逆襲のクロト   作:皐月莢

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崩壊する世界

 〈4〉

 

 アーモリーワンを離れ、強奪したセカンドシリーズ三機を収容した正体不明の敵艦──仮称“ボギーワン”の追討任務を、成り行きでミネルバに乗艦したプラント現議長ギルバート・デュランダルから命じられた惑星強襲揚陸艦“ミネルバ”は揺れていた。

 その理由は先程の戦闘の最中に収容したザクウォーリアに乗っていた二人組が、オーブ連合首長国代表“カガリ・ユラ・アスハ”と、ザラ派の遺志を継ぐ者としてプラントから追放された“アスラン・ザラ”──現在はオーブ軍3佐“アレックス・ディノ”の二名だと判明したからである。

 頭部を強く打って負傷していたカガリは医務室に運ばれたが、アレックスはミネルバ艦長“タリア・グラディス”とデュランダルの両名から尋問を受けていた。

 とはいえ、デュランダルとカガリがミネルバの進水式の裏で極秘会談を行うことは関係者の中で周知されている事実だったし、尋問も二人がザクウォーリアに乗り込んでいた事の経緯を確認するというものだった。

 シンもオーブの理念を貫くために多くの国民を犠牲にしながら自分だけ逃げ出した卑怯者に文句の一つでも言いに行こうと考えていたが、それ以上に先程から様子がおかしいレイが気になっていた。

 強奪されたセカンドシリーズの奪還を命じられたものの失敗に終わり、育ての親であるデュランダルの面子を潰したことを気にしているのかとだろうかと思いながら、シンは無言で格納庫の一角に佇むレイに声を掛けた。

 

「気にすんなって。追い返せただけでもラッキーだろ?」

 

 ザフトの最新鋭機体とはいえ、強奪直後で慣熟訓練どころかOSの最適化すら行われていない機体でアーモリーワンの守備隊を瞬く間に壊滅させた3機と、どうやら敵の指揮官機らしい灰色のモビルスーツ。

 画像データを解析したところ、それは地球連合軍の主力量産機ウィンダムに酷似した機体とのことだったが、その実力はまさに圧巻だった。

 セカンドシリーズの中では最も基本性能が高く、稼働時間とバッテリーパワーを除けば先の大戦で伝説的な戦果を残したフリーダムと同等以上の性能と称されるセイバーに乗ったレイを、灰色のウィンダムは正面から圧倒したのである。

 レイが狙いを定める瞬間には既に射線から逃れており、レイが敵の攻撃を回避すればそれを先読みしていたかのように追撃が行われる。

 その戦い振りは、まさに変幻自在だった。

 そして灰色のウィンダムはセイバーをあっさり退けると、シンのインパルスとアスランのザクウォーリアを同時に相手取りながら殿を務めていたガイアのパイロットと共に、アーモリーワンから逃げ去ったのである。

 

「……そうだな」

 

 レイは苦虫を噛み潰した様な顔で頷いた。

 どうやら“ボギーワン”にはユニウス条約で禁止されたミラージュコロイド・ステルスが搭載されているらしく、即座に追撃するためにハイネら一部の隊員を置き去りにしてまでアーモリーワンを離れたミネルバだったが、完全にその姿を見失っていた。

 そんなミネルバが地球に全速力で向かっている理由は二つあった。

 一つはアーモリーワン宙域に遺されていた痕跡から、どうやら地球に向かった“ボギーワン”を追撃するためだったのだが、むしろもう片方の理由の方が重大だった。

 先程最高評議会からミネルバに向けて、恐るべき内容の緊急通信が行われたのである。

 それは先の大戦が絶滅戦争に突入するきっかけとなった悲劇の地──ユニウスセブンが安定軌道を離れ、地球に向かって移動を始めたというものだった。

 隕石でも衝突したのか、あるいはユニウスセブン自体に何らかのトラブルが起こったのかは不明だったが、計算上は地球に落下してしまうとのことである。

 かつて巨大隕石の衝突で氷河期が訪れたように、ユニウスセブンの様な巨大コロニーが地球に衝突すれば全世界で重大な被害が発生し、地球は壊滅してしまう。とりわけオーブ連合首長国のような小さい島国は、大津波に呑み込まれて一人残らず全滅する可能性も十分あるだろう。

 

「そういえばさっき、ヨウランが探してたぞ。さっきは悪かったってな」

「俺も本気で言ったわけじゃないって分かってるさ。でも……」

「気にするな。お前の言ったことは正しい」

 

 シンは反対側で赤メッシュの髪の少年と屯している浅黒い肌の少年──ヨウラン・ケントに鋭い視線を向けた。

 先程、ユニウスセブンが地球に落下してしまうかもしれないとデュランダルから聞かされた際に取ったヨウランの態度に、シンが激怒したからである。

 眼前に迫る地球の危機に際して「しょうがない」「案外楽」などと軽口を叩いたヨウランの言動は、プラントで生まれ育ったコーディネイター同士なら下品な冗談で済む内容だったが、地球育ちで今もオーブに妹がいるシンにとっては、たとえ冗談であったとしても容認出来ないものだったのだ。

 

「だいたい粉砕作業の支援って言ったって、何をすればいいんだよ?」

「さぁな。細かい指示は、現地でジュール隊が出すって話だ」

 

 異常を察知したプラント最高評議会は地球各国に警告を発すると共に、既に落下軌道に入りつつあるユニウスセブンを破砕しようとしていた。

 そしてその実行部隊としてジュール隊を派遣すると共に、付近で“ボギーワン”を追い掛けていたミネルバにジュール隊の援護を要請したのである。

 そんな前代未聞の事態だというのに──あるいはそんな事態だからか、いつになく上の空なレイにシンは不審な視線を向けながら、出撃に備えてインパルスに乗り込んだ。

 レイも先程修理が終了したばかりのセイバーに乗り込み、続けてルナマリアとアレックスも出撃準備が完了したザクウォーリアに搭乗した。

 赤服のルナマリアはともかく、本来であれば他国の軍人であるアレックスにモビルスーツを貸与するなど常識的に考えて有り得ないことである。

 しかしモビルスーツの数に対してパイロットの数が不足しているという状況下で、この緊急事態を乗り切るためには一人でも多くの優秀なパイロットが必要だと主張したデュランダルが議長権限を行使して許可したのだった。

 そして発進時刻が迫る中、ミネルバのオペレーターを務めているメイリンとバートからユニウスセブンで検知された情報がシン達に共有される。

 

『ユニウスセブンにて、ジュール隊がアンノウンと交戦中! 各機、対モビルスーツ戦闘用に装備を変更して下さい!!』

『更にボギーワン確認! グリーン25デルタ!!』

『どういうことだよ、メイリン!?』

『分かりません。しかし本艦の任務はジュール隊の支援です。換装終了次第、各機発進願います!』

 

 先行していたジュール隊がユニウスセブンに潜伏していた所属不明のモビルスーツと戦闘になり、また別方向から行方を眩ましていたボギーワンが現れたのである。

 潜伏していたモビルスーツ群の正体はユニウスセブンを地球に墜とそうとしているテロリスト達なのだろうが、ボギーワンの狙いが全く分からない。

 ボギーワンの狙いがテロリストを支援するつもりなら撃破しても全く問題ないが、反対にユニウスセブンの落下を阻止しようとしているかもしれなかった。

 もしもボギーワンがテロリストと無関係だとすれば、下手な攻撃は地球連合とプラントの間で再び世界大戦を引き起こす危険性もある。

 なぜならテロリスト達の用いているモビルスーツはザフトの旧式量産機“ジンハイマニューバ2型”であり、彼等からすればザフトがユニウスセブンを墜とそうとしているようにしか見えないからだ。

 ユニウスセブンで破砕作業を行っていたジュール隊はテロリスト達からの攻撃を受け、大いに苦戦している。ボギーワンの狙いが何であるにせよ、ここでイザーク隊が敗退してユニウスセブンを破砕することが出来なければ、地球は壊滅してしまう。

 

『──シン・アスカ! コアスプレンダー、行きます!』

 

 シンはコアスプレンダーを起動させ、ミネルバのカタパルトから発進した。そして続けて射出されるチェストフライヤー、レッグフライヤー、最後にフォースシルエットを合体させると、眼前で繰り広げられているジュール隊とテロリストの乱戦に割り込んだ。

 

 〈5〉

 

『これ以上はやらせ──』

 

 灰色に塗装されたウィンダムは眼前に迫るジンハイマニューバ2型をガンバレルから放った無数のビームで貫き、呆気なく爆散させた。その近くでは別の機体がガイアのビームライフルを受け、後を追うように爆散する。

 この前代未聞の事態を調査するため、ロード・ジブリールの命令で航路を引き返していたネオは正確な情報収集を行うために副官のカナードを連れてガーティ・ルーを離れ、ユニウスセブンに降り立ったのである。

 先程から国際救難チャンネルで自分達に呼び掛けを行っている女性の声が、()()()()()()()()()()()()()()のタリア・グラディスだと理解したネオは、自身の正体を隠すため無言を貫きながら不介入を決め込んでいた。

 しかし反地球連合の色濃い旧ザラ派残党軍で構成されたテロリスト達は、現地球連合軍の主力量産機であるウィンダムの姿を認めると、一斉に襲い掛かったのである。

 先の大戦を最前線で戦い抜いた彼等の技量は、旧式でありながら最新鋭機に乗ったジュール隊の一般兵を凌駕するものだったが、そんな彼等を抑えて最年少で白服に上り詰めた“ラウ・ル・クルーゼ”の仮面を併せ持ったネオと、純粋な能力だけならネオを凌駕しているカナードは押し寄せる残党軍を瞬く間に壊滅させたのだった。

 

『あれは何?』

『“メテオブレイカー”だ。今更ユニウスセブンの落下は避けられまい。だからせめて被害を減らそうというわけだな』

 

 小さい破片であれば大気圏に突入する際に燃え尽きてしまうし、燃え尽きなかったとしても落下時のダメージは大きく軽減される。だからプラントは無理に落下そのものを阻止するのではなく、ユニウスセブンを破砕しようとしていたのだ。

 元は資源衛星や隕石を破壊する為の起爆装置を設置しているジュール隊をモニター越しに捉えながら、かつて似たような場所で民間人を乗せたシャトルを気紛れに撃ち落とした短気な小僧が随分成長したではないかとネオは嗤った。

 

『嫌な気配がする。初めて会ったときの隊長みたいな、誰かに見られている様な気配が……』

『君の持つ特殊な空間認識能力が、強敵を感知しているのだろう』

 

 カナードの不審そうな声に、ネオは苦笑した。

 フラガ家の呪いとも言われる奇妙な感知能力の唯一の例外は、自分自身の存在を感知出来ないことである。

 故にこそネオは、まるで預言者の様な未来予測能力を持っていたアルを粛正することに成功したのだが、対峙している敵の中にレイがいるかもしれないという状況下では無意味だった。

 しかしカナードの言葉で、ネオはミネルバから向かってくるモビルスーツにレイが搭乗しているという確信を得た。

 既にユニウスセブンの落下を阻止するために現れたウィンダムにザフト製モビルスーツが襲い掛かるという、ジブリールが喜びそうな映像は記録している。これ以上はむしろ逆効果だろうと考えたネオはガーティ・ルーとカナードに撤退を促した。

 

『もう撤退? まだ全然暴れ足りないんだけど』

『お楽しみはこれからだ。再び始まるぞ、愚か者共の争いが』

 

 憎み合う両者の頭を押さえ付ける形で訪れた平和など、簡単に崩壊するものである。たとえユニウスセブンの破砕が成功しようと、その破片は地球全土に大きな被害をもたらすだろう。

 地球連合では反コーディネイター感情が再燃するだろうし、ユニウス条約に不満を抱いている者も多いプラントは、この混乱を好機と見て更なる勢力拡大に乗り出す筈だ。

 先の大戦でその扇動者の一人だったネオには、両勢力の動きが容易に予想出来た。

 かつてネオが思い込んでいたように、この世界は憎悪と憤怒に満ちた者達だけではないのだろうが、やはりそうした者がこの世界の大半を占めているのもまた事実だ。

 旧式とはいえ数十機のモビルスーツに加えて、コロニーを移動させるために用いる大型のフレアモーター。所詮は一介の元ザフト軍人がこれほどの準備を整えられるとは思えない以上、背後に彼等を唆した何者かが存在するようだ。

 おそらくは、プラントの何処かに。

 

『全く最高だな、人は──』

 

 まるで自分を正義の執行者のように叫ぶ機体を撃ち抜き、ネオは両腰のアーマーから抜いた投擲噴進対装甲貫入弾をフレアモーターに突き刺した。

 そして吹き飛ばされたフレアモーターとその護衛部隊を嗤いながら、ネオはいよいよ地球の重力に引かれて落下し始めたユニウスセブンから離脱した。

 

〈6〉

 

 突如現れた正体不明艦の牽制を指示されたシンとレイだったが、ウィンダムとガイアを収容したガーティ・ルーは二人に捕捉される前に、搭載していたミラージュコロイド・ステルスを用いてその行方を眩ました。

 ミラージュコロイドを展開している最中はスラスター噴射を行えない都合上、ガーティ・ルーはこの付近の宙域に潜伏している公算が極めて高かった。しかしそれ以上のトラブルが発生したため、イザークは二人に新たな指示を下した。

 ザラ派残党軍のジンハイマニューバ2型隊はメテオブレイカーの設置を行っていたジュール隊に大きな被害を与えており、破砕作業の遅延が起こっていたのである。

 もちろんガーティ・ルーがザフトの最新鋭機を強奪した敵であることに変わりはなかったが、まずは眼前の脅威を排除することが優先だとイザークは判断したのだ。

 

『このひよっこどもが!』

『くそっ……! このままじゃ!』

 

 先の大戦を生き延びた彼等の技量は極めて高く、たとえインパルスに乗ったシンでさえ簡単に撃破できるような相手ではなかった。シンの放ったビームライフルは簡単に見切られ、反対に斬機刀の直撃を受けてシールドごと吹き飛ばされる。

 しかしセカンドシリーズという否が応でも目を引く存在を囮に、ジュール隊は設置が完了したメテオブレイカーを作動させた。

 

『グゥレイト! やったぜ!』

 

 地響きのような轟音と共にユニウスセブンが中心部分から真っ二つに割れ、徐々にコロニー全体の崩壊が起こり始めた。これで地球の壊滅という最悪の事態は免れたが、一安心するにはほど遠い状況だった。

 

『だがまだまだだ! もっと細かく砕かないと!』

 

 ミネルバから駆け付けたザクウォーリアから放たれた聞き覚えのある声に、ジュール隊を指揮していたイザークは思わず叫び声を上げた。

 

『アスラン!? 貴様ぁ、こんな所で何をやっている!』

『やれやれ、これでニコルのヤツもいりゃあな!』

 

 まるで三人は事前に打ち合わせていたかのように散開すると、軽い口喧嘩を交えながらシンが苦戦していた歴戦のジンハイマニューバ2型隊を次々に葬り去っていく。

 一人の攻撃が回避されると、その回避先を狙って追撃が放たれる。それを嫌ってシールドで防ごうとした機体を、もう一人が別の角度からの攻撃で撃破する。

 まるで別次元の技量──これがあのヤキン・ドゥーエを生き残ったパイロットの実力かとシンが感心していると、いつのまにか周囲の旧ザラ派残党軍は一掃されていた。

 やがてユニウスセブンは複数のメテオブレイカーで内部から破壊され、十数の破片として分断された。それと時を同じくして、まもなく限界高度に迫っていたミネルバから通信が送られる。

 

『総員に告ぐ。本艦はモビルスーツ収容後、大気圏に突入しつつ艦主砲による破片破砕作業を行う。各員マニュアルを参照。迅速なる行動を期待する』

 

 惑星強襲揚陸艦として造られたミネルバは、大気圏単独突入能力を有している。

 そのためタリアはジュール隊の母艦であるボルテールにデュランダルを移乗させると、戦闘行動限界までユニウスセブンの破砕を行おうとしたのである。

 行方を眩ましたガーティ・ルーとの戦闘に備えてジュール隊は撤退を始めたが、シンはミネルバからの通信を無視してユニウスセブンに残っていた。ジュール隊が置き去りにした資材の中には未使用のメテオブレイカーが一基残っており、それを用いて残っていた中では最も大きい破片を砕こうとしたのである。

 一人メテオブレイカーを両手に抱え、奥に向かっていくシンを見付けたアレックスは自らも機体を反転させると、通信回線を開いて強い口調で呼び掛けた。

 

『何をやっている! 帰還命令が出たぞ! 早く戻れ!』

『ミネルバの砲撃でも、確実とは言えないでしょう! せめてこれだけでも!』

 

 たしかにミネルバの陽電子破砕砲(タンホイザー)は強力だが、巨大建造物の破壊を行うために搭載された代物ではない。

 内部でメテオブレイカーを炸裂させなければ、この破片を確実に破壊出来るとは言い切れなかった。地球にはマユがいる以上、自分なりに最善を尽くさなければならないとシンは考えたのである。

 その気迫を察したアレックスは苦笑すると、インパルスに追い付いてメテオブレイカーに取り付き、設置作業に協力し始めた。

 

『解った! 俺も援護する!』

『吹き飛ばされますよ! 貴方みたいな人が、なんでオーブになんか……』

 

 セカンドシリーズであるインパルスは十分な大気圏突入能力を有しているが、最新型とはいえあくまで量産機のザクウォーリアは大気圏突入能力を有していない。

 厳密には突入可能なのだが、高い耐熱性と耐久性を持つPS装甲を採用していないため、あくまで理論上では突入可能というものだった。

 入念な準備の上で降下するならともかく、こんな状況で大気圏突入を敢行しても成功する可能性は極めて低いだろう。今はオーブに亡命した有名な元ザフト軍人らしいが、なんて勇敢な人だとシンは率直に感嘆した。

 

『まだいたのか!』

『これ以上はやらせん!』

 

 まだ生き残っていた3機のザラ派残党軍が、メテオブレイカーの最終設置作業を行っていたシンとアレックスの前に現れた。

 目的はメテオブレイカーの破壊──シンは咄嗟に残党軍とメテオブレイカーの射線上にインパルスを動かし、立て続けに放たれるビームを防ぎながら光刃(ヴァジュラ)を抜くが、スピーカーから悲壮な叫びが届いた。

 

『我が娘のこの墓標、落として焼かねば世界は変わらぬ!!』

『娘……!?』

 

 残党軍の言葉に動揺したシンはビームの一部を通してしまい、直撃は避けたが手前の地面が大きく抉れ、突如大きな衝撃を受けたメテオブレイカーは動きを止めた。

 

『何をする!』

 

 アレックスはシールドに収容されていたビームトマホークを抜き、攻撃を防ぎながら鍔競り合いを開始した。二度、三度と攻撃をぶつけ合いながら、ストライクと同等以上の性能を誇るザクウォーリアのパワーを生かして徐々に押し込んでいく。

 既にジュール隊との死闘で消耗していた残党軍の唯一の頼みは数だったが、シンは片腕を喪失していた機体を両断し、数の上でも互角に立った。

 焦燥感に包まれた残党軍の代表──サトーは完全に狂ったような形相で叫ぶ。

 

『此処で無惨に散った命の嘆き忘れ、討った者等と何故偽りの世界で笑うか! 貴様等は!』

 

 アレックスはハンドグレネードを投擲し、サトーの機体の制御を大きく乱した。そして振り下ろす様な一撃を繰り出し、シールドを構えていた左腕を切り飛ばす。

 更に追撃しようとしたアレックスのスピーカーに、怒号の様な叫びが鳴り響いた。

 

『軟弱なクラインの後継者どもに騙されて、ザフトは変わってしまった!! 何故気付かぬかッ! 我らコーディネイターにとってパトリック・ザラの執った道こそが、唯一正しきものと!!』

 

 鬼気迫るサトーの言葉でアレックスは一瞬気圧され、上方から放たれた斬機刀の一撃でビームトマホークごと右腕を喪失する。

 

『くっ……!』

 

 アレックスは一度体勢を立て直そうとするが、これが唯一の勝機と理解したサトーはスラスターを全開で吹かせて追尾しながら、ビーム砲を立て続けに連射する。

 パトリック・ザラ。

 アレックス・ディノ──アスラン・ザラの父親にして、元初代国防委員長。

 ジョージ・グレンの告白以来、そのナチュラルを凌駕する能力故に迫害され続けていたコーディネイターの国を造ろうとしたパトリックは間違いなく希望の星であり、先の大戦でもあと一歩でナチュラルを殲滅しかけたことから、未だにナチュラル蔑視の色濃く残るプラントでは多数の支持者が存在する男である。

 ユニウスセブンで母を喪い、先の大戦でも最後までパトリックの尖兵として戦い続けたアレックスには、サトーの叫びを否定出来るだけの言葉はなかった。

 しかしその叫びは、この場に残っていたもう一人の少年に火を付けた。

 

『──こんなことが正しいって言うのか! あんた達は!!』

『何だ!? 急に動きが!』

 

 突如()()()()()()()()()()()シンは自らを道連れに自爆しようとした機体の組み付きを回避して斬り捨てると、アレックスに猛攻を仕掛けていたサトーに全速力で突撃した。

 

『我らのこの想い、今度こそナチュラル共に!!』

 

 サトーはアレックスへの追撃を断念して反転しながらビーム砲を連発するが、シンは速度を落とさずスラスターの僅かな制御だけで回避しながら急速に距離を詰める。

 

『あんたに何が分かるんだぁーっ!!』

 

 コーディネイターの受け入れを国策として行っているオーブ連合首長国は勿論、反コーディネイター思想の色濃い地球連合にすらコーディネイターは多数存在する。

 そんなことも分からず地球にユニウスセブンを落とそうとする彼等のやり方は、どれだけ正当化しようとしても正しい筈がない。

 

 ──理念を盾に大勢の命を奪う愚か者は、オーブの獅子だけで十分だ。

 

 シンはビーム砲を捨てて斬機刀を抜いたサトーの攻撃を紙一重で躱しながら、ジンハイマニューバ2型の胴体部分を一撃で両断した。




ほぼ本編通りの箇所はカットということで……。

アレックスさんがカガリの護衛をしてるのはラクスの推薦です。プラントに詳しい上に能力的には十分なので、恋人であろうとなかろうと最適って訳ですね。
この時点のクロトは衰弱してますし、キサカでは不安だし……。

またアレックスさんが乗ってるのはハイネ機です。本人はアーモリーワンのゴタゴタで乗り遅れました。

クルーゼさんがネオだとイザーク、デュランダル、タリア、アスラン、旧ザラ派と殆どの人を把握してるので話が早いですね。
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