ガンダムビルドダイバーズ:トライ   作:守次 奏

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クライマックスに向けて初投稿です。


Ep.49「禁忌の力」

「なあ、マフユ……結局『シャドウロール』は何がしたかったんだ?」

 

 結末的には色々と釈然としない「ケモノミチ」とのフォース戦が終わったあと、俺は直球でマフユにそう問いかけていた。

 あいつに何の意図があってそうしたのかはわからないけど、あの動きは確実にマフユに対してコンタクトを取るためで、頭をぶつけてたのも、接触回線を開く意味があったんだと思う。

 でも、どうして俺やチナツ、ジェニじゃなくて「シャドウロール」はマフユに接触を図ったのかについては解せないままだ。

 

「……ごめんなさい、ユウヤ君……わからない。何も言ってこなかったから……」

「接触回線開いてんのにか?」

「うん……」

 

 マフユは静かに首を縦に振る。

 元々メガ粒子杯の参加者を襲撃してた割にメガ粒子杯本戦には全く姿を表さなかったり、かと思えば突然現れてマフユにコンタクトを取るだけ取って何も言わないときた。

 ますます何を考えてるんだかわからなくなってきたな。

 

「何か、データを転送されたりは?」

 

 俺に代わって、フォースネストの壁にもたれかかっていたジェニがそう尋ねる。

 確かに何らかのデータを転送してる可能性もあるといえばあるな、果たし状とか。

 でも、果たし状だったらマフユじゃなくて俺に叩きつけてくるのが筋ってもんだろう。マスダイバーなんかやってる時点で礼儀だとか筋だとか、そんなもんは関係ないんだろうけど。

 

「……特には、何も……」

「通信でもデータの転送でもないのに、わざわざマフユと接触して回線を開いた……?」

「今までの話を総合すると、そうなるな」

 

 チナツが細い顎に指をやって唸り声を上げるのに乗っかる形で、俺もまたこみ上げてくる溜息を押し殺しながら言った。

 ここまで不自然が極まっていると、マフユが嘘をついている、という可能性も、信じたくはないけど浮上してくる。

 あの「シャドウロール」が奇行に走っているだけだという可能性もゼロじゃない。でも、順当に考えるならどっちの可能性が高いかといえば、残念だけど前者の方だ。

 

 俺たち三人の視線を一身に受け止めるマフユは俯き、丈の余った袖で顔を半分ほど覆い隠していた。

 マフユとしても、あいつの奇行に巻き込まれて困っているだけなのだと、できることならそう信じたい。

 仲間に疑いをかけるなんてことは、こっちとしてもしたくもないしな。

 

「……あの、その……私……」

「マフユが何もないって言うなら、俺はそれを信じたい」

「ユウヤ……」

「……」

「俺は……仲間を疑いたくない。本当にマフユが何もないって、『シャドウロール』の奇行に巻き込まれただけだってんなら話はそれでおしまいだ。だから、マフユ自身の言葉で伝えてほしい。俺たちは信じたいんだ、マフユを」

 

 俺から言えることは、これが精一杯だ。

 例えどれだけ怪しくても、怪しいってだけじゃ証拠にならない。

 一度疑い始めればその疑念は際限なく膨らんでいく。

 

 マフユが嘘をついているってだけじゃなく、「シャドウロール」とあの瞬間に何らかの取引をしていただとか、もしくは、仲間になるように誘われただとか、考えるだけで悪い可能性はキリがない。

 だから、マフユ自身の言葉で決着をつけてほしかったのだ。

 固唾を飲んで俺とチナツが見つめる中で、マフユは丈の余った袖で顔の半分を覆い隠したまま、しばらくフリーズしたように固まっていた。

 

 無理もない。口ではああ言ったけど、状況的には針の筵だ。

 チナツだって、ジェニだってマフユを疑いたくないとは思っているだろう。

 だけど、どう考えたって、情報を整理した上で物事に整合性が取れてないなら、発言者を疑わざるを得ないのもまた事実なのだ。

 

 逡巡するマフユに、困惑と疑いが綯い交ぜになった視線が突き刺さる。

 じわり、と眦に涙が滲んでいる辺り、マフユとしてもこの状況は好ましくないはずだ。というか、好きで疑われるやつなんかいない。

 でも、例え返ってきたのがどんな答えだとしても、それがマフユにとって「真実」なのだとしたら、俺はそれを信じたいし、信じるつもりなのも確かなことだ。

 

 言葉じゃなくて視線に想いを込めて、琥珀色の大きな瞳を真っ直ぐに見据える。

 もうこれ以上言うことはない。

 あとはマフユを信じるだけだ。

 

「……すぅ、はぁ……」

「マフユ」

「……何も、ない。何でも、ない、よ……」

「そっか。ありがとな、マフユ。じゃあこの話はこれでおしまいだ」

 

 マフユの答えはただ、それだけだった。

 針の筵になりながらも、ちゃんと答えてくれたことに感謝しつつ、俺は約束通りにこれ以上疑いをかけないことを、この話を続けないことを宣言する。

 あとはフォース戦の反省会をするのもよし、個人的にやりたいことがあるならよしってことで一旦解散にしておこう。

 

「ってことで、今日は解散な」

「わかったわ……アンタがそう決めたってんならアタシから言えることは何もないわ」

「私も同じ。ユウヤが信じると言ったなら」

 

 チナツの言葉が、何か言いたいことを飲み込んでのそれだったのはわかる。

 ジェニはいつも通り、俺に選択を委ねてくれているのもわかる。

 だからこそ、この決断が正解だったのか間違いだったのかについて責任を負うべきは俺一人だ。そもそもマフユの言葉を信じるなら、そんなことを考える必要もないんだけどな。

 

 悪い予感だとか、そういうものに限ってよく当たるって話もわかる。

 それでも、一度信じると決めたならそれを貫き通すのが筋ってもんだろう。

 父さんの、師匠の教えだ。

 

「俺はログアウトするけど、マフユはこの後なんか予定でもあるのか?」

「……う、うん……G-エクリプティカの武装とか、見直したかったから……」

「そっか、それじゃまた明日な!」

「……うん。また、明日……」

 

 チナツとジェニがログアウトして現実へと解けていく中で、おどおどしながら佇んでいたマフユに声をかけてみれば、その心配は取り越し苦労だったとばかりに、いつもの控えめな笑顔を浮かべて、長い袖に包まれた手を振ってくれる。

 やっぱり杞憂だったんだな、と、そこに少しの安堵を覚えながら俺は、無限に上っていくエレベーターに身を委ねるような感覚と共に、リアルへと帰還していく。

 あとで何か疑っちまったことに対してお詫びとかもしなきゃな、と、そんな、どこか能天気なことを頭の片隅に浮かべながら。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「チナツ、そっち行ったぞ!」

「了解! この速度なら狙うんじゃなくて叩き斬る!」

『ちいっ、トランザムに追いすがってくるとは……だが!』

 

 ちょっとした一悶着があった翌日、俺たちはいつも通りに色々と殺到してきた依頼の中で、ダイバーランク的な実力が近しいフォースを見繕ってからフリーバトルを引き受けていた。

 今回対戦するフォースは「ヴァモーズコンバット」とかいう、可変機を主軸にしているところだ。

 そのせいかは知らないけど、選ばれたフィールドが宇宙だったということもあって、相手の方が空間を上手く使って戦ってる印象が強い。

 

 俺とジェニの次元覇王流、そしてチナツの狙撃、マフユの砲撃。その全ての有効射程を把握した上で一撃離脱を繰り返している都合、俺とジェニは相手を追いかけて、チナツとマフユは相手に追いかけられて、と見事に分断されてる状態だ。

 はっきり言って、状況的にはかなりまずい。

 バーニングバーストを発動させて追いすがったオーバーフラッグを流星螺旋拳で貫き、破壊すると、俺は次の相手をレーダーで確認して、腰にマウントしていたビームピストルの一丁を撃ち放つ。

 

『各機急降下! この場でストライクスフィーダを釘付けにする!』

『了解!』

 

 アラートが頭上から鳴り響くと同時に、プロペラントタンクの代わりにミサイルをそのパイロンに懸下しているゼータプラスC1型が急降下してくる。

 ビームピストルが命中したことで一機落とせたのは良かったけど、それでも編隊を維持してこっちにミサイルの雨を浴びせかけてきた辺り、相手の練度はかなりのものだ。

 直撃弾を頬のバルカンで叩き落としつつ、それでも落としきれなかったものはビームシールドで防御する。

 

 機動力で上を取られるってのは中々に厄介だ。だけど、こういう状況もまた燃えてくるものがあるのは確かなことだ。

 

『反転急上昇! 次はヤツにスマートガンの雨を浴びせかけて……!』

「だったらこっちも出し惜しんでる暇なんかねえよなあ! 行くぜ、ブレードドラグーンだ!」

『なに……っ!? おのれ、小癪な!』

 

 スフィーダにはいくつか隠し球を用意してある。それはイクシードチャージや、それを利用したバーニングバーストのオーバーブーストであったり、リュミエール・ザンバーだったりするんだけど、今回切ることに決めたブレードドラグーン……本来は放熱板も兼ねたウイングパーツもそれに当たる。

 俺はマニュアルで全部を操れるほど要領がいいわけじゃない。

 だけど、オートであっても全方位攻撃が強力なのは確かなことだ。

 

 ブレードドラグーンによる包囲攻撃で編隊に乱れが生じたゼータプラスをリュミエール・ザンバーで切り裂いて、指揮官機と思しき、灰色じゃなくて白とオレンジで塗り分けられていた機体に俺は突進する。

 

「あんたがリーダーか!? いや、どっちでもいい! こいつで終わりだ!」

『ちいっ! まだ終わらせるものか!』

 

 モビルスーツ形態に変形したゼータプラスが、手にしたビームスマートガンでこっちを狙ってきたけど、それは読めている。

 

『バカな、反応速度が違いすぎる……ぐわあああっ!』

 

 狙撃ビームを最小限の動きで回避、バーニングバーストの加速力を利用して、俺は手にしていたリュミエール・ザンバーでその隊長機と思しきゼータプラスを両断、撃墜した。

 

「ジェニ、チナツ、マフユ、状況は!?」

「こちらに問題はない、少し手間取ったけど始末できる」

「こっちにキュリオスの編隊が来てる! アタシもエクストリームブラストモードで叩き落としてるけど、多分こいつら……!」

「……っ、私を、狙って……!」

『砲撃火力はこちらにとって脅威になる! ならばアタッカーを釘付けにして支援機を叩くのは当然のこと!』

 

 相手の、キュリオスで組まれた編隊の狙いはマフユだったようだ。

 エクストリームブラストモードを発動したチナツがキュリオスたちを追いかけていくけど、それを阻止するかのように、今度はデブリ帯に隠れていた、宙間迷彩が施されているリゼルC型──の、ディフェンサーBユニット装備型が真下からチナツを強襲する。

 

「あのゼータプラス、指揮官じゃなかったのか!?」

『こういう時のために、指揮系統は引き継ぎを行えるようにしておくものなのだよ、拳法少年!』

 

 ジェニが蹴散らしていたレイダーガンダムの群れを束ねていたレイダー制式仕様を駆るダイバーが、得意げに笑いながらそう言い放った。

 なるほど、リーダー役がやられたら次に指示を出せるやつが指示を出せるように徹底的な統制を行って、その体制を整えておくってのも一つの戦術だ。

 恐らくはジェニがレイダー制式仕様にトドメを刺したとしても、残っている誰かがまた指揮権を引き継いで、編隊を維持した上での連携攻撃を仕掛けてくる。

 

 ダイバーランクは強さを表す指標だとはいうけど、あくまで指標は指標でしかない。

 こうして戦ってみることでしかわからないこともまたあるのだ。

 なんて、感心してる場合じゃないな。

 

 幸いゼータプラスの編隊は片付いて、俺はフリーになった状況だ。

 分断されてる以上、ここからできることは、必然的にジェニの援護に向かうか、チナツの援護に向かうか、マフユの援護に向かうかの三択になる。

 だから、まずは状況を整理しよう。

 

 レイダーガンダムの編隊はスリーマンセルを維持した上で、決して次元覇王流の射程に入らないような位置どりをしてジェニを翻弄している。

 リゼルC型の編隊は急上昇攻撃でチナツのウイニングロードアストレイに一撃喰らわせた上で、今度は俺にやったのと同じ、急降下爆撃の態勢に移行している。

 そしてキュリオスの編隊はそのミサイルコンテナから大量のミサイルを吐き出して、トランザムで逃げるマフユを追い詰めている。

 

 誰のフォローに入るのが一番いいのか、正直頭が混乱してパニック状態だ。

 位置関係で近いのはジェニで、逆に遠いのはマフユってことになる。

 だけど、損害的にはメガビームランチャーを食らったチナツが深刻で、マフユもミサイルの雨霰に晒されて、コックピットにはイエローコーションが点滅していた。

 

「どうする……!?」

『君たちは強い、認めよう! だがそれは個々の力が突出しているだけだ! 我々のように集団戦を徹底するのもまたGBNの醍醐味よ! キュリオス部隊、手負いのエアマスターから片付けるぞ!』

『サー、イエッサー!』

 

 指示役に回ったレイダー制式仕様を操るダイバーが命令を下すと同時に、トランザム中のキュリオスがミサイルコンテナを切り離し、MS形態に変形する。

 まずい。いくらキュリオスの手持ち武器がGNビームマシンガンだけとはいえ、三機に囲まれた状況はいくらマフユとG-エクリプティカでも持ち堪えられないだろう。

 

「マフユ! 今フォローに回るから持ち堪えてくれ!」

 

 そう判断した俺はチナツとジェニを信じて、即座にブレードドラグーンを回収、バーニングバーストの出力を引き上げて救援に向かおうとした、その瞬間だった。

 

「……やっぱり私が狙われる……やっぱり、私が皆の足を引っ張って、る……嫌……私……私は……お荷物になんか、なりたくない……っ!」

『な、なんだ!?』

 

 モビルスーツ形態に変形したキュリオスが、三方向からビームマシンガンを浴びせかけて、撃破とはいかなくたって大破させたと思ったのも束の間、弾幕砲火の中から、無傷のG-エクリプティカが姿を表す。

 ──その機体に、紫色のオーラを纏いながら。

 

「マフユ、お前……っ!?」

「私は……フォースのお荷物なんかじゃない……私は……ユウヤ君の足枷なんかじゃない! ああああああっ!!!」

『なんだ、ビームサーベルの出力がこんなに!?』

『まさか……ブレイクデカール、なのか……!?』

『ふ、副隊長! 指示を! うわあああっ!』

 

 ビームサーベルというよりはほとんどライザーソードの域まで達している、紫色をしたビームの刃がキュリオスの編隊を呑み込んで、テクスチャの塵へと還していく。

 

「あああああっ!!! うわああああっ!!!」

 

 そのままでたらめな機動力でマフユはその瞳に涙を浮かべたまま、言葉にならない叫びを発して、チナツの片翼を捥いでいたリゼルC型を、腰のヴェスバーから放たれた大出力という言葉でも足りない一撃で葬り去る。

 あまりの出来事にしばらく呆然としてたけど、あれは間違いなくブレイクデカールだ。

 宇宙が裂けて、紫色の雷鳴が走る。

 

 でも、どうしてマフユが。やっぱり俺たちに嘘をついていて、「シャドウロール」から何か吹き込まれたのか?

 いや、そんなことを考えてる暇なんてない。

 止めなきゃいけないんだ。例えそこにどんな理由があったとしても、ブレイクデカールなんてものを使ったら、マフユは。

 

「やめろ、マフユ!」

「……っ、離して! 離して、ユウヤ君! 私は……私は、フォースのお荷物なんかじゃない……皆の足を引っ張ってるだけじゃないって、これで……!」

「ダメだ! そんなまやかしに縋ったって、何も得られるものなんかない! 今すぐやめろ、マフユ!」

 

 ブレイクデカールなんてものに頼ったところで、その力はまやかしに過ぎない。

 それに、マフユだって知ってるはずだ。一見強力に見えるマスダイバーだって、その更に上をいくようなダイバーにやられている。

 つまり、自分自身の腕を磨かずに、ツールに頼ったところで、それは自分の目も曇らせるだけで、この世界にも、GBNにもバグが生まれて、いいことなんて何一つない。

 

 だからやめろと、そう言ったつもりだった。

 

「ユウヤ君も……私を否定するの……?」

「違う、俺は!」

「違わないよぉっ! だって……ユウヤ君も……チナツさんも……ジェニさんも、皆凄いのに……お父さんと、お母さんも凄いのに……私だけ何も持ってない……私だけ、平凡で、皆の足を引っ張って……ユウヤ君には! できる人には! 私の気持ちなんて、わからないよぉっ!!!」

 

 マフユはコックピットで涙を流しながら、その叫びと共にブレイクデカールの力で強化された武装とトランザムで、一瞬呆気に取られた俺を振り切り、「ヴァモーズコンバット」の機体を次々に叩き落としていく。

 

「やめなさいマフユ! ユウヤの言うことを……」

「チナツさんも……私にGBNをやめろっていうんですか……っ! 足を引っ張ってるからって、お荷物だからって……!」

「違うわ、マフユ! 話を──」

「私は……お荷物なんかじゃない! 私は、足手纏いなんかじゃない! うわあああああっ!!!」

『な、なんだ……なんなんだ……? 何が、起きて……っ!?』

 

 ジェニを包囲していたレイダーガンダムが、ライザーソードのように伸長されたビームサーベルに焼かれて消し飛ぶ。

 唯一残されたレイダー制式仕様は、状況が飲み込めていないのか、ただ困惑していた。

 

「私は……わたし、は……っ……」

「今ならまだ間に合う! ブレイクデカールを使うのをやめろ、マフユ!」

「……もう、遅い、よ……」

『……契約は履行された』

『なんなんだよ、うわあああっ!』

 

 その隙を見計らっていたかのように、宇宙の闇から溶け出てくるかのように姿を現した「シャドウロール」がレイダー制式仕様をガンダリウム合金製の棍で叩き潰すと、G-エクリプティカの手を取って、バトルフィールドから離脱していく。

 

「クソッ、マフユ! 逃がすかよ!」

「ダメよ、ユウヤ……」

「……もう、遅い」

 

 黒いペルフェクティビリティと、その手を取って彼方に消えていこうとするG-エクリプティカを追いかけようとした俺を制止するように、チナツとジェニがそう呟く。

 

【Battle Ended!】

【Winner:トライダイバーズ】

 

 システムのダイアログが勝利を告げると、同時にバトルフィールドが消失し、俺たちは強制的にセントラル・ロビーへと転送される。

 

「なんなんだよ……なんなんだよ、畜生ッ!」

 

 振り上げた拳を下ろす場所をなくして俺は、「シャドウロール」とマフユが消えていった漆黒の宇宙を見つめ、意識が再構築されていく感覚の中でそう吼えることしか、できなかった。




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