地球過剰防衛軍   作:APHE

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ヤマトのワープって光速換算で30万倍くらい出てるんですね。
次元波動エンジンすごない?


遥かなる外来人ー月面防衛戦

EDF本部

 

「これが奴らの本気か」

 

「そうなのでしょうね」

 

ディスプレイに投影された戦略MAPと各戦場からの報告を眺めて渋い顔をするのはEDF司令とストーム1。

敵を表す赤点は既に月の付近にまで近づいていた。このペースで行けば数時間後にはもう地球が戦場となる計算だ。

 

「火星戦線は拮抗状態…しかし火星包囲により戦力追加投入の目処が立たず、包囲打開のために寄越せる戦力も無い。敵はすでに火星を迂回し後方での戦闘が始まっている。最悪の盤面です」

 

「まんまと敵の策に嵌められた訳か」

 

「EFSF艦隊とモビルスーツ隊、企業連傘下の傭兵団の奮戦により火星本土への被害はありません」

 

「しかしだな…」

 

火星包囲がスケールがとてつもなく大きいだけの時間稼ぎだろうという見解は今や一般兵にまでも広まっている。

ましてやかつての侵攻でマザーシップを孤立させるため残存勢力全軍を投入し盛大な遅延戦闘を行わせた、それを指揮した立場にあった司令には敵の意図することがすぐに分かった。

なんの痛みも伴わないであろう敵のそれと決死の大攻勢を同等に語ることは司令としては非常に心外だったが…

 

「…ですが、フォーリナーの被害も小さくは無い」

 

「君の口からそんな言葉が聞けるとはな」

 

単身で敵を壊滅させてなお敵戦力は無尽蔵と報告したはずの英雄が希望的観測を述べるのか。

否、この戦いは異質なのだ。

 

「既に奴らは初期投入戦力の8万隻を損失している。現在確認が取れているだけで撃破されたマザーシップの数は21.6万隻、時間稼ぎでしかないはずの火星包囲にも数十億のドローンとキャリアーを動員し、毎秒何万もの被害を出してまで挟撃を避けていた…奴らは間違いなく焦っている」

 

「どうしてそう思う?」

 

「前の侵攻は…いえ、たとえ10隻で攻めてきた場合があったとしてもそれは辺境惑星の威力偵察でしかなかった。もともと銀河を渡って侵略軍を送れるほどの文明、奴らは強大です。今回は単なる侵略ではなく奴らが本腰で、総力を上げて我々人類を潰しにかかっているのでしょう。…しかし、それにしても多い。一度目は母船をたった一隻撃沈されて撤退した相手が、損得勘定のある相手が…なぜここまでするのか?奴らには引けない理由がある」

 

わざわざ莫大なリソースを割いて火星包囲をする理由、どれほどの損失を出しても一心不乱に攻め上がる理由。奴らはどうしてこまでするのか。奴らはなぜ地球を狙うのか。

 

「…我々と同じだろう。終わらせに来ているのだ」

 

司令はMAP上の全方向から地球へと接近するマザーシップ船団を指でなぞり、その手を固く握りしめた。

奴らは絶対に引かない。引くことができない。

この地球を破壊し尽くすまで。

 

「我々はここにいる、途方もない可能性を超えて。そうだなストーム1」

 

「はい」

 

世界を廃墟へ変えたマザーシップとたった一人で戦い続け、ついに撃墜した英雄は力強く答える。

 

「それならば倒さなければならない。消えていった可能性のためにも」

 

「…ええ、終わらせましょう」

 

ストーム1は立て掛けてあった銃を取り、前回の戦いで死闘を繰り広げたマザーシップの写真を睨みつける。

彼は敵がもはや防ぎ止められるものでないことを察していた。

 

「今度は100隻落としますよ」

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

月軌道 防宙圏1

 

〈マーク51から107インターセプト!いずれも中破以上の損害を与えました!〉

 

〈57番が防御スクリーンを展開…!貫通!爆沈します〉

 

〈281から500番台がワープ体勢に入った!優先的に撃破せよ!〉

 

「本艦隊は機動戦に移行!離脱を試みる敵を撃破する!」

 

〈了解!ついていきます!〉

 

金剛改二のブリッジで戦闘指揮に追われる艦長。冥王星沖での迎撃戦で指揮を摂っていた彼は敵の策略を見抜けずここまでの侵攻を許してしまったことに負い目を感じ、冥王星UNCF艦隊を率いてすぐさま地球圏へとワープし敵を待ち構えていたのだった。

実際のところ彼らには失策も責任も存在せずただ結果があるのみであったが、侵略者が地球の目前に迫る中ではそのような思考に陥っても仕方のないことだ。

 

して、戦闘の方は磯風型を先鋒として次々と切り込みをかけるUNCF艦隊が押していた。反応魚雷と増幅光線砲を乱射しながら戦闘機のように突出する駆逐艦隊と後方から援護射撃を浴びせつつ前進を続ける巡洋艦隊、全武装を吐き出して要所を抑えに行く戦艦隊。マザーシップはこれらの放った光線や爆炎に絡め取られて尽く堕ちてゆき、防衛艦隊後方へのワープを目論んでいた者たちは一掃されるに至る。

UNCFの十八番とも言える戦法、艦隊まるごとを使った機動戦闘はズシリと構えたマザーシップ艦隊にはよく効いていた。

今も磯風型に気を取られていたマザーシップの横から村雨級が通り過ぎざまに増幅光線砲を放ち表面装甲を一直線に溶断、防御力が落ちたところに金剛型の艦首増幅光線砲が突き刺さり爆沈、という流れるような連携攻撃が炸裂。冥王星沖の戦闘とは大きく変わった戦場に敵はこちらをなかなか捉えきれないでいる。

 

「足を止めた戦闘は得策ではないとあそこで思い知らされたからな。学習はお前たちだけの特権ではない」

 

金剛改二は艦隊旗艦でありながら機動戦に参加し、ショックカノンの掃射で敵を次々と爆沈させ、ジェノサイド砲の照射にも波動防壁で持ちこたえている。その姿はさながらUNCF総旗艦を務めるヤマト級戦艦のようであったが、敵もそのような暴力に押されているばかりではなかった。

 

〈火星沖艦隊より緊急入電!全敵艦がワープ体勢に…こちらへ来るとのことです!〉

 

〈土星駐留部隊からも同じ趣旨の通信が!〉

 

〈木星方面隊からもです!〉

 

〈エンケラドゥス守備隊が追撃を試みていますが…〉

 

〈万規模のレッドカラーの編隊が接近中!〉

 

戦線単位の勝利は今まで幾度となくあった。

土星沖での散発的な戦闘はほぼ地球側の勝利、木星沖では連合軍の要塞戦艦グロアールが単騎で敵を押し返したこともあったし、TRT空戦隊の精鋭がわずか数機で敵艦隊を殲滅したこともあった。

だが、それらは大局に影響を与えることはなかった。

 

それらの勝利が数えることができる時点で駄目なのだ。

数え切れない戦線で防衛網を突破され前線を押し上げられ続けている状況、あらゆる場所から瞬時に敵の援軍が飛んでくるような状況ではもはや抗いようがない。

 

「新規の敵艦隊総数……現在交戦中の敵戦力の4.8倍です!」

 

敵の第一目標が敵艦の殲滅ではなく、単に地球に近づくことだというのがとくに酷いところだろう。こちらは相手を撃ち漏らしてはいけないのに、相手は…

 

〈緊急通信!敵艦、防宙圏2に到達!防宙圏1に展開している部隊は後退せよ!〉

 

「……」

 

「艦長…」

 

正直なところ、もうここで戦う意味はないのかもしれない。

敵の歩みを完全に止めることなどもう不可能であることは誰の目にも見えていることだ。

だが。

 

「我々はここで戦うぞ。防宙圏1で機動戦を続け、少しでも敵に被害を与える。ああそうとも、無駄なことだ。だが私は奴らが気に食わない。だから、戦い続ける」

 

「了解しました。実のところ…私も奴らが気に食わないのです」

 

 

冥王星UNCF艦隊、戦闘を継続中。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

月軌道 防宙圏2

 

「X-LAY隊、善戦しています!」

 

連合軍の軌道戦艦隊"レイフォース"、その中核に位置する巨大戦艦ハンニバルのブリッジでは紅い塗装の戦闘機が次々と敵を葬る様子が中継されていた。

ロックオンした相手は確実に墜とすと言わんばかりに放たれるレーザーの嵐。たった1機が数瞬の間にドローン編隊を壊滅させる姿は凄まじいものがあったが、それでも戦果は"善戦"に留まる。

 

もちろん戦艦隊も何もせず観戦をしているわけではなく、誘導レーザー砲を全力で掃射するマリウス級、撃ち尽くす勢いでミサイルをばら撒き続けるネルヴァ級、すべての搭載兵器を総力稼働させつつ対惑星兵器たる中性子砲のチャージを始める旗艦ハンニバルとそれぞれが精いっぱいの応戦を繰り広げていたがどういうわけか敵はすり抜けるように後方へ現れる。

それらはハンニバル級と艦隊後方の宇宙空母から発艦していた制宙戦闘機ロムルスと艦載迎撃機カトゥルスの編隊によって排除されたが、設置されてしまった残骸もといワープビーコンについてはもうどうしようもなかった。

 

〈ターゲット13撃破!〉

 

一度上方に撃ち上がってから敵に襲い掛かる誘導レーザー砲、それらを6本船体に受けてはじけ飛ぶマザーシップ。

至近でその様を見ていたX-LAYのパイロットは脱力する。

この艦隊の防衛圏はとっくのとうに抜かれ、もはや警報と変わりない全体通信でその不手際が晒されていた。

 

〈敵艦が防宙圏3に到達!防宙圏2はいまや意味を為さない!後退せよ!〉

 

酷いものだ。いくら質で圧倒しようにも対峙する敵が異質すぎた。意味を為さないとは我々の艦隊のことか、それともこの抵抗戦のことか。正解はどちらもだろう。

単騎で軌道防衛艦隊レベルの戦力を突破し敵中枢を叩くことを想定した超戦機、X-LAYという"一騎当千"は"1001"の、度を過ぎた数の前に為すすべもなかった。

これは別の"一騎当千"、少数生産型の兵器に共通する事項であり、殲滅型R戦闘機のスラッシュゼロ()、連邦軍の切り札シルバーガン(銀の銃)も大局での勝利は成し得ていない。点で面を制圧しえたはずのそれらはあまりにも圧倒的な数を、極めて広大で無尽蔵の面によって制圧する戦略とも言えぬようなそれに敗北を喫したのだ。

こんな争いに、馬鹿げた押し合いに意味などはありやしない。

 

そう嘆いてみて気を緩めた刹那、レッドカラードローンから放たれた高出力レーザーが機体を掠め、X-LAYの装甲を少なからず傷つけた。

 

〈!!〉

 

彼は一瞬の後に我に返って操縦桿を握り直し、すぐさま敵を残骸へと変える。

これは馬鹿らしい戦いで、意味のない押し合いだ。

 

それがどうした。

 

それが何だ。

 

自分たちは今戦っている。

敵に抗っている。

その事実こそが重要なのだ。

 

宇宙を切り裂く閃光とともに艦隊旗艦から放たれた中性子砲がマザーシップ艦隊におぞましいほどの被害を負わせたのを見届け、X-LAYは再び翔ぶ。

 

 

 

軌道艦隊レイフォース、戦闘を継続中。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

月軌道 防宙圏3

 

「ここを越えられたらもう後がない!俺たちがやるしかないんだ!」

 

肩に一角獣のモチーフを持ったMSがビームライフルを乱射する。──が、その実は乱射などではなくすべてが計算と照準の上に放たれた効力射、空になったEパックがライフルから排出された頃には数十機のドローンがまとめて爆散していた。

周囲の戦線も高練度のパイロットたちにより敵ドローン部隊のみならずマザーシップまでもがMSの攻撃で駆逐されている。

 

しかし状況は一向に好転しない。

防宙圏3で今なお奮戦するロンド・ベル隊の隊長たるアムロはついに弾切れを起こしたライフルを投げ捨ててサーベルを引き抜く。

 

〈ドローンにかまうな!輸送船(キャリアー)をやれ!〉

 

〈AE本社から次の増援が接近中!持ちこたえるぞ!〉

 

〈ハイパー・メガ・バズーカ・ランチャーは旗艦級を!〉

 

MSが扱うにしては強力すぎるメガ粒子の光が一条の道を作る。

その軌道上にあったマザーシップ2隻は爆沈まではせずとも激しい損傷を受け、破損した装甲版を撒き散らしながら後退し…

跳躍した。

 

〈ああ!ヤツらが後ろに!〉

 

〈バーミンガムが艦砲射撃を…2隻とも墜とした!〉

 

〈だが、来るぞ!奴らが飛んでくる!〉

 

これは、ダメだと。

アムロの中でニュータイプのカンがそう言った。

マゼラン改級のジェネレーターが唸り、メガ粒子の供給を受けたハイパー・メガ・バズーカ・ランチャーが再び吠えるが成果は上がらず。

この場では誰もが最善の努力をし、最高のパフォーマンスを見せている。人々の意思が、力が揃い連なったそれがはじき返されたとき、何と言って開き直ればよいのか。

 

アムロ自身もファンネルを含めた射撃兵装が弾切れを起こすまでにマザーシップを50隻以上撃沈しているが先というものが一切見えず、読めず、ただ流れに乗らざるをえなかった。

全MSがジェガンとその派生型及びガンダムタイプで構成され、万全のバックアップと膨大な火力を誇る艦隊がついてもこれだ。

 

「戦い方が…違いすぎる…」

 

追い縋ってきたレッドカラーを切り伏せながら補給コンテナを受け取り、数秒で全武装の補給を済ませたアムロの技量は敵には到底たどり着くことができないもの。

蒼いスタークジェガンを駆って爆炎の中に敵母船を沈めるユウ大佐も、オーキスユニットを纏って敵船を悉くうち滅ぼしていくコウ少佐も、その単体戦力としては敵を遥かに驚愕している。

それでも戦いは膠着し、じわじわと流れていく。

 

だが待ってほしい。

これはそもそも戦いにすらなっていないのではないのか。

敵はただ事務的にこの場をおさめ、自分たちは流し目で見られているだけに過ぎないのではないか。

敵は単なる軍隊ではなく、組織でも国家でもない侵略者という超法規の異質的存在だ。

それを相手にこちらの尺度で戦いが挑めるとは限らない。

だとすれば、それは。

 

「みんなの命が…」

 

それは悲しすぎる。

地球を守らんと立ち上がり闘った彼ら彼女らの魂が、意思があるならそれが少しでも報われるべきであり、逆に断末魔の叫びに意味がないというのならば意味を持たせてやらなければならないはずだ。

 

「お前たちにも教えてやる!この戦いは終わらせやしない!」

 

そのためにはここで銃を持ち続けなければならない。

抵抗を、続けなければならない。

 

残留思念を吸ったサイコフレームが淡い輝きを放つ中、アムロのνガンダムはスラスターを力強く噴射し戦線に消えていった。

 

 

 

EFSFロンド・ベル、戦闘を継続中。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

「やはり、抜かれたか」

 

月面都市大深度地下の指令室。

アナハイム代表がくしゃくしゃの顔で戦力図を眺め、虚ろな目でエースの戦いぶりを見やる。

歴戦の英雄は人格者でニュータイプで、この狂気の戦場の雑音を拾いすぎたがために疲れているようだった。疲れの見えないものなどどこにもいなかったのだが、彼は特に。

 

防宙圏1、2の艦隊もよく戦ってくれたが残念ながら。これはもうダメかもしれないと呟いてアナハイム代表は思考を放棄した。

 

「幸い、いくらでも戦力はある。出せるものは最後まで出させてもらうよ」

 

それが戦場の雑音を騒音に変えることになったとしても。

できることをやらないというのはそれはそれで癪に障ることなのだ。

ある意味では彼もまた、各防宙圏で戦い続ける者たちと志を同じくしていた。

 

 

フォーリナー、地球に肉薄。

 




艦隊級機動戦闘「沖田戦法」
艦隊ごと切り込みをかけ、死中に活路を見出す突撃戦法。
機動力のある艦隊による多角的な突撃攪乱は宇宙空間での3次元戦闘において有効な手段であり、とりわけ射撃戦に拘った相手を叩くには適している。
これは極めて強力な戦略級次元兵器──波動砲戦術に拘ったかの帝国を打倒した機動戦術にも酷似した戦法である。

少数生産機「一騎当千」
多くの小規模防衛組織が大規模組織に引けを取らない理由であり、その強さの中核ともなる超高性能機。シルバーガン、シルフィード、X-LAYなどが該当。
ほとんどの場合一機に重戦艦以上のポテンシャルを秘め、乗り手次第ではどんな状況でもあらゆる敵を屠り殲滅する力を持つ。
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