガストレアたちは腕で薙ぎ払いながら進んでいた。
「ゼツさん、大丈夫なんでしょうか?」
「…………」
夏世は悲しげな表情を浮かべながら呟き、将監は先ほどゼツと戦っていた二体のデジモンに付いて色々と考えていた。後から出てきた二体のデジモン、あれらは普通の存在ではないと将監は確信を持っていた。
「(あのガキィがアレほど警戒するってことは、最悪の事態も想定しなければダメェか……)」
最悪の事態。
それはあの二体のデジモンにゼツが負けて、後に東京エリアを襲うという場面だった。一体だけでも退けるか分からないと言うのに、それが二体もいる。
ガキィがいて、その相棒たる二体もいて、俺様と夏世が居れば退ける事は可能かもしれない。だが、現状は最悪に近かった。
色々と考えているとレールガンモジュールの近くにディアボロモンは降り立った。
「夏世、あの不幸面を呼んでこい」
「はい。無茶はしないで下さいね」
「へぇいへぇい」
ぶっきら棒に返事をする将監の少しだけ苦笑しながらレールガンモジュール内に夏世は入っていた。それを見届けた将監は背負っていたアンサラーを抜いて地面に突き刺して周囲を警戒する。
そろそろ夜明けが近付いており空には軽く明るくなりだしていた。虫の鳴き声が静かな森に響き渡る。
「暇だな」
「…………」
愚痴りながら視線を隣で静かに佇むディアボロモンに向けた。
静かに瞳を閉じてジッと動かないディアボロモンに多少なりとも不気味さを感じさせる。この存在は今にでもゼツを助けに行きたいのだろうが、それでも動かずに待機を続けている。
「助けに行かねぇ~のか?」
何もする事もなく暇潰しに問い掛けるとディアボロモンは閉じていた瞳を開き将監に向けた。すると、将監が持っていた携帯が鳴り響いた。
このタイミングで誰が連絡してきたのか分からずに携帯を取り出して見てみた。差出人不明のメール、内容文は『黙っていろ』だった。
そのメール文を見た将監はゆっくりと視線を隣で佇んでいる存在に向けた。
「お前……っか」
表情を一切変えないディアボロモン、だがこの時だけは睨むような表情にも見えた。
するとレールガンモジュール内から数人の足音が聞えて視線を向けると、内部から不幸面の男性と橙色のツインテールの少女と夏世の3人が出てきた。
「将監さん、何事もありませんでしたか?」
「あぁ大丈夫だ。さっさと此処を撤退するぞ」
相変わらず心配性だなと感じながら将監は我先にとディアボロモンの近付こうとすると、蓮太郎に呼び掛けられ足を止めた。少しだけ憂鬱そうな表情を見せながら将監は呼び止めた蓮太郎に向けた。
「何だぁ?」
「ゼツはどうした?」
「あのガキィの希望だ。俺たちはさっさと東京エリアに避難させたいんだろ」
「見捨てろと言いたいのかッ?」
明らかに怒気を孕ませた言葉を吐く蓮太郎に傍にいた延珠は不安げな表情を浮かべており、それは更に隣にいる夏世にも伝わっていた。だが、そんな怒気孕んだ言葉に将監は我関せずな態度を見せながら視線をディアボロモンに向けた。
「じゃぁ不幸面ァ、オメェが助けに行けば状況が好転すると思ってるのか?」
「ッ!?」
その言葉に蓮太郎はビクッと身体を震わせて反応してしまう。
蓮太郎もまた理解していた。あの戦いは既に人間どうの、ガストレアどうのと言えるような戦いではないと、それでも後輩であるゼツを助けに行きたい。仲間なのだから。
「あの戦いは既に俺たちが関与してどうこう出来る話を既に逸脱している。今居る俺らだけで一体だけ相手をしても互角に渡りあうどころか押し負けるぞ?」
その真実を言い付けられて蓮太郎は苦しげな表情を浮かべる。そして少しだけの沈黙の後に蓮太郎は顔を上げてディアボロモンに視線を向けた。
「ディアボロモン、俺を連れてゼツの元に連れてってくれ!」
『ッ!?』
蓮太郎の急な申しでに周囲にいた延珠や将監たちは驚く。そして、ディアボロモンは静かに申しでた蓮太郎を見詰返した。
「不幸面ァ、それ本気でいってるのか?」
「あぁ。俺は絶対に見捨てたりしねぇ」
「……はぁ、夏世。今の手持ちの武器でどこまで戦える?」
「えっ……あっ、弾丸なども十分ありますので戦えます」
「そうか、なら行くぞ」
「はい」
将監はアンサラーを背中に背負ってディアボロモンに向い、その後を夏世を追いかける。急な行動に蓮太郎は目を丸くして驚いていると将監は視線を向ける。
「おら、助けに行くんだろ?」
「でもお前」
「助けに行かないとは言ってねェだろ?」
その言葉に蓮太郎は唖然としてしまう。確かに言ってはいないが屁理屈だ。
だが、蓮太郎は苦笑してしまう。まったく素直ではないなっと思いながらも口にはしなかった。
「行こう連太郎、ゼツを助けに!」
「あぁ!」
◆
メギドラモンの必殺技『メギドフレイム』。
全てを焼き尽くす劫火球が襲いくる中、ゼツは懐からカードを取り出して効果を発動させる。
「『オファニモンの盾』ッ!」
ゼツのミレニアモンの前にユニコーンが描かれた西洋風の盾が出現してメギドラモンの攻撃を防ぐ。
火球と盾が衝突、その衝撃破は周囲を巻き込んで吹き飛ばす。突進でくる火球を防ぐ盾ではあるが表面が溶け出し、何時壊れるか分からない。
盾の状況に苦虫噛み締めて苦い表情を浮かべるゼツだが、そんな時に巨大な影が覆い被さってきた。それはミレニアモンだった。
四本あった腕の一本がもぎ取られ、背中に背負っていた大砲は半壊していた。どうやらデスクドルゴラモンから身を犠牲にしてまで助けに来たのだ。
助けに来たと同時に盾は完全に蒸発崩壊、残りの劫火球がゼツたちを襲う。
「グウウゥゥゥアアアァァァーーー!」
火球の劫火が襲われ苦痛の声荒げ、過ぎ去るとゼツは片膝を地に付けた。身体全身に襲う激痛、胸元から流れ続ける出血、このままでは本当に生命の危機に迫られていた。それでも、その瞳には闘志は消えていない。
だが、ミレニアモンだけは耐えられる事が出来ず、横に倒れてしまった。
腕を一本失い、背中の大砲も半壊、それに続いて全身の大火傷。これで死んでいないだけ奇跡であり、その前にも夏世たちを守る為に大火傷を負っている。
「止血剤なんて用意してないからな……『ギガヒール』」
切り裂かれた胸元を押さえながら立ち上がり、つい先程と同じ治療系カードを取り出してミレニアモンの傷を癒す。
傷が癒えたミレニアモンは苦しみながらも立ち上がり、相手の二体のデジモンを睨みつける。例えカードの恩恵によって傷が癒えようとも失った体力や気力までが回復するわけではない。
「この場を凌げる方法などアレしかないが、今の俺の状況じゃ最悪その場で倒れて気を失うな。そんな隙をタクマは見逃さないだろうし……さぁ、この状況どうしようか……」
自身の最悪の状況に額に汗を浮かべて笑う。
この最悪の状況でよくも笑っていられるな、と呆れながらも吊り上がった頬を元に戻らない事に気付き、再度自身に呆れた。
何故、笑っている?
死に掛けているのに……。相棒であるミレニアモンも死ぬかもしれないのに……。
「いや、言い訳は止そうか。この状況に俺は……」
楽しんでいる。
最悪の状況下の中で身体が熱くなり、相手を倒したい葬りたいと衝動が思考を埋め尽くす。それに感化したのかミレニアモンも唸りあがり涎を垂らし、瞳も真紅に染まっている。
「何が楽しいの? もしかして頭の中でもイカレた?」
「イカレた……っか。そうだな、狂ってるかもな。何せ――今、興奮してるんだからな」
「ッ!」
タクマに指定されて自身が狂いだした事に素直に答える。その姿に流石に可笑しいと感じたタクマは訝しげに睨む。
そして、ゼツは大きく深呼吸して身を守っているミレニアモンに視線を送る。決意したその瞳に、真紅に染まったミレニアモンの瞳が重なる。
「いけるな?」
「…………」
沈黙して何も答えないミレニアモンだが、その瞳には決意を決した意思が宿っていた。そのれを見たゼツは、少しだけ微笑んだ後スマホを構える。
スマホを構えた姿にタクマは警戒する。
ゼツのスマホの画面にデジモン文字が浮かび上がり次々と字が選ばれていき、三文字のデジモン文字が浮かび上がる。
「古の時代より伝えられし予言の一文《赤黒の双頭龍》。今此処に汝の枷を解放ち、千年魔獣の『なぞり』に従いその姿を変えて我が眼前にて顕現せよ――」
そして、神話が紡がれた。
ミレニアモン全身に数字列の帯が現れて包まれていき、最後には一つのタマゴが出来上がる。そのタマゴに亀裂が入ると赤色と黒色の焔の様な腕がタマゴから突き破り姿を現す。
「『
残りのタマゴを吹き飛ばして中から一体のデジモンが出現した。
赤色の焔、黒色の焔、その二つの焔が捻りあい複数の数字列がその二対を結び固定している。その焔の二頭四眼の瞳が相手のデジモンを睨みつけ唸る。
ズィード=ミレニアモン。究極体にして邪神型デジモン。
時間と空間を超越して飛び交い、あらゆる時間と世界を破壊しようとする邪悪なる王。
「「RUAAAAAAAA!!」」
突然のズィード=ミレニアモンの出現に勝ち誇っていたタクマは凍りつき、連れている二体のデジモンもまたズィード=ミレニアモンに驚きを隠せなかった。
「……ミレニアモン、あの劣化デスクドルゴラモンを消し去れ」
「RUAAAAAA!」
赤き邪龍がデスクドルゴラモンに視線を向けて腕を握るように拳をつくる。すると、デスクドルゴラモンは何かに圧迫されるように潰され倒れこむ。そして、その背後に空間が避けるように切れ目がはいり謎の空間が露になる。
「ッ!? 逃げろデスクドルゴラモンッ!」
タクマも慌てながら退くように命令する。だが、タイミングが遅かった。
逃げ出そうとするデスクドルゴラモンだが、裂けた空間は相手を逃がさまいと急激に物質を吸い寄せる。そして、
「ギャアアアァァァーーーッ!?」
抵抗も逃走も出来ないままデスクドルゴラモンは裂けた空間に吸い込まれた後、裂け目は元に戻りそこには最初から何もない空間に戻っていた。
その結末にタクマは唖然と見詰ていた。
これは何だ?
一体何が起きた?
デスクドルゴラモンは何処に消えた?
あのデジモンは何だ?
「タクマ」
「ッ!」
呼ばれて身体を震わせながら呼ばれた声に場所に視線を向ける。そこにはゼツが立っていた。今までの憤怒の表情が嘘かのように冷静に、それこそ能面のような表情を浮かべるゼツに恐怖を感じる。
「流石のお前も知らないよな」
「何だよ……それ」
「ズィード=ミレニアモン。俺が『ノーネーム』を脱退した後に進化させたミレニアモンの最終形態だ。先ほどの現象は必殺技≪タイムデストロイヤー≫」
ズィード=ミレニアモンの名を聞いたタクマは色々と記憶を探っていく。そして、何処かで聞いたような名前を思いだす。
「確か……碑文の一文」
「おっ、知ってたか以外だな。そう、その碑文で書かれている一文『終焉の千年魔獣』だよ」
「嘘だ。アレは伝説だけの御伽噺で……実在なんて……ましてや居たとしても人間が制御できるデジモンじゃない」
「……これでも結構無茶はしている方だからな。何せ、コイツを出すとなると俺自身ヤバイ状況に追い込まれるから」
呼吸が荒くなり胸元の出血も酷くなっていく。そんな中、額から血が一滴流れ落ちてきた。流れ落ちた赤い液体を手で無造作に拭って振り下ろした。
「脳内の血管が数本切れたってことは時間も無いか。ミレニアモン、残りの相手を消し去れッ!」
「主命である! 全力を持って俺を助けこの場を離脱せよッ!」
赤と黒の焔の腕がメギドラモンに襲い掛かろうとする。だが、それよりも早くタクマの命を聞いたメギドラモンは自身が出せる最大加速で飛行を開始してタクマを抱えてその場を離脱する。
「逃がすと思うか!」
ズィード=ミレニアモンは両手を掲げるとメギドラモンの逃走ルートに裂けた空間を大量に出現させて退路を断とうとする。
あっちこっち空間に裂け退路を阻まれていくがメギドラモンは一切に速度を下げることなく飛行する。例え、空間に尾や翼をもぎ取たれようとも。
このままでは逃げられないと判断したタクマはスマホを取り出してかざす。
「強制ゲートオープンッ! 飛び込め!」
「グオオオォォォッ!」
何もない空に緑色に輝く円が展開される。
タクマは有らん限りの声を荒げ、その円の中に飛び込むようにメギドラモンに命令を下す。それに従いメギドラモンはその円に飛び込むと、円は一瞬にして消滅してしまった。
それを見届けたゼツは軽く舌打ちをしながらタクマが消えた空を睨む。すると、遠くから誰かが近付いてくる気配に気付いたゼツは後ろに振向く。
「あれ、逃げろって俺は言ったろ?」
「助けに来たんだが、全部終わってるぽいな」
そこには呆気に取られている蓮太郎や延珠、将監や夏世たちだった。
あいも変わらずお人好しだなとゼツは苦笑を漏らすと、皆の視線があるズィード=ミレニアモン一点に注がれている事に気付いた。
「なぁゼツよ。これは何なのだ?」
皆の疑問を代表して聞いてくる延珠にゼツは説明しようとするが、全身に駆巡る激痛に答える事が出来ずにその場に倒れてしまう。
急なゼツが倒れた事に周囲の者たちは驚き駆け寄る。そして、ゼツの身体に起こっている異変に周囲は気付いた。
「コレって、体中から血が流れ落ちてるじゃねぇか!?」
「呼吸は荒く、熱も高いです!」
「おい、やべェぞッ!」
明らかに普通ではない状態のゼツに皆は如何したらいいか混乱していた。すると、その皆を一気に抱え込んだのはズィード=ミレニアモンだった。
急に持ち上げられたことに驚きはするが、次の瞬間には既にある場所に移動していた。そこは、数時間前まで蓮太郎がお世話になっていた場所――
「一瞬で病院前……だと」
皆が驚きの表情を浮かべている中、ズィード=ミレニアモンは手に持ち上げているゼツたちを下ろして一歩後ろに下がった。すると、ズィード=ミレニアモンは光に包まれて徐々に縮んでいきミレニアモンの姿に戻った。
ミレニアモンに戻った光景を見ていた蓮太郎たちは更に驚きの浮かべる。
「アレってミレニアモンだったのだなッ!」
「そうだな……って言ってる場合じゃない! 病院に運ぶぞ延珠!」
「うむ、任された!」
ゼツを担いで蓮太郎たちは病院に入っていった。
担ぎ込まれていったゼツを見届けた将監は深い溜息を吐いて踵を返した。夏世もまた将監の後を追いかけようとするが、
「今日の仕事はコレでお終ェ~だ。後は好きにしろ」
「えっ?」
「後は休むなり誰かの看病したり好きにしろ」
「……あっハイ!」
将監の意図を知った夏世は微笑を浮かべてお辞儀をした後、ゼツが担ぎ込まれた病院に入っていった。それを確認した将監はもう一度溜息を吐いて、本当にその場を後にした。
◆
全身の火傷、胸元の傷、出血多量。そんな誰もが見ても重症を負っているゼツを執刀医したのは室戸菫であった。
手術時間は約2時間。
大手術を為し終えた室戸菫は手術室を出ると、そこには蓮太郎や延珠、木更に夏世の四人が心配そうに見詰ていた。
「先生、ゼツは……」
「一言、言わせて貰うと手術は成功だ」
成功の言葉を聞いて大きな安堵の溜息をついた。そんな四人に菫は少しだけ微笑むと、訝しげな表情を浮かべた。その表情にいち早く気付いた夏世は心配そうに視線を向けた。
「あの先生。どう、なされたんですか?」
「いやね。私も多くの患者の相手をしてきたが、アレは異常だよ」
「異常、ですか?」
一体何が異常なのかと周囲は耳を傾け、話は続いた。
「火傷、胸元の傷、それらの傷を治療した後から再生していたのさ。尋常じゃない程の早さで……」
「再生だと。それって……」
「ハッキリ言って、あの再生速度は延珠ちゃんみたいな"呪われた子供"と同等以上だよ。普通ではありえない。蓮太郎くん、あの子は何者だい?」
その問いに蓮太郎はどう答えたら良いのか判らずに言葉を詰まらせた。すると、手術室の扉が開かれ包帯だらけのゼツが姿を現した。
急な登場に驚く周囲だが、ゼツは少しだけ歩いて菫の前に立つ。そして、その場で頭を下げた。
「手術、感謝します」
「アレだけの大怪我でその手術後で動けるとは、本当に君は何者なのだろうね?」
「それは、改めてこっちから教えるよ」
呆れた顔にゼツは苦笑しながら答えた。
話を終えて身体に巻かれている包帯を急に外しだした。その行動に周囲は驚き止めようとするが、それを聞き受けることなく包帯を全て外した。
「お前、その身体」
蓮太郎の指摘。
本来は包帯の下には火傷痕が存在する筈、だがその肌には痕は存在しておらず綺麗な肌の状態だった。流石にコレは可笑しいと周囲は視線を向ける。
「ズレが酷いかな。後で調整しないと……蓮太郎、帰ろう」
「おっおい!?」
返事も聞かずに外にむかって歩き出すそのゼツの姿に、蓮太郎たちは驚きながらも後を追いかけていく。その場に残った室戸菫はその去っていく後姿を眺めながら訝しげに見詰ていた。
◆
スマホで二台のタクシーを呼んでゼツと夏世、蓮太郎と延珠と木更でタクシーに乗り込み、蓮太郎の家に向うように運転手に頼んだ。
十数分後。蓮太郎のマンションの門前に到着、二人分のタクシー代をゼツ一人で払い蓮太郎の家に向った。だが、階段を上っているときに胸元に傷の痛みに足を止めるゼツ、それに気付いてすかさず傍に寄って肩を貸した。
肩を貸してくれた事にお礼を言って、その状態で蓮太郎の扉を開いて家に上がった。
上がった後、ゼツは戦闘によってボロボロになった黒の羽織を脱いでスマホを取り出して何かをしだした。
「なぁ何をするきだ?」
「んっ、少し待ってて」
皆が思っている疑問を問い掛けるがゼツは、視線をスマホから外すことなく操作を続けていた。そして、スマホは淡い光の粒子を放ちだしそれがゼツの身体を包んでいく。
そこで、皆の視線がある事に釘付けになった。
「ゼツさん、その身体……一体……」
「嘘でしょ」
「こんなの……あるのか?」
「ゼツ、お前……」
皆が唖然としてしまう。
右胸から右腕全体、左足から脇腹までが数字列に包まれて透けていた。その透けている部位にスマホから溢れ出す粒子が次々と注ぎ込まれていき、やがて透明だった部位は肉体になっていた。
「あのね蓮太郎、俺は右腕周辺と左足は本来無いんだよ。デジモンに食われてね」
「くわっ食われたッ!?」
急なカミングアウトに周囲は驚きの声を上げた。
その驚きの表情を見たゼツは苦笑しながら内容を皆に教えだした。
「まだデジモンテイマーとしては駆け出しだった頃、強敵に遭遇してね。その強敵に右腕周辺と左足を持っていかれた。だから、身体の半分近くをデジタル化してるんだよ」
「デジタル化って……」
「まっそのお陰なんだけど、通常ではありえない程に身体能力を得たけどね。これが、この歳でもガストレアに勝てる秘密なんだよ」
隠された秘密を暴露すたゼツに、周囲の蓮太郎や延珠、木更に夏世たちは驚きながらも納得した。
ゼツは延珠や夏世みたいにガストレアの呪いなどは無い。だが、それ以外の力を持って戦っていたのだ。
「デジタル化ってサイボーグみたいな感じなのか?」
「似ても似つかないかな。機械が出せる能力は100とするなら、肉体のデジタル化は精神状態にも左右されて100でも150でも出せるようになる。更に機械に起きる磨滅とか劣化とかは存在しないし、感覚もあるからね」
「マジか」
「ゼツくんの強さってコレだったんだ」
不思議な視線を向けながらゼツの右腕に触れてみる。
それは確かに体温があり、血管も通っている。だが、先ほどの話が真実ならこれに触れている右腕は偽物なのだ。だが、どう見ても本物にしか見えない。
「でも、これにも弱点があってね。何らかのダメージを受けたらデジタル粒子が徐々に減っていき、最後には形状が維持できずに消滅してしまう。だから、このようにスマホに保存されているデジタル粒子を注入して増やさないといけない」
スマホから光は消えていき普通の状態に戻った。
それを確認した後、スマホを操作して淡い青色の着物を取り出した。出した着物を片手に持って隣の部屋に移動しだした。
「どうするんだ?」
「着替えるの。流石にこのボロボロの状態は流石に居たくないしね」
「そうか。手伝おうか?」
「着付けの仕方なんて知らないでしょ?」
「あっ私は知ってるわよ」
「いや、流石に女性に着付けされるのは……」
頬を赤く染まってしまう姿に流石の木更も苦笑しながらゼツの後姿を見送った。それから数分、着替え終えたゼツは襖を開けて出てきた。
淡い青色の和服寝巻、帯びには深緑を巻いている。
「寝巻なのですね」
「今から着物に着替えても意味がないからね。変じゃない?」
「はい。落ち着いた感じです」
「そう、それは良かった」
夏世の感想に満足すると、蓮太郎の方に視線を向けた。
「そろそろ解散しない? もう、朝日は上がってるけど流石に眠いし」
「そうだね、俺も眠い」
「私もそろそろお邪魔しようからしら。そうそう、今日はお仕事お休みだから、今日一日ゆっくり休むのよ。明日から後処理とか大変なんだからびしびし働いてもらうから」
「うむ妾も今日はくたくたなのだ。夏世はどうするのだ?」
「私もそろそろ帰ります。ゼツさん、あまり無茶はしないで下さいね」
「うん。心配かけてごめんね」
心配かけた皆に謝罪をして頭を下げる。
皆はその謝罪を受け取って、それぞれ帰るべき家に帰っていった。
少しだけ走りすぎな書き方かもしれませんね。
さぁ、皆さんも思っていた通りって言うかは、大体の人は分かっていたと思いますが神話降臨ズィード=ミレニアモンが此処にて爆誕です。
この小説での設定上ではズィード=ミレニアモンはデジタルワールド創世記にて一度デジタルワールドを滅ぼしたデジモンです。
ですので今のデジタルワールドの遺跡などでズィード=ミレニアモンの名前が記載されています。
通常では人間には従えて御する事は不可能といわれているデジモンなのですが今回の本文にも記載している半分をデジタル化しているゼツくんだからこそ扱える存在なのです。
それと上記にも書きましたがゼツ君の身体の半分はデジタル化されています。通常より身体能力が高いのも、デジモンの攻撃を受けても耐えられるのもコレらが理由です。でも、実はこれ以外にも目的があるのですが、それはもう少し進ませてからです。
【用語】
『肉体デジタル化』
失われた部位などをデジタルで補うデジタルワールド限定の治療法。
メリット
:繋目などは一切分からない。
:神経の感覚がある。
:義肢などの磨滅や劣化などがない。etc
デメリット
:神経などが繋がっているため痛覚があり。
:一定以上のダメージを受けた場合は消失してしまう。etc
まぁ、こんな感じで……(汗)
次回で第一章が終わります。次回をお楽しみに!