地球過剰防衛軍   作:APHE

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シルフィードつよい。
勢力個別の戦闘では細かい描写を入れていこうと思ってます。


遥かなる外来人ー散発的防衛戦

EDF本部

 

「厄介なことになった…!」

 

「正直、舐めていました」

 

EDF司令は神妙な面持ちで、ストームは渋い顔をして大型モニターに映し出された地球圏マップを見る。

 

そこには冥王星周辺から空間跳躍し太陽系中に散らばった大量の赤点が光っていた。

総じて地球に近づいているもののその場所は出鱈目で規則性はない。

防衛ラインの目前に飛んだかと思えば何もない暗礁地帯に飛ぶもの、まとまっていたりいなかったり数までバラバラ。

その目的は確実に…

 

「時間稼ぎか」

 

「そうでしょうね」

 

戦闘中…というよりこちらの艦隊が初撃を奴らに浴びせたあたりから、敵艦隊の潜在エネルギー反応がだんだん高まっていくのを観測していた。

それがジェノサイド砲を使い始めた時期と一致したために、単純に戦闘行動によるエネルギー反応の上昇だと考えていたがどうやら違ったらしい。

データを詳しく解析したところ、潜在エネルギー反応はジェノサイド砲を展開していないマザーシップから検出されたのだ。

逆にジェノサイド砲を展開し砲撃戦を行っていたマザーシップからはそれ以外の高エネルギー反応が無く潜在的なものは溜め込んでいなかった。

奴らはその最大火力(ジェノサイド砲)すらも囮として本命のワープを隠していた…

奴らが飛び去る寸前に成功させた戦略兵器の2連射だが、それをやる前に似たようなことを既にやられていたのだ。

 

「やられたな」

 

おそらく奴らは先鋒隊が艦載機部隊との戦いで全滅したことを受けて最初からこうするつもりで全戦力を投入したのだろう…いや、これが全戦力である保証はない。

むしろ奴らの特性のことを考えればこれさえも先鋒だと思ってもいいだろう。

 

「全防衛勢力に通達!奴らは短距離ワープを繰り返して地球へ飛ぶつもりだ!」

 

言わずもがな、奴らはワープ先で既に次のワープの準備をしているだろう。

一刻も早く、奴らをすべて仕留めなければ…

 

「奴らを一隻たりとも地球に近づけるな!繰り返す!一隻も、一隻たりとも地球に近づけるな!」

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

海王星沖 連合軍艦隊

 

「全艦戦闘配置!」

 

ゲーレス級高速戦艦とレスターク級突撃砲艦がズラリと等間隔に並んだ連合軍艦隊は宇宙に壁を形成し、ここから先へは行かせないという確固たる意志を見せた。

控えるブリッツ級巡洋艦とゼグノ・ジオ級重巡洋艦、レイランド級戦闘空母もその出番を今か今かと待ち構えていた。

そうして見えてきたマザーシップの赤い光に全艦のクルーが気を引き締め覚悟を決める。

艦隊旗艦のゲーレス級ブリッジからその様子を睨む艦長は全艦への通信を開き命令を叫んだ。

 

「艦砲、斉射用意!」

 

ゲーレス級のプラズマ主砲が光を纏う。

レスターク級の艦首に据えられたプロトン砲も青白い光を放つ。

相手の目論見がわかっていてわざわざ戦いを長引かせる事など意味がない。

一発で決める、それが作戦だった。

 

EDF本部から送られたデータから考えるとこれが一番合理的な答えで無駄な時間をかけていては地球方面に逃げられてしまう。

既にここより後方で戦闘が発生しているということはそういうことなのだろうがせめてここだけは通したくない。

防衛ラインを構築したこちら側の意地というものだ。

しかし砲をチャージし狙いを定めている間にも奴らは近づいてくる。

もはや時間を稼ぐ必要もないということか?

嫌な奴らめ…

 

「無理に引きつける必要はない、射程に入り次第斉射だ」

 

十分な数の敵が射程圏内に入るのを待つことなく、先頭のマザーシップが有効射程に足を踏み入れた瞬間に全火力を開放、敵の陣形を付き崩したところでブリッツとゲーレスで切り込み砲撃戦と航空戦で仕留める。

 

「敵艦、射程内まで距離100!」

 

艦長が後ろを見るとブリッジ後部の窓に映るバックアップの艦隊が見えた。

艦隊の防空を担うゼグノ・ジオ級重巡洋艦が各所への配置を終え、敵ドローンの発艦や追撃戦闘にも備えてレイランド級戦闘空母のカタパルトにはSA-77シルフィードが全機出撃準備を終えて待機している。

これで抜かりはないはずだ。

 

「80…70…60…」

 

「敵艦隊よりドローン発艦!」

 

「想定内だ!対空戦闘!」

 

と、ゼグノ・ジオ級重巡洋艦の船体のやや膨らんでいた部分が展開し収納されていた凶悪なまでの対空兵装が顕になっていく。

現れたのはおびただしい数の対空パルスレーザー砲塔。

 

「敵ドローン捕捉!」

 

本艦最大の特徴である格納式武装とその総数150基の対空パルスレーザー砲は連合軍艦隊の防空の要である。

もちろん戦艦や巡洋艦もただそこにいるわけではなく同じように見えた搭載された対空兵装でその砲火に加わりさらに濃密な防空網を張ってゆく。

そうして次々と放たれる対空レーザーはドローンを蜂の巣にして片っ端から破壊、艦隊周辺の制宙権は全く揺るがなかった。

 

「30…20…10…射程内です!」

 

「撃て!」

 

ドローンを墜としている間にも接近していた敵艦隊はついに射程内へと侵入、艦隊はその総火力を持って…

 

 

キュオオオオオ…!

 

ゴッ!

 

 

フォーリナー艦隊を吹き飛ばした。

 

プラズマの光に当てられたマザーシップはもれなく船体をえぐり取られて機能を停止し、プロトン砲を掠めた者は対消滅の光とともに宇宙に散っていく。

デブリの嵐と化した前衛に激しくぶつかったフォーリナー艦隊は隊列を大きく崩して散り散りになる。

これを待っていた。

 

「機動部隊突入!」

 

「全機発艦せよ!」

 

「突撃!」

 

崩れた隊列の隙間という隙間にブリッツ級巡洋艦とゲーレス級高速戦艦からなる突撃小隊が吶喊し戦闘は激しい機動戦へと移行する。

その合間を飛び交う白い光は連合軍のシンボルでもある主力汎用戦闘機、シルフィード。

 

〈堕ちろ!〉

 

ファランクスビームを撒き散らし、ドローンをハエのように叩き落としながら迫る純白の宇宙戦闘機。

普通の戦闘機然とした見た目ではあるが高速機動と多種のマニューバでマザーシップの対空砲火をひらりとかわし、機体下部に抱えた大型ビームキャノンで有効打を与えていく。

 

〈くそッ!〉

 

編隊を組んで突入をかけていたうちの1機にレーザーが直撃する。

シルフィードは高性能といえどもガウォークのような複雑な変形機構やフォースのような無敵の盾を持っている訳ではなくその回避行動にはやはり限界がある。

しかし…

 

〈バリア出力低下…まだ問題ない!〉

 

機体を守る6層のバリアと機体自体の堅牢性が簡単には撃墜させない。

連合軍の顔を張る性能は伊達ではないのだ。

 

〈SA隊104番より隊長機へ!右翼より突入し殲滅戦闘へ移ります!〉

 

〈了解!死ぬなよ!〉

 

砲撃戦から機動戦、機動戦から殲滅線へと移行した戦場にはシルフィードの白い光の煌めきと砲撃の閃光、爆沈する敵艦の断末魔が木霊していた。

戦闘が集結へと向かっている事を察した艦長は一息ついてディスプレイに映し出された周辺宙域の地図を見る。

そこには味方艦隊を示す青点が敵艦の赤点を圧倒するさまがあったが…

 

「………」

 

地図を縮小し広域に切り替えると赤点はこの防衛ラインより内側にも多数存在し全体から見ればこの戦場など小さなものだ。

艦長はやりきれない思いで地球の方向を見ていた。

 

「艦隊司令、残敵数12のところでワープを許してしまいました」

 

「木星方面へと向かった模様です」

 

「そうか…」

 

この戦闘にはほとんど勝ったようなものだ。

だが艦長は勝った気持ちなど一つも感じず、やるせない思いだけをつのらせていた。

 

「弩級艦グロアールならば…いや、そういう問題ではないか」

 

戦術で勝って、戦略で負けた。

今できることはせめてもの数減らしのみだ。

 

 

 

 

 

フォーリナー艦隊、太陽系に分散。

 

 




地球統合軍「連合軍」

世界統合によって出現した統合系組織。
他の統合系組織と比べても大規模で、主力汎用戦闘機シルフィードを中心に強力な宇宙戦力と大型の要塞艦多数を揃える。
略称名が同名の組織、U.N.SPASYとは無関係である。
便宜上連合軍と表記される。
本拠は巨大な宇宙ドックに構える。

統合系組織「地球圏の力」

地球連合、連邦などといった地球総力を統合した組織成立の由来もしくは形態を持った防衛勢力を指す分類。
一般的に数、技術、戦力を併せ持った非常に強力な組織である。
その多くは世界統合に伴ってかそれ以降に出現したと言われる。
複数国家勢力を統合したものであることが多いが、円滑な防衛のためすべてEDF傘下にある。

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