リクがチャンピオンの待つところに行った今、俺たちが倒すべきなのはルーフェアさんたちだというのはわかっている。
だけど、テンコ様の時と同じようにその白亜の機体から放たれるプレッシャーは相当なもので、猛吹雪を纏っていることも含めて一ミリも油断がならない。
チナツとマフユも戦闘態勢を取って、ルーフェアさんの号令を受けて飛び出してきたフォースメンバーと思しき集団と対峙していた。
「行くわよマフユ、ここがアタシたちのウイニングロードへの分岐点!」
「……はい、出し惜しみはなし、です……!」
「わかってるじゃない……! 行くわよウイニングロードアストレイ! エクストリームブラストモード!」
「G-ジェミニアン、お願い……! 応えて……PXバースト!」
赤と青、二つの光の翼が花開くかのように展開されて、迫りくる軍勢へと対峙する。
マフユのバスターライフルによる一撃がプレートメイルを纏った騎士のようなガンプラへと直撃し、それを交戦の合図として、チナツも上空へと急上昇した、ブレイヴのカスタムモデルへと狙撃を放つ。
だけど、ルーフェアさんは玉座に座す女王のように動く気配を見せず、俺と対峙していながらも脱力した姿勢で直立していた。
「王者の余裕ってか……上等だ! その余裕、俺とストライクスフィーダが真っ向から打ち破る! 次元覇王流! 波動裂帛拳!」
『なるほど。炎を操りますか……ですが』
二百パーセントのバーニングバーストによって、衝撃波というよりは撃発した炎の奔流と化している波動裂帛拳に対して、ルーフェアさんは手にしていたGNパルチザンを展開すると、そこから冬そのもののような色合いを帯びた、蒼く透き通る一撃を放つ。
波動裂帛拳が荒れ狂う炎だというなら、ルーフェアさんが撃った一撃はどこまでも揺らぐことなく静止させる氷の権化だった。
ぶつかり合った火柱をも凍らせて、トランジェントガンダム・キャメロットが纏う冷気が一層激しさを増す。
『言ったはずでしょう。足掻くだけ無駄だと……この私と「Morgan's Castle」に慢心はない。リコリス、仕掛けなさい』
『はい、お姉様! 次元覇王流だかなんだか知らねえけどな……お姉様のためにここでくたばれよ、ストライク!』
「嫌だね! 例え無駄だとしても、どれだけ届かないとしても、やられてない限りは……機体がもつ限り、俺は絶対に膝を突かねえ!」
『往生際が悪りいんだよ!』
リコリスと呼ばれたダイバーが駆る、インフィニットジャスティスガンダムのソールをハイヒール状に換装し、頭をトリスタンのものに置き換えた機体がグリフォンビームブレイドを展開しながら蹴りかかってくる。
でも、諦めが悪かろうが往生際が悪かろうが知ったことか。生きてる限りは負けじゃない、だったら生きてる限り足掻いて、足掻いて、足掻き抜く。
それだけの覚悟を決めて、俺はサラと世界の両方を取るという道を選んだんだ。
だったら上位ランカーがなんだ、魔物だろうが化け物だろうが、怯んでなんかやるものか。
例え俺の攻撃がカスダメしか与えられなかったとしても、百万発ぶん殴れば倒れるはずだ!
「次元覇王流! 桜花紅蓮脚!」
『アタシのインフェルノートと互角に……!?』
「ああ、そうだ! 例えガンプラの性能で負けてたとしても……今のストライクスフィーダは二百パーセント、そして俺も二百パーセントで四百パーセントだからな!」
『意味わかんねえんだよ!』
リコリスさんは怒りを剥き出しにしながら、桜花紅蓮脚でぶつかり合ったストライクスフィーダを強引に弾き飛ばすと、凄まじい脚捌きで怒涛の蹴りを加えてくる。
なるほど、あれだけの実力を持ってるのに、ルーフェアさんが動かない理由はこれか。
チナツが追いかけるのに苦心しているブレイヴをトライドライヴにして、翼をガイアガンダムのグリフォンビームブレイドに置き換えたガンプラや、マフユが対峙しているジャスティマとエピオンのミキシングモデル。
他のメンバーも手練れ揃いだけど、俺が相手しているリコリスさんとガンダムインフェルノートも含めた三人が化け物じみた実力だからこそ、ルーフェアさんはわざわざ手を出すことなく、吹雪を巻き起こしながら立っているだけなのだ。
そしてきっと、この吹雪にも秘密がある。
根拠はない。だけど、俺の直感が、このままルーフェアさんたちと長期戦にもつれ込めば、負けるのは俺たちの方だと告げていた。
「次元覇王流、旋風竜巻蹴り!」
『チッ……纏った炎がバリアになってやがんのかよ、鬱陶しい! いい加減……往生しやがれ!』
バーニングバーストのおかげで今、ストライクスフィーダは炎の、焔の護りを得ているといってもいい。
リコリスさんのキックを足の甲で受け止められているのも、バーニングバーストが二百パーセントに達しているからだ。
その代償として、エネルギーは見る見るうちに目減りしていく。
でも、これだって必要経費だ。
脚同士での鍔迫り合いを振り解いて、今度は膝と爪先を繋ぐビームブレイドじゃなく、踵をこっちに向けて素直なキックを繰り出してきたインフェルノートの一撃には、間違いなく「なにか」が隠されている。
俺は、受け止めるのではなくそれを最小限の動作で回避して、カウンターの膝蹴りを叩き込む。
『コイツ……っ!』
「やっぱりギミックを隠してたか!」
案の定というかなんというか、ハイヒール状に改造されていたインフェルノートの踵からは、パイルバンカーの杭が飛び出していて、受け止めれば、やられていたと確信する。
蹴り技に特化した相手ってのも珍しいけど、キックボクシングとかムエタイとかカポエイラだとか、脚を使う格闘技とは、生身で戦ったことがあるから、やれなくはない。
だけど、慢心はそれだけで敗北を引き寄せる。油断せずに持てる力の全てを叩き込んで、ルーフェアさんを、リコリスさんを倒すんだ。
『生意気なんだよ……ムカつくぜ! 食い下がってくるってんなら食い破ってやるよ! 「フェアリィ・シード」!』
「時限強化か!?」
リコリスさんが叫ぶと、ガンダムインフェルノートの双眸が緑色から真紅に変わると同時に、その速度はさっきまでとは比べものにならないほど上昇する。
そして、インフェルノートはサマーソルトキックの要領で脚部から「飛ぶ斬撃」を繰り出す。
咄嗟にビームシールドを展開して直撃は回避こそしたけど、その一撃はビームシールドを貫通して、イクシードチャージの肝であるラジエータープレートを損傷させていた。
「ぐっ、排熱が追いつかねえ……!」
『キャハハ! アタシの一撃を殊勝に防ごうとなんかすっからだよ! そのまま過剰出力で潰れてろ!』
「だったら潰れる前にあんたを倒して前に進む! 次元覇王流! 聖槍……蹴りぃっ!」
『無駄だって……言ってんだろうが!』
コックピットにイエローコーションが明滅するのを確認しつつ、真正面からリコリスさんとインフェルノートを討ち倒すべく、俺は聖槍蹴りを繰り出す。
炎のヴェールに包まれたストライクスフィーダの足が、ビームブレイドを展開したインフェルノートの脚とぶつかり合って、局所的な曇天に覆われた空に火花を散らしていく。
今度は足先をバーナーで焼かれているような痛みを、そして足の骨が軋むような感覚がアシムレイトの代償として雪崩れ込んでくる。
だけど、こんなの安いもんだ。
サラの苦しみに比べれば、今も命の火を吹き消されることに怯えている、あの子に比べれば、どうってことはない!
俺は、操縦桿をきつく握り締めて咆哮を上げた。
「おおおおおッ! ストライクスフィーダ、二百五十パーセントだぁぁぁッ!!!」
『テメェ、出力が上がって……!? きゃあっ!』
「そうだ……見せてやるぜ、俺の覚悟を、挑戦を! ここでぶっ壊れて倒れたとしても! 俺たちは……サラも、GBNも……両方を救うことを諦めたりなんかするもんか!」
インフェルノートの右足を砕いた俺は、そのままガラ空きになった胴体に左足での回し蹴りを叩き込んで、リコリスさんを地面に叩きつける。
VPS装甲に守られていても、リンファから学んだ「攻撃の衝撃そのものを相手の内部に浸透させる」一撃は、フレームを歪めて、ルーフェアさんを、氷の女王を守っていた騎士の一人を地に落とす。
これでリコリスさんは戦闘不能とはいかなくても、結構なダメージが入ったはずだ。あとは、立ち上がる前に速攻をかければ。
「次元覇王流! 疾風突き!」
『下がりなさい、リコリス』
『お姉様……!?』
『私は貴女を失いたくありません。なればこそ、ここから先は私が相手をいたしましょう、ユウヤ』
そう思って繰り出した一撃を、GNパルチザンの穂先が受け止める。
さっきよりも幾分か声に鋭さを増したルーフェアさんは、力任せにストライクスフィーダを引き離すと、その双眸に光を宿し、今度は戦闘態勢をとって俺の前に立ちはだかった。
エネルギーの残量は余裕がないどころじゃない。それに、放熱だって追いついていないとか、色々絶望的な状況だ。
それでも、だとしても。
魔法のように、呪いのようにその言葉を心の中で叫び続ける。
ルーフェアさんたちにも、アスカにも……有志連合にも負けられない理由があるなら、俺たちにだって理由はあるんだ。それがぶつかり合うってんなら、最後まで意地を張り通したやつが勝つ、それだけだ!
「次元覇王流! 流星螺旋拳!」
『荒々しい一撃……ならば、近寄らせずに砕くのみ。往きなさい、GNグラキエスビット!』
トランジェントガンダム・キャメロットの背中に二枚装備されているクアンタのバインダーから、氷の刃を形成したソードビットとでもいうべきものが俺を包囲するように飛んでくる。
「だったらこっちもだ! ブレードドラグーン、射出!」
『愚かな……自動制御に頼った無線兵器など、恐るるに足らず……!』
「なんだ!? ブレードドラグーンが、凍って……!?」
GNグラキエスビットとその切っ先をぶつけ合っていたかと思えば、射出したブレードドラグーンは凍りつき、力なく地面へと落下していく。
一体どんな手品を使ったんだ、ルーフェアさんは。
一瞬の驚愕によって生まれた隙を突くかのように、そして答え合わせをするかのように、突き出されたGNパルチザンがストライクスフィーダの左肩に突き刺さったところから、内部フレームが凍りついていく冷たい感触がアシムレイトを通して伝わってきた。
「まさか、この吹雪と、その機体のクリアパーツ……!」
『我が「絶凍領域」とキャメロットが纏う銀盤の冷気……よくぞ見抜いたと称賛いたしましょう。ですが、それ故に貴方に勝ち目はありません』
「へっ……冗談じゃ、ねえぜ!」
凍りついた左腕を、バーニングバーストの余剰出力が生み出す熱で無理やり溶かしながら、俺はマニュアル操作で制御されているのであろう、GNグラキエスビットを出来る限り回避し、前進する。
まだだ、まだ生きている。ならまだ戦える、そうだろ、ストライクスフィーダ。
全身が凍りつくような冷気は、考えてみれば二百五十パーセントの、排熱限界を超えたバーニングバーストをもたせるのに利用できる。実力はともかく相性という意味で勝っているのは俺の方だ。
「それでもこのまま放っておけば全身が凍り付いて動けなくなる……! ならその前に、エネルギーが尽きる前にあんたを倒す! ルーフェアさん!」
『言ったはずです。貴方に勝ち目はありません』
「そいつは……どうかな!」
腰から引き抜いたリュミエール・ザンバーを展開して、俺はそれを躊躇いなくルーフェアさんへと放り投げる。
リュミエール・ザンバーを投げたのは、当たれば痛いし、避ければ隙が生まれると、そう割り切った上での、チャンスメイクとの交換条件だ。
再び距離をとってGNグラキエスビットの操作に集中しているのであろうルーフェアさんに向けて、俺はその一瞬に全てを賭けた一撃を撃ち放った。
「カミキガンプラ流奥義! 鳳凰覇王拳!」
『くっ……GNイヴェルブラスター!』
「押せよおおおおおッ!!!」
展開されたGNパルチザンの穂先から放たれる絶対零度の冷気と、二百五十パーセント、限界を超えた鳳凰覇王拳が激突し、相克する。
これでダメなら正真正銘、本当に打つ手はない。
全身全霊をかけて、俺の全てを乗せて撃ち放った鳳凰覇王拳は、絶対零度の冷気を呑み込むかのように翼を広げ、トランジェントガンダム・キャメロットの装甲をその炎で焼き焦がしていく。
その代償として、凍りついていたところを無理やり溶かして使っていた左腕が弾けて砕ける。
左肩に走った激痛に顔をしかめながらも、俺は歯を食いしばってそれを堪え、残った右の拳に出力を集中させた。
押せよ。押し切ってくれ、スフィーダ。お前と俺は、こんなとこで倒れてなんかいられないんだ!
その思いに応えてくれたのか、ストライクスフィーダの内部から溢れ出す余剰出力が右の拳へと集中し、凍りかけていた鳳凰の炎を蘇らせていく。
そして、その姿を取り戻した炎の鳥は、白亜の女王を、銀盤の貴人を今度こそ完全に呑み込んで、焼き尽くした。
──だけど。
『……貴方の覚悟、しかと受け止めました。ですが……ここまでです』
「まだ……立ってやがるのかよ……!」
『言ったはずです、元より勝ち目はない戦いだと。例えいくらかの兵がビルドダイバーズ側に寝返ったところで、その数は二千……一万八千の精鋭を前に、まともに戦えるはずなどない。少し考えればわかることでしょう』
ああ、そうだな。
ルーフェアさんが言ってることは確かに正しいのかもしれねえ。戦力差が九倍もあって、しかも相手が精鋭揃いとくれば、リクたちが、俺たちが挑んだ戦いがどれだけ無謀なものかわかるってもんだ。
でもな。
「わかってるさ……けどな、そんなのは……諦める理由にならねえんだよ……!」
『過酷な現実を前に、強がる意味などありません。ただ受け入れて、その道を進めばいい。そうすれば余計に苦しまなくて済む……貴方も、あの、サラという子も』
「……そうかよ、けどな! 例えあんたの言うことがどれだけ正しかったとしてもな、困ってるダチを助けるのに、理由だとか理屈だとか、そんなもんはいらねえんだよ!」
『……そのために縋り付くのが一割にも満たない希望だとしても? 九割の確率でこの世界が崩れ去るとしても? 貴方がたの勇気は認めましょう。ですが、勇気で数字を補うことはできない……そして、この世界でしか笑えない者がいる。この世界でしか、居場所を見出せない者がいる。故に世界は守られねばならない。なにを犠牲にしたとしても……それが、現実というものなのです……!』
とうとう限界を超えて膝をついたストライクスフィーダを、バーニングバーストの護りを失って凍りついていく関節を無理やり動かして立ち上がらせていく。
愛と勇気が何かを救うのは夢物語だと言いたいんなら言えばいい。笑いたければ笑えばいい。
それでも俺は諦めない。俺たちは諦めない。諦めて、堪るもんかよ。
「行くぜ、スフィーダ……ここからが本当の正念場だ!」
チナツもマフユも、通信画面にはレッドアラートが明滅しているのにもかかわらず、諦めずに戦っている。
ルーフェアさんが言う通り、俺たちが選んだ道が砂漠に落ちた一粒のダイヤモンドを拾い上げるようなものだとしても、希望の灯だけは絶やすものかと、足掻いて、足掻き続けているんだ。
そしてそれは、無駄なんかじゃない。最良最善の選択肢があるなら、その可能性を求めて立ち上がることを、誰が笑えるもんか。
ストライクスフィーダの双眸に力強く光が灯る。限界を超えたはずの、その反動を受けたはずの機体が燃え上がるように熱を滲ませ、炎を纏う。
晴らしてやるんだ、この嵐を。
吹雪の闇に閉ざされた、その先にあるものを、俺たちが持っているその気持ちを手放したりなんかしないために、一発でダメだってんなら、百万発ぶん殴るまでだ。
「限界を超えろ、その先を超えろ、ストライクスフィーダ! バーニングバーストシステム……三百パーセントだ!」
『自壊のリスクをこの期に及んで抱え込むとは……!』
「リスクなしで手に入れられる未来があるもんかよ……! あんたの理屈はわかってるさ! だけどな、例え俺たちがサラを消して、GBNを取ったって、その先にずっと後悔は残る! それだけじゃねえ、またサラみたいな命が生まれれば、その命を殺し続けて、世界を続けていくことになる! そんな未来……俺はごめんだ! 次元覇王流! 蒼天紅蓮拳!」
俺は振り下ろされたGNパルチザンの刃を、炎を纏ったアッパーカットで砕くと、よろめいたルーフェアさんの機体へと、迷わず回し蹴りを叩き込む。
炎を纏った一撃は、全てを凍らせる冷気の鎧を溶かして、トランジェントガンダム・キャメロットの胴体と内部フレームにダメージを与える。
『これほどの力が、どこに……っ!?』
「ここに……俺の心に、スフィーダに受け継がれたストライク焔の魂にある!」
『世迷言を……!』
「次元覇王流! 疾風突き!」
内部からの熱で装甲が溶け落ちていくのに、フレームが絶えず悲鳴を上げているのに見て見ぬ振りをして、アシムレイトから逆流してくる痛みを堪えて、俺はルーフェアさんに追撃の疾風突きをお見舞いした。
三百パーセント、ストライクスフィーダに無理を超えた無理をさせていたことで、コックピットには絶え間なくレッドアラートが明滅し、コンソールに示された損傷箇所は全身にまで及んでいる始末だ。
それでもいい。この一秒だけでも、一瞬だけでも、白い闇を払って光を取り戻すために、全てを燃やし尽くしてくれと、そう願う。
コックピットへとオープンチャンネルでの広域通信が飛んできたのは、ちょうどそのタイミングだった。
『まだ立ち上がるのか……』
『諦めない……!』
『ったりめえだ……!』
チャンピオンとリク、そしてもう一人の言葉が、有志連合とビルドダイバーズに所属しているダイバーに、いや、違う。全てのダイバーに、届けられる。
『なぜそこまでする? 元より勝ち目のない戦いだったはずだ』
『俺……あなたに憧れて、ガンプラバトルを始めました。その強さに……決して諦めない心に憧れて。俺、ガンプラが……ガンプラバトルが大好きです。あなたに憧れて始めたGBNが大好きです』
リクは、絞り出すように言葉を紡ぐ。
『ガンプラが……ガンプラバトルが大好きだという気持ちでたくさんの人と繋がり合える。いろんな人がいろんな目標を持って、自分の歩幅で進んでいけるGBNが大好きで……そこで出会ったのが、サラなんです』
拳と槍の切っ先がぶつかり合う音が鳴っている中でも、スラスターの噴射音が轟く中でも、リクの言葉はどこまでも真っ直ぐに、心へと染み渡っていくように響き渡る。
『サラにいっぱい教えてもらった。一緒に経験した。皆との絆、ガンプラとの繋がり。楽しむこと……諦めないこと、前を向いて進むこと……ガンプラを、大好きだってこと!』
『あの少年、なにを……!』
「黙って聞けよ、女王陛下!」
『くっ……!』
そうだ、そこに俺たちの無粋な言葉はいらない。
だから続けてくれ、リク。
そして聞かせてくれ、お前の思いを、お前の理由を、諦めないその気持ちを!
『いっぱい感謝している……』
『そうだよ! 私だって諦めたくない! サラちゃんと一緒に! サラちゃんにいっぱい、笑顔にしてもらったもん!』
『そうだ! 僕だって応援してもらった! 自分を信じるって気持ち! 変わりたいって気持ち! 全部励ましてもらった!』
『そう、光を失った私に、もう一度道を照らしてくれた! 仲間といられるぬくもりを、もう一度教えてもらった!』
『立ち止まり、挫けてしまった自分にもう一度前に進む力を! 勇気をもらったんだ!』
ビルドダイバーズの言葉が響く。
戦場の空に、大地に、このGBNという世界に遍く、届き渡る。
『だから、諦めたくない! サラにいっぱい笑顔にしてもらった! 大好きって気持ちを教えてもらった! 俺たちの「好き」が産んだ命なら……俺たちの手でサラを消したりしちゃいけない……自分たちの好きを、自分たちで否定したくないから! だから!』
──俺たちの好きを、諦めない!
その言葉が、この場に存在する誰よりも、なによりも強く心に突き刺さる。
そうだ。俺たちの「好き」って気持ちが産んだのがサラという命なら。
「それを消させてなんか、堪るもんかよ!」
『好きと嫌いの二元論で世界は還元できるものではありません……! 奇跡など……奇跡など、望んで起きるものではないのです! なぜそれをわかろうとしない!』
「それがサラを……俺たちの『好き』が産んだ命を諦めるってことなら、わかって堪るか! 奇跡は起きる、起こしてみせる! リクたちは必ずやってくれるさ! だったら、俺たちはその手伝いをする! あいつを信じて……俺たちの『好き』を信じて! 次元覇王流! 聖拳突きぃぃぃッ!!!」
残された全ての力を振り絞って、俺はトランジェントガンダム・キャメロットへと渾身の力を込めた拳を叩きつけた。
絶対零度の領域を開いていた機体の胴体にヒビが入ると同時に、限界を迎えたストライクスフィーダの右腕もまた砕け散る。
「行けよ、リク! ビルドダイバーズ!」
ありがとう、ストライクスフィーダ。ありがとう、ストライク焔。チナツ、マフユ。皆。俺をここまで、届けてくれて。
あとは笑って、見送るだけだ。
チャンピオンとの激闘を制したあいつを、「大好き」って気持ちを最後まで諦めなかったリクたちが起こした、奇跡の行く末を。
踏み締め、往け