前回の後書きでも触れましたが、この世界線ではストライク引き籠り事件は消滅していますし、レイダー引き籠り事件も起こっておりません。この世界線は平和だなあ……
〈53〉
「──これで大体揃ったが、このフレイって奴の注文は無茶だぞ! エザリオの乳液だの、化粧水だの、こんな所にあるものか!」
「そうなの?」
「うん。ハイブランドの化粧品だから」
アークエンジェルクルーの日用品を入手するため、クロトはキラと案内人のカガリを連れてバルトフェルド隊の支配する街──バナディーヤに潜入していた。
本来アークエンジェル防衛の要であるクロト、キラの両名が揃って船を離れることは常識的に考えてあり得ない。
しかし案内人のカガリと歳が近く白兵戦の能力も高いクロトが護衛として選ばれ、それに対して先日の一件以来、クロトに苦手意識を持っていたカガリが暗に追加要員を要望したのだった。
とはいえ表向きはあくまでレジスタンスの一員であるカガリと、味方すら恐れる“悪魔”クロトとの潜入任務を志願する者は、
勿論、ナタルら一部の者は不測の事態に備えてキラをアークエンジェルに待機させるのが妥当だと主張した。
マリューもナタルらの主張が正しい事は重々承知だったが、先日報告が寄せられた暴力沙汰の一件を鑑みて、
元々同じカトーゼミの仲間という割には孤立していた感のあるキラだったが、コーディネイターとしての優秀な能力を発揮する中でキラは日に日に孤立を深めていた。
そんなキラが、欠点は多々有るものの戦闘能力という一点において自分を凌駕するクロトを慕っており、クロトもそんなキラを憎からず思っているのはマリューも薄々察していた。
ムウのアドバイスを真に受けた訳ではないが、キラは正規の訓練を何も受けていない女の子なのだ。せめてこの外出が気分転換になってくれれば……。そう考えたマリューは周囲の反対をはね除けて、キラの外出を許可したのだった。
「疲れたし腹も減った! さぁお待ちかねのドネル・ケバブだぞ……って、これ注文を間違えてないか?
テーブルの上に所狭しと並べられた6つのケバブを見て、キラとカガリは怪訝そうに首を傾げる。
しかしその妙な注文の犯人であるクロトはその内4つのケバブを手元に引き寄せて自嘲するように笑うと、何もソースを付けずにケバブを口にした。
「僕の身体は燃費が悪くてねえ。こういう時だけでもしっかり食べておこうと思って」
生体CPUであり、並のコーディネイターを遥かに超越した身体能力を持つクロトの代謝は極めて高い。しかし素体はあくまでナチュラルであり、その代謝を補うだけの消化能力を持たないクロトは常に体重を維持するのが困難という問題に悩まされていた。
特に今回の任務が始まって以来、常に物資が不足していたため一人だけ大量に食事を取る訳にはいかなかったアークエンジェルにおいて、その問題は顕著だったのである。
「そうか! ならこのチリソースで食べてみろ! 何もつけないより美味いぞ!」
そんな事情を知らないカガリは手元のチリソースを手に取ると、クロトのケバブの一つに勢いよくぶっかけた。
「待った! ちょっと待った! ケバブにチリソースなんて何を言っているんだ? このヨーグルトソースをかけるのが常識だろうが!」
その光景を見て、カンカン帽子を被り南国風の格好をした陽気なサングラスの男がクロト達の前に姿を現した。サングラスの男はカガリがチリソースをぶっかけたクロトのケバブを見て顔をしかめると、その隣のクロトのケバブに勢い良くヨーグルトソースをぶっかける。
「常識というよりも……ヨーグルトソースをかけないなんて、この料理に対する冒涜だよ! さあ、食べてみたまえ!」
「何なんだお前は? 見ず知らずの男に私の食べ方をとやかく言われる筋合いは無い!」
「あー! なんという……」
自分のケバブにチリソースをかけ、見せ付けるように頬張るカガリを見てサングラスの男は頭を抱える。
「ええと……私は……」
突然の事態に付いて行けないキラは、無言のまま猛烈な勢いでケバブを口に運ぶクロトへと視線を遣った。そんなキラを見て、自分の仲間を増やそうと考えたカガリとサングラスの男はキラのケバブに自分達のソースをかけようと近寄って来る。
「ケバブにはチリソースが当たり前だ!」
「ああー待ちたまえ! 彼女まで邪道に落とす気か!」
「何するんだ! 引っ込んでろよ!」
「君こそ何をするんだ! ええい! この!」
「あぁ……」
気が付けば──キラのケバブはミックスソースをかけたケバブというよりも、
「交換しよっか。折角だし、ミックスソースも試してみたいから」
「あ、ありがとう……」
キラの許可を得たクロトはミックスソース塗れになったケバブを口に放り込むと、最後に残った何も掛かっていないケバブをキラに差し出した。なんと周囲が騒いでいる内に、クロトは3つのケバブを完食していたのである。
そんなクロトの驚異的な食べっぷりを見たサングラスの男とカガリは驚嘆すると、ミックスソースを含む4種類の味を堪能し終えたクロトに問い掛けた。
「……で、どうだね? やはりヨーグルトソースが一番だろう?」
「もちろんチリソースだよな?」
クロトは神妙な表情を浮かべ、悩んだ末に結局ミックスソースを付けて食べているキラを見ながら口を開く。
「美味しいものは、どうやって食べても美味しいねえ。
「なんだって……!」
「き、気分だと……!」
「ふふっ……」
サングラスの男とカガリはあまりにも意外なクロトの返答に絶句したが、反対にクロトらしい答えだと感じたキラは可笑しそうに笑った。
〈54〉
「──ちっ、いい気なもんだぜ」
「あのテーブルに居る子供は?」
「そのへんのガキだろ? どうせ虎とヘラヘラと話すような奴だ」
「……」
ロケットランチャーを構えた帽子の男はスコープに映る今回の襲撃目標であるサングラスの男と談笑する子供の1人──赤毛の少年に何処か既視感を抱いていた。
こんな状況──大勢の同志と共に
そんな帽子の男の様子を不審に思った隣の男は、帽子の男の肩を叩いて聖戦の始まりを告げる一撃を促したのだった。
「では行くぞ、開始の花火を頼む」
「……あ、あぁ。魂となって宇宙へ帰れ! コーディネイターめ!」
帽子の男が少年の正体を思い出さなかったのは幸いだった。
その少年──クロト・ブエルはブルーコスモスの盟主ムルタ・アズラエルの直属兵であり、その事を思い出しても無意味な混乱をもたらすだけだったのだから。
「──伏せろ!」
外で響いた轟音に反応し、サングラスの男は机を蹴り上げて即席の盾にした。一瞬遅れて店内に飛び込んで来たロケット弾が店内で爆発する。
同じく轟音に反応したクロトはキラとカガリを両脇に抱えて伏せさせると、ポーチから拳銃を抜いて机の横から飛び出した。
「死ね! コーディネ──」
「蒼き清浄な──」
機関銃を乱射しつつ、四方八方の出入口から店内に入って来たブルーコスモスの男達は
「構わん、全て排除しろ!」
サングラスの男が周囲の銃を構えた男達に指示を飛ばすと、男達はクロトが撃ち漏らしたブルーコスモスの男達を手慣れた動きで一方的に射殺していく。
しかしクロトの戦いぶりは男達の中でも突出しており、早くも最寄りの出入口から突入して来たブルーコスモスの男達を弾切れと引き換えに全滅させていた。そんな無防備になったクロトを仕留めるべく、周囲の出入口から帽子の男を含む3人のブルーコスモスの男達が身を乗り出す。
「キラ!」
「うん!」
弾切れになった拳銃を投げ付けて牽制し、肉食獣の様な跳躍で銃弾を回避──そしてキラの蹴り飛ばした拳銃を拾い上げ、クロトは即座に2人を射殺した。
最後に残った帽子の男に対して、クロトは最後の1発を発射──帽子の男は神懸かり的な直感で回避に成功──クロトは帽子の男に拳銃を即座に投擲──帽子の男が機関銃で弾いた僅かな時間で距離を詰める。
「滅殺ッ!」
顔面に鉄拳を受け、倒れ込んだ帽子の男の胸にクロトは奪った機関銃を撃ち込んだ。帽子の男はクロトを見て言葉にならない呻き声を上げると、すぐに動かなくなる。
「クロト……」
「お、お前……」
目の前で行われた戦闘と言うにはあまりにも一方的な虐殺──
「ふっ。こちらは大体終わった様だな」
別の出入口から侵入した男達を壊滅させたサングラスの男はそんなクロトを見ると、先程の陽気な笑みとは異なり、軍人らしい獰猛な笑みを浮かべた。
「隊長! ご無事ですか!」
「私は平気だ、彼のお陰でな」
「!」
サングラスの男に掛けられた物々しい声から、目の前の男が只者ではないと認識したキラとカガリに緊張の色が走る。しかし既にサングラスの男の正体に気付いていたクロトは恭しく頭を下げると、先程と全く同じ調子の笑みを浮かべて口を開いた。
「我々の末端構成員がご迷惑をお掛けしました。ザフト北アフリカ駐留軍司令官──アンドリュー・バルトフェルドさん?」
「やれやれ。変装には自信があったんだけどね? 道理で目が笑ってないと思ったよ」
「ザフトの著名なコーディネイターの情報は一通り頭に入れていますから。……この店はザフトの御用達なんですか?」
「今日は
「そうですか。とんだ歓迎会になりましたね」
まるで世間話をするような口調で言葉を交わすクロトとバルトフェルドに、ようやく理解の追い付いたカガリとキラは言葉を漏らした。
「砂漠の虎……」
そんな二人に視線を遣りつつ、バルトフェルドはカンカン帽子とサングラスを外すと精悍な素顔を露わにして再び陽気な笑みを浮かべた。
「いやー、助かったよ。君がクロト・ブエルくんだろ? 噂通り……いやそれ以上に、気合いの入った奴みたいだね?」
「貴方もですよ。まさかあの砂漠の虎が、こんな愉快な人だとは思いませんでした」
「しかしいいのかい? 同じブルーコスモスの仲間を撃って、コーディネイターを助けるなんて……。てっきり罠に掛けられたのかと思ったよ」
戦闘の混乱に紛れて、ザフト北アフリカ駐留軍司令官を討つ。
クロトにその意図があれば高確率で成功していたという事実──しかし実際にはクロトは率先してブルーコスモスの男達を殺していたという現実に、流石のバルトフェルドも戦慄せざるを得なかった。
その行動原理は解読不能且つ理解不能──故に悪魔。そう安易に決め付けたくなる衝動を抑え、バルトフェルドはクロトに真意を問い質した。
「そんなこと、僕は知りません。僕の任務はアークエンジェルを護衛することですし……せっかくのデートの邪魔をするような連中は、許せませんよねえ?」
「……デートねえ。お礼も兼ねて君達と話がしたい。僕の屋敷に付いて来て貰えるかな?」
相変わらず本気か冗談か分からない表情のクロトと、そんなクロトの言葉に何故か顔を赤らめる背後のキラを見ながら、バルトフェルドは愉快そうに笑った。
「僕は1人でも構いませんが……片方だけでも帰らせて下さい。全員でノコノコ付いて行くほど、僕はお人好しじゃありませんから」
「ふふふ。君の立場上、警戒するのも当然か。では着替えを用意するから、そっちのソースまみれの黒髪の娘だけ付いて来たまえ」
「ま、待て! 私はどうすればいいんだ!?」
「尾行には十分注意して、合流地点に向かうように。2日経っても戻らなかったら、殺されたと判断して構わないから」
「……」
ザフト北アフリカ駐留軍司令官という立場でありながら、地球連合軍中尉を自らの屋敷に招待しようとするバルトフェルドと、その招待を快諾するクロトを交互に見ながら、キラはすっかりソースで汚れてしまった顔を拭ったのだった。
というわけで虎との遭遇イベントでした。
アスランくんとバッティングすると都合の悪いカガリちゃんは離脱して貰い、赤いのと白いのでベタベタになったキラちゃんと何故か目の遣り場に困ってるクロトくんでアジトに突入します。
(画面外で無双しているアスランくん)
この世界線ではクロトくんの活躍によってブーステッドマン計画が評価されたため、本作で登場するか未定ですがクロトくんの後輩ステラちゃんもブーステッドマンに改造される予定です。
クロトくんの尊い犠牲で、stage5まで改造すれば寿命と引き換えに高い戦闘能力と知性の両立が可能だと判明しましたからね。
とはいえステラちゃんを出すならオーブ解放作戦に参戦し、アスカ家を流れ弾で吹き飛ばす位の因縁は持たせたいですね!
ところで前回クロトくんは精神崩壊寸前だったのに、大分回復してますね……何があったんでしょうね……?
キラちゃんの士官服は?
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ミニスカート
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ホットパンツ
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タイツ
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その他