インターバルが明けてのメガ粒子杯バトルカイ、決勝戦。ここまでやれるだけのことはやってきたつもりだ。
リンファの戦い方を俺なりに分析して、ストライク焔の微調整をして、チナツとの組み手で拳法家との間合いを体に覚えさせて。
そして、俺自身が。
決勝の舞台に上がってきたリンファを一瞥し、俺はきつく拳を固める。
優雅にストロベリーブロンドの髪を掻き上げる仕草は、相も変わらず余裕綽々って感じだ。
だけど、あいつもあいつなりに気合を入れてきたのだろう。いつも着ている服じゃなくて、チャイナドレスに身を包んでいる。
「やっぱり決勝で会うことになったわね、ユウヤ」
「ああ……けどな、負けるつもりはないぜ」
「それはこちらも同じことよ。前にも言ったけど、勝つのはこのリンファと中国拳法。背負った歴史がアナタを倒す」
「背負ってきたものの重さなら、俺だって負けるつもりはねえ……次元覇王流だけじゃない、ここまで俺を連れてきてくれた全てに誓ってお前を倒す!」
俺をガンプラバトルの道に連れてきてくれた師匠と母さんが、GBNを歩んだマフユとの日々が、トワさんが教えてくれた愛が、タイガーウルフさんやキョウヤさん、キョウスケさんが教えてくれた「高み」が、コドウとの激闘が、カールの思いが、そして、チナツの悔し涙が。
俺をここまで鍛え上げてくれた。ここまで連れてきてくれた。
まだまだ俺は未熟かもしれないけど、背負ってきたものから逃げ出すような真似はしない。
「これ以上言葉で語るのは無粋ね、拳で決着をつけましょ、ユウヤ!」
「ああ、リンファ!」
そのために負けられないというのなら、そこに言葉はいらない。
あとは俺とリンファのプライドをかけて、そしてその誇りを乗せたガンプラで、最後まで戦い抜くだけのことだ。
『両選手とも気合十分! 泣いても笑っても最後のメガ粒子杯決勝戦、今ここに幕を開けまっせ!』
【Gunpla Battle SET READY……】
【Battle Start!】
ミスターMSのシャウトと同時にシステムが起動、ガンプラバトルの開始を告げる。
『行くわよズィーロンワン! 四龍吼、起動!』
「最初から全力で来るってんならこっちもそれで応えるだけだ! 行くぜ、ストライク焔! バーニングバーストシステムだ!」
先手を取ろうと背面の増加ブースターに点火したズィーロンワンが懐に飛び込んでくるのを回避しつつ、俺もまたストライク焔のバーニングバーストシステムを起動させる。
バトルフィールドも狭く、遮蔽物もない以上、状況を利用するのも難しいこの勝負、出し惜しみをしている余裕はない。
俺がリンファを研究してきたように、リンファだって俺のことを研究してきたはずだ。
だったら、この場で相手の上を行くしか、全力を超えたその先を見せつけるしか、勝利への道はないと思っていい。
四龍吼を巧みに操って体勢を立て直したリンファは、再度八極拳の短いリーチを補うために機体を急加速させる。
その間合いはチナツのおかげで覚えていた。そして、チナツとの組み手で武道家相手との戦い方、間合いの測り方──要するに勘は取り戻してきた!
『破ァッ!』
「次元覇王流、旋風竜巻蹴り!」
『くっ……このリンファに一撃当てるとは、やるわね、ユウヤ!』
「いいや、まだだ! 一撃で済ませるつもりなんかねえ……次元覇王流! 弾丸破岩拳!」
旋風竜巻蹴りを喰らって体勢を崩したズィーロンワンの胴体に、俺は威力を重視した拳を叩き込む。
バーニングバーストと弾丸破岩拳の合わせ技でも、精々正面装甲が歪んで凹む程度に抑えている辺り、ズィーロンワンの作り込みはガチだ。
でも、倒せない訳じゃない。拳を交えたことで、俺はそう確信していた。
体勢を崩したズィーロンワンに、その隙を見逃すまいと、俺は連続しての攻撃を加える。
次元覇王流だけじゃない。今まで学んできた格闘技の技術を活かして、パンチとキックを絶え間なく、息をつかせる暇も与えずにただ拳を、脚をぶつけていく。
「おおおおっ!」
『くっ……やるわね、ユウヤ!』
「発勁は使わせねえ! 次元覇王流……流星螺旋拳!」
サマーソルトキックが顎に直撃したことで大きな隙を晒したズィーロンワンにトドメを刺すつもりで、俺は流星螺旋拳を放っていた。
バーニングバーストの炎と、パルマ・フィオキーナの光を纏った拳が回転し、激しく唸る。
一発の威力は聖拳突きに劣るかもしれないけど、その分流星螺旋拳は攻撃の速度と破壊力を相手に蓄積していくための技だ。
これで終わるとは思っていないからこその、リンファの武道家としての腕を見込んだからこその選択、そのつもりだった。でも。
『発勁を封じるために手数と距離でこのリンファを翻弄する……悪くない作戦ね!』
「なんだ!? 流星螺旋拳が止められて……いや、化勁か!」
『是! ガンプラ流に……アレンジされてるけどね!』
放った流星螺旋拳を、ズィーロンワンは両手を交差させて防いでいた。でも、それだけじゃない。
流星螺旋拳の回転を受け流すかのように、衝撃を殺すのに加えて、前腕を流星螺旋拳の回転とは逆方向に高速回転させることで、俺の攻撃をいなしていたのだ。
やっぱり、冗談抜きに凄まじいファイターだ、リンファは。
なんて、感心している場合じゃない。
後隙の大きい技を凌がれたことで、攻撃の手番は相手に回ってしまったといえる。
そして、そこから繰り出されるのは。
『破ァァァァッ!』
「当たる、かよおおおおっ!」
溜まっていた鬱憤を晴らすかのように放たれた全力の発勁が襲い掛かる。
なんとか胴体を逸らすことでコックピットへの直撃は避けられたものの、掠めただけで凄まじい衝撃が浸透し、パーツを、フレームを歪めていく。
掠めただけでこの威力だ、直撃していたらどうなっていたかわからない。
「ぐうううっ……!」
『まだよ! 四龍吼!』
武舞台へと落下していくストライク焔を追撃するように、背面の増加ブースターを噴かしたズィーロンワンが発勁の構えを取って襲いかかってくる。
冗談じゃねえ、こんなところでやられてたまるか。
こっちもエールストライカーのスラスターを全力噴射、急制動で機体を立て直し、リンファの発勁を寸前で回避する。
『不敢相信……避けた!? あの体勢から!?』
「胴体が……ガラ空きなんだよ!」
『きゃあっ!』
そのまま勢いを利用した回し蹴りを放って、今度は逆にリンファが武舞台へと墜落していく。
俺の番が回ってきたってことだ。
だけど、クロスレンジに飛び込めば発勁が飛んでくる可能性もある。流星螺旋拳を凌がれたように、化勁で衝撃を殺してくる可能性だってある。
なら、俺の選択はこれだ。
目を伏せて、心の奥の奥、海の底深くまで潜っていくイメージを抱きながら、それ以外の全てを、雑念を切り離して、瞳の奥に揺らぐ炎の一欠片を見る。
アシムレイトの兆し。俺が使える最後の手札にして、全力の証。
「次元覇王流! 波動裂帛拳!」
その瞬間だけストライク焔と一体化したような感覚と共に、俺は武舞台を殴りつけて、そこを起点にバーニングバーストの炎をぶつけるかのように火柱を立てる。
燃え盛る火炎は、四龍吼を操ることで墜落を紙一重で阻止することに手一杯だったズィーロンワンを呑み込んで、燃やし尽くす。
『ぐ……ぬっ……!』
リンファは化勁の要領で前腕を回転させることで威力を少しでも削ぎ落とそうとしているようだけど、だったら。
「バーニングバーストシステム、最大出力だ!」
『このリンファが……こんなところで、やられるわけには……いかないのよ!』
「おおおおっ! そのまま、沈めぇぇぇっ!」
バーニングバーストシステムの最大出力を引き出すことで、右腕が痺れるような感覚が、そうじゃなければ無理やり引き抜かれそうな感覚が、ストライク焔から伝わってくる。
過剰なエネルギーに機体が耐え切れていない──カールのいう「弱点」が、まだ兆しの状態とはいえアシムレイトを行っている状態でははっきりとわかる。わかってしまう。
だとしても、俺だってここで負けるわけにはいかないんだ。お前だってそうだろ、ストライク焔。
相棒に、もう一人の俺とでもいうべき分身に激励を送って、右腕の痛みに耐えながらも、バーニングバーストシステムの最大出力を超えたその先へと踏み込む。
限界を超えた百二十パーセントの領域までその出力を引き上げ、火柱が荒れ狂う炎の奔流と化した、刹那。
『噴ッ……!』
「なんだ!?」
波動裂帛拳の炎に呑み込まれて焼き尽くされたと思っていたズィーロンワンが、炎の奔流を斬り裂いて、中からその姿を現す。
流石に無事とはいかなかったようで、装甲の各部が溶け落ちているものの、四肢は健在でメインカメラも生きていた。
バーニングバーストのその先を、アシムレイトの兆しを、持てる全てを引き出して使ったのに、何故。
『やるわね、ユウヤ! このリンファに真の全力を……奥の奥の手まで使わせるなんて! 認めるわ、次元覇王流。認めるわ、ユウヤ! アナタを闘士と見込んで、リンファは全てを出し尽くす! トランザム!』
驚愕する俺へと、答え合わせをするかのようにリンファが言い放つと同時に、ズィーロンワンの装甲が赤熱化する。
トランザムシステム。と、いうことは、チナツとの戦いで使ってたエグナーウィップも鑑みるに、ベースはリボーンズガンダムの方だったのか。
なんて、呆けている暇はない。
さっきまでとは比べ物にならない速度でズィーロンワンが空中に急上昇、ストライク焔に肉薄し、当て身を喰らわせてくる。
ストライクフリーダムのカスタムモデルと戦ってた時に使ってた鉄山靠だ。
集中力が途切れてしまったことで、見えていたはずの揺らぐ炎の一欠片は、そのイメージは脳内から掻き消えてしまう。
「クソッ……!」
『さっきより動きが鈍くなった? トランザムまで使わせたんだから……このリンファを失望させないでよね、ユウヤぁっ!』
「まだまだ……勝負はこっからだぜ!」
強がりでにっこりと笑ってみせたのはいいけど、こっちは手札を使い尽くした状態だ。
武舞台に投棄したビームピストルのうち、無事だった一丁を拾い上げて機体を上昇、連射するけど、反応速度が圧倒的に上がっているズィーロンワンの前では焼け石に水だった。
腰から引き抜いた青龍刀でビームを切り刻みながら、そのままリンファはストライク焔へと機体を肉薄させて、流れるような剣撃を放つ。
『強がるのね……でも、今度こそアナタに勝ち目はない! ズィーロンワンの攻撃、その状態のストライク焔で受け切れるかしら!?』
「できるかどうかじゃねえ、やるんだよ!」
『なら、行動で示してみせなさい!』
振り下ろされた青龍刀は展開したビームシールドを斬り裂いた。
だけど、そこで多少勢いが殺されたのか、その刃は俺の両手に挟まれて、コックピットに直撃する寸前で止まっている。
ストライクフリーダムがデスティニーに対してやったのを見様見真似した白刃取りだ。バーニングバーストの補助がなければ、コックピットが切り裂かれていたかもしれないと、冷や汗が滲む。
「ふんっ!」
『くっ……よくも!』
とはいえ、止められたことは事実だ。
青龍刀の刃をへし折って、俺はリンファが放ってきた蹴りを膝でガード、そのまま武舞台に脚を振り下ろすことで見様見真似の震脚を披露する。
タイガーウルフさんがやっていた技だ。これで相手の動きは一瞬止まる。
「次元覇王流!」
『ちょこざいな! それなら!』
「悪りーけどな、それはチナツとの戦いで見切ってんだよ! 聖拳……突きぃぃぃッ!」
リンファはぐらつく機体を制御しつつ前腕を回転、そこからエグナーウィップを射出してきたけど、それなら織り込み済みだ。
最低限のマニューバでエグナーウィップを回避、そのまま勢いに乗って聖拳突きを叩き込もうとした、その瞬間だった。
何か強烈に嫌な予感が背筋を撫でる。
何かを見落としているような、見当違いな考えを抱いてしまったかのような違和感。
──今、エグナーウィップはどっちの腕から射出された?
その答えは左だ。つまり。
『わざわざやられに来てくれるとは、殊勝な心がけね!』
「しまっ……」
『破ァァァァッ!!!』
カウンターとして放たれたリンファの発勁と、俺の聖拳突きがぶつかり合って激しい火花を散らす。
だけど、リンファが使っている発勁という技の性質は、その威力の本質は外側にあるわけじゃない。むしろ。
答えを示すようにストライク焔の右腕がひび割れ、砕けていく。俺の次元覇王流でも、俺の力でも、あの発勁を真正面から潰すことはできないのか。
絶望と共に吹き飛ばされたストライク焔が、武舞台に背中から叩きつけられる。
ダメなのか。俺の全力を出しても、百二十パーセントの力を出し切っても、こいつに、リンファに勝つことはできないのか。
一番嫌いな「諦め」が脳裏をよぎるほどに、操縦桿を握る手が思わず緩んでしまうほどに、リンファは強かった。「高み」に近づいているとさえいってもいい。
「俺は……負けるのか、ストライク焔?」
あれだけの思いを背負ってきて、次元覇王流の看板を背負って、そして、探し続けていた「答え」の意味もわからないまま、ここで敗れて朽ちていくのか?
ストライク焔は答えない。ただ一瞬が永遠にも感じられるような沈黙の中を揺蕩っているだけだ。
全力を尽くして負けるのなら、それは恥などではない。己を燃やして戦ったのであれば、どのような結果であれ悔いはない──師匠の言葉が脳裏をよぎる。
いや、違う。師匠だって、父さんだってファイターだったんなら、わかってるはずだ。
全力を尽くして負けることがどれだけ悔しいか、死力を尽くして尚届かなかった時の絶望が、どれだけ凄まじいものなのか。
きっと、父さんは、師匠は、それを乗り越えろと、その悔しさと絶望を後悔に費やすのではなく、バネにして飛び上がれといっているのだろう。
だとしても、負けられない。
俺はこんなところで負けたくない。俺にとっての強さの意味を知るために? 違う。その答えなら、もうきっと、とっくに出ているはずなんだ。
俺にとっての──強さ。それは。
いくつもの言葉が、いくつもの縁に恵まれた記憶が脳裏をよぎる。コドウから託された誇りが、チナツが流した悔し涙が、そして、どんな時でも俺のことを応援してくれていたマフユの笑顔が。
──ユウヤ君は、ユウヤ君だなって。
そうだ、マフユ。俺は俺だ。
そして、ストライク焔はストライク焔だ。
だから俺は、ストライク焔の痛みを、言葉こそなくても、確かに今も上げ続けている叫びを聞かなければいけない。
痛い。苦しい。もう限界だ。
胸に手を当てれば、伝わってくる。どれだけストライク焔が痛い思いをしてきたのか、リンファの攻撃がどれだけ苛烈で、そして俺がどこまで未熟だったかが、嫌というほどに。
だけど、その未熟さや痛みも含めて俺なんだ。だから、お前の痛みを俺に分けてくれ。
お前の叫びを、痛くて苦しくて仕方なくても、決して諦めたりなんかしない、今だって、「それでも勝ちたい」と叫び続けているその魂を!
『目を閉じるなんて、やられる覚悟ができたってことかしら!』
「俺たちに限界は……ない!」
目を閉じたその先に、心の海を深くかき分けたその果てに見えたものは、揺らぐ炎の一欠片。
そこから道標を辿るかのように炎の中に飛び込めば、俺の視界を焼き尽くすかのように燃え上がる太陽が心の中に浮かび上がる。
「俺は俺だ……お前はお前だ! だけどこの時だけは、俺はお前で、お前は俺なんだ、ストライク焔!」
『何を訳のわからないことを……破ァァァァッ!』
「見えた! 赫く輝く太陽が!」
『な……ッ!?』
必殺の発勁を直撃寸前で回避されたリンファの表情が、驚愕に歪む。
そして俺にははっきりと、モニター越しじゃなくて肉眼で、ズィーロンワンが体勢を立て直そうとしている兆しが見えていた。
「させるかよ!」
『ぐっ……きゃあああっ!』
膝蹴りを腹部に叩き込んでズィーロンワンを吹き飛ばし、俺は、ストライク焔は次元覇王流の構えを取る。
右手が砕け散った今、使えるのは左の拳と足技だけ。だとしても、問題はない。
そして、全身を刺すような痛みが、右腕を引きちぎられたかのような激痛が、さっきよりもはっきりと、仮想であるはずの身体にも伝わってくる。
これがお前の感じていた痛みなのか、ストライク焔。だとしても、ここまでよく戦ってくれた。ありがとう。本当にありがとう。
だから、もう少しだけ俺の無茶に付き合ってくれ、相棒。
モニターを取り払ったようにクリアな視界に捉えたズィーロンワンに向けて、俺は全力でスラスターを噴射して肉薄していく。
『考えなしにクロスレンジへ飛び込んできたところで……ッ!?』
「次元覇王流……ッ!」
俺の、俺にとっての「強さ」の意味。
それをこのGBNで追い求める理由は。
「憧れに近づくためだけじゃねえ……俺の歩んだ道が、結んできた縁が、皆がいてくれる絆が、このGBNで過ごす皆との時間が、俺の求める『強さ』の理由だああああッ!!! 聖拳……突きぃぃぃッ!!!」
『絶対王者とは孤独なもの! 馴れ合うだけでは強くはなれない! 孤高に、孤独に、誇り高く飢え続ける! それこそがリンファが歩む王座への道よ! 破ァァァァッ!!!』
この際、どっちが正解かなんてことはどうでもいい。
やっと、やっと見つけたんだ。俺の理由を、俺だけの「強さ」の意味を。それはずっと一緒にいてくれたチナツとマフユが、出会ってきた皆が、そしてストライク焔が教えてくれたことだ。
だから、どれだけリンファが重い覚悟と理由を背負ってこの武舞台に立っているとしても、ここで倒れてやるわけにはいかねえよなあ!
『そんな、反応速度がさっきまでとは……ッ!?』
「喰らえええッ!!!」
ズィーロンワンを上回る反応速度で懐に飛び込んだ俺は、発勁を打たれる前に、そのコックピットにバーニングバーストシステムの炎と、パルマ・フィオキーナの光を纏った全力の聖拳突きを叩き込んだ。
ぴしり、とひび割れる音を立てて、ズィーロンワンが砕け散っていく。
『それでもぉッ!!!』
最後の力を振り絞って放たれた全力の発勁が頭部に直撃しようとしていた、その瞬間だった。
ひび割れたリンファの拳が砕け散り、肘のところに装着されているGNドライヴが爆発を起こす。
もう、ズィーロンワンに戦う力は残されていない。それを証明するように拳が直撃したところを起点に爆炎が巻き起こり、その機体が爆散する。
『嘘……この、リンファが……?』
「俺の……勝ちだ!」
【Battle Ended!】
【Winner:ユウヤ】
システム音声が、その言葉を示すかのように読み上げられた。極度の疲労に、痛みに倒れそうになりながらも、俺は唇の端を持ち上げて不敵に笑う。
果たしたぜ、約束を。そして見つけたぜ、俺の答えってやつを。
「限界」を超えて