『敵は三人だぞ! なぜ撃ち落とせない!?』
『「GHC」が寝返ったこの状況下で無理を言うな! せめてエミリアさんが戻ってくるまでは……!』
『泣き言言ってる暇があったら弾を撃つんだよ!』
体勢を立て直しつつはあるけど、未だ混乱している、動きが硬い敵の合間を縫う形で俺たちはリクとの合流ポイントへと向かっていた。
敵が固まっている状況もこっちとしては好都合だ。フレンドリーファイアを警戒して迂闊に弾を撃てない相手の隙間を縫うか、進路上に陣取って邪魔をしてくるようなら、排除するか状況を逆手にとって、盾にして進む。
およそクリーンとはいえない戦術だけど、ここでやられたらなんにもならない。だったら、多少ダーティな手でも使ってやるさ。
「チナツ、状況は!?」
「進路上にいる敵は、発砲すれば互いが潰し合う位置に陣取ってるわ! このまま全速力で切り抜ければ予定時刻通りにポイントSへ到着できる!」
「……っ、気をつけて、ユウヤ君!」
予定通りに行けばリクとの合流が間に合うって感じだろうけど、そうそう上手くいくようなもんじゃないってな。
マフユの警告通りに、混乱している有志連合機の合間を縫うようなマニューバで俺たちに接近してくる機影が一つ。
たった一機とはいえ、チャンピオンから直々に、有志連合へと誘われたような猛者が相手だ。さっきのThe Bi-neさんといい、あのダブルオーコマンドクアンタHWSといい、侮れば即座にバトルアウトになりかねない。
「この……っ……!」
マフユが牽制で放ったビームライフルを装甲表面で弾き返しながら、クロスボーンガンダムを参考にしたのか、ガンダム・アスタロトのブースト・アーマーを腰とバックパックの計四基装備したその機体は、凄まじい速度で接近すると、牽制としてブースト・アーマーからナイフを射出する。
ナノラミネートアーマーだ。それも、マフユのビームライフルを一発は弾き返している程度には作り込まれているようだった。
ビームが戦術の主体になっている俺たちの中で、あのガンダム・フレームの相手をできそうなのは、次元覇王流をメインにしてる俺ぐらいだ。チナツも頑張ればやれなくもないだろうけど、データリンク役を担ってくれている以上、あまり前に出過ぎてもよくない。だったら。
「チナツ、マフユ、先に行け! こいつは俺が相手する!」
「アンタはどうすんの!?」
「こいつを倒してから合流するさ!」
「ユウヤ君……わかった、私は、ユウヤ君を信じる、よ……!」
先にチナツとマフユを離脱させ、俺は複数の有志連合機がフレンドリーファイアを警戒してまごついているところに飛び込んできた、アスタロトをベースにしたと思しきガンダム・フレームが振るった大剣をリュミエール・ザンバーで受け流す。
こいつ、中々できる。剣先を通して、絶対に譲らないという思いがビリビリ伝わってきやがる。
鍔迫り合いでわかったのは、あのガンダム・フレームのパワーはストライクスフィーダに匹敵するレベルだってことだ。
「やるな、あんた……!」
『当然だ! この世界を守る……俺は、今度こそ守ってみせるんだ! 行くぞ、ガンダム・サルガタナス……リミッター解除!』
「そう来るかよ……だったらこっちもバーニングバースト、出力百四十パーセントだ!」
イクシードチャージを起動して、腕部のラジエーターフィンを展開した俺は、リミッターを解除した、サルガタナスとかいうガンダム・フレームが振るう大剣を避けつつ、回し蹴りを叩き込む。
ここで百四十パーセントを切らされたのは痛手といえば痛手だけど、やられたんじゃ意味がない以上、必要経費だと割り切る他にない。
リュミエール・ザンバーでの斬り合いは、相手が剣を得物にしている以上こっちが不利だ。だったら俺のやることは単純だ。
いつも通りに、磨き上げてきた次元覇王流であの剣先を打ち砕く。
ただ、それだけだ。
腰にリュミエール・ザンバーをマウントしつつ、俺は回し蹴りを顔面に喰らってよろけたガンダム・サルガタナスに向けて、牽制のバルカンを放ちながら、聖槍蹴りの体勢を取る。
「次元覇王流! 聖槍蹴り!」
『クソッ……! こんなところで……負けてられるか! 俺は守るんだ、このGBNを! 今度こそ……今度こそ!』
サルガタナスを駆るダイバーは、怒りと悲しみが綯い交ぜになった咆哮を上げると、大剣の腹で聖槍蹴りを受け止める。
リミッターを解除したサルガタナスの膂力に任せた荒技だ。だけど、それを押し通してみせる辺り、相手の実力と、GBNを守りたいって覚悟は、本物なのだろう。
「あんた、名前はなんていう!?」
『それが今聞くことかよ!』
「ああ、そうだ! それほどの覚悟があるってんなら俺も覚悟を示す! 俺はユウヤ……『トライダイバーズ』のユウヤだ! サラとGBNの両方を救うために……ここであんたを倒して進む!」
『ふざけたことを……! たった一割の確率が希望になんかなるものかよ! 九割でこの世界は……俺たちの世界は、壊れるんだぞ! そんなこともわからないのかよ!?』
「ふざけてなんかいるもんかよ!」
『ッ……!?』
俺は振り下ろされた大剣を白刃取りすると、バーニングバーストの出力に任せてそれを強引にへし折った。
ああ、そうだ。ふざけてなんかいるものか。
相手が──通信ウィンドウに表示された名前を見る限り、「アスカ」っていうらしいやつが言ってることは正しいのかもしれない。だけど、その正しさのために小さな命を、たった一つしかない命を奪うことの方が間違ってると俺は思う。
「サラの命を犠牲にして、それでこの世界を守ったところで! 本当にそのあとの世界で笑えるのかよ! 俺たちがサラを消すってことは、一つの命を消すってことなんだよ! 次元覇王流! 聖拳突き!」
『うわああああっ!』
そうしてガラ空きになったサルガタナスの胴体へと、俺は叫びと共に聖拳突きを叩き込む。
サラは生きている。生きていたいと願っている。
そんな願いを、俺たちが当たり前に思っていることを踏みにじってまでこの世界を、GBNを続けていって、本当に満足なのかよ。少なくとも、俺は嫌だ。両方を助けるって道があるんだったら、例えそれがどんなリスクを負うとしても、選ぶべき道じゃないのか。
『わかってるさ……だけど俺は選んだんだ、この道を! サラを犠牲にしてでも、GBNを守るって道を! だったら……あんたの言うことが正しいってんなら、俺を倒して、この戦いを勝ち抜いて、証明してみせろよ! ユウヤぁッ!』
地面に叩きつけられたサルガタナスは、まだ動けるとばかりに立ち上がると、近くに倒れていたマクギリス機のグレイズリッター、その残骸が持っていたナイトブレードを両手に取ると、ブースト・アーマーのスラスターを全開にして、突撃をかけてくる。
道は一つなんかじゃないってことは、アスカもわかってるんだろう。
だけど、進んでしまった。選んでしまったからこそ、今更引き返すわけにはいかないというその気持ちもわかる。
それまでに積み上げてきたものがあるから、選んでしまった責任があるから。
だけど、いくら間違えたって、人は何度だってやり直せる、立ち直れることも確かなんだ。
罪を背負っていく必要はあるかもしれない。それはアスカだけじゃなく俺も同じことだと、わかっている。
リクたちの計画が失敗に終わったら、俺たちは後ろ指をさされるどころじゃない。GBNを消滅させたという、永久に消えない罪を背負って生きていかなきゃいけなくなる。
だから、今のあいつは俺でもあるんだ。名前をあいつの口から直接聞きたかったのは、そういう理由もあった。
俺の選んだ道が正解だという保証なんてどこにもない。だけど、命と世界の両方を守るという道を選んだのが正しいと思う心は俺だけのものだ。
「アスカ……お前の覚悟は真正面から受け止める! そしてこの戦いに勝って、証明してみせる! 奇跡は……起こるってことを!」
『綺麗事なら誰でも、なんでも言える! だったら俺はあんたを、ビルドダイバーズを倒して……サラを、消してでも……! この世界を! 守り抜く! そう簡単に負けてなんかやるもんかよ!』
「だったらあとは拳で語るだけだ! 次元覇王流! 流星螺旋拳!」
パルマ・フィオキーナの光とバーニングバーストの炎を纏った拳が唸り、力任せに振り下ろされたナイトブレードと激突する。
がりがりと甲高い金属音を立てて、拳と剣が削れていく。
多分だけど、アスカは本当にサラを消したいわけじゃないんだろう。
だから躊躇った。だから言い淀んだ。
それでも選んでしまった道を引き返せなくなったから、意地だけで立っているのが今のあいつなんだろう。剣先から、覚悟と同時にその悲壮さがなだれ込んでくる。
アシムレイトの副作用で、指先をリューターで削られているような痛みを覚えながらも、俺は歯を食いしばってその覚悟を受け止め、押し返す。
「おおおおおっ!!!」
『はああああっ!!!』
ストライクスフィーダの右拳が、腕のフレームが悲鳴を上げる。その双眸を真紅に染めたサルガタナスも、苦痛にのたうつかのように関節部がスパークしている。
それでも、負けられない。負けられないから立っている。戦っている。
サラとこの世界、その両方を救うために。たった一つの小さな命を、人柱になんかさせないために。
「負けるかよ……負けられるかよ! サラの命は……消させちゃ、いけないんだ! 応えてくれスフィーダ! バーニングバースト、百八十パーセントだああああッ!!!」
『そんな……奥の手を、まだ隠して……っ!』
「うおおおおおッ!!!」
ストライクスフィーダの拳は限界を超越して燃え盛る火炎を纏い、一つの赫く輝く彗星となって、ナイトブレードの刃をへし折り、ガンダム・サルガタナスの胴体にその拳を到達させた。
ナノラミネートアーマーの守りを強引に削り取り、溶解させることで引き剥がし、紅蓮を纏った流星螺旋拳は、そのままサルガタナスのコックピットを打ち貫く。
『──ッ!!!』
コックピットが潰れていく中で、アスカがなにを叫んでいたのかはわからない。悔しさなのか、悲しさなのか、怒りなのか。
あるいはその全部なのかもしれない。
それがなんであったとしても、俺にはその思いを背負って進んでいく義務がある。
アスカとサルガタナスをテクスチャの塵へと還した俺は、呆気に取られた有志連合の機体を振り切って、先にチナツとマフユが進んでいったポイントまでの合流を急ぐ。
一応まだ「GHC」のウィンダムからのデータリンクは生きているけど、その数はかなり減っていて、戦場の全体を見ることはできなくなっていた。
それでも最低限、チナツからのデータリンクが途絶えてないことにほっと胸を撫で下ろしつつ、俺が消耗したと見てか、立ちはだかってきたハーディガンの攻撃を回避する。
そして、聖槍蹴りでその胴体をぶち抜いて俺は、エミリアさんが戦線に復帰でもしたのか、段々と包囲陣形を敷き始めてきた有志連合を蹴散らすためにブレードドラグーンを展開、牽制しながら進んでいく。
「ユウヤ君……!」
「どうした、マフユ!?」
「こっちの戦線は、もう……リクさんたちと合流したけど……もたない……!」
「わかった! すぐに行くからあと少し耐え抜いてくれ!」
どうやら先にポイントSに到達していたマフユたちは、リクたちと合流しても尚苦戦させられるような相手と戦っているらしい。
背筋に嫌な予感が走るのを覚えながらも、ポイントSへと到達したその時、俺を待ち受けていたのは、禍々しい太陽としか形容できない存在だった。
恐らくはペーネロペーを改造したのであろうその機体が背負う日輪は、紫色を内側に、蝕のように真白の光が外側に現れた二重のもの。プロヴィデンスのドラグーンユニットが背部に接続されていることもあって、その威圧感は半端なものじゃない。
『この「天地神明」がテンコが今一度問おう。お主らに覚悟はあるのか? 此度の戦い……明日明後日に悔恨を残せど、多くの者は今日この日を風化させてしまうじゃろう。そうして、残る者は残り、去る者は去る。それだけの話なのじゃ。故に、我々が生んだ思いの丈の結晶があの子ならば……サラならば、いっそ我々の義が通る内に消し去ってやるのが道理というものよ!』
「それは違います、テンコさん!」
ペーネロペーの改造機から放たれるファンネルミサイルを、バルカンと脚部のパーツから放たれるエネルギー波で撃ち落としながら、リクはテンコさん……いや、テンコ様というらしい狐面を被った、白い髪の女の人に向けて、臆することなく言い放つ。
「サラが俺たちの生み出した思いの結晶なら……俺たちが生み出した命なら、それを消しちゃいけないんだ!」
『希望に縋る気持ちはわかる……じゃがな! 勇気で補えるほど世界は優しくはない。好きで覆るほど数字は甘くない。ましてや一時の感情で救おうなどと、その場凌ぎの覚悟や情けで加勢しようとなどと言うのであれば、妾はそれを認めることはできぬ! そのようななまじの思いあらば、この場で断ち切らせてもらおう!』
「そんな生っちょろい思いで、チナツもマフユも……リクもここに立ってるんじゃねえ! 俺たちの想いを聞きたいってんなら……存分に聞かせてやる! 次元覇王流! 疾風突き!」
「ユウヤ!」
俺はそのペーネロペーの改造機に向けて、速度に炎を乗せた拳を打つ。
テンコ様がなにを考えて俺たちの前に立ちはだかっているのか、そしてこの人がどれだけ底知れないほどの強さを持っているのかは、その気迫から、その威容から伝わってくる。
だとしても、その程度で折れる覚悟だってんなら俺たちは最初からこの場に立っていない。それを示すために、ファンネルミサイルの雨霰を掻い潜りながら、全力を乗せた拳でペーネロペーの改造機をぶん殴った、そのつもりだった。
『なるほど……この「禍津天照」に一撃を加えるほどの覚悟は持っているようじゃな』
「その拳……ダークネスフィンガーか!」
『いかにも……このような形で肩を並べるとは複雑じゃな、次元覇王流の申し子よ。じゃがな……それでもと足掻くのであれば……その意思を、希望を、覚悟を、可能性を! 示し、押し通してみせよ! 臆するな、怯むな。一瞬の迷いが命取りになるぞ!』
「……ッ……! 言われなくてもわかってる! バーニングバースト、出力二百パーセント!」
「トランザム……インフィニティ!」
禍津天照というらしい、ペーネロペーの改造機はダークネスフィンガーを展開した掌で俺の拳を受け止めると、それを逆側に捻ることでアシムレイトの弱点である痛みのフィードバックを与えてくる。
だけど、ここで立ち止まるわけにはいかない。俺は無理やりバーニングバーストの出力を引き上げて、リクの機体がトランザムインフィニティというらしい、光の翼とトランザムが合わさったシステムを発動させたのに合わせて、禍津天照を挟撃していく。
リクのダブルオースカイが、デスティニーのウイングに似たパーツが装着されているGNドライヴユニットの左側からビームランチャーを展開して閃光を放つ。
けど、禍津天照はその巨躯からは信じられないほどの機動性かつ、最小限の動きでそれを回避すると、両手の複合ユニットからメガ粒子砲を撃ち放ち、逆にダブルオースカイの体勢を崩す。
「リク! 次元覇王流……弾丸破岩拳……ッ!?」
『甘い……あまりにも甘いぞ! よもやそのような覚悟でこの妾の前に立ちはだかったのではあるまいな!? 見せてみよ、お主らの覚悟を! 本物のそれを! お主らの我が儘か、世界の我が儘か! それを決めるのは覚悟が全てじゃ!』
──この妾を打ち倒せずして、世界とサラの命、その両方を救うことなど叶わぬと知れ。
どこまでも冷徹に、仮面の奥に滾る激情を、やり場のない思いを隠しながら、テンコ様はファンネルミサイルを撃ち放ち、ストライクスフィーダを爆撃する。
さっき一撃当てたあの時にわかった。この人もまた、世界とサラ、その両方を救う可能性に賭けたいのであれば、無理で道理を引っ込めたいのであれば、自分がその壁としての役を引き受けているのだろう。
それでも、本気であることには違いない。
チナツが放った狙撃をIフィールドで弾き返し、マフユが撃ったバスターライフルの一撃をメガ粒子砲で相殺し、その隙を狙ったリクが猛スピードで斬りかかったにもかかわらず、複合ユニットのビームサーベルで対艦刀の一撃を防いでみせる。
人間離れした芸当だ。でも、この人に勝たなきゃ先に進めないなら、この人の上に更にチャンピオンがいるってんなら、確かに躓いては、止まってはいられない。
「ああ、そうだよ……負けらんねえんだ、負けてられねえんだ! 前に進む! それが俺たちの覚悟だ! カミキガンプラ流奥義! 鳳凰覇王拳!」
『護るのじゃ、「禍津日神」!』
禍津天照の背中に装備されているブレード状のユニットが展開したかと思えば、そこに埋め込まれていたクリアパーツが共鳴して、二百パーセントの出力を乗せて放たれた鳳凰覇王拳を打ち消していく。
今の俺に放てる最大にして最強の技をかき消して、禍威を放つ太陽は煌々と輝き続ける。
それでも、諦めない。
はっきり言ってしまえば絶望している。頂点に近い人が見ている景色ってのはこんなに高いものなのかと、全力を込めて作り上げたストライクスフィーダですら届かない悔しさと、色んな感情が綯い交ぜになって、操縦桿を握り締める拳へと無意識に力が籠る。
だけどここで膝をついてしまえば、ここで諦めてしまえば、それはサラを諦めることと同義だ。
だから立ち上がる。歯を食いしばって、悔しさを堪えて、糧にして。あの太陽を撃ち落とすんだ、必ず。
「次元覇王流! 波動裂帛拳!」
『効かぬと言っておる!』
「なら──これはいかがでしょう?」
『む……? お主は……!』
波動裂帛拳をかき消した禍津天照の複合ユニットに、突如として飛来した「なにか」が、掠めただけとはいえ、傷跡を刻む。
そうして、天を仰ぎ見れば、そこにいたのは純白の羽根を散らしながら太陽を背に佇む、前にペリシアで見た、スノーホワイトプレリュードをベースにしたと思しき機体だった。
違いがあるとすれば、各部の装甲が鎧武者を思わせる形に変化していることと、そして、七本の刀をビットのように浮遊させていることか。
「世界と幼子の命……その両方を救うとあれば、私も覚悟を示しましょう、テンコ様。行きなさい、少年たち。貴方たちの殿は……私が務めます」
『ふ……ふふふ……よもや、よもやじゃのう……元4位と……『七星天姫』とこんなところで巡り会うとは』
「ええ、あの時の昇格戦以来……ですが私は慢心を捨て去り、心身を鍛え直しました。故にあの日と同じだとは思わないでいただきたいですね」
『妾の前に立ちはだかるとあらば、何人たりとも同じよ。そして妾の言葉が変わることはない。示すのじゃ──その覚悟が、世界を賭けるに値するのかどうかを!』
「満天を見よ! そして刮目せよ、煌めくこの七星を! 天の九尾よ、このツバキと『白雪姫頑駄無』が実力、照覧あれ!」
どうやらあのスノーホワイトプレリュードの改造機──白雪姫頑駄無を操っているのは、ツバキって名前の人らしい。
元4位だとか凄まじい単語が聞こえてきたけど、状況的にはまた助けられたってところか。
限界も限界、二百パーセントのバーニングバーストと真なるアシムレイトの両方を掛け合わせても歯が立たなかった。テンコ様との戦いの結果だけ見れば、俺たちの敗北なのだろう。でも。
「まだ生きてる……そうだ、まだやられてないってことは、勝機はあるってことだ! そうだろ、リク!?」
「うん! 俺はサラのことを絶対に諦めたりなんかしない!」
「へっ……だったら、貫き通せよ、その思い! 俺たちは、最後の砦と戦わなきゃいけないらしいからな……!」
テンコ様の相手をツバキさんが請け負ってくれた先に待っていたのは、更なる絶望だった。
フィールドを晴天が照らしているはずなのに、どういう理屈か、その機体の周辺にだけは猛吹雪が吹き荒んでいる。
リクがトランザムインフィニティの速度を活かして早めに離脱してくれたのは幸いだ。
長期戦になれば、きっと目の前にいるあの機体は、トランジェントガンダムを改造したのであろうガンプラは、厄介なことをしてくれると直感が危機を告げている。
同時に、ここが俺たちの正念場なのだとも告げている。もう今までのような援軍は期待できない。
正真正銘、実力だけでのぶつかり合いだ。
『よくぞここまで辿り着きましたね、「トライダイバーズ」……』
「そりゃどうも……そっちこそ、リクを見逃してよかったのかよ?」
『最終防衛ラインにはチャンピオンがいます。彼がどう足掻いても勝敗は最初から決している。ならば私が、このルーフェアと「トランジェントガンダム・キャメロット」がすべきことは、貴方たち、ビルドダイバーズ側についたダイバーを一人でも多く撃破、殲滅することです』
猛吹雪の中でGNパルチザンを構えて、ルーフェアと名乗ったダイバーは自分の後ろに従えていた軍勢を展開する。
近くにはよく見れば、凍りついた「GHC」のウィンダムと思しき残骸がいくつも転がっていて、伊達に最終防衛ラインを任せてるわけじゃないことを伺わせた。
「きっと俺たちはいくつもの幸運に支えられてここにいる……そしてリクが行った今、俺たちの役目は! チナツ、マフユ!」
「ええ! ここでルーフェアさんたちの足止めをすること!」
「リクさんのところに、一人でも多くの有志連合の人たちを、行かせないこと……!」
「わかってるじゃねえか……それじゃあ、始めようぜ、ルーフェアさん!」
『愚かな……ですが、勝てぬとわかり切った戦いを挑んでくるその度胸だけは称賛しましょう』
ルーフェアさんのトランジェントガンダム・キャメロットが構えていたGNパルチザンを振り下ろし、控えていたフォースメンバーが飛び出したのを合図にして、俺たちはエネルギー量的にもダメージ的にも、きっと最後になる戦いへと挑む。
それが未来を開くための戦いだと信じて、サラとGBN、両方を救う道だと信じて。
生きてる限り、負けじゃない