逆襲のクロト   作:皐月莢

134 / 144
ファウンデーションにて・①

 薄暗い払暁の空を切り裂き、ミサイルが飛翔する。

 その一撃は対空砲を破壊すると、連続して放たれたミサイルの雨嵐が街に降り注ぎ、建物を無差別に破壊していく。あちこちで火の手が上がり、爆発音とサイレンが街全体に響き渡る。

 鋼鉄の機動兵器が全てを蹂躙しながら、足早に侵攻を開始する。

 ダガーの大部隊がビームを連射し、空を制圧したウィンダムが空爆を開始する。

 それらは同様に街を踏み荒らすザクやグフの群れと激突し、必死に防衛線を維持しようとする守備軍を蹴散らしながら周囲に破壊を撒き散らした。

 ここは、かつてアコード事変で世界を揺るがしたファウンデーション王国の第2都市だ。

 首都を喪失し、首脳陣を喪いながらも日常を取り戻そうとしていたこの街の平穏は再び破壊されていた。

 瞬く間に地獄と化した街の住民たちは絶望の表情を浮かべ、激しい戦火と混乱の中で逃げ惑うことしかできなかった。

 

 しかし、彼らは目の当たりにした。

 天空から舞い降りた堕天使と、それに付き従う白銀の翼を。

 

〈こちらは世界平和監視機構コンパス。両軍の攻撃部隊に勧告する。ただちに戦闘行為を停止して撤退せよ。繰り返す──〉

 

 戦線に辿り着いたクロト・ブエルの蒼い瞳が、ストライクレイダー零式のコクピットから戦況を見据えていた。

 クロトの勧告は公共回線を通じて周囲のモビルスーツ部隊に届いたが、誰一人として耳を貸す者はいなかった。両者の武力衝突はますます激しさを増し、街はさらなる破壊に晒されていた。

 街に攻撃を加えているのはブルーコスモスに所属する武装勢力と、ネオ・ブラックナイツを自称するレジスタンスだ。

 アコード事変が終結し、コンパス参加国とユーラシア連邦、ファウンデーション王国の間で停戦協定が結ばれた。

 しかしその偽りの平和は、早くも崩れ去っていた。

 かつてギルバート・デュランダルが推し進めようとしたデスティニープランの実態、ファウンデーション王国の真実、プラントの現役国防委員長であるハリ・ジャガンナートの暴走。

 一連の真相が明るみになったことで、ブルーコスモスは最大の被害者であるユーラシア連邦を中心に急速な勢力回復に成功した。

 一方でプラント国民から真の救済者だったと同情の声を寄せられながらも、アコード事変の全責任を背負う形となったジャガンナート派はオルフェ・ラム・タオ政権の支持者と合流し、遺伝子の絶対性を掲げるネオ・ブラックナイツを設立した。

 そして大幅な弱体化を余儀なくされたファウンデーション王国領の実効支配を巡って、両者は激しい争奪戦を繰り広げていたのだ。

 しかしどちらの軍にとっても、逃げ惑う一般市民は敵だと判断しているらしい。

 建物の影に隠れる市民たちは遠くの爆発音に恐怖し、負傷した者たちが助けを求める叫び声があちこちで響いていた。

 クロトは咄嗟にシールドブーメランを投擲して市民に向かって放たれた攻撃を防ぎながら、両軍のモビルスーツを狙って破砕球を投擲した。

 ビームライフルを連射していたウィンダムとザクを纏めて打ち砕き、斬り掛かってきたダガーを手元に戻したシールドブーメランで両断する。

 死を告げる襲撃者の到来によって混乱が加速する中、クロトは通信機を作動させた。

 

〈キラ!〉

 

 2人の間にそれ以上の言葉は不要だった。

 

〈任せて!〉

 

 キラ・ヤマトの操るカグヤアカツキは、防衛目標である政府施設とその手前に設置された避難場所を守るため急降下した。

 先頭でビームライフルを構えているグフの腕を分割したサーベルで斬り飛ばすと、掌から発生させたビームシールドで誘導ミサイルを無力化する。

 僅かな間隙を突いてキラの後方を狙ったビームが、鮮やかな白金色の装甲を掠めた。しかし装甲が展開している薄紫色の膜に阻まれ、周囲に拡散して消えていく。

 フェムトメートルの領域を制御する最新技術を導入した次世代装甲、フェムテク装甲の本領が発揮された瞬間だった。

 電力を消費することなく遠距離からのビーム兵器を無力化し、実体攻撃に対しても高い防御力を半永久的に維持する装甲は、こうした無秩序な戦場で圧倒的な優位性を誇っている。

 キラは滑らかな挙動でビームライフルを左右の手に構えると、蒼と白の機動兵装ウィングに搭載したレールガンと共に、モビルスーツ群が放ったミサイルを狙い撃った。

 次々に迎撃されたミサイルが空中で誘爆を起こし、眩い閃光が周囲を照らす。

 クロトとキラの武力介入によって防衛線の立て直しに成功した守備軍は、徐々に両軍の侵攻を押し返し始めた。

 すると、その瞬間だった。

 甲殻類のような姿をした巨大なモビルアーマーが、ブルーコスモス相手に奮戦していた守備隊を薙ぎ払いながら姿を現した。

 

「なんだ!?」

 

 クロトの目が、その見慣れない巨体を捉えた。

 そのレイダーの3倍近い巨体を誇るザムザザーは、全身に強力な兵器を多数搭載し、戦艦の主砲を防ぎ切る圧倒的な防御力とモビルスーツに匹敵する運動性能を併せ持つ機動兵器だ。

 もはや大型モビルアーマーというよりも、小規模な機動要塞と言えるだろう。 

 純粋な戦闘能力こそデストロイに劣り、制御系統の複雑さから機長、操縦士、砲撃手と三人のパイロットが要求されるものの、その汎用性は連合製機動兵器の中でも最上位だろう。

 ザムザザーは四本の足から強烈なビームと砲弾を発射し、空中でウィンダムを蹴散らしていたレイダーを牽制するように動き回る。

 レイダーはザムザザーの猛烈な弾幕を紙一重で見切って距離を詰めると、交錯した刹那の瞬間に機体を変型させてビームサーベルを抜刀した。

 赤熱した大型クローの攻撃を躱すと、レイダーは1本の足を斬り裂いた。さらに健在な3本の足から放たれた十字砲火を掻い潜って急上昇し、ビームライフルを発射する。

 ザムザザーのパイロットたちは上部に展開した陽電子リフレクターで防御した瞬間、クロトの意図に気付いたが、既に手遅れだった。

 地を這うように回転しながら飛来したシールドブーメランが、陽電子リフレクターに守られていない無防備な底面部からザムザザーの装甲を貫いた。

 無敵の機動要塞として圧倒的な力を振るっていた機体は、食い破られた中心部から炎を撒き散らし始めた。

 直後に巨体が崩壊し、爆発の衝撃が周囲の瓦礫を巻き上げる。

 形勢不利を悟ったブルーコスモス軍は、やがて潮が引くように撤退を開始した。激しい砲火に晒されていた守備軍には、ブルーコスモス軍を追撃する余力など残されていないようだった。

 それでもネオ・ブラックナイツの一部は、まるで復讐心に突き動かされているかのようにレイダーを狙って攻撃を仕掛けてきた。

 クロトはシールドで防御すると、空中に退避しながらビームライフルを連射した。

 さらに四方八方から襲い掛かって来るモビルスーツを次々に斬り付け、叩き潰し、撃ち続けた。

 やがてクロトが周囲を見渡すと、目の前には虚無と硝煙に満ちた壮絶な光景が広がっていた。

 崩壊した建物、燃え燻っている瓦礫。

 そして町を埋め尽くすように横たわる、破壊されたモビルスーツの群れ。

 激しい戦闘の余韻が街全体に色濃く刻まれ、各地で救助活動が始まる中、負傷者の叫び声がそこら中で響き渡っていた。

 またこの繰り返しか。クロトは無言で溜息を吐くと、全身の力を抜いた。

 

 

 

 C.E.75年。

 全ての始まりは、ファウンデーション女王アウラ・マハ・ハイバルと宰相オルフェ・ラム・タオが、新たな人類“アコード”を支配者とするデスティニープランの導入を計画したことだった。

 アウラはコーディネイターを超越した存在としてアコードを創造し、その頂点として生まれたオルフェの下で新たな世界秩序を築こうと企んだ。

 オルフェは自分達の障害となるだろう世界平和監視機構コンパスを罠に掛けて壊滅に追い込み、その名誉を貶めた。

 そして計画の中核であり、オルフェの運命の番として造られたラクスを連れ去り、核攻撃で国を追われた哀れな被害者を騙って宇宙へと逃亡した。

 月面の元地球連合軍基地ダイダロスを占拠したオルフェは、そこで極秘裏に修復された軌道間全方位戦略砲“レクイエム”を使用し、核攻撃の冤罪を被せたユーラシア連邦の首都モスクワをその報復措置として焼き払った。

 さらにこの核攻撃を口実に世界各国に対してデスティニープランの導入を強要し、応じなければレクイエムによる無差別攻撃を行うと脅迫した。

 同時にプラント最高評議会急進派のハリ・ジャガンナート国防委員長が率いるザフト軍がプラント本国でクーデターを引き起こし、ファウンデーションに同調してコーディネイター優位の世界を作ろうと画策した。

 その混乱の中で奇跡的に救助されたクロトは、生き残った仲間とともにファウンデーション軍およびザフト軍と戦った。

 クロトたちは激戦の末に彼らの本拠地であるアルテミス要塞を壊滅させると、アコードの創造主であるアウラを討ち、首謀者のオルフェを拘束した。

 世界を恐怖に陥れたレクイエムは完全に破壊され、彼らの掲げたデスティニープランはその功罪も含めて否定された。

 こうして世界は、再び平和を取り戻したかのように見えた。 

 

 だが、何も終わっていなかった。

 

 停戦協定が結ばれると同時に、アコード事変の真相が全世界に公開された。

 世界各国から非難を受けていたコンパスが名誉回復する一方で、歴史あるファウンデーション王国の独立を達成した女王アウラ・マハ・ハイバルと若き宰相オルフェ・ラム・タオの正体は、自作自演で自国の首都を核の炎で焼き払い、それを大義名分に地球圏を支配しようとした史上最悪の虐殺者だったことが明るみになった。

 最大の被害を受けたユーラシア連邦はファウンデーション王国の再併合に乗り出した。

 だが、首都を撃たれて大幅に弱体化したユーラシアの各地で大規模な独立運動が勃発し、再併合は免れることとなった。

 しかし事実上の無政府状態となったファウンデーション王国領内では、タオ政権の支持者とジャガンナート派を母体とするネオ・ブラックナイツと、かつての求心力を取り戻したブルーコスモス軍との間で激しい武力衝突が連日繰り広げられるようになった。

 事態の収拾を図るため、コンパス参加国であるオーブ連合首長国、プラント、大西洋連邦は停戦協定で主権を回復したファウンデーションに大規模な復興支援を行ったが、首都と指導者の大半を喪ったファウンデーションは依然として政治的混乱が続いていた。 

 そんな中でコンパスの活動凍結が解除され、世界各国はアコード事変の収拾で存在感を示したコンパスに期待を寄せることとなり、その再開後初となる任務は、アコード事変で敵対したファウンデーション王国領における治安維持・復興支援活動に決定した。

 併せてこれまでコンパスが行っていた、いわゆる世界平和監視運動も引き続き実行することが決められた。

 しかしプラント政府は多額の復興支援金をユーラシア連邦に支払いながらも、レクイエム発射をジャガンナート派の独断として責任問題の回避を行う一方で、クーデターに参加した者たちに対する同情の声も大きく、その処分に関して国内で騒動が起こった。

 結果としてプラントは第2のアコード事変を警戒する各国からの抗議を受けて地球上での活動を縮小せざるを得ず、コンパスへの人員・軍事供与も削減されることとなった。

 また大西洋連邦では国内のブルーコスモスが軍・民間を問わず大幅な勢力回復に成功し、またも世界を救ったムルタ・アズラエルの働き掛けもあって脱退こそ回避したものの、プラントと同様にコンパスへの資金供与は大幅に削減された。

 こうした事情が重なり、現在地球上で最も危険なファウンデーションには一騎当千の活躍が求められるコンパスの中でも、特に最高クラスの人材が配属されることになった。

 

 通称“ブエル隊”。

 

 先日小隊長に任命されたオルガ・サブナック、そのサブナック隊に転属したシャニ・アンドラス在籍時を上回ると噂される、3人の若きパイロットで構成された最強のモビルスーツ小隊だ。

 その小隊長クロト・ブエルは、イシュタリアから首都機能を移転させたファウンデーション第2都市に建設されたコンパスユーラシア支部を歩いていた。

 

「新型の様子は?」

「大丈夫。特に問題ないかな」

 

 クロトの問いかけに、キラ・ヤマトは頷いた。

 型式番号〈ORB−03〉──“カグヤアカツキ”。

 アカツキの後継機であり、次世代のオーブ軍フラグシップ機としてモルゲンレーテが開発を進めていた新世代の機体だ。

 設計データの流用元であるライジングレイダーと同時並行で開発が進められており、機体自体はアコード事変時にほぼ完成していた。

 しかしジャスティス強奪事件でその有用性が明らかになったフェムテク装甲の再現に難航し、最終決戦には間に合わなかった。

 後にフェムテク装甲を回収したことで技術習得に成功し、新型アカツキはついに完成を迎えた。

 その試験運用を兼ねて、オーブは活動凍結が解除されたコンパスにターミナルから出向したキラ・ヤマトの専用機として期限付きで配備したのだ。

 

「被害状況は?」

 

 クロトの問いに、出迎えに来ていた女性が答えた。

 

「暫定政府の発表では死者115名、そのうち民間人は34名です。ですが、この分だとさらに増える見込みかと」

 

 女性は真っ直ぐに伸ばした青い髪にすらりとした長身で、目元を覆う洋風の仮面を装着していた。

 

「それって多いの?」

 

 どこか他人事のようなクロトに対し、女性は微かに首を振りながら答えた。

 

「いえ。この半年間に国内で起こった武力衝突における民間人の平均死者数は、この3倍です」

 

 クロトは仏頂面のままで、沈んだ表情のキラに視線を向けた。キラは深く考え込むように、視線を落としていた。

 

「だったら上出来か」

 

 そんなクロトの言葉に、キラは顔を上げた。その目には怒りと無力感を滲ませていた。

 

「そういう問題じゃないと思うけど」

 

 だが、どうしようもないのもまた事実だった。

 現在ファウンデーション王国領の実効支配を狙って、ブルーコスモス軍とネオ・ブラックナイツは連日武力衝突を繰り返している。

 彼らはターミナルの調査では、ファウンデーションの東西に位置するユーラシア連邦と、汎ムスリム会議の軍事緩衝地帯に潜伏している可能性が高いと言われている。

 一向に彼らの戦力が衰えないのも、非コンパス承認国であるユーラシア連邦がブルーコスモスの勢力拡大を事実上容認していることと、第1次大戦以来親プラント国家である汎ムスリム会議がネオ・ブラックナイツを支援しているからだと噂されている。

 特に汎ムスリム会議はデュランダル派やジャガンナート派が多数潜伏しているとされており、未だプラント国内に一定のコネクションを保有しているようだった。

 そこまで分かっていながら具体的な対応策を取れないのが、ファウンデーション軍とコンパスの現状であり、世界の現実だった。

 世界中の人々は、決して戦争を望んでいるわけではない。

 しかしアコード事変で究極のコーディネイター“アコード”が、自作自演でナチュラルを大虐殺する事態が起こった。

 そんなかつて行われた血のバレンタイン事件とは比較にならない悪辣な手法を、プラントの現役国防委員長を含めた多くのコーディネイターが支持したことも明らかになった。

 さらに世間一般には秘匿されているが、遺伝子操作によって人間が他者の精神に干渉する能力を獲得し得る可能性も明らかになった。

 その具体的な技術こそアウラ・マハ・ハイバルの死と共に永遠に葬られたが、こうして第2次連合・プラント大戦の後、危ういながらも均衡を保っていた世界のバランスは完全に崩壊した。

 ようやく訪れるかに思われたナチュラルとコーディネイターが手を取り合う時代は、皮肉にも人類の救世主を自称したオルフェ・ラム・タオによって、再び夢物語になってしまったのだ。

 

「どうして彼らはこんなことを……」

 

 目元を仮面で隠した女性の表情は読み取れなかったが、その言葉には深い悲しみが滲んでいた。

 するとクロトは仮面の女性──イングリット・トラドールに無慈悲な口調で返した。

 

「それ、君が言うの?」

 

 イングリットはそんなクロトの言葉に一瞬怯んだ。

 かつてファウンデーション王国の国務秘書官を務めていたイングリットはアコード事変の後、クロトの監視付きという条件でとある人物と共に仮釈放され、コンパス初の駐留任務に臨むブエル隊の専属支援要員として活動しているのだ。

 

「そんな言い方は……」

 

 キラは静かな口調でクロトを諭した。

 アコード事変の主犯格は確かに女王アウラ・マハ・ハイバルと宰相オルフェ・ラム・タオだったが、イングリットもその全貌を把握していた人物であることは間違いない。

 イングリットが忠誠を誓っていたファウンデーション王国を憎むブルーコスモス、アコードは真の救済者だったと主張し現体制を否定するネオ・ブラックナイツを非難する資格があるのかと問われると、イングリットは言葉を濁す以外に何も出来なかった。

 

「分かってるって」

 

 クロトは小さく息を吐いた。

 まるで責められているような気分になりながら、キラと共にエレベーターへと乗り込んだ。

 するとその瞬間、先程から姿を消していた青年が現れた。

 

「なぜ俺を後方に回した?」

 

 わずかに癖のある銀髪に、刃物のように鋭い瞳。

 そして東洋風の厳めしい仮面を装着した青年は、不満そうな口調で言った。

 イングリットと同様にクロトの監視付きという条件で釈放されたブエル隊最後のパイロット──シュラ・サーペンタインだ。

 書類上はファウンデーション軍人ながらコンパスに志願し、その卓越した実力を認められてブエル隊に配属された青年だ。

 しかしその正体は女王親衛隊“ブラックナイツ”で団長を務めていたアコードの1人で、アコード事変においても2度に渡ってクロトと死闘を繰り広げた実力者だ。

 もっとも今はイングリット・トラドール共々偽名を名乗っており、その阿修羅を連想させる姿から、誰ともなくミスター・シュラドーと呼ばれている。

 

「説明しないと分からないのか? 使えねーな」

 

 クロトは鼻で笑った。

 そもそもコンパスの理念上、市民の避難誘導は最優先事項だ。決して軽んじているわけではない。

 もちろんシュラの戦闘データをもとに、“ムラサメ改”を近接戦に特化した専用機“サキガケ”は同系統の“ギャン”に匹敵する潜在能力を秘めているが、制圧力においてレイダーやアカツキに劣るのだ。

 それに──。

 

「ここでは僕が隊長だ。従わないなら、僕にも考えがある」

「……くだらんな」

 

 シュラは退屈そうな口調で呟いた。

 純粋な戦力ではブルーコスモス軍にやや劣っているが、政治的な危険度では親アコードを掲げるネオ・ブラックナイツの方が脅威だ。

 彼らの侵攻理由はファウンデーション王国領の実効支配だが、その最終目的は別だと噂されている。

 一説にはかつてジョージ・グレンがコーディネイターの製造マニュアルを全世界に公布したように、彼らはアコードの製造方法を公開しようとしていると囁かれているのだ。

 アウラ・マハ・ハイバルが編み出したアコードの製造技術はコロニー・メンデル崩壊と共に喪われてしまった可能性が高いが、それはあくまで楽観的な見方だ。

 もしもネオ・ブラックナイツがこの国を実効支配し、その機密情報にアクセスすればその技術再現は決して不可能ではないだろう。

 幸い、そのサンプルが存在するのだから。

 

「クロトも、信用してない訳じゃないと思うよ」

 

 キラは真剣な表情で、シュラを見つめた。

 

「俺が奴らごときに敗れると?」

 

 シュラは余裕の笑みで返した。

 しかし次の瞬間、キラが上着で隠している通常のパイロットスーツと競泳水着を融合させたような新型スーツに気づき、顔を真っ赤に紅潮させた。




エピローグと言いながらも種自由編の冒頭みたいな状況ですが、コンパスが活動再開ってこういうことなので……。

ストライクレイダー零式:ライジングレイダーの装備を搭載したストライクレイダー弐式。シールドが武器になり、フツノミタマが没収された以外はほぼ同じ。

サキガケ:ムラサメ改の可変機能を封印する代わりにフレーム強度を高め、更に各種ミサイルをオミットして近接装備を増設し、ビームキャリーシールドを搭載した専用機。

【追記】

阿井上夫様から頂いた新生ブエル隊の支援絵です。

【挿絵表示】
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。