この目は私を『ヒト』と捉える   作:風峰 虹晴

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初めて書く作品なので初投稿です。


その目は一度閉じ、異なる瞳を開かせる

「──────────」

 

 

 

 

 私の体が病に犯されてから、どれぐらいの年月が経っただろうか?

 

 時計を見たい。カレンダーを見たい。家族を、お姉ちゃんを見たい。けど、この目を開けることすら叶わぬくらい、体が動かない。

 

 

 

 

「──────────」

 

 

 

 

 余命宣告を受けてから、多分4年ぐらい。2年ってお医者さんは言っていたけれど、お姉ちゃんの、皆んなのお陰でしぶとく生き残ってきた。

 

 でも、運命を最後まで振り切れるわけじゃない。いつかはきっと終わりが来るのはわかっていた。

 

 

 

 

「──────────」

 

 

 

 

 んもう、わかってるって。そこにいるんでしょ?お姉ちゃん。ちゃんとわかってるよ。

 

 でもごめんね。なんて言ってるかは、ちょっとわかんないや。この目さえ開いてれば、聞こえなくてもなんて言ってるかわかるのに。

 

 

 

 

「──────────」

 

 

 

 

 ──────────。

 

 

 

 あ、やば。意識がトんでた。お得意の根性で耐えたけど。

 

 もう、何度吹き飛ばそうな意識を無理やり保ってきたのか。何故、吹き飛びそうな意識を無理やり保っていたのか。

 

 だって、ここで落ちたら、もう会えないってわかってるんだから。それほどまでに、自分の体が限界なのは一番自分がわかってる。……多分、私が一番。

 

 

「──────────」

 

 

 

 

 ────────────────────。

 

 

 

 ─────あ。

 

 

 

 な、何とか戻ってこれたぁ……。流石私の根性、ここまで耐えてきたのは伊達ではない!

 でも、流石にもうこれ以上はダメだろうなぁ。私が落ち続けるまで、もう、数分も、ないと、思う。

 

 

 

 

「──────────」

 

 

 

 

 ─────ッ!!!ここで終わるとしたら!!最後に!!最期に言わなくちゃいけない!!

 

 親から、親戚から、捨てられたこんな足手纏いでしかない私を!!拾ってくれたお義姉ちゃんに!!

 

 

 

 

 

 ギュッ

 

 

 

 

 

 ほとんど感覚を失った手から感じる、暖かい手の感触。

 

 何度も何度も、私の心を支え続けてくれな、「救いの手」の感触。

 

 熱が、僅かな熱が、失われた私の体力を回復させて、ただ一言だけを紡がせてくれた。

 

 

 

 

 

 聞いててお義姉ちゃん。私の、最期の言葉。

 

 

 

 

 

「───あ───りが─────と──────」

 

 

 

 

 

ピ──────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウグッ、アッアッ、グズッ……!でも、これで、いいんだよね……!?」

 

 

 

 

 

「これで、────ちゃんが、アグッ、もっかい、生きられる……!」

 

 

 

 

 

「ングッ……ンンッ……!うん、お義姉ちゃんとして、応援しなくっちゃ!!」

 

 

 

 

 

「頑張れ!!────ちゃん!!()()でも頑張って!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 篠ノ之束。

 

 彼女は何年に一度、というレベルではなく、歴史上存在したであろう偉人をも遥かに超越するほどの天才。

 

 

 

 彼女が宇宙開発用に開発したインフィニット・ストラトス(IS)というマルチフォームスーツ。

 

 中枢たるISコアによる高い自己学習能力。

 

 ハイパーセンサーによる死角の存在しない視野とコンピューターレベルの思考速度。

 

 シールドエネルギーや絶対防御といった機能による、通常兵器が傷を全く傷を作れない程の防御能力。

 

 P.I.C(パッシブ・イナーシャル・キャンセラー)やスラスターによる、ホバリングやドッグファイトを繰り広げられる程の高機動力がある飛行能力。

 

 拡張領域に量子化した物を格納することによる利便性。

 

 

 

 かつて人が生み出し積み上げてきたモノ、特に()()を遥かに凌駕する発明であった。

 

 それは一体の謎のIS「白騎士」が世界各国がクラッキングを受けて発射された2000発以上のミサイルを防ぎ切る「白騎士事件」によって証明された。

 

 

 

 故に彼女は「天災」として世界に認知され、467個のISコアを生み出した後に姿をくらませてしまった。

 

 

 

 そんな彼女は、幼少期からその才能を遺憾なく発揮し、自ら多くのものを生み出した。

 

 そんな数ある彼女の作品の中に、人型のロボット、所謂アンドロイドと言われるものがあった。

 

 しかし、自らバランスをとる機能「オートバランサー」がその体積の多くを占めてしまったがためにその他の機能はあまり良いものとは言えなかった。

 

 それでも、作った当時彼女はまだ子供であり、その時代の技術と比べるとオーパーツと言われてもおかしくない程度には高性能ではあったのだが。

 

 そしてそれは、幼少期の思い出だからなのか、自分の作品への思いやりなのかは知らないが、今も彼女のラボに存在する倉庫の中に保管され、日の目も浴びずに長い間その機能を停止させていた。

 

 

 

 

 

 そんなアンドロイドは、突如薄暗い倉庫の中で命を宿し、その目を覚ました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────────

 

 

 

(────────う)

 

 

()()が目を覚ましたのは、自分の手も見えない程真っ暗な部屋。

 

 

 

 ─────ここ……どこ……?病室ではないし……なんか暗くて、あんまり周りもよくわかんない……

 

 

 彼女は目線を左右に振りながら周りの状況を確認する。が、その暗さに周りの状況を把握するんは難しい。

 

 

 

 ─────私……確か、お義姉ちゃんに手を握って貰いながら─────

 

 

 自分が何故こんなところにいるのか思考を巡らせる。

 そしてそれと同時に、自分に何が起こったのかを思い出し、その感覚を追体験したかのような感覚に陥ってしまう。

 

 オブラートに包んでも自分が消えるというあまり心地よくない感覚に頭を振り、気持ちを紛らわせる為に状況確認に勤しむ。

 

 

 ─────あっちの方、下から光が漏れてきてる……

 

 

 それは、扉のわずかな隙間から漏れ出てくる光がその周りの空間とそこに置いてある物が薄く照らされていた。

 

 それはつまり、その扉の先には光のあるような空間があるということ。

 

 

 

 ─────もしかして、天国があったりするのかな?)

 

 

 そんなことを思わず考えてしまう。

 しかしそんな考えを間髪なく振り払い、再びどうするか考え始める。

 

 

 ─────ここにずっといても、仕方ないよね。

 

 

 結論として、この空間からの脱出を決心した。

 こんな暗い空間に居続けても何かあるわけではない。それよりも明るい空間から脱し、自分がどのような状況に置かれているのかを明確にすることが重要だと、起き抜けのように働きづらい頭で結論づけた。

 

 

 ─────とりあえず、立ち上がらなきゃ。

 

 そう考えて足に力を込める。が、一抹の不安は思考を貫く。

 

 

 

 ─────私、本当に立てるのかな?

 

 

 

 今まで病室に寝たきりであり、体のどの部位も満足に動かせない状況に身を置いていた彼女の思考を、血が滲んでいくかのように思考を埋め尽くしていく。

 

 が、かの日のように立ちたいという彼女の希望が、足に込める力を

 

 

 

 

 

 ─────ウィーン……

 

 

 

 

 

 立ち上がると同時に響く、異様な筋肉の収縮音。人間の体からは絶対に鳴らないような音ではあるが、そんなことは今の彼女には違和感すら感じることはできなかった。

 

 

 

 ─────立てた……。

 

 

 

 ─────立てた!

 

 

 

 思考を埋め尽くす、歓喜の感情。最初は子鹿のように震え、不安定だった立ち姿も、血が滲むように思考を埋めていた不安が漂白されていくに従い、普通の人間のようなナチュラルな立ち姿へと最適化されていく。

 

 

 ─────あ、あははははは!あはははははは!!

 

 

 

 

 

 ウィーン、ウィーン……

 

 

 

 

 

 ─────歩ける!ちゃんと私歩ける!

 

 

 溢れ出る歓喜の思考に釣り合わないゆっくりとした歩で、扉へと向かっていく。不思議な筋肉の駆動音を断続的に響かせながら、扉との距離を縮める。

 

 

 

 

 

 ウィーン

 

 

 

 

 

 ある程度まで近づいた時、自動ドアであったらしい扉が一人でに開き、彼女の視界を光で埋め尽くす。

 

 

 

 扉の開いた先には、数多くの機器類。そのどれもが彼女の知るような物ではなく、その性能の高さも()()()彼女には窺い知れた。

 

 

 

 自分よりも、という感覚を伴って。

 

 

 

 しかしそんなあやふやな感情よりも、彼女は何より近未来感溢れるそのデザインに、心惹かれるものがあった。

 

 ……そして、それと同時に目に入る部屋の乱雑さ。おそらくこの部屋の主のものであろう人物のメルヘンチックな服に下着。

 適当にそこらへんに投げ捨てたのであろうゴミと最新鋭の機械が地面に並んでいる。

 

 

 ─────うわぁ。

 

 

 そう心の中で彼女がつぶやいたのは、部屋の中にある機械類に心奪われたからなのか、それともこの部屋の主の生活レベルの低さを一目で垣間見ることができたからであろうか。

 

 

 

 

 

 スタスタスタスタ……

 

 

 

 

 

 ─────誰か、来る。

 

 

 少し彼女が部屋を観察していると、足音が彼女の耳まで届いてくる。

 耳が聞こえるということに少し心を弾ませるも、部屋の主であろう存在に緊張感を高める。

 

 

「こっちでなーんか音がしたんだけどな〜?」

 

 

 ステップを軽く刻むように、この部屋の主であろう女性は登場した。

 

 

 

 ─────同時に、彼女は同性でありながらもその美貌に見惚れた。

 

 一切の非の打ち所のない整ったパーツの顔に、サラリと腰元まで伸びる紫の髪。うさ耳を筆頭に目を引くメルヘンなその衣装。

 そして、そんな服装の下に存在する体のプロポーションは、テレビの中の芸能人を含め、彼女が今まで見てきた人間の誰よりも優れていると言わざるを得なかった。

 

 

 ─────!

 

 

 そんな美貌の主に彼女が見惚れていると、部屋の主である彼女と目が合った。

 声を出そうとする。しかし声を出すための器官に相当するものが備わっておらず、声を出そうとする仕草のみをとる形となった。

 

 

「あー!束さんの“お友達3号くん“が動いてるー!」

 

 

 部屋の主、発言から鑑みて“束“という名前なのであろう人物はそう叫ぶと、恐るべき身体能力で乱雑な部屋のゴミを避けつつ彼女に急接近する。

 

 その勢いに押され、彼女は思わずその体をたじろがせ、一歩身を引く。

 

 

 

 その様子を見ると、“束さん“はピタッと体を停止させ、ニコニコした笑みから一転、真剣な顔と同時に何もかもを見抜いてしまいそうな目を、彼女に向けた。

 

 

「……“お友達3号くん“のオートバランサーは今の束さんから見るとお粗末な正に稚作品な筈。それなのに今の動き……あまりにも自然すぎる。それにさっきから見せてるその“人間らしい“動きも、いくら自己学習能力があるとはいえそんなに性能も高くないしそもそも倉庫の中で眠ってたから学習も何もないはず……」

 

 

 

「“貴方“、何者なのかな?束さん気になるなぁ〜〜〜」

 

 

 そう言うと“束“再び笑顔を浮かべると彼女の顔を覗き込む。目は先ほどまでの何もかも見通してしまいそうな目で、彼女の一挙手一投足を見逃さんとしており、その笑顔は口元のみのハリボテに等しき代物だった。

 

 そんな“束さん“に対し純粋に疑問に答えたいと思う彼女は、何か方法は何かとオロオロし始める。その様子はまさに人間であり、いくら高性能な機械でも再現は目の前の彼女にも難しいであろう。

 

 そんな彼女の目に、一つのものが留まった。それは、部屋の中に乱雑に捨てられているゴミのうちの一つであるペンだった。

 

 

 

 

 

 ─────ウィーン、ウィーン、ウィーン……

 

 

 

 

 

「おおっ」

 

 

 歩き始めた彼女の様子に“束さん“は少し驚嘆の声を漏らす。

 

 それもそうだろう。元々“お友達3号“はその大部分をオートバランサーが占めていながらも、歩行に関してはぎこちないもので合った。

 

 それが今はどうだろう。歩行速度は少しゆったりとしているものの、その歩く姿は非常にナチュラルだ。

 

 ニィッ、と口角が上がり、今の“お友達3号“に強い興味を示した。

 

 

 

 

 

 ─────ウィーン

 

 

 

 

 

 彼女は身を屈め、床に落ちているペンを手に取ってから再び直立の体勢へと戻った。

 

 歩行などとは比べものにならない高度なバランス感覚による動きだ。歩行すらまともにできないオートバランサーでは到底無理な芸当だろう。

 

 ここで未だ半信半疑だった“束さん“の考えはほとんど核心へと至る。

 

 

 

 

 ─────この“お友達3号くん“はガワだけは同じであり、中身は別物である、と。

 

 

 

 

 

 彼女は部屋の中から適当な紙を探し出し、ペンを紙の上に走らせていく。

 

 余談ではあるが彼女が筆談に使っている紙は世界的に有名な博士の論文の裏紙である。

 最も、彼女はそれに気づいておらず、持ち主である“束さん“もその論文には全くもう興味がないと言わんばかりに静観を貫いている。

 

 

 “私は─────

 

 

 彼女が最初の筆談として書いた言葉は、“束さん“が彼女になげかけた問いに対する答え。

 

 

 

 

 

 即ち、自分が何者なのか?

 

 

 

 

 

 ─────私の名前は、天乃 真子(あまの まなこ)です。




続きは未定です。

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