ありふれていたい異端者少女は世界最強?   作:綺音街 築紫

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(ありふれで百合ものを描きたくなったので純粋な百合としては)初投稿です


1話:始まりの日

 朝、それは6時から9時のことを指す言葉だそうだ。なので、今日彼女が起きた時刻である5時半は早朝に当たるらしい。

 

「早起きしすぎたなぁ」

 

 彼女はそう言って人の気配のしないリビングを見渡す。見える範囲は闇に染まっているため、明かりを確保するために部屋の照明のスイッチを探さなければならない。数年前にリモコン式に変えていた事に感謝しながら周りを探ると、枕元にリモコンがあった。スイッチを押すと部屋は一気に明るくなった。

 

「やばー、こんなに散らかってたっけ?」

 

 明るくなった室内はお世辞にも綺麗とは言い難い光景であった。6人がけの机の上にはパンやお菓子の空袋が大量にあり、一部は椅子や床に落ちていた。その先に見えるキッチンはまるで団体客が帰った後の飲食店のように大量の食器が洗われないまま、シンクに積み上がっていた。

 

「ふぁー、面倒くさ」

 

 そう言いながらも長い後ろ髪を出しっぱなしの炬燵の上にあるゴムで括り、洗い物を行うため、欠伸をしながらシンクに向かう。

 

「冷!」

 

 蛇口を持ち上げ、流した水は想像していた物よりも冷たかった為、思わず声が出てしまった。

 

「まあいっか。早く終わらさないと」

 

 そう言って積み上がっている食器をを丁寧に一枚一枚洗浄し、乾燥機にセットして行く。半分程洗い終えると乾燥機が一杯になってしまった。

 

「何で私これサボったかなぁ」

 

 そんな風に過去の自分へと愚痴を言いながら、彼女は乾燥機のタイマーを回した。乾燥が終了するまでに、散らかっているゴミを回収し、分別もせずにゴミ箱に全て詰め込んだ。

 

「後で姉貴にやってもらお。どうせ暇人だし」

 

 そう言いながら、洗面所に向かい、昨日から掛けっぱなしのタオルを洗濯かごに投げ入れて棚から新しいタオルを取り出すと顔を洗う。

そのまま、歯も磨いてからリビングに戻った。

 

チーン

 

 ちょうど乾燥機が止まった。この電子レンジみたいな音はやはり苦手だ。昔間違えて姉にめったくそに馬鹿にされた。

 

「んー!次の部ー」

 

 そんな独り言を言いながらまた洗い物をし始める。これが彼女の月曜日朝のルーティーン。土日分の洗い物を終わらせて、ゴミを捨てて、洗濯機を回して、そんないつもの繰り返しは彼女にとってとても退屈であった。

 

「じゃあ、いってきます」

 

 着替えをし、鞄を持つとまだほとんど真っ暗な家を出て、学校に向かう。昼ごはんは、いつも道中のコンビニで適当に買っている。

 彼女が居なくなっても、彼女の外出を知らせる言葉への返事はなかった。

 月曜日、それはきっと日本のほぼ全ての人が嫌いな日だ。そして、彼女にとっても同じだった。しかし、勉学が嫌いな訳でも、早起きが嫌な訳でも無い。理由として近いのはきっと、人間関係だ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「おはよー」

 

 そう言ってクラスのドアを開ける。誰もいない。当たり前だ。今はまだ学校が開いてから5分ほどしか立っていない。こんな時間に来るほど暇な人間はそうそういない。

 

「……寝よ」

 

 自分の席に着くと鞄を机の上に乗せて枕代わりにしながら眠りに落ちて行く。

これもまた、彼女の月曜日朝のルーティーンであった。この後自分を起こしてくれる友人が来るまで寝るのが彼女の習慣になったのはきっと彼のせいだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 ゆさ、ゆさと身体がやらされる感覚。

 そして、声が聞こえる。

 

「……きて、………きな……」

 

 少しずつ意識が浮上して行くにつれてどんどんとその声も近づいてくる。

 

「……きなさ…、はや……きなさ…!いつまで……つまりよ!………早く起きなさい!」

 

 まだ残る眠気とを振り払いながら起こしてくれた友人の方に視線を移した。

 

「いつもありがとね、雫ちゃん」

「別にいいわよこれくらい。でも、もう少し早く起きるようにはして欲しいわね」

 

 そう言いながらもいつも起こしてくれる雫には感謝しかない。それに、雫は他にも大変なことがあるし。

 

ガラガラガラ

 

 扉の開く音。時計を見ると時刻はもう始業手前。つまりは彼が来たのだろう。

 

「よぉ、キモオタ! また、徹夜でゲームか? どうせエロゲでもしてたんだろ?」

「うわっ、キモ~。エロゲで徹夜とかマジキモイじゃん~」

 

 一体何が面白いのかゲラゲラと笑い出す男子生徒達。

 彼らは毎日飽きもせずに雫を悩ませる件の人物に絡む人物の筆頭である。檜山大介、斎藤良樹、近藤礼一、中野信治、それが彼らの名前だ。

 そして、その件の人物、名を南雲ハジメと言う。彼はいわゆるオタクにあたる人物である。

 しかし、キモオタと言う言葉は似合わない。身だしなみはしっかりとしているし、言動は……悪くは無い。なので普通にそう言ったものが好きなだけと言うように感じる。

 ただ、オタクと言うのは世間の風当たりが強いのもまた事実。かと言ってここまで敵愾心を持たれているのかと言えば、

 

「南雲くん、おはよう! 今日もギリギリだね。もっと早く来ようよ」

 

 彼女の所為である。

 ニコニコと微笑みながら一人の女子生徒がハジメのもとに歩みよる。このクラス、いや、学校内でも数少ない南雲にフレンドリーに接する人間の1人であるその少女の名は白崎香織。二大女神として雫と共に男女問わず人気のある生徒である。

 何故そんな人物が南雲ハジメなんて不真面目だと思われていそうな人物に構っているのかと言えば、…きっと愛情なのだろう。

 何を隠そうこの白崎香織という存在は南雲ハジメが好きなのだ。

 

「南雲君。おはよう。毎日大変ね」

「香織、また彼の世話を焼いているのか? 全く、本当に香織は優しいな」

「全くだぜ、そんなやる気ないヤツにゃあ何を言っても無駄と思うけどなぁ」

 

そして、我らが八重樫雫とその幼馴染の天之河光輝と坂上龍太郎。光輝は正義感が強い子で、龍太郎は脳筋。

 

「おはよう、八重樫さん、天之河くん、坂上くん。はは、まぁ、自業自得とも言えるから仕方ないよ」

 

 雫達に挨拶を返し、苦笑いするハジメ。殺意剥き出しの視線がグサグサ刺さっている。可哀想に。

 

「おはよう、南雲。今日も災難だね」

「ああ、うん。おはよう、士元さん」

 

 あ、彼女の名前の紹介をしていませんでしたね。彼女は士元 恋金(しもとこがね)、普通の高校生です。

 ただ、彼女も彼女で一部にはすごく人気があるとかないとか。

 

「それが分かっているなら直すべきじゃないか? いつまでも香織の優しさに甘えるのはどうかと思うよ。香織だって君に構ってばかりはいられないんだから」

 

 まあ、彼の言い分は最もなのでしょう。ただ、前提条件が異なっているので変な風に聞こえるだけでしょう。南雲くんは香織さんに構って欲しく無さそうですけどね。

 

「いや~、あはは……」

 

 それ故に、南雲くんは笑ってやり過ごそうとする。が、今日も変わらず我らが白崎香織は無自覚に爆弾を落とす。

 

「? 光輝くん、なに言ってるの? 私は、私が南雲くんと話したいから話してるだけだよ?」

 

 ざわっと教室が騒がしくなる。男子達は呪い殺さんばかりにハジメを睨んでおり、檜山どもは何かの計画を立てている。何でこうなるのかな?

 

「え? ……ああ、ホント、香織は優しいよな」

 

 どうやら光輝の中では香織の発言はハジメに気を遣ったと解釈されたようである。彼は完璧超人と言って差し支えが内のだが、そのせいか少々自分の正しさを疑わなさ過ぎるという欠点がある。

 

「……ごめんなさいね? 二人共悪気はないのだけど……」

 

 この場で最も人間関係や各人の心情を把握している雫が、こっそり南雲くんに謝罪する。南雲くんはやはり「仕方ない」と肩を竦めて苦笑いするのであった。

 

 そうこうしている内に始業のチャイムが鳴り、教師が教室に入ってきた。教室の空気のおかしさには慣れてしまったのだろうか、何事もないように朝の連絡事項を伝える。そして、いつものように南雲くんが夢の世界に旅立ち当然のように授業が開始された。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 時は進み、昼休憩のころに南雲くんは意識が覚醒しだした。

 それを確認した恋金は席をたち、教室の隅の方に移動した。何故って?いつもは何処かに行っている南雲くんが教室にいるってことは彼女が話しかけに行くと言う事で、そうするとオマケもついてくるのですよ。そうなると面倒くさくなるのは目に見えるのです。

 

「あ」

「げっ!」

「おー、何が「げっ」なのかなぁ?」

 

 どうやら先客がいたようですね。彼女の名は門目 玖ノ(かどめ くの)。自称ですが、忍者の末裔だそうです。

 

「いや、だってお前正直めんど「あれ?逃げてきたの?だめじゃん、光輝君のストッパーその二としての役割果たさないと。」いや、あの」

「誰がそのニよ、誰が。アイツは人の話を聞かないのに」

 

 玖ノの話を遮って話しかけて来たのが紬 空(つむぎ そら)。恋金が高校から知り合った子で、話がよく合うのだそう。

 

「えー、それでも雫様のお友達?」

「そう言えば何で玖ノっちはいつも雫っちのこと雫様なんて呼ぶの?」

「それはその、なんというか剣道してるじゃないですか。そのなんか昔の良家のお嬢様みたいで良いなぁと」

「あー分かる」

「あそこ忍者屋敷みたいな感じだからそう呼んでるのかと思ってたのに違ったんだ」

「ちょっと、待って。それ詳しー何これ!」

 

 突然玖ノの足元に純白の光が。よく見ると魔法陣みたいな感じです。

 

「やば、逃げるよ、玖ノっち!恋金っち!」

「え?あ、はい!」

「ちょっと、まっ」

 

 私たちは駆け出しだが、幾人かパニックをなっている生徒もいる。未だ教室に残っていた愛子先生が皆に教室から出るように叫んだと同時に私たちは光の爆発にのみこまれた。

 数分後、光の消えた教室内には人の影は一つとしていなかった。内部には先程まで食べられていただろう弁当に、倒れた椅子、地面を転がるペットボトルや水筒と数分前までの人の存在を示す確かな痕跡が広がっている。

 この事件は後に白昼堂々として起こった集団神隠しとして有名になっていたのはまた別のお話。

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