ガンダムビルドダイバーズ:トライ   作:守次 奏

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初めてのフォース戦なので初投稿です。


Ep.12「銀翼を撃ち落とせ」

 事前に俺たちが打ち合わせていた作戦はこうだ。

 まずはマフユのG-エクリプティカと、チナツのアストレイ……「ガンダムアストレイシックザール」との間でデータリンクを行う。

 そして、G-エクリプティカが先行したところで敵の情報をチナツに伝達。チナツは狙撃ポジションについて、俺はマフユの後ろから追いかける形で遊撃につく。

 

 でも、「GHC」がどちらかというと個々の実力ではなく戦術的な面での勝利を常道としているフォースだということを考えると、どこまでそれが通用するかはわからない。

 ただそれでも、既に三対五というディスアドバンテージを背負っている以上、どうあれ最低でも開幕に一機は落としておきたいところだった。

 

 作戦通り、巡航形態に変形したマフユのG-エクリプティカがあえて突出して、位置を晒す。

 この森林地帯の中には十中八九トラップが仕込まれていると考えていい、と事前にチナツが言っていた通りに、俺もまた警戒を厳にする形で、森林地帯の巨大な木々に身を隠しつつ、マフユの後を追いかけていた。

 

『真正面から単機で来るか! チャーリーとデルタはそのまま警戒態勢を維持、俺とブラボーで飛んできたやつを叩く!』

『了解!』

「……っ、来る……!」

 

 森林地帯に身を隠していた、灰色と青のツートンカラーに塗り替えられ、105ダガーのビームライフルとシールドを持ったウィンダムが二機飛び出して、マフユのG-エクリプティカを追いかける。

 だが、そもそもの出力が違いすぎるのか、ジェットストライカーのエンジンを全開にしても、曲芸飛行じみたマフユのマニューバにはついていけなかったようだ。

 

「……妙だな」

 

 マフユにあのウィンダムの対処を任せても大丈夫そうではある。

 ただ、どうにも引っかかるというか、最初から数的優位に立っているはずの「GHC第百八十八特務分隊」が、突出してきたマフユに対して振り分けた戦力の数がたった二機、というのは違和感を拭えない。

 

 二対一なら、極論をいってしまえば何とかなる場面はあるかもしれない。

 だが、それが三対一になると可能性は極端に狭められる。

 だったら、マフユを確実に墜としたいなら、振り分けるべき戦力は二機じゃなくて三機じゃないとおかしいんじゃないのか?

 

 どうにも辻褄が合わない戦力比に違和感じみたものを抱えながら、歩行で慎重に、森林地帯を進んでいた時だった。

 何かが足に引っ掛かったような感覚と、微妙な抵抗のようなものを感じて一瞬、ストライク焔の足が止まる。

 

「畜生、トラップか!」

 

 ガラガラと音を立てて鳴子が響くと同時に、ストライク焔の足元に仕掛けてあった地雷が爆発。

 ぼんやりとしてたからこうなるんだ、と自分に強く言い聞かせながら、俺は不意を打たれないように周囲を警戒しながらビームピストルを構える。

 コーションが点灯、アラートの先に向けてビームピストルを放つが、しかし。

 

「これもトラップなのか!?」

 

 相手が射ってきたのかと思ったけど、起きたのは小規模な爆発でしかなかった。

 そんな俺を嘲笑うかのように、森林地帯に身を潜めていたのであろう、アナザートライアルソードストライカーを装備したウィンダムが、死角から対艦刀を構えて斬りかかってくる。

 

『アルファ、ブラボー、ビンゴだ! こっちのストライクは俺とデルタで片付ける!』

『アルファ了解! チャーリー、健闘を祈る!』

 

 ビームピストルの下部から発振したビーム刃で、対艦刀「シュベルトゲベール」の一撃を俺はなんとか食い止めていたが、その背後から再びアラートが点灯、相手の足元に小内刈りの要領で足を引っ掛けて転倒させると、無理やりスラスターを噴かしてその警告が示す射線から離脱した。

 本当にギリギリだったとしか言いようがない。

 俺が射線から離れた一瞬の内、赤いスパークを纏った白いビーム、SEED系に特有のそれが、木々を焼き払いながら通り過ぎていく。

 

「危ねえ……こいつら、もしかして」

『今頃気付いたところで遅い!』

 

 ──俺たちの位置を最初から把握していたのか。

 喉元まで出かかった言葉を遮るように、さっき転ばせていたアナザートライアルソードストライカー装備のウィンダムが、再び対艦刀を構えて斬りかかってくる。

 さっき俺の背後から撃ってきたやつは十中八九ランチャーストライカー装備だろう。

 

 マフユに三人戦力を差し向けなかったのは、多分この奇襲で俺を始末してからソード装備のウィンダムか、もしくはランチャー装備のウィンダムのどっちかが始末に行く算段だったのかもしれない。

 だとしたら、この状況をなんだかんだ無傷でクリアできたのは予想以上にアドバンテージが大きい。

 

 ここで作戦変更、俺はチナツのアストレイシックザールにデータリンクを送る。

 

「チナツ、今の見えたか!?」

「ランチャー装備の射線ね! しっかり見えてたわ!」

「サンキュー!」

 

 マフユをあえて突出させたのは、相手にスナイパーの類がいるかどうかの偵察も兼ねてのことだ。

 G-エクリプティカの機動性なら、並の狙撃を振り切ることは難しくはない……かはわからないけど、マフユならやれると信じての采配だった。

 ただ、要はスナイパーや砲撃型がいるかどうかを知りたかったのだから、それがいると判明した今、無理に最初の作戦にこだわる必要はない。

 

 俺はビームピストルを放り捨ててビームサーベルを引き抜いた。まずはこのソード装備から片付けて、数的不利を少しでも覆す!

 

『拳を使わず剣で勝負か……舐められたものだな!』

「そこまでバレてんのか……でも、舐めてるつもりは全くねえぜ!」

 

 どういうわけかは知らないけど、俺が次元覇王流拳法を得意としていることは相手にも筒抜けだったらしい。

 ただ、ビームサーベルでの斬り合いを選んだのはランチャー装備のウィンダムがいつ撃ってくるかもわからない都合と、あとは間合いを図る布石のためだ。

 舐めプのつもりは全くないとだけは言っておこう。

 

 対艦刀は一撃がデカい分取り回しづらいことを相手もよく知っていたのか、シュベルトゲベールを背部のウェポンラックにマウントすると、腰のビームサーベルを引き抜いて、じりじりとこっちの間合いを図るかのように距離を取る。

 

 どうする。先に仕掛けるか、後の先を取るか。

 ランチャー装備もいる以上、時間はそうかけていられない。

 一秒がどこまでも薄く引き延ばされていくような錯覚の中で、俺が選んだ選択は。

 

「はあああっ!」

『真正面から来るか! デルタ!』

「今だ、チナツ!」

「言われなくても!」

 

 俺自身を囮にすることで、ランチャー装備の視線を釘付けにする。これが俺の選択だった。

 砲撃型は足が遅めだと相場が決まっている以上、そう大胆な砲撃ポイントの変更はできない。

 今頃チナツは拡大したマップの中から、ランチャー装備のウィンダムがどこから撃ってくるかを予測している頃合いだろう。

 

 俺は墜とされるかもしれない。

 ビームサーベル同士をぶつけて鍔迫り合いを繰り広げながら、冷や汗がこめかみを伝うのを感じる。

 ただ、そうなったらそうなったでチナツがマフユの援護に行ってくれるだろう。そう腹を括って、俺はエールストライカーのスラスターを全開にした。

 

 ──刹那、閃光が走る。

 俺を狙った超高インパルス砲「アグニ」による一撃が瞬いたかと思えば、それを貫くように、一条の閃光が走り、ランチャー装備のウィンダムが潜伏していたと思しきポイントで大爆発が起こった。

 

 こっちもエールストライカーを失う結果になったけど、戦局全体で見ればイーブンどころか収支はプラスだ。

 

『デルタ!? 応答しろ、デルタ!』

「隙だらけだぜ!」

 

 ソード装備のウィンダムの土手っ腹に正面から蹴りを叩き込むと、俺はビームサーベルを両手に構えて跳躍、体勢を崩して後ろにすっ転んだウィンダムのコックピットにサーベルを突き立てた。

 

『こちらチャーリー、してやられた……! あとは頼んだぞ!』

 

 これで条件は三対三。互角のラインまで持ってこれたってことだ。

 ただし、エールストライカーを失った以上、俺は飛ぶことができない。

 レーダーを見る限り、マフユはまだ何とか二機のウィンダムを相手に持ち堪えているようだったが、そろそろ限界が来てもおかしくはないだろう。

 

「マフユ、大丈夫か!?」

「ごめんなさい……ちょっと、ううん、とっても、きつい……!」

「わかった! チナツ、マフユの応援に向かってくれ!」

「了解したわ! アンタは!?」

「俺は残りの一機を叩く!」

 

 どこに潜んでいるかはわからねーけど、こっちの動きが筒抜けだった以上、アイザックのような偵察型が相手の中にいることは確実だろう。

 仕掛けたやつらを倒したとはいえ、トラップだらけの森を抜けてそいつを探すのはなかなか骨が折れそうだったけど、その時。

 

「……データリンクを、ユウヤ君……!」

「マフユ!」

「……あと一機が潜んでいるところ、見つけたから、その……!」

「ああ、任されたぜ!」

 

 マフユのG-エクリプティカから送られてきたデータには、敵の偵察型が潜んでいるであろうポイントがきっちり記されていた。

 トラップの配置についても大まかなあたりをつけてくれていて、ウィンダム二機を相手にしながらもこれだけのデカい情報を持ってきてくれたことに、俺は感謝する。

 

 だったらあとは隠れ潜んでいる偵察型を徹底的にぶっ叩くだけの話だ。

 トラップが配置されているルートを避けつつ、全力で機体を指定のポイントまで疾走。

 そのまま俺は、一気に森の中を駆け抜けていく。

 

「待ってやがれよ、偵察型ぁ!」

 

 出くわした時は、全力で拳を叩き込んでやる。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 戦いの趨勢は戦力の二割を失った時点で決まるとか決まらないとかそんな話だったけど、メインアタッカーであるランチャー装備のウィンダムとソード装備のウィンダムがやられたことで、「GHC第百八十八特務分隊」の戦力は大きく削がれていたといってもいい。

 トラップを迂回し、踏み越えられそうなのは無理やり踏み越える形で、偵察型が潜伏していたポイントまでたどり着いた俺は、そいつが持っていたビームカービンを回避しつつ、順当にクロスレンジまで距離を詰めていた。

 

『チャーリーとデルタはロスト、ブラボーもロスト、アルファは囲まれた……くっ!』

「さてどうするよ、特務分隊!」

『我々とて末端とはいえ「GHC」の誇りがある! このままパーフェクト負けをするわけにはいかんのだ!』

 

 背中に負っていた巨大なレドームを切り離すと、ビームカービン装備のウィンダムは左手でビームサーベルを引き抜いて、カービンを連射しながら俺に接近してくる。

 レーダーを見る限り、チナツとマフユはうまいこと連携をとってくれているようだ。

 なら、俺は存分に、こいつの相手に集中できるということだ。

 

 振り抜かれたビームサーベルを回避、クロスレンジで前につんのめって体勢を大きく崩したウィンダムに、膝蹴りを叩き込む。

 

『ぐあ……っ!』

「悪いがこのまま決めさせてもらうぜ……!」

『そうは……行くか!』

 

 膝蹴りを受けたウィンダムは、最後の足掻きだとばかりにバルカン砲を連射するが、その程度の攻撃であればフェイズシフト装甲で受け止められる。

 

「次元覇王流! 蒼天紅蓮拳ッ!」

『うわあああっ! 提督、申し訳ございません!』

 

 強烈なアッパーカットをコックピットに叩き込めば、そのままの勢いでカービン装備のウィンダムは爆散した。

 だけど、まだバトルが終わったという通知は届いていない。

 上空を見上げれば、最後の一人になっても尚粘っているジェットストライカー装備のウィンダムがマフユの射撃に翻弄されながらも、何とかチナツのアストレイシックザールを倒せないものかと足掻いている様子がモニターに映る。

 

 いいね。最後まで諦めないってのは好感が持てる。

 だけど、それはそれとしてもう状況はチェックメイトだ。

 

「はあああっ!」

 

 デスティニーのウィングから光の翼を展開し、対艦刀を構えたマフユのアストレイシックザールが、ウィンダムの胴体を横薙ぎに斬り裂く。

 

「これで……っ!」

 

 万が一がないよう、ダブルタップの要領でマフユのG-エクリプティカが、切り飛ばされた上半身、ウィンダムのコックピットがある部分に正確な射撃を叩き込む。

 

【Battle Ended!】

【Winner:トライダイバーズ】

 

 そして、勝利を告げる機械音声のアナウンスが俺たちのコックピットに飛び込んできたことで、初めてのフォース戦は、見事、勝利で飾られたのだ。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「いやはや……見事な戦いぶりだったよ、『トライダイバーズ』」

「いえ、こっちこそ事前に情報調べられてるなんて思いもしませんでしたよ」

「気を悪くしたのならすまない。ただ、情報戦というのは戦術の基本でね。敵を知り、己を知れば百戦危うからず……ということだ。今回は生憎、負けてしまったがね」

 

 バトルが終わったあと、アトミラールさんが観戦していた丘に機体を着地させた俺たちは、少しだけ残念そうに、それでもどこか晴々とした様子のアトミラールさんと握手を交わしていた。

 

「これではロンメルに笑われてしまうな」

「ロンメル?」

「ああ、僕の友人のような……まあ、腐れ縁がある相手だ。もっとも、君たちには『第七機甲師団』の隊長と言った方がわかりやすいかな?」

「ロンメルって、あのロンメル……アトミラールさん、顔が広いんですね!」

「はは、そうでもないさ、チナツ君。君の狙撃も見事なものだったよ」

「パパから教わりましたから!」

 

 そういえばチナツの親父さんは現役時代スナイパーとしての役割も担ってたとか、前に聞いた気がするな。

 食い気味にアトミラールさんに言葉を投げかけているチナツに対して、マフユはようやく一息つけたとばかりに、ほっと胸を撫で下ろしていた。

 

「マフユ、大丈夫か?」

「うん……ありがとう、ユウヤ君……私、ちゃんと役に立ててたかな……?」

「ああ、ばっちりだったぜ! マフユがいなきゃ、トラップだらけのとこで偵察型を探さなきゃいけなかったからな!」

「……そっか……うん、役に立てたなら、よかった……」

 

 眦に浮かんだ涙を拭いながら、マフユは控えめにはにかんだ。

 役に立つとか立たないとか、気にするようなことでもないとは思うんだけど、マフユにも何か踏み込まれたくないような、思うところはあるのだろう。

 

「さて……君たち『トライダイバーズ』は見事な戦いぶりを見せてくれたわけだが、よければ我々『GHC』とアライアンスを組まないかい?」

 

 少しだけ気まずそうに小さく咳払いをすると、アトミラールさんはそんな提案を持ちかけてくる。

 超巨大フォースの一員になる。それも悪くないような気がしたのは、やっぱりアトミラールさんのような人に認められた嬉しさからなのだろう。でも。

 

「すみません、気持ちはありがたいんですけど、それはお断りします」

「ほう、どうしてだね?」

「俺は……俺たちは、自分の足で行けるとこまで行ってみたいんです」

 

 マフユもチナツも、口には出さなかったとはいえ、同じことを思っていたのか、静かに頷いてくれた。

 別にどこかに所属するのが悪いわけじゃないのはわかっている。それでも、俺たちは俺たちとして、前に進んで……強くなりたいってだけで。

 

「そうか……振られてしまったな。だが、君たちの成長は楽しみにしているよ、心の底からね」

 

 ──では、機会があればまたどこかで会おう。

 アトミラールさんはそう言い残すと、マントを翻し、踵を返して去っていった。

 

「随分壮大な啖呵切ったじゃない、ユウヤ」

「お前も反対しなかったろ?」

「まあね。マフユはこれでよかったの?」

「はい……私、ユウヤ君と一緒に、遊びたいだけだから……えっと、チナツさんとも……」

「そっか、何はともあれ……」

『お疲れ様!』

 

 初めてのフォース戦を勝利で飾ることができたお祝いの代わりに、俺たちは手を重ね、声を揃えてそう言った。

 誰か一人欠けていたら成し遂げられなかった勝利。皆で掴み取った勝利。それもまた、師匠が言っていた「想像を超えた」、GBNの、ガンプラバトルの楽しさなのかもしれないな。




皆で掴んだこの勝利
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