ガンダムビルドダイバーズ:トライ   作:守次 奏

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第一次有志連合戦に決着がつくので初投稿です。


Ep.59「光る翼」

 レーダーに警告音が響いたのは、泣きじゃくるマフユを抱き寄せて、泣き止むのを待っていたその時だった。

 邪魔すんじゃねえ、と言いたいところだったけど、戦いそのものはまだ続いているんだ。気を緩めていたのは俺たちなんだから仕方ない。

 突入部隊がどうなったのかはわからないけど、資源衛星の中から飛び出してきた一機のモビルアーマーが、あのグルヌイユとかいうやつと同じように金ピカに染め上げられたビルケナウが、明らかに俺たちを狙って突撃してくる。

 

『どいつもこいつも使えない駒ばかりだ……「トライダイバーズ」の一員だからと引き込んでみれば情に絆され、駒として教育したはずの「シャドウロール」すらそれに流される! 下らん! 情や絆という言葉ほど、この世界で信用ならん言葉はないというのに女というのは御し難い!』

 

 金色をしたビルケナウの中で恨み節を呟いているマスダイバーとは面識がない。

 だけど、「教育した」という言葉がそいつの口から出てきたということは、「シャドウロール」という言葉が出てきたことは、紛れもなくあのビルケナウに乗ってるやつが、ミリアを不幸に陥れ、マフユを泣かせた元凶なのだろう。

 沸々と怒りが胸の奥で滾っていくのがわかる。こいつのせいでミリアは、マフユは。

 

「あんたか……あんたか! ミリアに親としての愛情すら与えなかった野郎は!」

『親としての愛情だと? 下らんことを言うものだよ、ミスター・ユウヤ。それにさっきの三文芝居……見ているこっちが悪い意味で鳥肌ものだったよ』

「俺のことはなんとでも言え! 子供を愛することすらできないなら……親をやる資格はてめぇにはねえ! ミリアがどれだけ傷ついていたか、どれだけ苦しんでいたのか、それすらわかろうとしないてめぇが!」

『何かを勘違いしているようだがね、ミスター・ユウヤ。この世は弱肉強食だ。愛? 情? そんなものがなんになる。生き残れないのなら、役割を果たせないで野垂れ死ぬのならそれは娘だろうがなんだろうが自己責任なのだよ、むしろ「教育」してやってるだけ感謝してほしいね!』

「てめぇ……いい度胸してやがるじゃねえか……!」

 

 本当にこの世界が弱肉強食であったとしたなら、誰かと誰かが手を結ぶことをやめてしまったら、誰かが世界から弾き出されないように頑張っている誰かの努力はなんになる。

 それを結果だけ見て嘲笑っているようなやつが、ましてや娘を相手にそんなことを言い切るようなやつが、許せるわけもねえ。

 エネルギー残量は大分厳しいけど、それでもストライクスフィーダは俺の怒りに応えるかのように、二百パーセントのバーニングバーストを維持して、炎を全身から滾らせている。

 

「行くぜストライクスフィーダ! こいつはなんとしてもぶっ倒す!」

『ははは! 無駄だ、無駄だ! クライアントからいただいたこのビルケナウは装甲にダイヤモンドコーティングが施されている! 生半可な攻撃など──』

「うるせえッ!!!」

『なっ……』

「だったら見せてやるよ……俺とストライクスフィーダの怒りを! 次元覇王流……流星螺旋拳ッ!」

 

 ビルケナウの正面装甲に、俺はパルマ・フィオキーナの光とバーニングバーストの炎を纏った拳を真っ向からぶつけていく。

 強化型ブレイクデカールがなんだ、ダイヤモンドコーティングがどうした。

 俺の拳は真正面からそれを打ち砕く。娘を野望の道具にしたそのドス黒く燃える野心を、そして愛や絆を嗤う浅はかな欲望を。

 

 ストライクスフィーダが俺の怒りに呼応して、そのツインアイに光を灯す。

 二百パーセントでも足りないのなら全部持っていけ。こいつは、こいつだけは粉々に打ち砕かねえと気が済まねえ!

 限界を超え、更にその先を超えたかのように赤熱化していた全身のメタリックオレンジのパーツからも燃え上がる炎がその勢いを増す。イクシードチャージを使って尚排熱しきれないラジエーターが悲鳴を上げる。

 

「おおおおおっ!!!」

『な、なんだ!? 押されている!? この、このビルケナウが!? なにが起きているというんだぁぁぁッ!』

「ストライクスフィーダ、二百五十パーセントだああああっ!!!」

『う、う、うおおおおっ!? この私が!? このレミング・ワトキンスが!? 私の計画が!? な、なぜです! なぜ助けてくれないのですか、ミスタ──うわあああっ!』

 

 二百五十パーセントまで引き上げられた出力にストライクスフィーダの全身が軋み、背中に装着していたプロミネンスブースターが内側から自壊していく。

 だけど、その分の代償として威力を極限まで引き上げられた拳は、ビルケナウの正面装甲を打ち砕くどころか、内側に浸透した衝撃によってその全身を打ち砕くまでに至っていた。

 粋がっていた割には安い台詞を残して爆散したビルケナウと、レミング・ワトキンスとかいうやつを横目に、俺は全ての力を使い果たしたストライクスフィーダと共に宙を漂う。

 

「ミリア……これで済んだとは思わねえけど、一発ぶん殴ってやったぜ」

 

 本当ならあと百万発ぶん殴ったって足りないぐらいだけど、あの男の企みはこれで粉砕したはずだ。

 資源衛星を見遣れば、先行していた突入部隊が帰還してくる様子が視界に映る。

 その内訳は、キョウヤさんのAGEⅡマグナム、タイガーウルフさんのジーエンアルトロン、そして残りは狐耳の人のセラヴィーと、ダブルオーをベースにカスタムした機体だった。

 

 中でなにがあったのかはわからないけど、無事に帰還してくれたってことは作戦目的は果たせたんだろうか。

 微かな安堵に胸を撫で下ろした、刹那。

 

『あれは……ユウヤ君、逃げて!』

「なんだ、また新手なのか!?」

 

 宇宙を引き裂くかのように、資源衛星を真っ二つにして、「それ」は戦場に姿を表す。

 初代と呼ばれる映像作品、「機動戦士ガンダム」に登場する巨大モビルアーマー、ピグ・ザムだ。

 だけどその大きさは明らかに異常な域に達していて、一体何分の一スケールなのか判断がつかないほどだった。

 

『チッ……どいつもこいつもまるで役に立ちやしねえ……だが、これだけのブレイクデカールが残ってりゃあ、目的自体は達せられるだろ……!』

「あいつが、ブレイクデカールの黒幕なのか……!?」

「その通りだよ、ユウヤ君」

「アトミラールさん!」

 

 グルヌイユとかいう趣味が悪い金ピカグシオンを片付けたのか、ほとんど這々の体になりながらも、両翼をアスタロトオリジンの改造機と、リ・ガズィカスタムに護衛されたアトミラールさんが、どこか苦々しげな表情で俺の言葉を肯定する。

 

「すまない、皆! 黒幕は取り逃した! だがあのビグ・ザムには黒幕が乗っている!」

 

 それに遅れる形で、オープンチャンネルで開かれたチャンプの、キョウヤさんの言葉が有志連合全員に通達された。

 突入部隊は黒幕を取り逃したみてーだけど、あれに乗ってるってんなら話は早い。

 ぶん殴ってでも洗いざらい悪行を吐かせてやれば済む話だ──そう思って拳を構えた、刹那。

 

『塵芥と成り果てろ!』

 

 ビグ・ザムの胴体を一周するように配置されている小型メガ粒子砲から紫色の閃光が走ると同時に、枝分かれして有志連合の機体に襲いかかってくる。

 

「避けるんだ、ユウヤ君! 各機散開! 固まっていればあれの餌食になるぞ!」

「了解っす、アトミラールさん! 行くぜマフユ!」

『ま、待って、ユウヤ君……機体の、コントロールが……っ!』

 

 さっきまではブレイクデカールによる強化を切っていたはずのG-エクリプティカが、悶え苦しむように蠢き、俺に攻撃を仕掛けてくる。

 なんだ、なにがどうなってるんだ。

 困惑する俺をよそに、ビグ・ザムと同じように赤黒いオーラを纏ったG-エクリプティカは、マフユの意思を無視し続けるように、ビームサーベルによる無軌道な攻撃を繰り返す。

 

『お願い、止まって……っ!』

「マフユ! 畜生、どうなってやがるんだ……!?」

「恐らくはあのビグ・ザムがブレイクデカールを操っているのだろう! あれをなんとかしない限り、GBNは……! ぐっ!」

 

 アトミラールさんはそう叫ぶ。

 残存していたマスダイバーの機体も赤黒いオーラを纏うと同時に、枝分かれしたビームは宇宙空間を文字通りに切り裂いて、テクスチャに穴が空いたところから漏れ出る稲妻が、アトミラールさんの機体を打つ。

 ビームローターが破損していたけど、対艦ミサイルを全て使い切っていたおかげで誘爆はしなかったようだ。護衛の二人に抱えられて、アトミラールさんは最前線を離脱していく。

 

『誰が泣いているだ!? 知ったような口を聞きやがる……まあいい、奴らが閉鎖したこのサーバーをめちゃくちゃにできればそれで十分だと思っていたが……まさか強化型ブレイクデカールの影響が、メインプログラムにまで達するとはな』

「聞こえるか、有志連合の諸君! あのビグ・ザムの攻撃によって発生したクラックは、GBNのメインプログラムに介入してデータを消去してしまう代物だ! なんとしても阻止するんだ!」

 

 キョウヤさんが慌てた様子でそう言い放つ辺り、とんでもない代物をあのビグ・ザムはばら撒いてるってことだ。

 そしてアトミラールさんの考察が確かなら、あいつはこの戦場に存在しているブレイクデカールを媒介にして、メインプログラムにバグを侵入させているのかもしれない。

 閉鎖されたサーバーからどうやってメインプログラムまでバグをばら撒いてるかはわからないけど、多分、閉鎖状態を解除する形でクラッキングしているのだろう。

 

 なんて、考えてる暇じゃねえ。

 一刻も早くあいつをなんとかしないと、GBNが滅びちまう。

 失くさせてたまるか、失くさせてたまるもんか。マフユとの思い出があるこの世界を、マフユが帰ってくる場所を。

 

「各機砲狙撃戦用意! あれだけの巨体だ、ビグ・ザムに一斉攻撃を仕掛けることで撃滅する!」

 

 ロンメルさんの指令が届くと同時に、有志連合側で余力が残っているダイバーが一斉に、各々の持てる最大火力を叩き込んでいく。

 でも、あのビグ・ザムは身動ぎ一つせず、真っ二つにした資源衛星の上に陣取ったままだ。

 

『効かんよ。裁きの時は訪れた……さようなら。嘘っぱちの世界。偽りのエデン』

 

 マスダイバーの親玉と思しき目つきの悪いハロがそう呟くと同時に、システムを侵食するバグの発生は加速する。

 このバトルフィールドを破壊するまで、そう時間はかからないだろう。

 それをわかっているのか、目つきの悪いハロはくぐもった笑い声をあげながら、胴体正面に装備されている大口径のメガ粒子砲から、ジャバウォックの初撃もかくやといわんばかりの一撃をぶっ放した。

 

「射撃が通じないのなら、零距離攻撃で対処する! 大佐と私で二方向からビグ・ザムを挟撃する! 他の有志は支援を頼む!」

「まずいな……このままでは我々が不利だ、しかし泣き言は言っていられない! 『GHC』各位に通達、チャンピオンとロンメル大佐の支援に当たれ!」

 

 こんな時に何もできない自分がただ恨めしい。ストライクスフィーダはもう限界を超えている。

 最低限のマニューバを行う分のエネルギーこそ残っていても、限界を超えたことで放熱装置は溶け落ちて、バーニングバーストはもう使えない始末だ。

 せめてビームピストルの一丁でも持っていたら攻撃には参加できたんだろうけど、焼け石に水だ。

 

 自動制御で襲いかかってくるG-エクリプティカをいなしながら、俺は自分に何ができるのかをただ考える。

 チナツはまだ余力を残していたのか、右腕を脱落させ、各部を欠損させながらも残った左手で長距離長射程ビーム砲を撃って、チャンピオンたちを支援していた。

 ジェニも比較的余裕があるからか、零距離での格闘戦に参加しようと機体を加速させている。

 

 ビグ・ザムの枝分かれビームを押し返すように、ジム・ガードカスタムの盾を構えたゲルググが三機ほど対処に当たったけど、その守りも貫通してあえなく塵になっていく。

 こいつは本格的にヤバい。そして、後続にあとを託すしかない自分が恨めしい。

 

「うおおおおっ!」

「はああああッ!」

 

 有志連合の支援を受けたロンメルさんとキョウヤさんがビグ・ザムに零距離攻撃を仕掛ける。

 だけど、待っていたのはロンメルさんのチェーンソーはバラバラに砕けて、キョウヤさんのシグルシールドはへし折れるという、およそ想像しうる限り最悪の結果だった。

 

『ははははは! 万策尽きたってとこかァ!?』

「チャンピオンと智将ロンメルですら歯が立たないなんて……」

「ビームも駄目、零距離攻撃も効かない……あんな化け物、どうやって倒せばいいんだ……」

 

 チャンピオンと、フォースランキング第2位の「第七機甲師団」を率いるロンメル大佐ですら歯が立たなかったのを見て、有志連合の士気は急速に下がっていく。

 ジェニや、他のフォースのメンバーもキョウヤさんたちに紛れる形で零距離攻撃を敢行していたけど、それでもあのビグ・ザムには届かずに、脚部が粉砕したり剣が折れたりと散々な様相を呈していた。

 ここまでか。ここまでなのか。

 

「諦めるな!」

 

 俺の心も、微かな諦めに呑まれかけたその時だった。

 チャンピオンの、キョウヤさんの力強い言葉が、地の底に落ちていた有志連合の士気を押し上げるように戦場へと響き渡る。

 

「諦めたら全てはそこで終わる! だが、諦めなければ、例えそれが砂粒ほどわずかであったとしても勝利の可能性は失われない、絶対に!」

「チャンピオンの言った通りだ! ここで我々が諦めれば、GBNは滅びる! 各位、クジョウ・キョウヤに、チャンプに全てを託す覚悟を決めろ! その僅かな砂粒を拾い上げるために!」

 

 キョウヤさんが、チャンピオンとして皆を激励したのに合わせる形で、アトミラールさんが全員の決意を後押しするように叫んだ。

 

「……そうだな……そうだよな……!」

『ユウヤ君……』

「諦めたらそこで終わりだ! だったら俺も諦めない!」

 

 トランザムを発動して、武器が壊れているにもかかわらず、ビグ・ザムのモノアイレールを殴り付けていたダブルオーのカスタムモデルを一瞥し、俺もまたキョウヤさんと、アトミラールさんの言葉を噛みしめる。

 ストライクスフィーダに残っているものは僅かなエネルギーだけ。背負っていたプロミネンスブースターも破壊された今、できることなんて残されちゃいないのかもしれない。

 だけどな。

 

「あぁ!誰が諦めるかよ!」

「ぜってえ倒してやる! 失くされてたまるかよ、俺たちのこの世界を!」

「……ヴォーパルソード展開。終末の竜の端末たる我が必殺の一撃を受けよ! 『エンド・オブ・ワールド』!」

「聞いたな、ユユ。僕らも道を開く。『ビルドダイバーズ』に続くぞ……GNハイマットフルバースト!」

「ふふ……了解しました、お兄様……IFBR、最大出力……!」

「ヒャッハハハハ! マスダイバーとはこれでさようならぁ!」

「夜明けは近い。ならば眼前の勝利を掴み取るのみです……このルーフェアとトランジェントガンダム・キャメロットの全てをかけて……GNイヴェルブラスター……!」

「今こそ『ルミエル・ナイツ』の矜持が試される時でありますな! ノブレス・エクスキューション!」

「必殺! 雪花氷獄鳥!」

 

 闘志を鼓舞されたダイバーたちが、先陣を切る形で突っ込んでいったダブルオーのカスタムモデルを援護した「ビルドダイバーズ」というらしいフォースの面々に続いて、各々が持っている最大火力をビグ・ザムに叩き込んでいく。

 それであの、ブレイクデカールの共鳴によって強化されたビグ・ザムのIフィールドを貫けるかどうかはわからない。

 だとしても、チャンピオンがそう言ったように、諦めた時点で全ては終わる。だったら。

 

『クソが……ッ! なんだってんだ、こいつは……!?』

「俺も行くぞ、ストライクスフィーダ! 持てるエネルギーの全てを注ぎ込んで……!」

「アンタばっかにいい格好させないんだから!」

「脚は砕かれてもまだ手は残っている。だったら戦う」

「チナツ、ジェニ……ありがとうな! 行くぜハロ野郎! カミキガンプラ流奥義……鳳凰覇王拳!」

 

 持てるエネルギーの全てを攻撃に費やして、俺は、俺たちはあのビグ・ザムの鼻っ柱を叩き折るために攻撃を集中させる。

 先んじて戦ってくれていたダブルオーのおかげもあってか、それとも戦略兵器クラスのトップランカーたちが持てる最大火力を叩き込んだおかげかはわからないけど、全てが収束した一撃はIフィールドを貫通して、攻撃を受けたビグ・ザムが身動ぐ。

 そしてそのダブルオーはというと、GNドライヴがひび割れたかと思えば、崩壊したドライヴから巨大なGN粒子の翼みたいなものを展開して、ビグ・ザムを包み込んでいた。

 

『何が起こっている!?』

 

 ハロ野郎が困惑した通り、ブレイクデカールの影響でひび割れていた宇宙が形を取り戻していく。

 何が起きてるのかは俺にもわからない。だけど状況から推測するなら、あのダブルオーが広げた光の翼が、バグを包み込んで浄化しているようにも見える。

 

『G-エクリプティカのコントロールが、戻った……』

『どうして……どうなってる、あの翼は?』

 

 困惑するハロ野郎を尻目に、GBNを覆っていたバグは消滅して、どういう原理かブレイクデカールもまた無効化されていく。

 と、いうことは、あのハロ野郎が使ったチート効果ももうないってわけだ。

 だけど、ストライクスフィーダはさっきの一撃で全力を使い果たしてもう動けない。

 

 そのはずだった。でも。

 

「待たせたの、有志連合……! アブソーブ機構、ディスチャージ! 妾が持てる力の全てを分け与えよう。そして必ず討ち果たすのじゃ、あの不届き者を……!」

「ありがとうございます、テンコ様!」

 

 前線に合流してきたテンコ様の「天照大稲荷」がディスチャージ機構を使ったことで、底をついていたストライクスフィーダのエネルギーもある程度は回復してくれた。

 

「へっ、リクばっかにいい格好させるかよ! 奥義! 『龍虎狼道』!」

「高濃度圧縮粒子、完全解放! 吹けよシムルグ! 『アルフ・ライラ・ワ・ライラ』!」

「斬り裂け、天空の刃! EX……カリバーッ!」

 

 それはチナツたちも、そしてマフユも同じのようで、示し合わせたように俺たちは頷くと、タイガーウルフさんと狐耳の人、そしてキョウヤさんが必殺技をそれぞれビグ・ザムへとぶっ放したのを合図にして、持てる全力の一撃を再び叩き込む。

 

「ウイニング……フルバーストぉっ!」

「一斉射撃……当たってぇっ!」

「次元覇王流……弾丸破岩拳!」

「バーニングバースト、出力二百パーセント! カミキガンプラ流奥義! 鳳凰覇王拳!」

 

 声を揃えて、俺たちもまた今放てる限り必殺の一撃を、ハロ野郎のビグ・ザムへとぶち込んでいた。

 

『行っけええええ!!!』

 

 誰ともなしに叫んだ言葉が呼応して、戦場を、漆黒の宇宙を目映い白が、その閃光が塗り潰していく。

 GNドライヴから光の翼を展開したダブルオーもまたその閃光の一部となって、ビグ・ザムへと突撃をかける。

 そうして、光が晴れたあと──そこにあったものは、木っ端微塵になったビグ・ザムの残骸。それが示すことはただ一つだ。

 

 俺たちの、勝ち。

 どっと押し寄せてくる疲労感も、バグを無効化したあの光の翼がなんなのかという好奇心も今はどこかに放り投げておけばいいと苦笑する。

 

『ユウヤ君……! 私……私……っ……!』

「ああ、おかえり。マフユ」

 

 G-エクリプティカの額と、プロミネンスブースターとラジエーターを喪失したことでバーニングバーストの内部出力に耐えきれず、ボロボロになった大破状態のストライクスフィーダの額を軽くぶつけ合い、俺とマフユは今、全てを忘れて、その喜びを分かち合っていた。




アア、オワッタ……!
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