ガンダムビルドダイバーズ:トライ   作:守次 奏

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サイコ初投稿です。


Ep.29「集う豪傑たち」

『ははははは! バトルフィールドが宇宙だったのはツイている! そして貴様はここで終わる! この「ロゼ・ジオング」の前になぁ!』

「何をごちゃごちゃとそんなこと!」

 

 メガ粒子杯、予選第二回戦。

 俺が今度放り出された戦場は、遮蔽物のない月面だった。宇宙戦はよく考えたら慣れてないってのに、一回戦の水中に続いて運が悪い。

 だけどそれ以上に、対峙している相手が化物だ。

 

 ロゼ・ジオングとかいう、紫色に塗装されたネオ・ジオングのハルユニットに、ローゼン・ズールが収まっている機体はその六本腕からビームの束を放出して、ストライク焔を焼き払おうとしている。

 ただ、その狙いは正確じゃない。

 それもそのはずだ。そもそもビームライフル一丁で狙いをつけること自体が難しいってのに、それが六かけることの五で三十の銃口から放たれるビームを正確に制御できるやつがいるなら、そいつはもうニュータイプとかそういう領域にいるやつだ。

 

 それでもあのロゼ・ジオングは勝ちを確信しているかのように高笑いを上げている。

 つまり、奥の手を隠しているってことだろう。

 マフユの家で見たアニメ版で、ユニコーンガンダムがあの六本腕に拘束されていたことを思い出し、俺はなるべく距離を取ることを意識しつつ、ビームピストルで狙いをつけた、その時だった。

 

『今武装を構えたな!? なら貴様はこれで終わりだ! サイコ・シャァァァァド!!!』

 

 やけにテンションの高い声で相手のダイバーが叫ぶ。

 サイコシャード。確か、それは。

 考えに答えが追いつく暇もなく、構えていたビームピストルが、エールストライカーにマウントしていたビームサーベルが、そして、両手に装備されているパルマ・フィオキーナが爆発する。

 

「サイコ・シャード……武器を破壊する!」

『ご名答だ! その機体……拳法を使うのに、デスティニーの腕を使っていたのが運の尽きだったなぁ!』

 

 確かに相手のダイバーが言った通り、ストライク焔の両腕はデスティニーガンダムのものを流用している。

 その都合で、武装判定を受けたパルマ・フィオキーナが爆発したのだろう。

 これで両手首を使う技は使えない。

 

 それを見て勝ちを確信したかのように、サイコ・シャードを展開しているロゼ・ジオングは、その巨体と質量でこっちを押し潰そうと接近してくる。

 アニメでは猛威を振るっていたサイコ・シャードといえども、GBNでは万能じゃない。

 作り込みが甘ければ、全ての「武装」を破壊するその効果は、敵だけじゃなくて味方にも適応される諸刃の剣だ。

 

 だからこそ、遠距離からインコムやバズーカで攻めるんじゃなく、サイコ・シャードの副作用を警戒した相手のロゼ・ジオングは巨体を活かしたパワーによる格闘戦を挑みかかってきたのだろう。

 だけどな。

 

「なるほどな……両手を落とされたのは確かに痛いかもしれねえ……」

『そうだろう? だが私は無慈悲だ! ここでお前の快進撃も終わりにしてやろう、「トライダイバーズ」のユウヤ!』

 

 なんだ、俺……というか俺たちのこと覚えてたのかこいつ。

 本当にアトミラールさんと「GHC」はこのGBNでデカい影響を持っているらしい。

 無慈悲だと宣言した通り、容赦なく六本腕がストライク焔をひっ掴もうと振り回されるけど、その速度はともかく、巨体に引っ張られてか、相手の腕は正確なコントロールができていなかった。

 

『何故だ! 何故捕まらない!?』

「動きが大雑把すぎるんだよ! 次元覇王流……」

『ははははは! 悪あがきを! その拳では拳法は使えんぞ!』

「聖槍蹴りぃぃぃッ!」

『足技ァァァァッ!? 忘れていた、この私が、ミケランジェロ・パウザーがァァァァ!!!』

 

 手は出せなくても足は出せる。

 六本腕の隙間を掻い潜って、スラスターの全推力を乗せた蹴りが、ハルユニットの中心に収まっていたローゼン・ズールのコックピットを、そのユニットごと蹴り砕く。

 拳法家の拳を封じる。そういう意味じゃ、ミケランジェロさんとかいう相手の視点は悪くなかったのかもしれない。

 

 だけど、次元覇王流には足技もあることを忘れていたのは大失態だったな。

 

【Battle Ended!】

【Winner:ユウヤ】

 

 何はともあれ、これで第二回戦は無事突破。本戦までの折り返し地点に到達したってところか。

 ミケランジェロ・パウザーさんも決して弱い相手じゃなかった。

 だけど、強すぎる武装を過信して、それだけにこだわっていたんじゃ相手に読まれやすくなるし、何より動きが単調になってしまう。

 

「そういう意味じゃ、俺も気をつけねーとな……」

 

 次元覇王流に頼みを置いている俺のストライク焔は、ミケランジェロさんがやっていたように他のダイバーたちには研究され尽くしていると思っていい。

 だからこそ、技の選択が単調にならないように、動きがパターン化しないように心がけているつもりだ。

 それでも、読んでくるやつは徹底的にこっちの動きを読んでくるだろう。

 

(──このリンファが次元覇王流を完膚なきまでに叩きのめすわ、ユウヤ)

 

 劉凜風。あのハードコアディメンション・ヴァルガで俺と次元覇王流に宣戦布告を叩きつけてきた、自分流にアレンジした八極拳使い。

 あいつもこのメガ粒子杯に出ると言っていた以上、そして、ヴァルガで並いるマスダイバーを容易く蹴散らしていたその腕前を考えれば、本戦に出てくることは容易に想像できる。

 俺個人ならともかく、次元覇王流の看板を背負っている以上、絶対に負けられない戦いだ。

 

 一足先に試合を終えてセントラル・ロビーに帰還すれば、噂をすればなんとやら。

 ライブモニターには、そのリンファとズィーロンワンの試合が映し出されていた。

 

『破ッ!』

『八極拳か! 破壊力は拳法の中でも随一……だが、射程が致命的に短い!』

 

 リンファが戦っていたのは、遮蔽物が比較的少ない荒野だった。

 ズィーロンワンが放った発勁をホバー移動で回避した相手のガンダムレオパルドデストロイは、近づかせないとばかりにツインビームシリンダーと胸部のガトリングを展開して、ズィーロンワンへと浴びせかけていた。

 圧倒的な弾幕だ。

 そして、レオパルドデストロイのダイバーが言っていたように、八極拳はクロスレンジでの破壊力こそ次元覇王流に勝るとも劣らないけど、その射程は極端なまでに短い。

 

 だからこそ、制限時間十五分の間に撃破こそできなくても、徹底的に引き撃ちをすることでダメージを蓄積させて、判定勝ちを狙うレオパルドデストロイの戦術は極めて有効だ。

 こうなれば、不利を覆すのはなかなか難しい。

 

『アナタ、つまらない戦いをするのね!』

『つまらなかろうがなんだろうが結構だ! 俺は戦いたいんじゃない……勝ちたいんだよ!』

『いいじゃない! 戦い方は気に入らないけど、その志はこのリンファも同じ! リンファは勝つためにここにいる!』

 

 腰にマウントしていた青龍刀を引き抜くと、リンファはビームと実弾が綯い交ぜになった弾幕を斬り裂くという荒技を披露した。

 だけど、相対距離は開くばかりで詰められていない。

 ここからどう巻き返すのかと、俺が首を傾げたことがわかっていたかのようにリンファは口元に獰猛な笑みを浮かべると、恐らくフィン・ファングの代わりに装備されている四つの増加ブースターに点火。

 凄まじい速度で、弾幕砲火の中に突っ込んでいく。

 

『正気か、貴様!?』

『是! 虎穴に入らずんば虎子を得ず! このリンファ……リスクを恐れる闘士じゃないわ!』

 

 そうは言っていながらも、リンファのズィーロンワンは滑るような軌道でレオパルドデストロイの弾幕砲火をことごとく回避し、直撃コースの弾だけを青龍刀で斬り裂きながら、トランザムもなしにその懐へと飛び込んでいた。

 

『嘘だろ……!』

『不是! 全部が全部現実よ! 破ぁッ!』

『うおおおっ!? やられる、俺のレオパルドデストロイが──!?』

『このリンファに四龍吼を使わせたのは褒めてあげるわ、だけど勝つのはリンファと中国武術! 本戦でもそれは同じことよ!』

『ち、畜生おおおおっ!』

 

 圧倒的な弾幕に対してどう戦うのか。その問いに対してリンファが出した答えはシンプルなものだった。

 四龍吼というらしい増加ブースターでの加速力で振り切って、直撃コースの弾だけを斬り払う。

 いうだけなら簡単なことかもしれないけど、実際にやるとなれば難しいどころの騒ぎじゃない。

 

「あいつ……口はともかく腕は一級品どころじゃねえ……!」

 

 自分に絶対の自信を持っているからこそ引き出される強さ。武道家としてのプライドと、それを支える確かな実力が、あいつを、リンファを一流たらしめているのだろう。

 口は悪いけど、認めざるを得ない。あいつは間違いなく強敵だ。

 リンファの試合が終わったことで、ライブモニターが次の試合を映し出す。

 

『はあっ!』

『ホッ、拳法使い……いや、空手か!? メガ粒子杯は武道会じゃねーっての……!』

 

 そこに映っていたのは、第一試合で一瞬だけ見た、トライバーニングガンダムのカスタムモデルだった。

 師匠の、父さんのそれが燃えるような赤を基調としているなら、あのリバースブリザードガンダムはその対となるように青と黒を中心としたカラーリングでまとめられ、クリアパーツも塗り潰されている。

 まるで氷を思わせるようなその機体は、空手をベースにしたような動きで、対峙していたガンダムデルタカイに肉薄していた。

 

『チッ……厄介だぜ、ここはナイトロシステムを使う!』

『ふん……そんなものを使ったところで、勝てないものは勝てない、単純なことだ』

『ホッ! 言ってくれるじゃねーの……なら教えてやるぜ! このズイウン・スバル様とガンダムデルタカイの恐ろしさってやつをなあ!』

 

 ナイトロシステムというらしい、恐らくはブーストアップギミックを使ったガンダムデルタカイのツインアイが真紅に染まり、その関節からは青い炎が噴き出す。

 だけど、あのリバースブリザードガンダムはそれにも動じることなく、名前のように氷のような冷たさを保ったまま、デルタカイとの間合いを図り続けていた。

 

『ホハハハハ! メガ粒子の塊に焼かれる気分はどうだぁ!?』

『くっ……!』

 

 デルタカイのシールドに装備されていたハイメガキャノンが火を噴いて、リバースブリザードガンダムを呑み込もうとする。

 流石にハイメガキャノンの直撃だけは避けたかったのか、空中に逃れて一旦仕切り直しを図るも、デルタカイとの距離はさっきよりも開いてしまっていた。

 

『なあ格闘家ぁ! ここは武道会じゃなくてGBNだ、まさか卑怯なんて言わねえよなあ?』

『さっきからベラベラとよく喋る……!』

『ホッ……?』

『うるせえんだよ、それに……こっちに遠距離攻撃がないとは一言も言ってねえ……! 雪花氷獄鳥!』

『ホアアアア!?』

 

 リバースブリザードガンダムの両手から強烈な冷気が放出されたかと思えば、それは氷の鳥を形作って、デルタカイを飲み込まんと力強く羽ばたいていく。

 素っ頓狂な声を上げていながらも、迎撃としてロング・メガ・バスターと、ハイメガキャノンの一斉射撃を選んでいたのは、ズイウンとかいうやつも中々クレバーなのかもしれない。

 だけど、その先の想像力が足りていなかった。

 

 雪花氷獄鳥自体はナイトロシステムが上乗せされたビームでなんとか迎撃できていたものの、その間にフリーになった本体が、リバースブリザードガンダムが急速に距離を詰めて、デルタカイのコックピットに強烈な貫手を放つ。

 

『ホハハハハ……この俺が? ズイウン・スバル様が負ける? ホヘッ……こんなの夢だ、あり得ねえ!』

『目ぇ開けて寝ぼけたこと言ってんな……これが現実だ』

『ホアアアア!!!』

 

 なんとも気が抜ける断末魔を上げて、ズイウン・スバルとデルタカイは爆発四散した。

 そうして炎の華を背後に、リバースブリザードガンダムを操っていたダイバーは、撃墜した相手に一瞥をくれることもなく、セントラル・ロビーへの帰還を選択する。

 

 なんてやつだ。リンファに勝るとも劣らないその拳、そして父さんのトライバーニングをカスタムしたあの機体。

 例えレプリカだとしても血が滾り、拳が熱くなる。

 これがメガ粒子杯。これが上級者への登竜門。豪傑たちの出現に、俺の心はかつてないほどときめいていた。

 

 そして、息つく間もなく次に映し出された試合は、チナツのものだった。

 密林という遮蔽物だらけの地形で、アストレイシックザールの武器である機動力は残念ながら活かせそうにない。

 そんな状況下でも怯むことなく、あくまでも冷静にチナツは敵との距離を測っているようだった。

 

『これだけ警戒してるのに、反応がない……ミラージュコロイドディテクターにも反応なし。一体どこに隠れてるのかしら』

 

 トラップも警戒しながら、チナツは左のウェポンラックに接続されているロングビームライフルをいつでも撃てるように構えて、密林を掻き分けて進んでいく。

 ──だけど。

 何かに引っ掛かったかのように、一瞬アストレイシックザールの足が止まる。

 

 そして、ガラガラと派手な音を立てて鳴子が響くと同時に、シックザールの足元で小規模な爆発が発生していた。

 

『環境を制する者は戦場を制する……!』

 

 そして、爆発を目眩しに、今までどこに潜んでいたのか、突如として現れたジム・スパルタンとブラックライダーをミキシングしたと思しきガンプラが、ヒートナイフを構えてチナツの、アストレイシックザールの首筋を狙っていた。

 

『っ! 危ないわね!』

 

 すんでのところでビームシールドを展開することに成功していたチナツはロングビームライフルをウェポンラックから切り離して、肘に接続されていたフラッシュエッジ2をビームサーベルモードで展開、ジム・スパルタンに返す刀で斬りかかる。

 だけど、それすら読んでいたのか、相手は最低限の動きでそれを回避すると、右手に装着されていたグレネードランチャーから、煙幕弾を放ってチナツの視界を奪う。

 

『煙幕!? 小癪なことを……!』

『環境を、バトルフィールドを最大限に利用して、一体化した者こそがガンプラバトルを制する……パウパド老師の教えだ。この「ジム・スパルタンB」、そう簡単に倒せると見くびるなよ』

 

 煙幕の向こう側からブルパップ・マシンガンをぶちまけながら、ジム・スパルタンBを操るダイバーはチナツを撃破しようと、今度は右腰のマウントラッチに搭載されていたファイア・ナッツを投擲した。

 まずい。チナツのアストレイじゃ、発泡金属装甲じゃ、まともに食らえば致命傷だ。

 

『きゃああああっ!』

『怯えろ、竦め……ガンプラの性能を活かせぬまま、敗退して──』

『あー、もう、クッソムカつくわね!』

『何ッ……!?』

 

 ビームシールドに身を包むことでファイア・ナッツの炸裂から機体を守っていたらしいチナツが怒りの咆哮を上げると同時に、デスティニーのウイングユニットから、ヴォアチュール・リュミエールが煙幕を吹き飛ばす勢いで放出される。

 

『環境だかなんだか知らないけど、勝利の道はアタシが作る! アタシの力で……一番を勝ち取ってみせるんだから!』

『ヴォアチュール・リュミエールで煙幕を吹き飛ばして……! ならば!』

『させるかぁッ!』

 

 大分チナツはお怒りのようだった。

 次の一手を繰り出そうとしたジム・スパルタンBの左手をビームサーベルモードのフラッシュエッジ2で斬り裂くと、信じられないとばかりに相手が顔を歪めたその隙を見逃さずに、パルマ・フィオキーナをコックピットへと叩き込んだ。

 

『環境は絶え間なく変わるもの……変化についていけなかった、私の負け、か』

『違うわね! 環境は作るのよ! このアタシが飾るウイニングロードは! つまり、アタシ自身が環境なのよ!』

『それは……大きく出たな……』

 

 地球が自分を中心に回っているかのような言い草で、爆散していく相手にそう叫ぶと、チナツは不機嫌そうに唇を尖らせて、胸を支えるように腕を組む。

 

 なんつー理屈だ。

 滅茶苦茶で、はちゃめちゃで、自信過剰で。だけど、それも含めてチナツらしい。

 間違いなく猛者としての逆転劇を見せたチナツもまた、ふん、と小さく鼻を鳴らしてセントラル・ロビーへと解けていく。

 

 絶え間なく試合は切り替わり、さっきまで存在を忘れてたけど実況席のミスターMSもここからが本番だとばかりにMCのテンションを上げる。

 役者は揃いつつある、ってことか。

 俺はモニターに映し出された、クロスボーンガンダムのカスタムモデルがバレルが二つある狙撃銃で敵を一撃で射抜くのを横目に、ぱしん、と拳を掌に打ち付けて、気合を入れ直した。




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