感想でも書きましたが、クロトくんはスピットブレイクまでは基本的に大きく歴史を変えるつもりはありません。
正史通りスピットブレイクを発動させてザフトに壊滅的被害を与えた方が、余程連合軍が有利になりそうだからです。
またクロトくんの人類滅亡計画を知っている者は誰もいない筈なのですが、クロトくんと同じロドニアのラボにいたステラちゃんは、逆行した直後のクロトくん(以下略)
〈67〉
マリューはストライク、レイダーの戦闘データの提供及び、ストライクのパイロットであるキラにモルゲンレーテの技術協力をさせるというウズミの要求を呑むことにしたのだった。結局のところ、今のマリュー達にオーブ軍と一戦交える余裕はなく、今後もザフトとの戦いが待っている事を思えば、アークエンジェルとスカイグラスパーを修理する必要があったからである。
またレイダーとストライクも戦闘に次ぐ戦闘によって、アークエンジェル内の設備では修理不可能な電磁流体ソケットの摩耗など駆動系等の問題を抱えており、このままではアラスカ到着までに完全に故障してしまう可能性があったのだ。
とはいえマリューも全面的にウズミの要求を受け入れたわけではなく、
つまりキラに行わせる技術協力をモルゲンレーテに独占させるのではなく、大義名分上はヘリオポリスで行っていたものと同じ大西洋連合軍とモルゲンレーテの技術協力の延長だという体裁を取ろうとしたのである。
その分、監視役であるクロトにも技術協力を要請するというウズミの追加要求はあったものの、一方的に軍事機密をオーブに提供させられることを思えばマリューの交渉は成功だった。
「シモンズ主任。例の2人をご案内致しました」
「ここは……」
クロトとキラが通されたのは、オーブ連合首長国オノゴロ島に本拠を構える国営兵器産業工廠──モルゲンレーテの本社工場だった。
いわば大西洋連邦とモルゲンレーテの技術協力によって設計・開発が進められたストライク・レイダーにとって、ヘリオポリスの工場と並ぶもう一つの実家とでも表現すべき場所である。
アズラエルの護衛として、アズラエル財団の保有する世界最大手の軍需産業を視察したことがあるクロトからしても、この設備の水準は並ではないと一目で理解出来た。
「……これが中立国オーブという国の本当の姿だ」
苛立った様子のカガリが工場内部の一点を指し示した。
ウズミとしても地球連合軍を事実上脅迫し、モルゲンレーテに技術協力させるという案件の内実を知る者は極力少数にしておきたいようで、案内役にクロトとキラをよく知るカガリを抜擢したのである。
そんなカガリの指した先には2種類のモビルスーツの試作機らしきものが製造されていた。片方はクロトも見たことのある機体だが、もう片方は見たことのない機体だった。
「これは“M1アストレイ”。向こうは“ムラサメ”。モルゲンレーテ社製のオーブ軍の機体よ」
「……それぞれストライク、レイダーと似ているような……?」
オーブ国防軍初の制式主力MS“M1アストレイ”。及びその上位機体である“ムラサメ”。
モルゲンレーテ社がヘリオポリスで極秘裏に開発を進めていたG兵器の技術を盗用し、製造した
その制式化、戦力化を行うために量産性を考慮した再設計が行われたものがこの二種類のモビルスーツだったのである。
「鋭いわね。大小様々な島で構成された国土を防衛するという観点から、オーブ軍のモビルスーツには一定水準の飛行能力が要求されたから、
M1アストレイ、ムラサメの主任設計技師であるエリカ・シモンズはモルゲンレーテの技術盗用を暗に示したクロトに対して悪びれずに答えた。技術協力を要求する相手であるならば、どの道すぐに分かる事だからである。
一方のクロトは、本来の世界線ではまだ完成していないレイダーを参考にした機体であれば、自分が知らなくても無理はないと納得したのだった。
「これを、オーブはどうするつもりなんですか?」
「これはオーブの守りだ。オーブは他国を侵略しない。他国の侵略を許さない。そして他国の争いに介入しない。その意志を貫く為の力さ。……オーブはそういう国だ。いや、そういう国の筈だった。父上が裏切るまではな」
キラの問い掛けに、カガリは不満そうに答えた。
そんなカガリに対して、クロトはカガリの突拍子もない行動──北アフリカで反ザフトのレジスタンス活動を行っていた理由に思い至り、その真偽を問い質す。
「なるほど。……つまり君は
「そうだ。あの地は昔からキサカに連れられて、身分を隠して何度も遊びに行っていた。私にとっては第二の故郷みたいなものだったんだ。それをザフトの連中が侵略したと聞かされて、父上の様に黙っていられるか! ……父上はザフトにヘリオポリスを攻撃されたのに、ヘリオポリスが地球連合軍のMS開発に協力したからだと抗議だけで済ませた。そして自分は責任を取ると叔父上に職を譲った一方で、結局ああだこうだと口を出して……何処までオーブを裏切れば気が済むんだ!」
「仕方ありません。ウズミ様は、今のオーブには必要な方ですから」
「あんな卑怯者のどこが!」
怒りを露わにするカガリに、エリカは肩を竦めた。
ウズミはヘリオポリスを崩壊させた首謀者であるザフトに抗議すると共に、ヘリオポリスで行われていた地球連合軍のMS開発の責任を取って辞任した。
そして代表首長の座を弟のホムラに譲っていたが、依然として実権はウズミが握っていたのだった。そんな茶番劇はカガリにとって許せない行為だったのである。
「あれほど可愛がってらしたお嬢様がこれでは、ウズミ様も報われませんわね。……さ、こんなおバカさんは放っておいて、来て!」
更に奥に通されると、実際の詳細なデータを取る為に試験的に製造された“M1アストレイ”と“ムラサメ”の実機が並んでおり、そのテストパイロットと思われる三人の少女がそれぞれ乗り込んで機体を操縦していた。
その動作は明らかに緩慢であり、実戦に投入出来る水準にはほど遠い代物だった。
現在MSを高度な水準で操縦出来るOSは、ザフトが開発したコーディネイター用のOSと、その
エリカの目的はそんな独自のOSを作り上げる程の高いプログラミング能力を持つキラの協力を得る事で、未だオーブにおいても、地球連合軍においても開発が難航しているナチュラル用OSを完成させることだったのである。
「協力をお願いしたいのは、あれのサポートシステムのOS開発よ。それから、中尉にはテストパイロットであるこの娘達の教育もね。……カガリ様から聞いたわよ。自分の知ってる中じゃ、ザフトやその子を含めて誰よりも強いって」
「はぁ……」
エリカに呼ばれ、機体から降りて来た3人の少女達──アサギ、ジュリ、マユラからの興味深そうな視線を受けて、クロトは思わず溜息を吐いたのだった。
〈68〉
「新しい量子サブルーチンを構築して、シナプス融合の代謝速度を40%向上させ、一般的なナチュラルの神経接合に適合するよう、イオンポンプの分子構造を書き換えました」
「よくそんなこと、こんな短時間で。すごいわね、ほんと」
「元々、レイダーにはナチュラルの神経接合に適合するOSが搭載してありますから。それを参考にすれば、このくらいは」
キラは隠れコーディネイターであるエリカも舌を巻く速度で、まずは目に付いた神経接合に関わるOSの欠陥を修正した。これで今までエリカが悩まされていた動作制御を行う際の不安定性が解消され、一定水準で素早い動きを行う事が可能になったのである。
「次は実際に動かして、何か動作に問題がないかですね」
「えぇ、そうですわ中尉。早速お試しになります?」
「……まずは、あの子達に。僕はその後で」
「そう? アサギ! 試してみて!」
「はーい!」
アサギと呼ばれた少女はキラが修正を加えたOSの動作確認を行うため、そのOSが搭載されたアストレイに乗り込んだ。臨時教官であるクロトが見守る中、アサギは先程とは比較にならない精度と速度でアストレイを操縦し、エリカ達モルゲンレーテの技術者を驚嘆させた。
ジャンケンで敗北し、アサギに一番乗りを奪われたジュリとマユラも、次は自分の番だとばかりに顔を輝かせている。
一方キラは何故か不機嫌そうな表情をしており、そんなキラに対してクロトは軽い調子で声を掛けた。
「どうしたの、不機嫌そうな顔して」
「……そんな顔してない」
「あっそ。ところで家族との面会を断ったんだって? もしかして、僕に遠慮してる?」
地球連合軍の志願兵として、作戦行動中であるキラ達は原則として除隊出来ない。
一刻も早くアークエンジェルを修理して、アラスカを目指す作戦に復帰しなければならないこの状況下では休暇も許されていない。そもそも中立国への入国でさえ、本来は許されない行為なのである。
しかしマリューとウズミの計らいによって、短い時間だが軍本部での面会が許可されたのだった。とはいえキラは面会を断ったらしく、実際に
とはいえ以前に母親を亡くし、第8艦隊の先遣隊として乗り込んでいた父親を喪ったフレイを除いてカトーゼミ組の家族は全員無事だったらしく、サイやトール達は家族との面会を楽しみにしているようだった。
もちろん物心の付いた時からロドニアのラボで実験体として扱われていたクロトには家族など1人もいないため、クロトとの面会を希望する者はいなかったのだが、そんな事をいちいちキラが気にする必要はないとクロトは思ったのである。
「……今会ったって……私、軍人だから」
「軍人でも、キラはキラだろ? ……きっと家族も、会いたがってるんじゃないの?」
「こんなことばっかりやってるでしょ……私。MSで戦って、その開発やメンテナンスを手伝って……」
「……」
クロトとは異なり、蝶よ花よと育てられた少女──キラ・ヤマト。
しかし今はクロトと同じく死と狂気に満ちた最前線で戦い続けている上に、落ち着いている時も兵器の開発や調整に追われる日々である。
キラはそんなすっかり汚れてしまった自分の姿を両親に見せたくなかったのである。
「オーブを出れば、すぐまたザフトと戦いになるだろうし。……それに、今会うと言っちゃいそうで嫌だから……」
「何を?」
「なんで私を……
自分がナチュラルであれば、ストライクを操縦することはなかった。
自分がナチュラルであれば、ヘリオポリスの崩壊に巻き込まれたり、避難シャトルに乗って撃ち落とされたりとどこかで死んでしまっていたのかもしれないが、こんな辛い思いをすることはなかった。
勿論、これは八つ当たりだとキラも理解していたのだが、それでも自分をコーディネイターにした両親に対して、何処か恨がましい感情を抱いていたのである。
「僕はどっちでもいいけどさ。……もしかして、次があると思ってる?」
「え?」
「ザフトとの戦いで……もしくは地球連合軍に拘束されて、二度と会えなくなるかもしれないよ? それでもいいなら、僕は何も言わないけど」
正史では、
自分が一緒に戦っているから大丈夫だと最初は思っていたが、特に地球圏降下以降のザフトは、明らかに正史より強大な部隊を差し向けている。そんなザフトの猛攻から、クロトはキラを守り切れる自信はなかったのである。
またキラを利用しようとする地球連合軍の魔の手から、キラを庇い切れるかと言われると自信がなかった。何せ自分はブルーコスモスの抱える人間兵器であり、コーディネイターを1人でも多くこの世から葬り去るのが唯一の存在意義なのだから。
そんなクロトの複雑な心境を知ってか知らずか、遂にキラは決心した様に口を開いた。
「もう一つ、理由があって。……クロトは知らないかもしれないけど、
「……もしかして、アスラン・ザラか?」
「やっぱり、知ってたんだ?」
「確証はなかったけど、ね」
元々、その可能性は早い段階でクロトも認識していた。
アスランが操縦するイージスはクロトであっても決して侮れない強敵であり、
イージス以外の敵はしばしばストライクを狙うことがあったが、
そして決定的だったのは、バルトフェルド邸で遭遇した時の反応だった。
ラクス返還の際に一度だけ遭遇したらしいが、
つまりキラとアスランは昔からの幼馴染であり、少なくとも正史におけるアスランは密かに手加減することで、キラを守っていたとクロトは気付いたのだ。
……
「初恋の人だったんだけどね。……今は顔も見たくないけど、それでもやっぱり、ね」
「そっか……」
言葉を失うクロトの前で、突如キラの肩に留まっていたトリィが羽ばたき、建物の外に飛び出そうとした。しかし入口の手前でクロトにあっさりと捕まえられ、追い掛けて来たキラの手に再度戻される。
「トリィも、両親に会いたいってさ。……行っておいで。ここで待ってるから」
「……うん」
クロトに見送られ、キラは両親の待っている軍本部に向かうのだった。
フレイちゃん役とムウさん役を同時にこなしてキラちゃんを両親との面会まで漕ぎ着けさせる一方で、遂にキラちゃんとアスランくんの関係を知ったクロトくんでした。
キラちゃんの両親は反ブルーコスモスかつ、息子の様に可愛がっていたアスランくん推しなので、キラちゃんはクロトくんの事もアスランくんの事も結局話せませんし、反対に色々と黒い噂を吹き込まれます。
そんなキラちゃんが後にムラサメ乗りと化す常夏三人娘にチヤホヤされながら教官をしていたクロトくんを襲撃したのは言うまでもないでしょう。
(トリィイベントが消滅したため、軍本部に向かうキラちゃんを遠くから見詰めるアスランくん)
ステラちゃんは何に乗る?
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デストロイ試作機(!?)
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ストライクダガー
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105ダガー
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スカイグラスパー
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その他