〈95〉
地球に向かう機動要塞メサイアに、クサナギを旗艦とするオーブ軍は乾坤一擲の追撃を敢行していた。オーブ本土がネオ・ジェネシスの有効射程範囲に入れば、ガンマ線レーザーによる未曾有の大虐殺が行われるからだ。
ザフト軍の大半は、未だデュランダルの消極的支持を貫いている。
所詮は下等種族とその下等種族が馴れ合う国に過ぎないオーブのために、自分達の祖国を裏切ることは出来ないと考える者が大半だったからだ。
戦力の大部分を喪失した地球連合軍も動きを封じられている中、月軌道艦隊を引き付ける囮としてエターナル及び“ストライクレイダー”“ドムトルーパー”以下数機のモビルスーツを足止めに残し、オーブ軍第二艦隊旗艦“クサナギ”は遂に機動要塞メサイアを捉えたのだった。
「ローエングリン、撃てっ!!」
艶やかな黒髪を伸ばした妙齢の女性が、CICの艦長席で声を張り上げる。
本職はモルゲンレーテのエンジニアでありながら、オーブ軍人の中で最も豊富な実戦経験を買われて艦長職に電撃復帰した女性は、クサナギの特装砲である陽電子破城砲の発射命令を行った。
「ベルネス2佐! 駄目です、効果ありません!!」
陽電子をビームで保持・加速させて撃ち出すことで絶大な威力を発揮する強力無比な一撃は、機動要塞メサイアを覆っている陽電子リフレクターの壁で無効化された。
「そんな……!」
オーブ軍所属マリア・ベルネス2佐──かつてマリュー・ラミアスと呼ばれていた女性は唇を噛んだ。
オーブ軍の最大火力を投入しても、自分達の進撃を阻む陽電子リフレクターを破ることが出来なかったからだ。このままここで立ち往生していては、オーブ本国を狙っているメサイアを破壊することなど叶わない。
『俺が内部から発生装置を破壊する!!』
アスランはジャスティスの背部に装備したミーティアをバージすると、腰部に収納していたビームキャリーシールドを取り出した。
ストライクレイダーにも採用されているビームキャリーシールドは、その名の通り実体盾にビームシールド発生器及び、火器を内蔵している複合兵装である。
実体盾部分にもVPS装甲を使用しており、また大型のビームシールド発生器を採用したことで現行の携行シールドとしては最強の防御力を誇っているこの複合盾の特性を利用すれば、陽電子リフレクターの壁だろうと正面から突破出来るだろう。
そして内側から陽電子リフレクター発生装置を破壊すれば、機動要塞メサイアを守っている難攻不落のシールドは維持出来なくなるのだ。
『──ッ!』
キラはクサナギを狙って一斉に放たれた、メサイア守備隊のビームを金色の鏡面装甲で受けた。鏡面装甲に内蔵されたビーム回折格子層で吸収された無数のビームが、超微細プラズマ臨界制御層の干渉を受けて放出される。
そして無数の標的に向かって発射される刹那、それぞれに反射角度の微調整を行ったキラは敵モビルスーツ群の無力化に成功した。
『アスラン、私も!』
ビーム兵器に対して鉄壁の防御力を誇るアカツキなら、たとえ陽電子リフレクターであろうと簡単に擦り抜けることが出来る。
そして機体を加速させると、前方のアスランに合流しようとした。しかしアスランはそんなキラの持ち掛けた提案を即座に却下した。
『お前はアイツが合流するまでオーブ軍を守れ!』
一時的に足を緩めていたエターナルがオーブ軍と合流すれば、クロトも同様の手段で強引に陽電子リフレクターを突破しようとするだろう。
しかしシンとの戦闘で消耗したストライクレイダーは、アカツキからのデュートリオンビーム照射を受けなければ戦闘能力を維持出来ない。
それに陽電子リフレクターで前方を封鎖され、身動きが取れなくなった状態で包囲されているオーブ軍にはキラの力が必要だとアスランは考えた。
そしてビームキャリーシールドを前方に掲げると、眼前に展開されている陽電子リフレクターの壁に向かって一直線に突撃した。
『くっ……!』
ジャスティスに内蔵されているバッテリー残量が、瞬く間に危険領域まで低下する。
メサイア要塞を覆っている陽電子リフレクターの障壁を突破するため、本来は莫大な電力を消費するビームシールドを最大出力で連続展開したことで、ジャスティスのバッテリーが底を尽きかけたのだ。しかし腹部に内臓された核原子炉から電力供給を受け、ジャスティスのバッテリー残量はみるみる回復する。
瞬間的な出力は核動力機であろうとバッテリー機であろうとそれほど変わらないが、やはり継戦能力においては大きな差があったのだ。
『分かった!!』
キラのあっさりとした返答に、アスランは苦笑しながらジャスティスを加速させた。
今の指示がクロトの放った言葉なら、キラはその指示を無視して強引に同行しようとするだろうと思ったからだ。
そしてアスランは視線の遠く先で捉えた、陽電子リフレクター発生装置と思しき巨大な機械群に照準を定めた。
複数のビーム刃と実体刃を有し、たとえ戦艦であろうと両断する格闘装備としても使用可能な独立支援ユニット“ファトゥム-01”を射出しようとした瞬間、進行方向を遮るように放たれた光弾を急制動で回避した。
続けて左右から挟み込むように出現した無数のスーパードラグーンが、速度を落としたジャスティスに猛烈な光の雨を降らせた。
初見の全方位攻撃に対して、不用意に動くのはむしろ被弾の危険性が増す。
そう考えたアスランは僅かなスラスター制御で無数の光弾を躱すと、連結した大型ビームライフルから放たれた砲撃をビームシールドで防御した。
その戦艦級の凄まじい威力に、大抵の攻撃であれば受け止めながら前進可能な程の圧倒的な推力を誇るジャスティスが強制的に後退を強いられる。
『……お前は!』
『馬鹿なヤツだ』
人類救済を掲げる運命計画に逆らう侵入者達に鉄槌を下すため、先程まで司令室でメサイア防衛部隊の指揮を執っていたアルが戦場に降臨したのだ。
大気圏内では可動砲台に過ぎなかったドラグーンを縦横無尽に展開し、まるで純白の星屑を纏ったようなフリーダムはウィングユニットから蒼白い光の翼を広げ、永遠の自由を体現する超越者の姿を披露する。
アスランは周囲に向かってビームライフルを連射するが、ドラグーンは有機的な挙動を発揮して攻撃を回避する。
先程シンが使っていたドラグーンとは、その精度も速さも比較にならない。気圧されたアスランに対して悪意に満ちたアルの声が、コクピットの中で木霊した。
『貴様はただの戦士でしかないと、そう言った筈だがな?』
それがアスランの遺伝子情報と戦歴を基に、アルの下した評価だった。
軍人としての優れた才能を持っており、本人もそれを志向していながら、個人の感情を優先する軍人には不適当な性格を有している。
故に軍人でも傭兵でもなく、ただの戦士。
それがアスラン・ザラという存在なのだとアルは嘲笑しながら言った。
『俺は──』
上下左右の全方向から繰り出されるオールレンジ攻撃を辛うじて防ぎながら、アスランは自身の記憶を探った。
かつて父の忠実な戦士であろうとしたが遂になり切れず、名誉も地位も喪ってオーブに亡命することしか出来なかった忌まわしき過去。
だが、それは本当に忌まわしき過去だったのだろうか?
その気になれば栄誉も地位も手に入れられたにも関わらず、あっさり投げ捨てて隠遁生活を送っていた少女の存在をアスランは思い出した。
『お前を討つ!!』
全ての雑念が不意に遮断され、極限の集中状態に突入する。
ブリッツの大破を間近で目撃したことと、キラから向けられた殺意に誘われて覚醒したアスランのSEED因子が2年の時を経て発現したのだ。
アスランはドラグーンの1つを撃ち抜き、隙を見て投擲されたビームジャベリンの持ち手部分をピンポイントで蹴り抜いた。
〈96〉
クロトはストライクレイダーを急加速させると、
二人の間で激しい火花が散り、殴り付けられる様な衝撃が機体を揺らした。
『なっ……!?』
シンは思わず絶句した。デスティニーの
叫びたくなるような動揺を無理矢理呑み込むと、シンは追撃を仕掛けようとするクロトを牽制するため、ビームライフルを滅茶苦茶に連射した。
とうとう狙いを定めることを放棄して時間稼ぎを始めたシンに対し、クロトはストライクレイダーを変形させた。猛烈な勢いで距離を詰めながら電磁砲を連射するが、光の翼を展開したデスティニーの動きは捉えられない。
『チッ!!』
先行していた別働隊は、未だメサイアの最終防衛ラインで足止めされている。
このままでは作戦失敗は明白だった。
クロトはデスティニーの撃破を断念し、エターナルの防衛を放棄してメサイア攻略に向かう選択肢を考え始めた。ここで離脱すればデスティニーにエターナルは撃沈されるかもしれないが、あくまで目的はオーブを狙うネオ・ジェネシスの発動阻止だ。
たとえ全滅しようと、それは全てに優先されるのだ。
『逃げるな!!』
クロトはまるで曲芸の様な軌道で、周囲を旋回しているシンの放った光弾を回避した。
せめてデスティニーを引き付けながらメサイアに向かうことは出来ないか、と考えながら周囲を旋回するデスティニーを睨み付けた瞬間のことだった。
クロトは猛烈な速度で迫り来るカオスの反応と、ラウに酷似しているがどこか幼さの残る声をセンサーで感知した。
『もう止めろシン!』
なぜレジェンドのパイロットであるレイが、以前アズラエルが接収した筈のカオスに乗っているのか。事情の分からないクロトは困惑した。
『レイ!? どうしてお前が!?』
どうして殺したはずのレイがこんなところにいるのか。
レイが突如戦場に現れた事実は、ストライクレイダーと対峙していたシンと、カオスを後方から追っていたルナマリアにクロト以上の混乱をもたらした。
『!!』
レイは高速移動形態のまま、機動兵装ポッドを射出した。
左右に展開したポッドから誘導ミサイルを立て続けに発射しながら、一気にデスティニーとの距離を詰めた。
周囲が混乱している間にシンを無力化しなければ、クロトやルナマリアが突然現れたカオスに攻撃を開始する可能性が高かったからだ。
レイはカオスを通常形態に戻すと、デスティニーの放った光弾を間一髪で回避した。
『お前は自分が誰を撃とうとしてるのか、本当に分かっているのか!?』
『分かってる!! 分かってるさ!!』
更にシンが連射した光弾を巡航機動防盾で防御し、レイは一気に斬り込んだ。ストライクレイダーに大型対艦刀を破壊されたデスティニーに、至近距離での選択肢が極めて少ないことを分かっていたからだ。
ビームシールドに
『分かっていない!! お前は妹のために……妹に平和な世界を見せてやるためにザフトに入ったんじゃなかったのか!?』
『……お前に何が分かるんだ!!』
シンは動揺しながらも、光の翼を展開してカオスを強引に押し返し始めた。
サブスラスターを兼任する機動兵装ポッドを射出したカオスとデスティニーでは、根本的な推力に圧倒的な差があったのだ。
しかしレイはシンに生じた僅かな隙を突き、密かにデスティニーの背後に回していた機動兵装ポッドを操作した。
ビームで左腕を斬り落とされ、シンは体勢の立て直しを迫られた。
シンは後退しながら頭部の機関砲とビームライフルを連射し、反転攻勢を仕掛けるカオスに応戦した。しかしレイは間髪入れずに
『くっ……!!』
ビームライフルに
『シン!!』
レイは爆煙に身を隠しながら、挟み込むような形で機動兵装ポッドを操作してデスティニーに突撃させた。そして一気に決着を付けるため、自らも距離を詰める。
『レイ!!』
シンは掌部ビーム砲でポッドの片方を撃破した。しかしビームソードを展開した機動兵装ポッドが右掌部に突き刺さり、ポッド本体と引き換えに右腕を吹き飛ばす。
そして爆煙の中から姿を現したカオスが、体勢が崩れたデスティニーを捉えた。
『お前って奴は!!』
反射的にシンが放った蹴りに、レイは自らも蹴りを合わせた。
イージスに搭載されていたビームサーベルを参考に、両膝に搭載されていたカオスのビームクローがデスティニーの膝に突き刺さった。
『!!』
たとえ圧倒的な防御力を誇るデスティニーのVPS装甲だろうと、カオスに搭載されたビーム兵器を無効化する程ではない。
カオスのビームクローを受けたデスティニーの右膝部が両断される。
苦悶の叫びと共に損壊率が危険域に到達したことで安全機構が作動し、デスティニーの動作が完全に停止する。
『…………』
デスティニーの無力化に成功したレイは、小さく息を吐いた。結果的には無傷で勝利する形で終わったが、内容的には結果が反対でも不思議ではなかったからだ。
シンがクロトとの戦闘で消耗していたこと。
レイはデスティニーの能力を把握しているが、シンは宇宙空間におけるカオスの能力を計りかねていたこと。
そして突如殺した筈の相手が現れたことで生じた、シンの動揺を突いたこと。同じようにやっても二度と勝てないことは、誰よりもレイ自身が理解していた。
『ルナマリア。シンを頼む』
『わ、分かったけど、でも……!』
『俺は議長を止めてくる。これでお前達との貸し借りはなしだ』
レイは茫然としているルナマリアにシンを託すと、クロトに通信を送った。
ここから先はクロトの助力を得られなければ、デュランダルのいるメサイア最深部まで辿り着くことが出来ない。
『付いて来い。お前にやってもらいたいことがある』
『……あぁ』
クロトは僅かな逡巡の後に頷いた。
レイが今までクロトの足止めをしていたシンを撃破した以上、わざわざ自分を騙す理由はないだろうと考えたからだ。
〈97〉
ニコルは前方で進撃を阻まれているオーブ軍と合流するため、再度移動を始めたエターナルの直掩機としてザフトとの戦闘を続けていた。
当初エターナルは月軌道艦隊からの追撃を足止めする予定だったが、エターナルに対してメサイア要塞からも次々と主力部隊を送り込んでいたのだ。
先程現れたコンクルーダーズに捕捉され、後方で1人で戦っている筈のクロトからは一切の連絡が取れない。
このままでは全滅だ。ニコルは焦燥感を抱きながら、別方向から現れた2機のグフイグナイテッドにバズーカ砲を向けた。
すると照準に捉えたグフから、妙に焦ったような通信音声が流れて来た。
『ニコル貴様ァ! またこんなところで何をやっている!!』
『一応出てって瞬殺されてこようかって言ったんだけどねえ。議長に言わせりゃ、俺達はこーいう運命なのかもな』
その聞き慣れたイザークとディアッカの声に、ニコルは砲口を下げた。
イザークの後方にはジュール隊の旗艦である“ボルテール”の姿も見えた。メサイアから送り込まれて来た部隊やグラディス隊とは異なり、ジュール隊はエターナルの撃破に現れた訳ではなかったようだった。
『ダラダラ御託を並べる評議会の連中には付き合ってられん!』
プラント最高評議会は先日、ブレイク・ザ・ワールドにデュランダルが関与していたという内部告発をデュランダル本人から受けていた。
単純な人的被害だけならエイプリルフール・クライシスすら超えるテロ事件。
それは陣頭指揮を行い、人類滅亡を阻止した救世主として一躍世界中で持て囃されることになったデュランダルの単なる自作自演に過ぎなかったのだ。
その内部告発が世間に公表されれば、もはやプラントが完全勝利する以外に停戦交渉は不可能なことは明らかだった。最高評議会はデュランダルの脅迫に屈する形で、事実上支配されていたのだ。
『おいおい、そりゃプラントに対する反逆行為ってヤツなんじゃねーの?』
てっきり他のジュール隊は後方に下げたまま、自分とイザークの2人でニコルを援護するんだろうと考えていたディアッカは意外そうな口調で言った。
そんなディアッカを小馬鹿にするように、イザークは鼻を鳴らした。ジュール隊がデュランダルに堂々と反旗を翻すための大義名分は、既に思い付いていたからだ。
『馬鹿者! ラクスは議長の協力者なんだぞ! だったらそれを狙う連中は誰だろうと全員敵だろうが、ディアッカ!』
『ははっ、そりゃそうだ!』
イザークの真意に気付いたディアッカは嗤った。
ラクスの真偽問題について、評議会では未だ明確な結論が出ていなかった。
薄々ミーアが偽者だと気付いていながら真実が公表されるまで最高評議会がデュランダルを糾弾しなかったのは、プラントの影響力を拡大しようとしていたからだった。
アイリーン・カナーバが辞任を迫られたように、クライン派の中にもユニウス条約に不満を持つ者は一定数存在したのだ。
その欺瞞を利用して、イザークはエターナルの援護に回ることで政治的な問題をクリアしたのだ。コペルニクスに滞在していたミーアが姿を眩ました今、エターナルに乗艦しているラクスが本物かどうかなど分からないのだから。
『ジュール隊はエターナルを援護しろ!』
ボルテールから出撃したジュール隊は、エターナルの前に躍り出る形で展開した。
戦力としては極めて少数ながらも、いずれも先の大戦を生き残った歴戦の猛者で構成されたジュール隊はエターナルを包囲するメサイア駐留軍を押し返し始めた。
『くっ……!』
アスランはフリーダムの腰部に唯一残っていた右腕の刺突を命中させた。
突如強烈な損傷を受けたフリーダムの核原子炉が暴走し、シールドを喪ったジャスティスを絶大な衝撃が襲った。
咄嗟に射出したファトゥム-01を盾代わりに、アスランは辛うじて相討ちを逃れた。
ネオ・ジェネシス撃破を阻む最大の難敵を撃破した筈なのに、アスランの顔は尚も険しいままだった。
それはたった今撃破した筈のフリーダムが、傷1つない姿で再び降臨したからだ。
『何か言いたそうだな?』
アルはコクピットの中で唇を噛み締めるアスランを見透かすように嗤うと、ウィングユニットから光の翼を展開した。
『……インパルスシステムか』
『くくく。そういえば貴様はアーモリーワンに来たんだったな。ファクトリーとやらが開発した最新鋭モビルスーツ“ジャスティス”。対モビルスーツ戦においては、レイダー以上に厄介な機体だと思っていた』
アスランの協力を基に最終調整が行われたジャスティスは、純粋な対モビルスーツ性能においてはストライクレイダーを上回る最強のモビルスーツだった。
全身に多彩な武器を搭載する傍ら、鉄壁を誇るビームキャリーシールドや格闘装備としても使用可能なファトゥム-01など、たとえ全盛期に戻っても不覚を取ることも有り得ると考えたアルは残っていたレジェンドの素体を改修した。
そして元々脱出装置として組み込んでいたコアスプレンダーと、レジェンドの素体にフリーダムの予備パーツを組み込んだメインフライヤーを合体させることで、フリーダムは一度限りの復活能力を獲得したのだった。
『つまりもう復活しないということだな?』
アスランの挑発めいた言葉に、陽電子リフレクター付近に迫るキラの存在を感知したアルは嘲笑しながらドラグーンを展開した。
片腕とメインスラスターを喪ったジャスティス相手に、完全復活した今のフリーダムが敗北することは有り得ないと認識していたからだ。
『後は貴様を嬲りながら、捕らえる方法を考えるとしよう』
アスランはビームライフルを連射しながら後退するが、ドラグーンはジャスティスの逃走経路を塞ぐように弾幕を形成する。辛うじて直撃は避けているものの、大幅に機動力が低下したジャスティスの装甲を次々光弾が掠めた。
そして前後左右を封鎖し、一斉掃射を開始しようとした瞬間のことだった。
『!!』
アルの眼前に展開していた陽電子リフレクターがいきなり強烈な衝撃を受けた。
そして爆撃のような重々しい轟音と共に、陽電子砲の集中砲火すら跳ね返す難攻不落の防壁に大穴が開いた。
それは異様な光景だった。
陽電子リフレクターに空いた大穴を押し広げ、最終防衛ラインに侵入を開始した正体不明の存在が、今もセンサーに一切の反応を示していなかったからだ。
しかし陽電子リフレクターを構成している力場からの強烈な干渉を受け、船体を覆っていたミラージュコロイドが解除された宇宙戦艦がその姿を現した。
レイはガーティ・ルー自体を巨大な質量弾に見立て、陽電子リフレクターに衝突させることで強引に障壁を突破しようとしたのだ。
『まさか……!』
ガーティ・ルーは先端から徐々に融解し、やがて機関部で大爆発を起こした。
高いビーム耐性を誇るラミネート装甲を採用していないガーティ・ルーが陽電子リフレクターに特攻する行為は、飛んで火に入る夏の虫の如き所業だった。
そしてそれこそが、レイの狙いだった。
『──さぁ』
目も眩むような爆炎の中から、
『決着を付けようぜ』
クロトは神懸かり的なスラスター制御で全方位から襲い来る光弾の嵐を躱すと、極限の集中状態に突入した。
アスランくんにも見せ場が欲しいけど、ラストバトルは一騎討ちにしたいのでこの形になりました。
画面外で放り出されたロアノーク隊&アズにゃんですが、戦後解体が確定してるからガーティ・ルー的にはカッコいい散り方だったかもしれません。
最終的な決着はレイくんの55秒クッキングです。
ストライクレイダーとの戦いで消耗してたとはいえ、カオスでデスティニーを圧倒するのはまさにカオスですね。